真のグローバル本社が日本企業のグローバル化にとってベストの答えではないか

Passport-695x469この連載の以前の記事で、ファーストリテイリングや楽天などの日本企業が英語を社内公用語にしたことについて触れました。これに対する反応として、日本人 社員の英語に対する態度を調査した様々な結果がメディアで取り沙汰され、なかには日本人の73%が社内公用語として英語を話すことは好まないという結果も ありました。

さらに、最近発表された産業能率大学による調査では、ビジネスピープルの67%が海外で働きたくないと思っていることが報告されました。これらの調査結果 を受けて、日本の評論家の多くは、グローバル化する世界に対して日本が消極的になりつつある全体的なトレンドを映し出していると結論しています。特に若い 世代が内向きかつ慎重になっていて、これが経済にマイナスの影響を及ぼすという懸念があり、これは日本政府も指摘しています。これらの反応を見て私が感じ るのは、日本人が自分たちに関する調査結果を苦悶するのがどれだけ好きかを示しているということです。特に、日本が他の国とは異なるという結果や、何らか の暗い見通しを示す結果が出ると、高々と警鐘が鳴らされます。

私の目には、この種のトレンドは、日本社会の特異性などではなく、むしろ経済要因に関係しているように見えます。戦後の数十年のように輸出主導で日本経済 を立て直そうといった切迫した気運はありません。終身雇用が徐々に廃れつつあるのを受けて、若い人たちの会社に対する忠誠心は薄れ、ゆえに会社が行けとい うならどこへでも行くという態度も希薄になりつつあります。

日本企業は過去20年以上にわたって、グローバル環境の変化に対応してきました。高くつく先進国への海外駐在員は減らして、現地採用の管理職者を登用し、その代わり資本と人材の投資を新興国へと向けるようになりました。

同じトレンドは、他の先進経済圏にも見られます。米国はかつて労働者の移動が盛んな国でした。仕事を求めて他州へ引っ越すことを厭わない人たちがたくさん いたのです。しかし明らかに、その傾向は薄れつつあり、失業率の問題が長引いているにもかかわらず、人口の流動性は下降気味です。一方、ヨーロッパの人 は、アメリカ人のパスポート取得率がわずか20%であることを何かと指摘したがりますが(イギリスでは70%です)、欧州内の移民の流れはほとんどが東欧 からであって、西欧からでないことは特筆に値します。

多くの日本企業は、消極的な日本人社員を海外に赴任させたり、英語を社内公用語にしたりするのではなく、アジアでの採用者を日本に転勤させ、また日本に留 学中のアジアからの学生を雇用するなどして、グローバル化を進めようとしています。おそらくこれらの社員に対しては、できるだけ日本社会に同化して、本社 の日本人社員に大きな影響を及ぼさないことが期待されているのでしょう。

とすれば、アジア以外の事業がますます日本およびアジアから切り離され、この2つの地域間で人の移動が起きることはほとんどなくなる可能性があります。急 進的かもしれませんが、それならば解決策は、日本人社員の大多数が日本国内市場に目を向けたいと思っている事実を受け入れてしまい、グローバル本社から日 本国内事業を切り離してしまうことかもしれません。このグローバル本社は世界のどこに置いても構いません。そしてもちろん、そこでの公用語はおそらく英語 になるでしょう。

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日本が「グローバル・スパナー」を歓迎すべき理由

先日、MBA課程で学ぶ日本人留学生のグループに対して、在外の日系企業で働くことについて話をする機会がありました。私はコミュニケーション問題につい て触れ、単に言葉の壁だけではなく、多くのことを暗黙の了解で進める日本のコミュニケーションスタイルが海外ではうまく伝わらないという問題があることを 説明しました。こうしたなかで、外国在住経験のある日本人のMBA取得者は、日本の親会社と外国の現地法人の異なるコミュニケーションスタイルのブロー カーとして存在価値を発揮できると、私は強調しました。

