日本のカスタマーサービスは物づくりに繋がっている

tinycrane前項で、日本のカスタマーサービスは物づくりに繋がっているのではと申し上げました。通常、物づくりという言葉はサービス産業でなく製造業で使われる言葉で、社会的にもとても重要な概念なので、どうして物作りがカスタマーサービスなの?とお思いの方もおられると思います。ここでこの言葉の意味するのは熟練技能であり、これは手作業を通して名工たることへの誇りを意味します。

幼少期に私は仙台に住んでいたのですが、ある時私達の住む一風変わった異人館を、大工さん達が修理していたことがあります。ある日私が学校から帰ると、休憩時間にその大工さん達は私が収集していた切手で折り紙の鶴を折っていたのです。私は大事な切手収集をだめにされてぶすっとしてしまったのですが、私の両親は大工さんのごつごつした手がこれほど繊細で器用に折り紙を折ることが出来るのを見て驚嘆していました。

私は折り紙を日本の幼稚園で習ったのですが、うまく折れたことが一回もありませんでした。上手に折ろうと思う半面、正確無比に紙を折る我慢強さが足りなかったのだと思います。そのせいか、私は日本のデパートで買い物をする度に、その品々を上手に包装する販売員の器用さには感動しない訳にはいきません。クリスマスプレゼントの包装が苦手な私にとっては、特にこの時季になるとそれを思い出します。

私は幼少期に日本舞踊も習いました。折り紙も勿論の事、茶道や剣道のように日本で広く伝授されている芸事の真髄には、体の動きだけでなく、対象となる物をいかに扱うかが重要視されます。例えば、着物をきれいにたたむとか、また扇子を美しく開く、という事が、実は日本でのカスタマーサービスが品よくきちんとに提供されている背景にあるのだと思います。

このような技術は英国の学校では通常教わりません。その為、英国では贈り物を包装するというサービスは提供されませんし、もしされたとしても、何ともお粗末なものです。実際、包装については通常英国では特別に頼まないとなりませんし、しかも料金がかかります。最近私が訪れた店で、唯一贈り物の包装が無料で、しかも綺麗に仕上げてくれるお店が、ロンドンのJermy 通りにあるFlorisでした。ここは家族経営で、伝統的な製法の香水を売っています。一見したところ販売員は家族の一員ではないのですが、誇りを持ってとてもいい対応をしてくれたばかりでなく、充分な商品知識を持ち合わせていました。

深い商品知識とそこから生まれる誇り、という点では、もう一つのチェーン店が思い浮かびます。このお店は常にいいサービスを提供するという事で話題の、Majesticというワイン専門販売店です。Majesticはカスタマーサービスが会社のブランドであるとして、そこに大きな力点を置いています。そのため、社員のトレーニングにたくさんの力を注ぐのですが、恐らくこれがMajesticのワイン愛好者を惹きつける理由なのだと思います。そして更には彼らの深い商品知識と誇りあるサービスがお客様に大きな満足をもたらしているのではないでしょうか。

物づくりには双方向性が大切です。提供する側・される側とも、物づくりの宿す技能と知識を深く認識する必要があります。英国の消費者は日本のように、物づくりへの深い認識を養われていない為、サービスを提供する側も自分達の対応に誇りを持てないという結論に至るのだと思います。

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イギリスのカスタマー・サービス (その1)

私は日本の出張から英国に戻ってくる度に、逆カルチャーショックを受けます。ヒースローに着くなり、これから自宅に着くまでに起こりうるトラブルについて頭をめぐらすと、うなだれてしまうのです。だって、運がよかったとしても、せいぜい調子よく迎え入れてくるのが関の山で、最悪の場合は露骨に不親切で不愉快な送迎サービスに。これから身を委ねることになるからです。

私のセミナーに参加する日本人駐在員の方々も、やはり英国生活の中で最も大変と感じることの一つは「ひどいカスタマーサービス」であると言います。日本では常にレベルの高いサービスが提供されて当然という感があり、従業員は礼儀正しく丁重で、もし何か上手くいかなかったときには、間髪を入れずに心からのお詫びがなされます。それに多くの英国人は、たとえ日本を訪ねた事が無くても、英国のカスタマーサービスは貧しいと思っています。ばらつきのある質、店員が示す不快な態度、そして何かうまく行かなかったときの言い訳の数々など、言い出せばキリがありません。

