インクルーシブな言葉

contortionistイギリスのビジネスで許容される用語がいかに変わり続けているかについて、最近クライアントと話す機会がありました。明らかに、「flexible working」は最近では「agile working」に改称されました。「agile」のほうが「flexible」よりも意味が広いためです。「agile」な働き方とは、パフォーマンス や成果にむしろ重点を置いていて、その業務遂行に当たってのwho、what、when、whereに柔軟性があることを意味します。一方、 「flexible」な働き方とは通常、(日本語でもそうであるように)勤務時間に柔軟性があることを意味し、子供のいる女性にとって働きやすい職場を作 ろうとする際によく使われます。「agile」な働き方は、すべての社員を対象としたものであることを示唆しています。

この話をしたクライアントの役職名も、この種の変化を象徴していました。「ダイバーシティ&インクルージョン責任者」というのです。ダイバーシティは今や 日本でもよく使われるようになっていて、主に性別の多様性を意味していますが、最近では多くの企業が国籍や性的指向など他の面の多様性を考慮するように なっています。イギリスで「ダイバーシティ」に加えて「インクルージョン」が使われるようになっている理由は、企業が単に多様な人材を雇用することだけに 集中するのではなく、それらの多様なバックグラウンドを持った社員が意思決定や昇進、さらには自分の周りで起こっている会話や会議から疎外されていると感 じることのない企業文化を作っていくよう促すためです。

私自身は、用語の正しさばかりを気にするこの種のアプローチに時として苛立ちを覚えます。「言葉狩り」のように思えるからです。でも、そう思うたびに、日 本企業の本社で外国人社員として働いていた時のことも思い出します。個人としてどう処遇されたかに関しては、まったく不満はありませんでした。が、年次報 告書のような英語の資料について意見を求められるたびに、社員を男性・女性、日本採用・外国採用に分けるのは海外の読者にとって違和感があると幾度となく 指摘したものです。これらの区分がなぜ存在するかは知っていました。当時、女性社員の99.9%は一般職で、男性社員は100%総合職だったためです。こ のため、事務系と管理系または営業系の社員割合を示すには、これが手っ取り早い方法だったのです。日本採用と外国採用の区分は、単体か連結かという会計方 式に関係していました。

とはいえ私には、「女性」や「外国」というのが格下であるように感じられたのです。もちろん、これらの区分は後に変更されました。多くの企業で正社員を事 務系と管理系に分ける慣習がなくなったためです。最近では持株会社という形態が登場したため、会計基準も変わり、社員について単体と連結を区別するのは以 前ほど意味を持たなくなりました。

しかし今でも、日本のクライアントから、社員の区分をどう呼ぶべきかについて相談されることがあります。日本からの駐在員を「rotating staff」と呼んでいる企業もありますが、これもまた、日本以外で採用された社員は他国に赴任する可能性がないことをほのめかす言い方です。あるイギリ ス人の社員は、日本の本社が送信してきたメールに部下という意味で「subordinate」が使われていることに不満を感じ、それを私に伝えてきまし た。階級意識の強いイギリス社会ですら、一般社員に対しては「colleagues」や「team members」の呼称が好まれています。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

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ヨーロッパでは「討論」がとても重要

expatフランス人のマネージャーから最近こんな不満を聞きました。彼の会社の欧州本社はオランダにあるのですが、そのマネジメントチームの会議に出席すると、出席者は大半が日本人の在オランダ駐在員で、彼が発言するまでもなく、すでに決定が下されているのだそうです。

このような不満は、私たちがヨーロッパの日系企業とかかわってきた過去12年の間にも何度となく耳にしてきました。日系企業で現地採用社員が増え、ヨーロッパ出身者が高い役職に就くようになったのを受けて、状況が改善することを私は望んでいましたが、実際には現地採用管理職と駐在員管理職のコミュニケーションギャップは広がっているように見えます。現地採用の管理職者は、日本の本社で下される意思決定から阻害されていると感じています。