その後のディスカッションでは、なぜ日本の若者が留学や海外就職をしなくなっているかに必然的に話題が及びました。ある学生が言ったのは、外国に住んで日 系ではない会社に勤めた経験があるにもかかわらず、ひょっとするとそれゆえに、日本企業での就職ができないと感じているということでした。「私のような社 員がうまくやっていけると思ってもらえないのです」と、彼女は言いました。

会の終わりに一連の名刺交換をした際、この学生は、フェイスブックをやっているからぜひ見てくださいと言いました。これを聞いて私は、最近読んだある記事 に日本人のフェイスブック・ユーザーの多くが海外在住の日本人だと書かれていたことを思い出しました。私が思うに、欧米ではフェイスブックが友達との連絡 方法として一般的に使われているという事実もさることながら、長くにわたって母国を離れて暮らすような人は天性のネットワーカーである可能性が高く、ゆえ にソーシャルメディアにも積極的に参加する傾向にあるのではないでしょうか。

生まれ育った国を飛び出した人にとって、連絡を取り続けることは重要です。これは、母国にいる友達や親戚とだけでなく、新しい国で知り合った友達との連絡にも当てはまります。各地を転々としても、音信不通にならないようにするためです。

また、長い間外国に暮らした人は、社会学で言う「弱い紐帯」を厭わない傾向にあるのではないかと思います。弱い紐帯とは、友達でも親戚でもなく、知り合い という程度のつながりです。グリーやミクシィは日本で人気のソーシャルネットワークですが、最近の調査によると、これらのサイトのユーザーが友達としてつ ながっている相手は平均29人で、フェースブックの全ユーザーの平均130人に比べて著しく低いことが分かりました。

世界を股にかける「グローバル・スパナー」は、このような弱い紐帯をたくさん持っている一方で、緊密なグループにも所属していて、それらの間の架け橋とな ることができます。つまり、日本企業ではグローバル・スパナーが、日本の本社の同僚や海外現地法人の同僚と強い紐帯を持てる可能性があるのです。彼らの弱 い紐帯が他のグローバル・スパナーにつながっていれば、2つの内向きグループの間にコミュニケーションのラインを開くことができるでしょう。

ただし、以前のこの連載でも申しあげたとおり、日本企業の問題は、グローバル・スパナーのようなタイプの社員をしばしばアウトサイダーとして懐疑的な目で 見て、内輪のグループに入れようとしない点にあります。これは日本だけでの問題ではありません。アメリカのオバマ大統領は即座に同意するでしょう。けれど も、日本は特にその傾向が強いように見えるのも確かです。

ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング・ヨーロッパでは、PS Englishと協力して「ビジネスのためのコミュニケーション」というコースを提供いたします。オフィスや自宅、あるいはSkypeを介して、経験豊富 な講師との毎回1時間半のセッションを、10回または20回のシリーズで受講していただけます。日本人がビジネスの場面で英語を使うことについて、それに 必要な「筋肉」と文化について、あらゆる側面を取り上げるコースです。詳しくはこちらへクリック(日本語・英語pdf)お願いします。

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英語使用の義務付け

「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカーが、 かつてこう言いました。日本のビジネスピープルは、問題点を正しくとらえる傾向にあるが、誤った答えを出すことがある。一方の欧米人は、たいていは正しい 答えを出すが、答えるべき質問が間違っていることがある、と。これは、日本人は解決策へと話を進める前に問題を定義するのに多大な時間を費やし、欧米人は きわめて迅速に、おそらくは迅速すぎるほどに、問題だと思う点を何であれ修正しようとするということを説明した発言でした。

企業のグローバル化という点では、日本企業による向こう見ずとも言える対策が導入されてきました。その目的は社員をグローバル化することにあり、たいてい は英語を話すことに特化したものです。昇進に際してTOEICの点数を条件のひとつにしたり、英語を社内公用語にしたり、あるいは一定レベルの社員全員を 海外に派遣して英語学習させるといった対策です。これはまさに問題点を正しく分析した結果だと思います。日本の多国籍企業は、今後も成長を続けていこうと 思うのであれば、グローバル化を進める必要があります。それには海外で事業開発して管理していく能力が必要とされ、これは究極的に人材開発の問題です。