一体どうしてでしょうか?日本人の駐在員の方々も、私自身も、思わず疑問に感じてしまうところです。多くの人が思ってしまうほど,英国のカスタマーサービスがとんでもなくひどいレベルにあるのに、どうして誰も改善しようとしないのでしょうか。

最近日本と英国の企業文化の違いについて、ある研究をしているのですが、そこで気づいたことがあります。このことは、日英ののカスタマーサービスの違いに関する疑問を解く鍵となるのではと思いました。例えば歴史的に「企業理念」の概念は、日本の場合はステークホルダー型である一方、英国企業はシェアホルダー型に基づいています。この発想の違いが、一般に日本人の持つ企業への帰属意識・団体意識をもたらしているのです。

時代遅れと言う人もいるかもしれませんが、社会的な力関係・地位の格差を受容するという儒教に根ざした年功序列式の昇進、そして年配者や高地位の人を敬うなどの伝統的な精神構造が、日本のカスタマーサービスに影響を与えているのです。英国のサービス業界では一般社員の低給料にひきかえ、トップともなると数百万ポンドはざら、ということがままあります。その一方、日本の企業では、地位の違いはあっても役員と若い社員の給与に驚く程の差はありません。

最後に、日本のサービス業界の企業では、「現場主義」という考えがあります。シニア・マネジャーの地位にいる方は、偉くなるには現場で働いて来たはずですし、必要とあらば店舗にいつでも出る気概を持っている必要があります。その考えの根底には、自分の手足で良いサービスを提供するという、「ものづくり」のようなある種の誇りがあるのです。これから数回に渡り、この紙面でこの領域の内容を検証していきたいと思います。日本の卓越したカスタマーサービスの秘密を解く鍵が解明されれば、今後、日本式カスタマー・サービスが日本の有益な輸出品となるかもしれませんしね。

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神経可塑性- 脳がイギリス式に再生されてしまった!

brainヨーロッパの人たちから私はよく、日本語を学ぶ価値って大きいのかな、と聞かれます。答えは勿論「はい」なのですが、でも余り期待しすぎないことが 大切ですよ、と付け加えます。日本以外の国で週1回のレッスンを受けても、流暢にはならないからです。でも、知的な刺激を受ける意味では、美しい言語であ る日本語を学べば、私達にとってより身近なギリシャ語やラテン語を源とする言語を学ぶのとは違った意味で、言語を通して文化を肌で感じる事が出来ると言え ます。
私は一番吸収力のある幼少期に日本に住む機会に恵まれ、日本語を習得することが出来たのですが、テイーンエエイジャーともなると、外国語習得はとても難し くなります。もうその頃には母国語回路が頭の中でしっかり形成されるからです。私の知人にも大人になって日本語を話せるようになった人達がいますが、これ は日本にしばらく暮らして、英語圏での生活を避けて、どっぷりと日本の環境に浸ったからなのです。

最近の研究によると、私達の脳の回路は、配線のし直しが出来るそうです。これは「神経可塑性」と呼ばれ、脳を損傷後、自然にもしくはリハビリを通して、回 復中の患者に見られるプロセスで、ケガで不能となった脳の神経回路が自ずと再生されるらしいのです。この再生作業は、日本語漬けの環境に浸ることで大人に なってから流暢な日本語を話すようになるのと同じ事なのです。

神経可塑性は、私達の文化的人格形成にも密接につながっています。以前は、人の文化価値は、幼少期に備わると考えられていました。私はトレーニングの際、 人種が何であれ、人は特定の価値観を持って生まれてくるのではなく、幼少期にそれぞれの文化的背景に応じた脳の形成がされるのだと説明します。事実、ある 科学者によれば、東洋人とヨーロッパ人を比べると、これらの国々の人の脳は同じ視覚的なものに対して異なる反応をするそうです。そして同じ単純な計算をさ せても、英語を母国語とする人と中国語を母国語とする人では、脳の違う部分を使うとも。

繰り返しになりますが、神経可塑性の機能を生かせば、人間の脳は幼少期をどこで育ったかに関わらず再生が可能なようです。ですので異文化圏での長期間の体 験が、その人の脳の学習・思考・決断、そして解決方法等に影響を与えることになります。それは私が前回の記事でお話した、英国人であれ日本人であれ海外に 長く住むと、ずっと幼少期を育った祖国にいざ戻った時に違和感を感じる、という現象に通じるのではないでしょうか。