私はヨーロッパ出身のマネージャーに対して、意思疎通と人間関係を改善する3ステップのプランを提案しています。1にPeople、2にProcess、3にParticularsの3Pです。Peopleというのは、「人と人」の関係を日本人の同僚と作る必要があるということ。これには、ヨーロッパ拠点と日本の本社の両方が含まれます。もちろん、出張経費や駐在員の頻繁な入れ替わりなどの問題はあります。でも、根回しのプロセスに入ろうとするのであれば、お互いへの信頼感は必須です。

Processとは、根回しのプロセスをもっと明瞭にして、会議の目的(情報交換、話し合い、意思決定など)を明らかにする必要があるという意味です。そしてParticularsは、リスクを嫌う日本の幹部を説得するには詳細な情報やデータが必要だということを、現地採用のマネージャーが理解しなければならないという意味です。

でも、これは片側の努力でしかありません。日本からの駐在員は、欧州の子会社で起きていることを日本に報告することだけが仕事ではないと認識する必要があります。本社の企業風土、意思決定や戦略を伝え、ヨーロッパのスタッフが自分も大きな会社の一員であると感じられるようにしなければなりません。

日本人駐在員に対しては、1にDebate、2にDistil、3にDisseminateの3Dを勧めています。ヨーロッパの人たちは、ディベート(討論)が大好きです。意見を言うことで、自分が尊重されていると感じるのです。それにディベートは、日本から送られてくる意思決定の背景や論理を説明して、ヨーロッパの人たちに会社の方向性を説得するチャンスでもあります。

Distilは「蒸留する」という意味ですが、ここでは会社の戦略や企業理念、意思決定を明瞭・簡潔にまとめることです。日々の業務行動を判断する際の「礎」となるもの、すなわち「行動可能」な情報にまとめることが重要です。

Disseminateは情報を伝播し広めること。具体的には、前のステップで明確に打ち出した戦略、企業理念、決定を欧州全域の社員に伝えるため、実践的なステップを踏むことです。会社が大陸欧州に典型的なヒエラルキー組織の場合は、正しい命令系統を通じて情報を流す必要もあるかもしれません。または、ワークショップを使って社員にオーナーシップ意識を植え付け、戦略や企業理念が自分の仕事にどう関係するかを理解できるようにするのも、ひとつのやり方です。さらに、最初の2つのDがすでに行われたのであれば、ミーティングを増やして、今度こそは出席者全員が結論を受け入れやすい環境にすることができるでしょう。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

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取締役会は顧客と社員とコミュニティを反映すべき

shutterstock_307926782大手日本企業の欧州子会社の取締役会が、日本人と現地人、および男女の構成比という点でどれだけ多様性を実現しているかについてのリサーチの第1段階を終えました。

取締役の女性比率は、ヨーロッパよりも日本のほうが高いという結果が出ました。これは社員構成を考えると驚きです。社内の昇進で上位の役職へと上がってくる女性管理職者の割合は、間違いなく日本の本社よりも欧州子会社のほうが高いためです。

一方、日系子会社の取締役に占めるヨーロッパ国籍者の割合は、会社によって大きな差がありました。東芝、シャープ、ファーストリテイリング(ユニクロの英国法人)のゼロから、旭硝子、ブリヂストン、キヤノン、日本電産の100%まで開きがありました。つまり、国籍の多様性は、業界によって傾向があるわけではなさそうです。また、取締役会が多様性を重視すべき理由として最も有力と思われる、顧客の構成を反映すべきであるという論は、思ったほど大きな要因ではないことも示唆されました。

透明性を高め現地に受け入れられるには

20年前は、海外と日本国内の両方で日本人顧客への依存度を低くしたいという狙いが、多くの日本企業が「国際化」に乗り出す主な理由となっていました。キヤノンは当時、ヨーロッパ出身者を海外子会社で高い地位に指名した先駆者となり、結果として同業他社よりも日本とヨーロッパの両方で良い業績を上げたように見えました。