でも、海外で事業を開発・管理する能力が全員に英語を話させようとする一律の規則で実現するかどうかは、私は確信できません。日本マクドナルド会長の原田泳幸氏は最近、日経ビジネスオンラインの取材で次のように語りました。 「日本語で考えているのであれば、日本語で話せばいい。英語で考えているのであれば、英語で話せばいい。日本語で考えて英語で話したり、英語で考えて日本 語で話したりすれば、相手に理解されないだろう」。私が思うに、原田氏の言いたかったことは、語学力があることが必ずしも有効にコミュニケーションするた めのバイカルチュラルな理解を意味するのではないということではないでしょうか。バイカルチュラルな理解がなければ、海外の顧客に対するマーケティング訴 求も成功しないし、本社が正しい意思決定を下すのにどのような情報を必要としているかも分からないことを意味します。

かねてから日本企業は、そのようなバイカルチュラルな理解を持つうえで必要とされる海外在住経験のある日本人の大卒者採用には積極的ではありません。しか も、海外留学を志望する日本人の学生は減っています。現在の雇用環境で留学すれば、新卒採用の就職活動のタイミングを逃し、内定をもらえなくなるという恐 怖感があるためです。

私の以前の勤め先のある日本企業は、留学経験者を対象とした別枠の採用プロセスを設けて、このハードルを乗り越えようとしました。ただし、これが正しいアプローチかどうかは分かりません。こうして採用された社員は特 別視されてしまい、日本の大手企業では、どんな意味でも「スペシャリスト」とされると、主流から外れてしまう傾向があるためです。この企業は、今では内定 を出すスケジュールを遅らせて、留学経験者かどうかにかかわらずすべての学生が、就職活動よりも本業の学問に集中できるようにしていると思います。これは 正しい方向性と言えるでしょう。全員に一律の規則をあてがうのではなく、柔軟性と多様性がグローバル企業では標準となるべきです。

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Wiggleがどのようにして日本市場を攻略したか

wiggleロ ンドン・オリンピックでイギリスが自転車競技の金メダル最多獲得国となったのを受けて、数年前からイギリスで始まったサイクリング・ブームは、さらに加熱 した感があります。ヘルシーなライフスタイルや環境意識の高まりを反映して、また通勤苦を回避するために、ますます多くの人が、趣味としてまたは通勤手段 として、自転車に乗るようになっています。

日本でも、自転車は人気が高まっています。特に昨年の東日本大震災の後、このローテクな乗り物がいかに信頼性が高いかが注目されるようになりました。

自転車のアクセサリーを販売するイギリスのオンラインストア、Wiggle は、イギリスと日本で好調な売れ行きを謳歌しています。最近、私は同社のマネージャーの話を聞く機会に恵まれ、同社がこの人気の波に乗れたのは単なる幸運のめぐり合わせではなかったことに気付きました。 日本の顧客開拓にあたって重要な役割を担っている要因として、Wiggleでは、第一に日本人のカスタマーサービス担当者、第二に世界各地へのすばやい配送、そして第三に低価格を挙げています。これらの要因それぞれが、日本市場への扉を開くカギになったというのです。

Wiggleでは、日本に相当数の顧客がいると認識した当初、単純にGoogle Translateを使ってウェブサイトの英語を日本語に翻訳しました。その後、日本の顧客がさまざまな連絡をしてくるようになり、そのなかには訂正すべ き日本語の個所を指摘するものもあったことから、日本語の話せる人を雇い始める必要があると自覚しました。 Wiggleは現在、日本語のネイティブスピーカーを5人、社員に抱えています。これらのスタッフは、ウェブサイトの文章を確認するだけでなく、電話と メールで日本の顧客に対応したり、マーケティング・キャンペーンが日本の文化的嗜好に即しているかどうかを確認したりする業務にも従事しています。

ウェブサイトに正しい日本語を記載することは、重要性が高まっています。以前に比べて日本の消費者は、海外のウェブサイトから商品を注文して PayPalなどの決済手段で支払うことに勇敢になっていますが、その一方で詐欺の被害に遭った人も多数いるためです。その結果、詐欺サイトかどうかを見 分けるポイントの1つとして、日本語がおかしいサイトが警告されるようになっています。