ところで、英国に住む日本人の読者の皆さんで、こんな身近な経験をされたかたはいらっしゃいますか。並んだ列に割り込んでくる人に思わず舌打ちしてしま う。自分でなく、あちらからどんっとぶつかった人にうっかり謝ってしまった。そして、約束に遅れて、延々と難しい説明をしてしまう。それはきっと脳がイギ リス式に再生されてしまうほど、皆さんが長くイギリスに住まわれてしまったということですね!

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西洋化の先にあるグローバル化

私の顧客である日系企業の多くは、地球規模の戦略のもと、マーケティングや人事分野で海外支店の社員の積極的な参加を推し進めています。今の経済状態の中 でこのように将来的な動きを目にするのは素晴らしいことですが、同時に実際にこうしたプロジェクトに関わっているヨーロッパの社員の声に、あれと思うこと もあります。

通常、日系企業で意思決定についての話題になると、根回しを理解しようという方向に話が進みます。しかしながら、合意を基本とした意思決定は日系企業が得 意とするものではないという事を申し上げておきたいと思います。欧州の多くの国・企業文化では日本のような上意下達の指示系統よりも、何らかの合意に基づ くアプローチを好むところが多くあります。ところが地球規模の戦略において日本を交えるとなると、そのようなやり方に消極的な日本側が消極的な姿勢を示す 場合があるようです。

ある英国人のダイレクターが、日本人チームに新しい業務手順について何らかの提案をするよう指示した時のことです。その時のチームが当惑気味だったので、 彼はあくまでも参考のために自分のアイディアを書き出して見せてみたのですが、結局のところ、日本人チームから戻ってきた提案というのは、ダイレクターが 書き出した大まかなアイデアを単になぞっただけのものであったそうです。彼曰く、欧州人のチームに同じ様な提案を求める時であれば、当然よりよく練られた 答えを持ってくることが期待されます。彼らの方が現場をよく把握している訳だし、出来る事・出来ないことの見極めが出来るはずだからです。また、別の英国 人のマネジャーによると、日本人のマーケティングのスタッフと新しいブランド戦略について定期的な会義をしようと提案すると、それよりも、「何を広告に入 れるべきか、欧州チームが指示してくれれば、その通りにしますから。」という肩透かしを食らうような返答を受けたそうです。

なぜこういうことが起こるのかというと、真っ向から英語で議論したり摩擦を起こすことを避けたいという考えを日本人スタッフが持っているという可能性が挙 げられます。もう一つ私が感じるのは、そもそもがグローバル化を目的としていて、おまけにマーケティングとか戦略の専門用語が日本人には聞きなれない英語 の言葉であるので、日本人社員は自分の専門外の分野として、「西洋人のチームに任せしてしまおう」と思ってしまうのではないでしょうか。

ところがこの姿勢こそが、欧州のマネジャーは、この姿勢を問題視します。文化的に繊細な問題であることを充分わきまえた上で新しい構想を立てようという 中、今日のグローバルな動きは西洋だけでなく、中国やインド、その他多くのエリアを含んでいます。欧州のマネジャーが日本人同僚に求めるのは、アジア諸国 への理解が西洋よりも深い日本だからこそ、グローバル化へ積極的に働きかけることができるのではないかという事なのです。

ではどうしたら日本人社員が自信を持って議論できるようになるでしょうか。例えば、コーチング形式はどうでしょう。この方法は私がこれまで仕事をしてきた 多くの日本の方にしっくりくるようでした。コーチングは、公の場で相手に反対意見を述べる通常の議論でなく、聞き手が話し手に対して、今発言した内容の問 題点に自ら気づくような質問をしていく、というものです。それによって、直接的に聞き手が話し手に問題点を指摘せずにすみます。
一方で、日本人のマネジャーは日本流グローバル化のリーダーとしてもっと自信を持つべきだと思うのです。ひょっとしてひょっとしたらその日本的手法こそが、これまでの西洋的手法より成功するかも知れないのですから。