現在、日本企業がグローバル化の方策として好むのは、国際事業部門を拡大し社内で幹部を育てることではなくて、M&Aを通じて海外事業を拡大することです。過去10年の大型買収が、旭硝子(グラバーベルを買収)をはじめ、富士通(インターナショナル・コンピューターズ・リミテッド)、野村證券(リーマン・ブラザーズ)、日本板硝子(ピルキントン)など、ヨーロッパ出身者の取締役が多い企業の要因となっています。

ただし、業界の特色も一部に見られます。例えば金融サービス業界は、取締役の指名に対して承認権を有する欧州当局から厳しい目を向けられています。現地市場に対して深い理解と経験を有する取締役であることを当局が期待しており、日本人の経営幹部の多くはこの要件を満たすことができません。

また、富士通と日立は、イギリスで公共セクター向けの事業(行政サービス、原子力、鉄道)がかなり大きな部分を占めているため、政府調達基準となる多様性の要件を満たすだけでなく、事業展開する地元コミュニティで受け入れられる必要があります。例えば、日本企業が保有するイギリスの公益会社が最近、取締役を公募しましたが、応募要件のひとつに、その公益会社の顧客であることという条件が含まれていました。

比較的規模の小さい日本企業やヨーロッパに進出したばかりの日本企業は、少人数の取締役会を好むかもしれません。現地に在住しない日本人の取締役が2人だけといったケースも見られます。が、ヨーロッパでは昨今、透明性を高め、ガバナンスを向上させるべきとの大きなプレッシャーが取締役会にかかっています。現地出身の取締役を最初から指名しておけば、規制当局、顧客、社員との関係を向上させるのに役立つでしょう。

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申年を迎えて

nikko monkeys私の会社では2016年、設立12周年を記念して、クライアントとのランチセミナー・シリーズを開催することにしました。12周年というのは半端な数字に聞こえるかもしれませんが、干支を一回りして申年に戻ってきたことを意味します。

この間の日本企業のトレンドを振り返ってみると、最も明らかなものとして、欧州に本社のある多国籍企業の買収が挙げられます。最近では三井住友海上が、イギリスのロイズ保険市場などで保険事業を展開するアムリンを約6,350億円で買収すると発表しました。今年初めには、日立製作所がイタリアのアンサルドブレダ、およびフィンメカニカが保有するアンサルドSTSの株式を約約1,044億円で買収した案件もありました。

どちらの買収も、日本の多国籍企業の多くに見られる構造変化を物語っています。日立は、鉄道事業の世界本社をイギリスに移転しました。また、日本の大手保険各社は、すでにそれぞれイギリスの保険会社を買収しており、これを足がかりとしてさらにグローバルな事業拡大を図りたい意向です。

明らかに日本企業は、買収を通じて単に市場を拡大するだけでなく、グローバルな経営力を付けることを目指しています。かつて日本企業が米国子会社を通じてグローバルなネットワークを管理した事例がいくつかありましたが、最近では欧州の子会社が、米国をはじめ他の海外市場も管理することを求められているように見えます。

この一因となっているのが、日本で起きているもうひとつの長期的なトレンド、「グローバルな人材」の欠如です。特に上級マネジメントのレベルで、海外での成長を管理する人的資産が足りないのです。しかし、それ以外にも、ヨーロッパの多国籍企業は多数の国に散らばった企業をバーチャルなマトリックス構造で管理するのに慣れているという事実も加担しています。すなわち、様々な事業部門の責任者が物理的に同じ本社にいないかもしれないことを意味します。ヨーロッパのマネージャーは、グローバルに有効性を発揮する高い専門知識を持ちながら、同時に多文化のコミュニケーションスキルを活かしてチームの遠隔管理ができなければなりません。