迅速な配送は、もちろん日本国内のサプライヤと競争するうえで欠かせません。ただし、Wiggleでは、国外への製品販売を目指す他社へのアドバ イスとして、国外配送を試みる前にイギリス国内の流通を確立することがきわめて重要だと強調しています。Wiggleのケースでは、日本に向けた相当量の 販売を始めるよりも前に、国際空港に近い便利なロケーションに高度な倉庫システムを設置していました。

低価格については、円高の恩恵があるため、一企業の力ではどうにもできない部分があります。とはいえ、日本語を話せるカスタマーサービス担当者と 配送網を確立した現在、為替が不利な方向に振れたとしても、それを乗り切るだけの忠誠な顧客がWiggleには付いているように、私には見えます。

もうひとつ、同社が日本の顧客ベースのロイヤリティを維持するうえで重要なカギを握る点として、日本人のカスタマーサービス担当者のロイヤリティ を維持することが挙げられるでしょう。イギリスの会社が、日本の「難しい」顧客に対応するために日本語の話せる社員を雇っておきながら、その社員が顧客対 応するのに必要なサポートと権限を与えないでいるというケースを、私はあまりにも多く耳にしてきました。

配送の遅れや品質の問題を「イギリスでは普通のこと」だと言って日本の顧客に納得してもらおうとするのは、たとえそのメッセージが丁寧かつ完ぺきな日本語で伝えられとしても、決して成功するアプローチではありません。

The Nikkei Weekly 2012年8月20日号より

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カストマー・サービス(その6) 多様性とカストマー・サービス

前号では、英国と日本のカスタマーサービスの水準の違いについて話をしました。その中で根本的な文化の違いから、英国のカスタマーサービスに日本の水準を期待するのは無理であろうという結論に達しました。その理由は日本人は一般的に、周囲の目にとても敏感であるからです。

何故日本人は英国、また他国の人々と比べて他人を思いやることに心を注ぐのでしょう?多くの比較文化評論家が日本の歴史について語る時、日本は協調的な‘村’を基本とした稲作国家であるとする一方、西洋社会は個人主義的で、その日その日の収穫を追う狩猟集団と考えます。ただ、この考え方は西洋でも共同作業による農作があるという事実に背を向けているだけでなく、文化は工業化や都市化と共に変動するという事実も否定しているのです。

国家の歴史的背景はさておき、思いやりの度合いというのは、いかにその社会が多様的で、変動的であるかに帰するでしょう。礼儀正しさとか思いやりという点では、私が住んだ事のある英国の他エリアと比べ、ロンドンは著しく乏しいといえます。ロンドン住民の40%は英国以外で生まれています。それ以外の生粋の英国人でさえも仕事や教育、家庭の事情などでロンドンを出たり入ったりの状態ですから、今後二度と会うことも無いであろう周囲に対して思いやりを持つ動機付けも無いのでしょう。また、これだけ人種のるつぼとなれば、礼儀正しさそのものへの概念も国籍の数だけあると理解できます。
日本人は多様的な先祖を持つ国民ですが、それは何千年も昔の事であって、それ以降は日本への移民の流入はあまりありません。日本国内では、地域によって文化・振る舞い・作法等に顕著な差はありますが、礼儀や正しい行いについてはとても厳しい水準を全国で持っているようです。

礼儀正しさが多様な形で共存しているロンドンのような社会では、文化の衝突が生じ易くなります。丁寧に接しているつもりが、相手には無礼に感じられたりということもあります。こんな例えがあります。あるアフリカの文化では、目上の人と話す時に直接目を見るのは無礼とされています。そんな訳で、アフロカリブ系イギリス人の若者と白人の警察官とでひと悶着が起こったりして、「おい、ちゃんと俺の目を見て話を聞け!」などとなるのですね。

