世界最大の社会人向けSNS、LinkedIn

パナソニック、三菱地所レジデンス、楽天がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のLinkedInをヨーロッパほか日本国外での人材採用に活用するという話を、日経新聞で読みました。LinkedInは、世界最大の社会人向けSNSです。本社はカリフォルニア州にあり、世界中で2億7,000万人以上のユーザーを有しています。人材を見つけて引き付けるうえで効果的な方法であることは間違いありません。

私自身は10年以上前からこのサイトを使っていますが、仕事を見つけるためではなく、在ヨーロッパの日系企業に勤める社員の連絡先を見つけたり調べたりするのが目的です。ただし、日本人社員や日系企業は概してLinkedInをあまりアクティブに使用していません。日本語バージョンも開設されていて、東京にも2011年以来オフィスが置かれているにもかかわらずです。

その理由は主にLinkedInが中途採用や転職のために使われていて、それ自体が日本ではまだあまり主流ではないからだろうと思います。実際、ヨーロッパでも、自分のスキルや経験を公開して、いかにも「就活中」のように見えてしまうことを嫌う人はたくさんいます。私が見たところでは、イギリス人とオランダ人はあまり抵抗感がないようですが、プライバシーを気にする(そしておそらくは英語でのコミュニケーションがあまり得意でない)ドイツ人とフランス人はやや消極的です。

私の知り合いのドイツ人の多くは、ドイツのSNSのXingを使っています。とはいえ、ヨーロッパの人(さらにはトルコなどの新興市場にある多国籍企業に勤める人)はみんなLinkedInのことを知っていますので、転職を模索する際にはチェックするでしょう。

つまり、雇用主にしてみれば、スキルや経験に基づいて人材を探すだけでなく、魅力的な会社であると訴求するうえでも良いツールになるということです。

LinkedInに自社のページを開設しようとする日系企業は、まず第一に「公式」ページであることをはっきりとさせる必要があります(個人が運営しているOB・OGのページなどと区別するためです)。そして、社員が自分のLinkedInのプロフィールを会社の公式ページにリンクするよう奨励します。

ほとんどの場合、日系企業のページはすでに複数存在していることでしょう。これらを整理して、本社のページや各地にあるグループ会社のページなどをそれぞれ明確に示す必要があります。各地のグループ会社のページと本社のページを相互にリンクして、1つのグループであることを示すことができます。

これらの公式ページは、本社および各地の子会社のマーケティングまたは人事担当者が管理すべきです。会社の規模や事業内容などを含んだ紹介文を作成して、さらに自社のウェブサイトへのリンクも表示します。また、会社のイメージを反映した魅力的な視覚要素を使って「ブランド」を統一し、製品やサービスの説明、新着情報やニュースも追加して、使いやすく見せる必要があります。

会社のページが正しく運営されれば、「フォロー」する人が瞬く間に増え、新たな人材を引き付けるのに役立ちます。そればかりか、既存の社員も自分の会社がLinkedInで明確かつ魅力的なメッセージを訴求していることに共感して、今までよりもずっと満足度や忠誠度を高めてくれることでしょう。

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年4月9日号より

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”ごめんなさい”の心理・反省と言い訳の説明

つい最近、アメリカにあるコールセンターの責任者から聞いた話です。この女性責任者はスタッフに、お客様からクレームの電話を受けたら‘申し訳ありません’と謝ってはいけないと指示を出しているそうです。これを聞いて、咄嗟に私が思ったのは、アメリカでは謝罪=商品の不備・欠陥を認めることになり、もし何か問題になって裁判沙汰になった時に非を認めたとして取り上げられる可能性があるかも知れないという事。ところがよく聞いてみると、謝らない理由は、裁判のケースを念頭に置いての事だけでないとわかりました。そうではなくて、「アメリカのお客様は、 ‘すみません’の言葉を聞きたくてクレームするのでは無いのです。」とのこと。「お客様は謝られても、それは問題のすりかえでしかないと感じますよ。」そして続けて「電話を受けるオペレーターはそのような問題については直接責任を負う立場に無いのでから‘すみません’と言われてもピンと来ないんです。」私はおや、と思い「それではアメリカのお客様は一体全体何を望んでいるのですか」と質問をしました。その答えは「解決策です」と、彼女は結論づけました。つまり、オペレーターはクレーム自体をしっかりと受け止め、お客様が被った不便に対する理解を示すことだというのです。