パニラ・ラドリン著 Nikkei Weekly 2009年10月26日号より

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世界最大の社会人向けSNS、LinkedIn

パナソニック、三菱地所レジデンス、楽天がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のLinkedInをヨーロッパほか日本国外での人材採用に活用するという話を、日経新聞で読みました。LinkedInは、世界最大の社会人向けSNSです。本社はカリフォルニア州にあり、世界中で2億7,000万人以上のユーザーを有しています。人材を見つけて引き付けるうえで効果的な方法であることは間違いありません。

私自身は10年以上前からこのサイトを使っていますが、仕事を見つけるためではなく、在ヨーロッパの日系企業に勤める社員の連絡先を見つけたり調べたりするのが目的です。ただし、日本人社員や日系企業は概してLinkedInをあまりアクティブに使用していません。日本語バージョンも開設されていて、東京にも2011年以来オフィスが置かれているにもかかわらずです。

その理由は主にLinkedInが中途採用や転職のために使われていて、それ自体が日本ではまだあまり主流ではないからだろうと思います。実際、ヨーロッパでも、自分のスキルや経験を公開して、いかにも「就活中」のように見えてしまうことを嫌う人はたくさんいます。私が見たところでは、イギリス人とオランダ人はあまり抵抗感がないようですが、プライバシーを気にする(そしておそらくは英語でのコミュニケーションがあまり得意でない)ドイツ人とフランス人はやや消極的です。

私の知り合いのドイツ人の多くは、ドイツのSNSのXingを使っています。とはいえ、ヨーロッパの人(さらにはトルコなどの新興市場にある多国籍企業に勤める人)はみんなLinkedInのことを知っていますので、転職を模索する際にはチェックするでしょう。

つまり、雇用主にしてみれば、スキルや経験に基づいて人材を探すだけでなく、魅力的な会社であると訴求するうえでも良いツールになるということです。

LinkedInに自社のページを開設しようとする日系企業は、まず第一に「公式」ページであることをはっきりとさせる必要があります(個人が運営しているOB・OGのページなどと区別するためです)。そして、社員が自分のLinkedInのプロフィールを会社の公式ページにリンクするよう奨励します。

ほとんどの場合、日系企業のページはすでに複数存在していることでしょう。これらを整理して、本社のページや各地にあるグループ会社のページなどをそれぞれ明確に示す必要があります。各地のグループ会社のページと本社のページを相互にリンクして、1つのグループであることを示すことができます。

これらの公式ページは、本社および各地の子会社のマーケティングまたは人事担当者が管理すべきです。会社の規模や事業内容などを含んだ紹介文を作成して、さらに自社のウェブサイトへのリンクも表示します。また、会社のイメージを反映した魅力的な視覚要素を使って「ブランド」を統一し、製品やサービスの説明、新着情報やニュースも追加して、使いやすく見せる必要があります。

会社のページが正しく運営されれば、「フォロー」する人が瞬く間に増え、新たな人材を引き付けるのに役立ちます。そればかりか、既存の社員も自分の会社がLinkedInで明確かつ魅力的なメッセージを訴求していることに共感して、今までよりもずっと満足度や忠誠度を高めてくれることでしょう。

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年4月9日号より

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”ごめんなさい”の心理・反省と言い訳の説明

つい最近、アメリカにあるコールセンターの責任者から聞いた話です。この女性責任者はスタッフに、お客様からクレームの電話を受けたら‘申し訳ありません’と謝ってはいけないと指示を出しているそうです。これを聞いて、咄嗟に私が思ったのは、アメリカでは謝罪=商品の不備・欠陥を認めることになり、もし何か問題になって裁判沙汰になった時に非を認めたとして取り上げられる可能性があるかも知れないという事。ところがよく聞いてみると、謝らない理由は、裁判のケースを念頭に置いての事だけでないとわかりました。そうではなくて、「アメリカのお客様は、 ‘すみません’の言葉を聞きたくてクレームするのでは無いのです。」とのこと。「お客様は謝られても、それは問題のすりかえでしかないと感じますよ。」そして続けて「電話を受けるオペレーターはそのような問題については直接責任を負う立場に無いのでから‘すみません’と言われてもピンと来ないんです。」私はおや、と思い「それではアメリカのお客様は一体全体何を望んでいるのですか」と質問をしました。その答えは「解決策です」と、彼女は結論づけました。つまり、オペレーターはクレーム自体をしっかりと受け止め、お客様が被った不便に対する理解を示すことだというのです。