私は学生時代にロンドンで、中華レストランで夏のアルバイトをした事があります。私はウエトレスとしてはかなり役立たずでした。北京ダックの肉を切って給仕するという長けた技の必要な事は、全て中国人のウエトレスに任せきりでした。ところが中国流のいいサービスとは、てきぱきと動き、感情を顔に出さず、お客様と世間話などしない、という事でした。つまりそのイスラエル人のオーナーは私とイラン人の女性を雇うことで、笑顔で四方山話をしながら飲み物を給仕するように企んだようです。お客様への笑顔さえあれば、私たちのウエトレスとしての技量は問題でなかったようです。とは言え、氷入りのコカコーラを載せたトレーを男性のお客様の膝に落っことしてしまった時には、笑顔作戦でもさすがに対処は難しかったのですが!

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思いやりとカスタマー・サービス

カスタマーケアを題材としたシリーズの前号で、英国のサービス産業で働く社員のお客様に対する不躾、不快な対応は、社員による仕事自体そして会社に対する誇りの欠如から来ると説明をしました。会社は社員をいいように利用し、株主だけに注意を向け、社会に対してはそっぽを向くし、大体において人々に仕えるような仕事は品位に欠けるという心理がその根底にあるのです。

このような心理は、社員が雇用主に対して前向きな気持ちを持つよう、会社として努力をする事で、多少の改善は図れるのではないかと思います。ご存知のように顧客対応が優秀とされる英国の会社の例では、John Lewisを挙げる事が出来ます。社員は会社のパートナーであり、そして株主でもあるのです。また、日本のように現場で働く人に権限を与える「現場主義」や、職人としてのみでなく、サービス一般の誇り高い「物づくり」の考え方も役立つのではないかと思います。
今回、年末・年始の時期に日本と英国内を行き来しましたが、英国のサービスレベルが果たして日本のレベルにまで到達し得るのかと、疑問に思いました。埋めるには余りにも難しい根本的な文化の違いがあるのです。例えば、日本社会では自分の発言が他の人にどう受け止められるか、などという他人の気持ちを優先する部分が、英国のそれとは比較にならない度合いで浸透しているのです。

ある英国人記者が、「監視カメラの国―日本」と称したことがあるように、日本では他人の目や反応を気にするばかりに、圧迫感となることさえあるのです。とは言え、これは英語で言うところの ‘forethought’や ‘consideration’、つまり「思いやり」という言葉と表裏一体なのです。他の人が何を必要としてるのか、または何を感じているのかを察し、求められる前に手を差し伸べる能力と言えるのではないでしょうか。

この“思いやり”のコンセプトを私がある英国人のマネジャーに説明した時、彼は面白い話をしてくれました。彼がヒースロー空港で日本人の同僚を出迎えて、会社の工場に案内して欲しいと頼まれた時の事です。この英国人マネジャーは多忙なスケジュールを縫って出迎えたので、空港から目的地の工場まで一刻も早く到着するよう、急いで運転をしていました。道中で例の日本人同僚が、あなたの好きなジュースは何かとか、ダイエットセブンアップの方がダイエットスプライトよりもいいのではないかとか、唐突に聞いてきたというのです。それを聞いて私がこの英国人マネジャーに’思いやり‘について説明をすると、そうか、彼は喉が渇いたと仄めかしていたのかと、はたと気付いたようです。

「では、もし次にこのようなことがあったら、どう‘思いやり‘を示すべきでしょうか。どこかで飲み物でも取りながら一休みしませんか、と聞いた方がいいんでしょうね。」このマネジャーが質問してきました。もし日本人同僚も同じように思いやりの気持ちを持っていたら、あなたの多忙ぶりを考慮して、そうしましょうとは言わないでしょう。とアドバイスしました。この状況での最善策は、予め飲み物を用意しておき、車中で勧めることでしょう。これこそが究極のカスタマーサービスなのです!