このアメリカ人のコールセンターの責任者の話を、私はある日系企業で働く英国人へのトレーニングの場で紹介してみました。私の理解では、日本のビジネス社会でのクレーム対応の最善策はまず、‘すみません’から始ります(‘言い訳はしない’との意思表示)。そして今後いかにこのようなことを防げるかを明確にします(反省の意思表示)。明らかにアメリカの対応と対照的ではありませんか。そこで、私はクレームに対応する日本的なアプローチと英国のそれとを比較対照してみることにしました。英国でもまず‘すみません’と言われる事があるのですが、明らかに心がこもっていません。その上、何故このような問題がおきたか長くそして意味不明な説明へと続きます。正直この説明は日本人の耳には言い訳にしか聞こえてこないのです。身近な例で、本当に良く耳にする英国の鉄道のアナウンスを思い出してみてください。「お客様に電車が遅れていることをお詫び申し上げます。この原因はもう別方向から入ってくる列車の遅延によるものです。」…???

一方で英国では、クレーム先の社員がなかなか、‘すみません’と言わない状況に出くわします。この謝らないという理由の背景は冒頭にご紹介させていただいたアメリカ人の考え方と同じなのです。クレーム対応に出た社員は、この問題は自分の失敗や管理上の問題で起きた事では無いので、お詫びの必要はないと考えるのです。日本では社員は会社の代表という気持ちでクレーム対応をしますから、状況は全く違います。スタッフはまず、「お客様にご迷惑をおかけし、申し訳ありません。」と心からお詫びをします。勿論、問題が直接この社員によるものでなくても、社員は自分の働く会社の顔として、会社に代わりお客様にお詫びするのです。結果的に社員は、問題に対して真摯に対応し、それを自分の裁量で解決する仕事への責任そして誇りを持っているように思われます。

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高齢化する労働力への対応

昨年12月、1年半ぶりに日本へ行ってきました。通常は年に1度は日本へ行き、微妙な変化を観察するようにしています。日本に住んでいた期間を含め、過去40年にわってこのような観察を続けてきました。
 
今回は、日本が少し「元気さ」を取り戻しているように感じられました。2011年と2012年に訪れた時は、全体として陰うつなムードが漂っているように見えたものです。しかし同時に、東京が「スロー」になったようにも感じられました。高齢者の割合が高まっているのは見た目にも明らかでしたが、若者も歩き方が遅くなっていました。スマートフォンを見ながら歩いていることも一因だったかもしれません。
 
日本の「やさしさ」や文化的な豊かさは、年を取る場所として理想的な国を作り上げています。もちろん、今の高齢者が幸運な時代の高齢者であることは事実です。年金をそこそこもらえて、健康でもあり、長生きを楽しめるからです。
 
一方、私の世代は、日本だけでなくヨーロッパの多くの国でも、70歳まで引退できないのではないかという見通しに直面しています。少なくともあと20年は働くことになるのです。今やヨーロッパでは、年齢を理由に従業員を差別することは違法です。このため、65歳で自動的に定年退職になるという制度は、イギリスでは廃止されつつあります。
 
現在50代に差しかかりつつあるヨーロッパの世代は、前の世代のように引退する余裕を持てないでしょう。でも、会社に勤め続ければ、若い世代の行く手を阻んでいるような罪悪感を感じさせられるうえ、リストラの対象になる可能性も多々あります。50歳を過ぎた社員にとって、転職先を見つけるのは容易ではありません。それに、意欲の問題もあります。これから先20年にわたって同じ仕事をし続けるという展望は、特にプレッシャーのきつい、いわゆる現場タイプの職種では魅力的とは言えません。仕事人としての人生の後半は、習得したノウハウや知識について熟考し、次の世代に引き継いでいくことが中心になるべきです。
 
日本で1990年代から使われてきたやり方、例えば肩たたきや窓際族などの処遇が、この状況に真に対応できていたとは思えません。こうした処遇は、受ける本人にとって苛酷なだけでなく、その反応としてリスクを嫌うようになった若い世代にとっても、好ましいやり方ではありません。若い世代は終身雇用を望んでいますが、野心的な目標を追求したり、外国で働くなどのリスクを取ったりすることには、あまり意義を感じていません。
 