このアメリカ人のコールセンターの責任者の話を、私はある日系企業で働く英国人へのトレーニングの場で紹介してみました。私の理解では、日本のビジネス社会でのクレーム対応の最善策はまず、‘すみません’から始ります(‘言い訳はしない’との意思表示)。そして今後いかにこのようなことを防げるかを明確にします(反省の意思表示)。明らかにアメリカの対応と対照的ではありませんか。そこで、私はクレームに対応する日本的なアプローチと英国のそれとを比較対照してみることにしました。英国でもまず‘すみません’と言われる事があるのですが、明らかに心がこもっていません。その上、何故このような問題がおきたか長くそして意味不明な説明へと続きます。正直この説明は日本人の耳には言い訳にしか聞こえてこないのです。身近な例で、本当に良く耳にする英国の鉄道のアナウンスを思い出してみてください。「お客様に電車が遅れていることをお詫び申し上げます。この原因はもう別方向から入ってくる列車の遅延によるものです。」…???

一方で英国では、クレーム先の社員がなかなか、‘すみません’と言わない状況に出くわします。この謝らないという理由の背景は冒頭にご紹介させていただいたアメリカ人の考え方と同じなのです。クレーム対応に出た社員は、この問題は自分の失敗や管理上の問題で起きた事では無いので、お詫びの必要はないと考えるのです。日本では社員は会社の代表という気持ちでクレーム対応をしますから、状況は全く違います。スタッフはまず、「お客様にご迷惑をおかけし、申し訳ありません。」と心からお詫びをします。勿論、問題が直接この社員によるものでなくても、社員は自分の働く会社の顔として、会社に代わりお客様にお詫びするのです。結果的に社員は、問題に対して真摯に対応し、それを自分の裁量で解決する仕事への責任そして誇りを持っているように思われます。

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高齢化する労働力への対応

昨年12月、1年半ぶりに日本へ行ってきました。通常は年に1度は日本へ行き、微妙な変化を観察するようにしています。日本に住んでいた期間を含め、過去40年にわってこのような観察を続けてきました。
 
今回は、日本が少し「元気さ」を取り戻しているように感じられました。2011年と2012年に訪れた時は、全体として陰うつなムードが漂っているように見えたものです。しかし同時に、東京が「スロー」になったようにも感じられました。高齢者の割合が高まっているのは見た目にも明らかでしたが、若者も歩き方が遅くなっていました。スマートフォンを見ながら歩いていることも一因だったかもしれません。
 
日本の「やさしさ」や文化的な豊かさは、年を取る場所として理想的な国を作り上げています。もちろん、今の高齢者が幸運な時代の高齢者であることは事実です。年金をそこそこもらえて、健康でもあり、長生きを楽しめるからです。
 
一方、私の世代は、日本だけでなくヨーロッパの多くの国でも、70歳まで引退できないのではないかという見通しに直面しています。少なくともあと20年は働くことになるのです。今やヨーロッパでは、年齢を理由に従業員を差別することは違法です。このため、65歳で自動的に定年退職になるという制度は、イギリスでは廃止されつつあります。
 
現在50代に差しかかりつつあるヨーロッパの世代は、前の世代のように引退する余裕を持てないでしょう。でも、会社に勤め続ければ、若い世代の行く手を阻んでいるような罪悪感を感じさせられるうえ、リストラの対象になる可能性も多々あります。50歳を過ぎた社員にとって、転職先を見つけるのは容易ではありません。それに、意欲の問題もあります。これから先20年にわたって同じ仕事をし続けるという展望は、特にプレッシャーのきつい、いわゆる現場タイプの職種では魅力的とは言えません。仕事人としての人生の後半は、習得したノウハウや知識について熟考し、次の世代に引き継いでいくことが中心になるべきです。
 
日本で1990年代から使われてきたやり方、例えば肩たたきや窓際族などの処遇が、この状況に真に対応できていたとは思えません。こうした処遇は、受ける本人にとって苛酷なだけでなく、その反応としてリスクを嫌うようになった若い世代にとっても、好ましいやり方ではありません。若い世代は終身雇用を望んでいますが、野心的な目標を追求したり、外国で働くなどのリスクを取ったりすることには、あまり意義を感じていません。
 