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カスタマー・サービス(その3)

前項でどのように消費者がサービス産業の社員から扱われるかを見てみました。サービス産業では150年に渡る階級社会の中で醸造され鬱積した憤り、熟練労働者の誇りの喪失感を持つ背景を抱えた社員の働いていることに言及しました。
大体においてサービス産業は、社員の福利厚生、お客様そして社会的責任に関心が薄いのです。このようなサービス産業で働く社員にお客様第一のカスタマーサービス精神を持って意欲的に働いてもらうことの難しさは火を見るよりも明らかです。英国の消費者は、この様な背景に根ざす問題点を持つサービス産業からカースタマーサービスを受けているのです。

勿論、全てがそうではなく例外もあります。例えば最もよく知られた例としては英国のJohn Lewis Partnership で、これはJohn Lewisデパートと Waitrose スーパーマーケットのチェーンを包括しています。この会社の構成はパートナーシップで、社名の示すとおり、6万9千人の社員は社員でありながら会社の所有者でもあります。被雇用者でも、スタッフでもなく、“パートナー”なのです。この会社の創立者 John Spedan Lewisの考える会社のあるべき姿は究極の目的としてパートナーとしての幸福を社員全員で共有するとしています。例えば、ボーナスとして会社の利益を受け取る割合は、2007年は、役職に関わらずサラリーの18%でした。そして13名の取締役のうち、5名はスタッフによって選任されています。

こういった会社としての構造が、高いカスタマーサービスの水準を支え、そして更には現在のような不況さえも切り抜けるに至っているのではないかと思います。パートナーは顧客に奉仕することで自分の品位が冒されるとは感じず、むしろビジネスに誇りを持ちながら、お客様と対等の立場として業務を遂行しています。

サービス産業で働く人たちの劣等感が、これまでこの国においてカスタマーサービスそのものを毒することとなっていました。もし顧客が奉仕する側に優越感を抱かず接すれば、必ずしもぴか一でないにせよ、しっかりとした親しみのあるサービスを受ける事は可能なのです。
最近ある会合で英国在住の日本人のグループと英国のカスタマーサービスについて話し合ったことがあります。その時、日本と英国の両国でレストランのフロアスタッフまたは販売員をしたことがある一番若い参加者が、英国のカスタマーサービス文化についてとても好意的に感じると言っていました。英国のお客様の接し方が日本にいた時と比べると数段感じがいいと話をしてくれました。

一方日本では、力関係と社会的な地位の違いを受忍するという、長い儒教の精神の影響があります。これは社会的地位の低い人が人間として価値がないとか、軽蔑に値するとかいう事ではありません。地位の低い人は親しみがあるまたは対等な扱いを必ずしもを受けないのですが、しかしそれは社会的通年として受け入れられているのです。儒教は正しいやり方とか礼儀作法をきちんと守ることに重点を置いているので、目に見える形でカスタマーサービスに有効な意味を提供することとなります。礼儀作法を重要視することは、カスタマーサービスの‘ものづくり’的精神に繋がってきます。ここが英国では欠けていることなのですが、次回にこの部分を検証してみたいと思います。
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カストマー・サーブス(その2)

前回の記事で、日英のカスタマーサービスに差があるのは多くの理由が背景にあることに触れました。そしてこれらの理由から日英の企業文化の違いの成り立ちに辿りつき明らかにすることが出来るのかも知れません。

ここで、私がまず最初に検証したいのは、企業理念と日英の会社の歴史的背景の違いです。ご存知の通り、人類最初の産業革命は英国で興りましたが、必ずしも最初が最良と同義語ではありません。これはロンドンの地下鉄が一つの例と言えるかもしれませんね。実際、私達が多くの失敗を重ねる事で、他の人が何かを学ぶことができます。

英国の産業革命の副産物として生まれた社会問題に対する意識は、未だに英国国民の心に影を落としています。例えば英国人は会社の経営者と聞けば、腹黒い金持ちの資本主義者をイメージするのです。のどかな田園風景を黒々とした不吉な工場に塗り替え(有名な英国の賛美歌エルサレムからの抜粋)、職場環境や健康には目もくれず、労働者を家畜のごとく酷使する悪代官として捉えてしまいます。