むしろ好ましいやり方は、仕事人生の後半に突入した従業員が、蓄積したノウハウやスキルを集大成としてまとめあげ、管理職としてではなく教育や研修の機会を通じて日本の若い世代に伝えていく方法を見つけられるよう、サポートすることではないでしょうか。海外で買収した企業の現地採用社員や現地採用管理職も、日本の本社との強力なつながりを感じさせてくれるメンターを付けてもらい、会社の文化や業務手順の理解を導いてもらえるのであれば、歓迎するはずです。先輩・後輩の人間関係や見習い制度といった伝統を21世紀に応用することができれば、日本は、人にやさしく、かつ生産性の高い高齢化社会を創造するパイオニアになれると、私は考えています。
 

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より

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女性管理職が増えれば日本企業のグローバル化に役立つか

最近、非営利団体J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベーティブ・ネットワーク)の一行がイギリスを訪れた際の夕食会に招かれて参加してきました。イギリスに1週間滞在して、ブリティッシュ・テレコムや保険大手のエーオンなど様々なイギリス企業を訪問し、グローバル・リーダーシップと多様性を学ぶのが目的のツアーでしたが、一行のうち多くの日本人女性(70人)が会社から支援されて来ていたことには感心しました。この夕食会で、女性管理職が増えれば日本企業のグローバル化に役立つかどうかという質問が上がりましたが、時間不足で十分な議論が交わせませんでした。

この質問に対する私の見解は、「イエス」です。女性管理職(日本人)が増えれば、日本企業のグローバル化に役立ちます。その理由は2つあります。第一に、本社の管理職ポストに女性が増えれば、日本企業や日本の企業文化が西側の企業から「異質」と見られることが少なくなります。そして第二に、より多様性のある日本人の労働力を取り込むために日本企業が実践しなければならない調整によって、「非日本人」の多様なグループもより包含されるようになるためです。調整が必要な部分として私が提案するのは、残業に対する姿勢と自宅勤務です。

ヨーロッパのほとんどの企業は、10年前と比べてもはるかに柔軟な働き方を受け入れるようになっていて、そうした新しい働き方は男性にも活用されています。私の知り合いのイギリス人男性のある管理職は、最低週3日の自宅勤務をして子供の学校の送り迎えをしています。グローバルな職種のシニアレベルの管理職の多くは、電話、ウェブ会議、メールなどを使って世界各地のチームを管理していますが、このように時間や場所を問わない仕事のあり方も、このトレンドに一役買っています。

多くの日本企業が管理職に占める女性の割合の目標値を発表していますが、ノルウェーなどヨーロッパの一部の国では、これをさらに進めて、上場企業に対して一定人数の女性取締役を義務付ける規制を導入しています。ただし、この種のノルマに対しては、多くの企業が抵抗感を示しています。実力ではなく性別のみを理由として女性が昇進していると見られるようになれば、女性をさらに孤立させるだけだという恐れがあるためです。

そこで多くのヨーロッパ企業は、女性管理職の割合を義務付ける代わりにメンター制度を導入して、男性と女性の間の人脈作りや女性の昇進を奨励しています。これは、日本企業にとってもメリットのあるアプローチだと思います。既存の「先輩・後輩」の関係を活かしながら、女性だけでなく外国人の社員にも恩恵をもたらせるからです。西洋文化におけるメンタリングとは、メンティー(被育成者)のキャリア開発に特化する傾向があります。でも、私自身は、より広範にわたる先輩・後輩関係のほうが好ましいと思っています。インフォーマルな関係を通じて会社内でお互いの人脈にアクセスし、メンティーが「ファミリーの一員」になったように感じられるためです。

J-Winの女性2人とメンタリングについて話す機会がありましたが、外資系企業から参加していた1人は、アメリカ人男性にメンターになってもらうほうが、日本人男性にメンターになってもらうよりも、はるかに効果的だと感じていました。アメリカ人のメンターは、日本の女性の役割や行動について先入観がまったくないためだそうです。外国人の社員も、日本の企業文化を内側から説明してくれるメンターがいれば、同じように恩恵を受けられるのではないかと思います。

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より

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ホンダがイギリスで人員削減、欧州従業員数でトヨタ、日産との差が拡大

honda_swindon本田技研工業のイギリス子会社が2014年3月25日、イギリス・スウィンドンにある2つの自動車製造工場のうち1つを閉鎖し、340人の人員削減を行うと発表しました。欧州市場での販売実績が予想を下回るペースとなっていることを受けた決定です。ホンダは昨年にも500人以上の人員削減を断行しており、欧州での従業員数はトヨタや日産よりもさらに少なくなる見通しです。