むしろ好ましいやり方は、仕事人生の後半に突入した従業員が、蓄積したノウハウやスキルを集大成としてまとめあげ、管理職としてではなく教育や研修の機会を通じて日本の若い世代に伝えていく方法を見つけられるよう、サポートすることではないでしょうか。海外で買収した企業の現地採用社員や現地採用管理職も、日本の本社との強力なつながりを感じさせてくれるメンターを付けてもらい、会社の文化や業務手順の理解を導いてもらえるのであれば、歓迎するはずです。先輩・後輩の人間関係や見習い制度といった伝統を21世紀に応用することができれば、日本は、人にやさしく、かつ生産性の高い高齢化社会を創造するパイオニアになれると、私は考えています。
 

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より

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女性管理職が増えれば日本企業のグローバル化に役立つか

最近、非営利団体J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベーティブ・ネットワーク)の一行がイギリスを訪れた際の夕食会に招かれて参加してきました。イギリスに1週間滞在して、ブリティッシュ・テレコムや保険大手のエーオンなど様々なイギリス企業を訪問し、グローバル・リーダーシップと多様性を学ぶのが目的のツアーでしたが、一行のうち多くの日本人女性(70人)が会社から支援されて来ていたことには感心しました。この夕食会で、女性管理職が増えれば日本企業のグローバル化に役立つかどうかという質問が上がりましたが、時間不足で十分な議論が交わせませんでした。

この質問に対する私の見解は、「イエス」です。女性管理職(日本人)が増えれば、日本企業のグローバル化に役立ちます。その理由は2つあります。第一に、本社の管理職ポストに女性が増えれば、日本企業や日本の企業文化が西側の企業から「異質」と見られることが少なくなります。そして第二に、より多様性のある日本人の労働力を取り込むために日本企業が実践しなければならない調整によって、「非日本人」の多様なグループもより包含されるようになるためです。調整が必要な部分として私が提案するのは、残業に対する姿勢と自宅勤務です。

ヨーロッパのほとんどの企業は、10年前と比べてもはるかに柔軟な働き方を受け入れるようになっていて、そうした新しい働き方は男性にも活用されています。私の知り合いのイギリス人男性のある管理職は、最低週3日の自宅勤務をして子供の学校の送り迎えをしています。グローバルな職種のシニアレベルの管理職の多くは、電話、ウェブ会議、メールなどを使って世界各地のチームを管理していますが、このように時間や場所を問わない仕事のあり方も、このトレンドに一役買っています。

多くの日本企業が管理職に占める女性の割合の目標値を発表していますが、ノルウェーなどヨーロッパの一部の国では、これをさらに進めて、上場企業に対して一定人数の女性取締役を義務付ける規制を導入しています。ただし、この種のノルマに対しては、多くの企業が抵抗感を示しています。実力ではなく性別のみを理由として女性が昇進していると見られるようになれば、女性をさらに孤立させるだけだという恐れがあるためです。

そこで多くのヨーロッパ企業は、女性管理職の割合を義務付ける代わりにメンター制度を導入して、男性と女性の間の人脈作りや女性の昇進を奨励しています。これは、日本企業にとってもメリットのあるアプローチだと思います。既存の「先輩・後輩」の関係を活かしながら、女性だけでなく外国人の社員にも恩恵をもたらせるからです。西洋文化におけるメンタリングとは、メンティー(被育成者)のキャリア開発に特化する傾向があります。でも、私自身は、より広範にわたる先輩・後輩関係のほうが好ましいと思っています。インフォーマルな関係を通じて会社内でお互いの人脈にアクセスし、メンティーが「ファミリーの一員」になったように感じられるためです。

J-Winの女性2人とメンタリングについて話す機会がありましたが、外資系企業から参加していた1人は、アメリカ人男性にメンターになってもらうほうが、日本人男性にメンターになってもらうよりも、はるかに効果的だと感じていました。アメリカ人のメンターは、日本の女性の役割や行動について先入観がまったくないためだそうです。外国人の社員も、日本の企業文化を内側から説明してくれるメンターがいれば、同じように恩恵を受けられるのではないかと思います。