日本で後に始まった産業革命でも社会問題は起こったものの、日本は国家の近代化と、産業力・軍事力において西洋諸国にひけを取らない実力をつける為に精一杯でした。19世紀の終盤に成熟した日本の会社の企業理念は、企業は富国の為にあるという概念のもとにあり、これは20世紀初頭に設立され、社是7条の中に“工業を通じて国家に奉仕“を掲げる松下電器のような企業にも引き継がれていきました。そして第2次大戦後、日本は国を挙げて働きつめ、再び一流工業国に復興させ、”奇跡の日本経済発展“を遂げました。やはりその頃に設された企業、例えばホンダ技研などは、「社員の幸せと社会貢献」を強く謳っています。

それに対し、英国の産業革命以降の製造企業と社是を見てみると、往々にして社会貢献とか、社員の幸せという言葉は見当たりません。といっても、ごく最近は企業の社会貢献がファッショナブルな傾向になってきていますが。1970-1980年代に多くの伝統産業が打撃を受け、これまで自分達に良くしてくれていた会社が大幅な人員削減を決行していく中、人々の会社への信頼感と、労働階級としての誇りは消え失せてしまいました。炭鉱、鉄鋼、エンジニアリングといった産業で失職した人々は、俗語でMc Jobsと言われた、不安定なサービス業へと移行せざるを得なかったのです。

アングロサクソン資本主義における企業は、利益率や投下資本の株主へのリターンが目的の、株主中心主義と捉えられています。これに対し日本の会社は会社を支える基本要素は利害関係がまずは社員であり、次にお客様であり、社会であり、そして最後に株主であり、英国の会社は日本のステークホルダー型企業の在り方とその様相を異にしているのです。英国の顧客サービス担当者は、過去150年の階級社会で培養された恨みとか憤り、単純労働者の誇りの喪失感と、自分の雇用主は自分や顧客や社会の事なんか、本当はこれっぽちも考えてくれていないんだ、という混ざり合った思いで対応している訳です。とは言え、勿論全てがこのようなわけではありません。次回はまた違うケースを明らかにしてみたいと思います。

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’さん’ – The ‘san’ thing

私のトレーニングでは必ずと言っていい程、現地の参加者から、‘さん’についてどのよう使ったらいいのか?と質問があります。実際にビジネスの礼儀作法について話をする時、一般に考えられている程これは難しい問題ではないんですよと説明します。要は、苗字に“さん”とつければほぼ間違いありません。

とは言うものの、もう少し説明を付け加えます。米国生活の長い日本人男性は西洋人のニックネームとか名前を縮めた呼び名を取り入れているようですし、日本人女性の場合は、男性よりもファーストネームで呼ばれる事をむしろ好むようです。一つには女性の名前は男性の名前より短く、外国人にも発音し易いという事もあります。
私の日本人顧客の中に、自分のニックネームをキースと称している人がいるのですが、ヨーロッパ人の同僚には、‘キースさん’でなく‘キース’、と呼んで欲しいと言っています。英国に長く住んでいる日本人女性が同様の事を言っているのを耳にした事があります。

‘さん付け’を止めて欲しいと思う日本人の気持ちが、私には分かる気がします。以前日本で働いていた頃、同僚の中に私を‘ミス・パニラ’と呼ぶ人がいたのですが、余り嬉しい呼ばれ方ではなかったのを覚えています。文化の違いを見せつける過剰な礼儀正しさによって、逆に私と同僚との距離感を広げてしまうように感じたのです。日本の職場環境にうまく順応しようと日々心がけているのに、‘ミス・パニラ’などというおかしな呼ばれ方をすると、何だか妙に目立ってしまうようになりました。

私は日本人の知人からは普段は‘パニラさん’と呼ばれ、それで全く問題はありません。もう少し若かった時は、上司からからかい半分でパニラちゃんと呼ばれたこともあります。ところが、最近聞くところによると、大手日系電子メーカーの日本本社では、パワーハラスメントの要素を含むとの理由で、社内で‘ちゃん’付け‘君’付けを禁止したそうです。

これに反して、日本企業に買収された金融機関のヨーロッパ人管理職の人達が言うには、日本人の同僚から、日本人部下を呼ぶ際には苗字に‘君’をつけるようにアドバイスされたというのです。そのアドバイスに反対する気持ちはないのですが、そうする事によって、力関係を自然と作り上げることにもなってしまいますよ、と意見しました。