欧州の日系企業トップ30社のランキングにおけるホンダの地位は変わっていません(先のブログ記事に掲載した表は、以下のように改訂されています)。が、今回の人員削減の結果、武田薬品工業に14位の座を明け渡す可能性があります。

売上高で日本国内首位の製薬会社となっている武田は、2011年、スイスのナイコメッドを買収したことで、このランキングに初めて食い込みました。他のランキング初登場企業には、三菱化学、三菱レイヨン、田辺三菱製薬、三菱樹脂などを傘下に含む三菱ケミカルホールディングスがあります(ルーサイトの方からご指摘いただきました)。

ソニーが欧州および全世界で過去1年にわたって進めてきたリストラは、このランキングにも表れました。ソニーの順位は、これまでの4位から5位へと後退しています。
また、富士通の元同僚のリクエストを受けて、この統計に情報を追加しました。全従業員数に占める日本国内の従業員割合の見積もりです。これはなかなか興味深い情報です。これにより、その企業がどれだけグローバルか、また欧州の従業員数が相対的にどれだけ多いか少ないかを見て取れるようになるためです。

この情報は以前から部分的に収集してきましたが、今回改訂するにあたって見積もりが難しい企業もありました。その理由は、日本で持株会社が増えていることです。
例えば、富士フイルムホールディングスには、富士フイルム、富士ゼロックスのほか約60社の企業が含まれています。これは、富士フイルムがカメラのフィルム製造業から大きく多角化してきたことに伴います。日本国内の従業員は1万8,500人と見積もりましたが、この数値は富士フイルムと富士ゼロックスの日本国内の従業員数の合計です。ですから、「少なくとも」という最低人数の見積もりととらえていただかなければなりません。

というわけで、さらなるご指摘を受けて改訂したランキングは以下のとおりです。皆さまからの情報提供にお礼を申し上げます。今後もどしどし情報をお寄せください!

top30 employers 2.2

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日立が鉄道システム事業本社をイギリスに移転、欧州日系企業のランキングでトップ10へ

グローバル化に必要な抜本的改革を実行するには、本社を日本国外へ移転するしかない――。昨年12月の日本出張中、面会した日本企業の担当者からこのような意見を何度も伺いました(これについては、以前のブログでも紹介しました)。もちろん、リスク嫌いの日本企業にとって、そのようなことを一気に成し遂げるのはあまりにも過激です。とはいえ、過去数年の間に多くの企業が、一部の事業部門や業務機能の本社組織を海外、例えばシンガポールなどへ移転してきました。

ですから、日立が鉄道システム事業の本社をイギリスへ移転すると決めたことは、決して前代未聞というわけではありません。とはいえ、「多国間」モデルが多国籍企業にとっての未来だと考える私たちにとっては、なおもエキサイティングなニュースでした。日立はイギリスでここ数年以内にザ・レイルウェイ・エンジニアリング・カンパニー(およびホライズン・ニュークリア・パワー)を買収しており、この結果、欧州におけるグループ企業の従業員数は約1万1,500人に達しています。

欧州の日系企業の従業員数ランキングでは20位に入っていて、鉄道事業で予想される1,500人の追加雇用が本当に実現するのであれば、トップ10へと躍進します。

従業員数に基づく欧州の日系企業トップ30社のランキングは、現在以下のとおりです(私の見積もりで、多くの欠点があることは自認しています)。ここに列挙されている企業の多くは、大規模な買収を通じてこの規模に達しました(富士通、リコー、旭硝子、日本板硝子など)。これら30社の従業員数合計は約25万人です(ただし、これにはアフリカおよび中近東の従業員も含まれています)。JETROが見積もっている欧州の日系企業の従業員数は43万7,000人ですので、上位30社がかなりの部分を占めていることになります。(このランキングは後に改定されました。改訂版はこちらのブログをご覧ください。)

Japanese top 30 in Europe 1.1

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マーガレット・サッチャーが遺したもの

マーガレット・サッチャーの死がイギリス人の間でなぜあんなにも強烈な憤怒と称賛の感情を巻き起こしたかは、日本の人には理解しにくいかもしれません。首相の地位を退いてからもう23年になるというのにです。