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より

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ホンダがイギリスで人員削減、欧州従業員数でトヨタ、日産との差が拡大

honda_swindon本田技研工業のイギリス子会社が2014年3月25日、イギリス・スウィンドンにある2つの自動車製造工場のうち1つを閉鎖し、340人の人員削減を行うと発表しました。欧州市場での販売実績が予想を下回るペースとなっていることを受けた決定です。ホンダは昨年にも500人以上の人員削減を断行しており、欧州での従業員数はトヨタや日産よりもさらに少なくなる見通しです。

欧州の日系企業トップ30社のランキングにおけるホンダの地位は変わっていません(先のブログ記事に掲載した表は、以下のように改訂されています)。が、今回の人員削減の結果、武田薬品工業に14位の座を明け渡す可能性があります。

売上高で日本国内首位の製薬会社となっている武田は、2011年、スイスのナイコメッドを買収したことで、このランキングに初めて食い込みました。他のランキング初登場企業には、三菱化学、三菱レイヨン、田辺三菱製薬、三菱樹脂などを傘下に含む三菱ケミカルホールディングスがあります(ルーサイトの方からご指摘いただきました)。

ソニーが欧州および全世界で過去1年にわたって進めてきたリストラは、このランキングにも表れました。ソニーの順位は、これまでの4位から5位へと後退しています。
また、富士通の元同僚のリクエストを受けて、この統計に情報を追加しました。全従業員数に占める日本国内の従業員割合の見積もりです。これはなかなか興味深い情報です。これにより、その企業がどれだけグローバルか、また欧州の従業員数が相対的にどれだけ多いか少ないかを見て取れるようになるためです。

この情報は以前から部分的に収集してきましたが、今回改訂するにあたって見積もりが難しい企業もありました。その理由は、日本で持株会社が増えていることです。
例えば、富士フイルムホールディングスには、富士フイルム、富士ゼロックスのほか約60社の企業が含まれています。これは、富士フイルムがカメラのフィルム製造業から大きく多角化してきたことに伴います。日本国内の従業員は1万8,500人と見積もりましたが、この数値は富士フイルムと富士ゼロックスの日本国内の従業員数の合計です。ですから、「少なくとも」という最低人数の見積もりととらえていただかなければなりません。

というわけで、さらなるご指摘を受けて改訂したランキングは以下のとおりです。皆さまからの情報提供にお礼を申し上げます。今後もどしどし情報をお寄せください!

top30 employers 2.2

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日立が鉄道システム事業本社をイギリスに移転、欧州日系企業のランキングでトップ10へ

グローバル化に必要な抜本的改革を実行するには、本社を日本国外へ移転するしかない――。昨年12月の日本出張中、面会した日本企業の担当者からこのような意見を何度も伺いました(これについては、以前のブログでも紹介しました)。もちろん、リスク嫌いの日本企業にとって、そのようなことを一気に成し遂げるのはあまりにも過激です。とはいえ、過去数年の間に多くの企業が、一部の事業部門や業務機能の本社組織を海外、例えばシンガポールなどへ移転してきました。

ですから、日立が鉄道システム事業の本社をイギリスへ移転すると決めたことは、決して前代未聞というわけではありません。とはいえ、「多国間」モデルが多国籍企業にとっての未来だと考える私たちにとっては、なおもエキサイティングなニュースでした。日立はイギリスでここ数年以内にザ・レイルウェイ・エンジニアリング・カンパニー(およびホライズン・ニュークリア・パワー)を買収しており、この結果、欧州におけるグループ企業の従業員数は約1万1,500人に達しています。

欧州の日系企業の従業員数ランキングでは20位に入っていて、鉄道事業で予想される1,500人の追加雇用が本当に実現するのであれば、トップ10へと躍進します。

従業員数に基づく欧州の日系企業トップ30社のランキングは、現在以下のとおりです(私の見積もりで、多くの欠点があることは自認しています)。ここに列挙されている企業の多くは、大規模な買収を通じてこの規模に達しました(富士通、リコー、旭硝子、日本板硝子など)。これら30社の従業員数合計は約25万人です(ただし、これにはアフリカおよび中近東の従業員も含まれています)。JETROが見積もっている欧州の日系企業の従業員数は43万7,000人ですので、上位30社がかなりの部分を占めていることになります。(このランキングは後に改定されました。改訂版はこちらのブログをご覧ください。)

Japanese top 30 in Europe 1.1

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