また更にややこしいのは、英国やヨーロッパでののMrsとMsの使い方と名前の呼び方です。私はMrsラドリンと言われるより、Msラドリンと呼ばれる方を好みます。というのは、ラドリンという苗字は旧姓であり、結婚後も仕事上使っているからです。ところが、仕事上はいずれにしてもファーストネームを使うのにも拘わらず、英国人女性の中には結婚後、苗字を変えてMrsとなることをかなり重要に捉えています。一方ドイツやオーストリアでは、往往にして今でも苗字のHerr(Mr)とかFrau(Mrs)をつける呼び方にこだわるようです。

結局のところ、互いをどう呼ぶべきか、全ての人が最初からはっきりしておけばいいのではないでしょうか。例えばこちらから、初対面の時点であっても、もうちょっと慣れ親しんで来た時でも、「ところで、お名前はどうお呼びしましょうか?」と聞いてみるのが最良の策なのかもしれません。

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ものづくりとマーケティング

日本語の言葉の中には、そのまま英語に訳せないものがあり、同様に英単語にも日本語に置き換えられず、そのままカタカナで表記されることがあります。これは文化の違いから生じるのですが、日本語の「ものづくり」そして英語の「マーケティング」等は文化的な観点からなかなか上手く訳せない言葉の一例ではないでしょうか。

ただこの二つの言葉は、実は概念的にはどこかでつながっているように思えるのです。このことは先月私が主催したセミナーに参加した幾人かのヨーロッパ人が「フラストレーション」をこめて次のように発言したことからもうかがえます。

参加者の中にいた、3名のシニア営業職の方々は、それぞれ銀行、電子、セラミックの日系企業で働いているのですが、3名が口を揃えて言うのが、特に競争が激化している環境で、自分達の会社がマーケティングを理解していないのではないかと。

彼らの会社は、業界営業経験と実績を持った営業社員を採用し、欧州に最初に営業拠点を設けました。ところがこれらの営業社員は会社による営業サポートを充分に受けていないと感じていたのです。「私の銀行ではピッチブックすら無いんですよ。」と参加者の一人はこぼしていました。ピッチブックとは、あらゆる欧州金融機関が金融商品を市場に出すときに使うマーケティング分析資料で、顧客となる相手先のプロファイル、商品の持つ優位性、顧客のニーズの分析情報等が記されています。先述の電子会社の営業社員も「私たちの商品がいかなる点で他社製品より優れているか等を分析した書類を見たことが無いんですよ。」と話をしてくれました。

ひょっとしたらこれは単にコミュニケーションの問題で、彼らは今後必要に応じて独自のマーケティングツールを開発するのかもしれません。とは言え、ここには直視すべき根本的な問題があるのではないかと思います。今回例に挙げた3社はいずれも日本では業界トップで、誰もが知るほどの有名な会社です。ところが一歩日本の外に出てみれば、その名前は殆ど知られていません。極端な言い方をすれば、日本市場では会社の名前だけで、商品の優位性とか高いサービスを言及しなくても商売はできるのでしょう。つまり、マーケティングという概念そのものが営業とは別ものとして日本の会社に存在していないのかも知れません。

日本の製造業では「ものづくり=創造の美の追求」の精神が先行するように思えます。つまり、高品質のものを製造することに焦点を絞れば、いずれはその商品が必ず売れるという信念。最近、日本のビジネス評論家が、日本の製造業はマーケティング戦略とは何かを自問すべきとコメントしているのを耳にしました。つまり、何故他でなくこの製品であるべきなのか。どうやって自社製品の差別化を図り、優位性を持たせるのか?又、その製品を一体作り続ける意味があるのだろうか?もしこれら全てに明確な答えを出した上で、ヨーロッパのお客様のニーズが求めているものを掘り下げることが出来れば、ヨーロッパ人の営業社員は自信を持ってさらに営業成績を上げる事ができるようになるのではないでしょうか。

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