私の世代(1960年代生まれ)は彼女の政権下で育ったため、「サッチャーズ・チルドレン」と呼ばれることがあります。1971年、当時教育相だったサッチャー氏が、711歳の児童に無償で支給されていた学校の牛乳を廃止したことを、私の世代はよく覚えています。私も含めて多くの子供が、学校の牛乳は大嫌いでした。毎日午前中の休み時間に支給されていたのですが、飲む頃までには生温かくなっていて、匂いがしたからです。

私は7歳までには日本に引っ越していましたが、牛乳から逃れられたわけではありませんでした。日本の学校でも牛乳が出たからです。しかも、日本の牛乳は低温殺菌牛乳ではなくホモ牛乳だったため、私にはなおさら嫌な味でした。

当時、日本のような異国へ引っ越すなんてとんでもないと言う人はたくさんいました。でも、1972年のイギリスも、決して住み心地の良い場所とは思えませんでした。炭鉱労働者や港湾労働者のストが相次ぎ、非常事態宣言も発せられていたからです。賃金と物価の凍結が発表され、失業者数は1930年代以来初めて100万人を上回っていました。

日本にも、経済問題はありました。オイルショック時のトイレットペーパーの買い付け騒動は、今も記憶に鮮明です。でも、この危機が日本の自動車製造の技術革新を促したことは、今では周知の事実です。私たちが日本へ発つ直前に、ホンダがイギリスへの輸出を開始していました。そして1977年にイギリスに帰ってきた我が家が買った車は、「ダットサン・サニー120Y」でした。

私の祖父母は、論外だと思ったようです。祖父母は戦争のことを強烈に覚えていて、私たちが日本に引っ越すことにも反対でした。なぜイギリス製の車を買わないかが理解できなかったのです。彼らが乗っていた「トライアンフ・ドロマイト」のメーカー、ブリティッシュ・レイランドは、相次ぐストで打撃を受けていました。

サッチャー氏は大変な愛国主義者でしたが、一方で、勤勉を重んじる自分の価値観を共有する外国投資家に対しては、大きく門戸を開放しました。私たちの世代は、炭鉱の町を破壊し、教育予算を削減し、戦争を挑発したサッチャー氏の批判に明け暮れましたが、その間にも彼女の政権は、日産の初の工場開設を奨励しました。この工場が造られたサンダーランドは、炭鉱と造船所が閉鎖された後、絶望的なまでに新規雇用を必要としていました。

それから30年、今では車を大量生産するイギリス資本企業はなくなりましたが、それでもイギリスでは昨年150万台近い車が生産されて1970年の200万台の記録に近付きつつあり、その86%は輸出されています。ただし、自動車業界の直接雇用はわずか195,000件しかなく、1970年の85万件を大きく下回っています。イングランド北部は今も失業率が高く、不況地帯です。これこそが、サッチャー氏の遺産に対する感情の深さを説明しています。彼女の政策は、ビジネスの観点からは正しい政策でしたが、人的コストの問題を未解決のまま置き去りにしたのです。

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より
パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年5月14日号より

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より
パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より
パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より

 

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日本の文化とトルコの文化は似てる?

日 本研究協会の毎年恒例の会議が今年はイjaponlardan-turkiyeye-aglatan-jestlerスタンブールで開かれるというのを口実に、この7月、初めてトルコを訪れてきました。トルコ訪問は、前々から実現し たいと思っていたことのひとつでした。イスタンブールは文字どおり西と東が交わる場所であり、ヨーロッパとアジアの境目に位置しているという地理的な魅力 もさることながら、私がコンサルティングを提供している日本企業の多くが、最近トルコに事業を拡大しつつあったためです。日本とトルコの二国間貿易は、 2012年に前年比25%増となり過去最高の46億ドルに達しました。2013年時点でトルコに事業所を開いている日本企業は120社に上っています。会議開幕の前日には、トヨタがトルコ工場で新型カローラの生産を開始しました。その晩、私は、ビジネススクール時代の同級生で、今はトルコのプライベート エクイティ会社の社長として成功しているトルコ人の友人と夕食を共にしました。この友人は、トヨタの事業展開のこともよく知っていて、また日本の企業連合 がトルコに原子力発電所を建設すると発表したことに対し、いささかの懸念を抱いていました。

日本企業が、トルコのみならずヨーロッパの他の場所でこの種のインフラ開発プロジェクトを積極化させるのであれば、提携パートナーや地元政府との良好な関 係が不可欠です。私が最近ロンドンで目にしたかぎりでは、駐英トルコ大使と日本のビジネス界の人々の関係は今のところ友好的なように見えました。ただし、 2020年のオリンピック招致をめぐってライバル意識はあったかもしれません。

日本人との仕事経験があるトルコ人数人に話を聞いてみましたが、日本人とトルコ人は上手にコミュニケーションが取れているとのことでした。問題がないということは、私のビジネスにとっては商機があまりがないことを意味するのかもしれませんが、何はともあれ朗報です。

トルコ語と日本語には似た部分があり、同系性を論じる説もあります。どちらも「WYSIWYG(What You See Is What You Get)」の言語、つまり書かれた文字のとおりに読むことができる言語で、各音節が明確に発音されます。英語のように、単語のスペルに発音しない文字が含 まれていたり、スペルを見ただけでは正しい発音が分からなかったりすることがありません。トルコ語は、文法的にも日本語に似ています。動詞が文末に来るこ と、かなりの度合いで曖昧さが許されること、そして主語を省略したりぼやかしたりすることなどです。

また、トルコの人々は、教室で行われるフォーマルな研修よりも、「見習い」式の学習方法に馴染みがあり、日本人の言う「身につける」学習スタイルに似てい ることも分かりました。これらの特徴は、製造業の環境ではポジティブな要因として作用するでしょう。けれども、対等な立場の二者間で経営にかかわるコミュ ニケーションが必要になる状況、例えばインフラ開発プロジェクトの提携パートナー間などの状況では、コミュニケーション・スタイルや意思決定スタイルの違 いがより明らかになる可能性があるのではないかと思えるのです。ということは、トルコにも、やはり私のビジネスの商機があるかもしれません!

パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2013年8月14日号より

ジャ パン・インターカルチュラル・コンサルティングはトルコで日本人・トルコ人と効果的に働く方法のセミナーを提供できます。在トルコのパートナーはトヨタ生産方式の専門家でもあります。お問い合わせはパニラ・ラドリン  (pernilledotrudlinatjapaninterculturaldotcom)  へどうぞ。

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ブランド名が知られていても、ヨーロッパで日系企業のことはよく知られていないケース

イギリスの「ミツビシ・コーポレーション」で求人があるという話を聞いた時、私は最初、自動車メーカーだと勘違いしました。日本で育って日本の大学に1年通ったのですから、ミツビシ・コーポレーションは三菱商事であって、ミツビシ・モーターズが三菱自動車であることぐらい、知っているべきだったにもかかわらずです。

ロンドンの三菱商事に就職して2年ほど、イギリス製の陶器や靴の日本への輸出に携わった後、私は東京の建材営業チームに転勤になりました。日本で会社が用意してくれたアパートは、家具がいっさい付いていませんでした。日本ではごく当たり前のことです。そこで私は、デパートのマルイで必要なものを買うことにしました。マルイならクレジットカードを作れると聞いたためです。必要なベッドやソファ、冷蔵庫を買い揃えるほどの貯金は私にはありませんでした。

クレジットカードの申し込みカウンターに近付いていくと、店員さんの顔にパニックの表情が走りました。若い外国人の女性は、良い信用リスクとは思われていないためです。私は日本語が話せるから大丈夫だと説明しましたが、なおも彼は、申込書を記入するのに十分な読み書きができるかどうかを心配している様子でした。

ところが、会社の住所を見ようとして私が名刺を取り出すと、そこに印刷されていた3つの菱形のロゴを見るなり、店員さんの表情がパッと明るくなりました。「三菱商事にお勤めなんですね! 上司の方にお電話して、お勤めの状況を確認させていただいてもよろしいでしょうか」。その電話から戻ってきた店員さんは、満面の笑みを浮かべて、テレビ2台と高級な冷蔵庫を売り込もうとしました。

三菱に勤めている間に、もう一度、三菱の名前が魔法を働いたことがありました。ある時、私は、うかつにもパスポートを持たずにロンドンからフランクフルトへ行ってしまったのです。ドイツの国境警察は、決して温かくは迎えてくれませんでした。免許証やクレジットカードなど、身分証明書になりそうな物をいっさい持っていなかったのですから、当然と言えば当然です。でも私は、会社のセキュリティパスを持っていることを思い出しました。

またしても、その場のムードはガラリと変わりました。警察官の一人が冗談すら言うほどでした。「ショウグンをくれたら、通してあげますよ」。当時、三菱のSUV「パジェロ」はヨーロッパで「ショウグン」と呼ばれていました。

三菱自動車と三菱商事は別の会社だなどと説明している場合でないことは明らかでした。わずか数年前に私自身が勘違いして面接に行ってしまったほどなのですから、無理もありません。今考えてみると、三菱のブランドが何を意味するかをよく知らないドイツの警察官にすら、たちまち信頼感を呼び起こしたこの一件は、きわめて興味深い経験でした。

これは20年前の出来事ですが、今でも日本企業がヨーロッパで人材採用する際に、この矛盾が存在していることは否定できないのではないでしょうか。日本企業は一般に好意的に受け止められていますが、何をしている会社かはよく知られておらず、それゆえに、日本企業の社員になることがキャリアの選択として良いことかどうかについて、疑念を抱く人がたくさんいます。

最近になって、ヨーロッパで事業展開している大手日本企業が単に製品の広告ではなく全般的なコーポレート・コミュニケーションに力を入れるようになっているのは、決して驚きではありません。優秀な人材を引き付けるための努力と考えることができます。

パニラ・ラドリン著 The Nikkei Weekly 2013年6月10日号より

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日本で会社のノートパソコンを紛失するとどうなるか

会社から支給されたノートパソコンを紛失することは、日本では大問題です。私が知っているある会社では、事の深刻さ(どのようにして起こったか、どのよう なデータが保存されていたか)によって、減給から降格までの処罰が科されます。その社員の上司も、同様の処罰対象となる可能性があります。さらに、その社 員と上司は両方とも、人事部が全社員に配布する通達書で名指しされ、不面目をあからさまに指摘されるのです。

この会社のイギリス子会社のITサポートチームは、多少冗談交じりではありますが、このポリシーを承認しています。時おりの事故や過失は同情に値する一方 で、会社のノートパソコンを社員がいかにぞんざいに扱い、不潔な状態で使っているかを見ると唖然とさせられるというのです。ある社員は、居酒屋で会社の ノートパソコンを3回もなくしたそうです。

このイギリス事業部門では処罰は導入しておらず、強いて言えば社会人としてのプライドが傷付き、不便を味わうことぐらいです。ノートパソコンには厳重な暗 号化技術が使われていて、紛失が報告されれば、即座にイントラネットからブロックされます。金銭的損失という意味では、ほとんどのノートパソコンがどのみ ちバランスシートですぐに減価償却されています。

おそらく、日本で厳格なポリシーが採用される理由としては、セキュリティや金銭的損失の懸念よりも評判に傷が付くという恐怖心のほうが大きいのでしょう。 日本では、ノートパソコンをなくしても多くの場合は警察か会社に直接届け出があるからです。その過程で多くの人がその出来事について知ることになり、最悪 の場合はメディアや顧客の耳にも届きます。

日本では、有名企業の社員というのは家族の一員のようなものです。社員が公に不品行を働けば、一族全体が子供を正しくしつけなかったとして面目を失いま す。兄や姉(直属の上司)は、弟や妹をきちんと監視しなかったことでとがめられます。象徴的なおしおきは2、3週間のお小遣いをなしにされることですが、 真の懲罰は、一族の中での評判に対するダメージです。注意の散漫なヤツ、あるいは馬鹿なヤツが一族に不名誉を与えたと見なされるのです。

前出のイギリス子会社のIT担当者と私で、「自分のPC」を会社で使うトレンドが社員のノートパソコンの扱い方にどう影響するかを考えてみました。自分でお金を出して買ったコンピュータやタブレット、携帯電話であれば、もっと注意深く扱うかもしれません。

でも、私の見るかぎり、日本の大手企業は自宅勤務のようなフレキシブルな働き方に消極的です。「自分のPC」のトレンドも、決して歓迎はしないのではない かと思われます。ベストのセキュリティと暗号化技術があるとしても、顧客の機密データが保存されていたかもしれないノートパソコンを社員が紛失して評判に 傷が付くというのは、あまりにもリスクが大きすぎます。

家族の喩えを再び用いるならば、息子が自分のお小遣いで買ったサッカーボールがご近所の窓に当たれば、たとえ窓が壊れなかったとしても、そのお宅からやはり苦情が出るからです。

パニラ・ラドリン  日経ウイークリー 2013年3月4日より

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