彼らは欧州域内でこれをするのには慣れていて、米国とのつきあいにもある程度は馴染みがあります。しかし、日本を向いて仕事をするのは、多くにとって新しい経験です。専門知識や遠隔コミュニケーションスキルだけでは日本の本社を説得して賛同させられないことが分かると、ヨーロッパのマネージャーはしばしば動揺します。日本の本社のマネージャーは、物理的に同じオフィスにいる相手とコミュニケーションすることにしか慣れていません。また、たいていはジェネラリストのため、専門分野の意見のみを論拠とする議論を説得力があるとは見なさない傾向にあるのです。

こうしたコミュニケーションの壁を克服する意識的な努力が講じられないかぎり、日本の本社は「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿のように映るかもしれません。日本ではこれが徳の高い行動と見られていると思いますが、西欧では手遅れになるまで問題を直視しようとしない姿勢と受け取られます。私の会社では、どちらの世界に対しても目と耳と口を開くことを大切にして、これからの12年を歩んでいく所存です。

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先輩と後輩の絆が内部告発の有効性に影響

日本企業のコーポレート・ガバナンス、特に内部告発に影響する重大な要因として、先輩・後輩の力学があります。先輩・後輩関係は、特に終身雇用を保っている大企業で大きく作用します。

一般に日本の学生が大卒後すぐに国内大企業に就職すると、入社時点で即座に、自分よりも目上に当たる先輩ができます。先輩・後輩の関係は、とりわけ同じ場所から来た者、あるいは同じ場所に属する者の間で構築されます。

つまり、同じ大学の出身者や同じ部署に配属された社員同士が、先輩と後輩の関係を持つようになるのです。あるいは、部署が違っていても、共通の知人や親戚、または同じ出身地といったつながりで、先輩・後輩の関係ができることもあります。先輩はたいていの場合、メンターとなりますが、しかしそれ以上によくあるのが、部署や事業部門の派閥に先輩と後輩が一緒に所属するようになることです。

経営幹部レベルの指名は通常、派閥間の駆け引きや先輩からの後ろ盾に基づいて交渉されます。このため、強力な派閥の後ろ盾があれば、たとえどんなに不適材に見える人物でも、組織から単純に追放したり周辺へと追いやったりするのは非常に困難です。

忠誠と義務を伴う強い仲間意識が先輩と後輩をつなぎとめ、約30年にわたる雇用期間を通じてしっかりと固められていくのです。

ですから、会社の不正行為を告発するのはもとより、重大な過ちを指摘することすら、社員にとって難しいことは容易に理解できます。一般に日本や他のアジア文化では、自分のグループに所属する仲間に面目を失わなせるようなことはしません。先輩の顔を潰すなど、ほとんど考えられないのです。そのようなことが実際に起きるとすれば、先輩・後輩関係に取り返しのつかないダメージが及び、あらゆる感情の渦巻く状況が生じることは間違いありません。

このような世界にあって、経営コンサルティング会社や法律事務所、監査事務所など、外部からアドバイスを提供する専門サービス会社として立ち回るのは容易ではありません。職業人としての自分の行動規範に照らして明らかに修正の必要がある問題を診断したとしても、それを指摘すれば顧客から、社内の微妙な人間関係に波紋を投じることになると警告されるのです。

私が聞いたある若手監査人の話ですが、顧客企業で長年にわたる会計帳簿の虚偽計上が分かったため監査保証の署名を拒んだところ、あなたが署名しなければ会計監査を今まで担当してきた御社の先輩の顔を潰すことになると言われたそうです。それまでその監査法人の先輩たちは、会計報告の矛盾を承知のうえで物議をかもさず署名してきたのでした。

主義や原則に反することに立ち向かったり、正しいと信じることを貫いたりすることは、きわめて勇気のいる行動です。自分を支えてくれている人たちを傷付けると知りながらそれをするのは、愚行以外の何ものでもないと言う人もいるでしょう。

2011年10月31日 パニラ・ラドリン著 Nikkei Weekly

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日本企業はブランドを磨く必要はあるが、イメージはすべてというわけでもない

docomo_logoグローバル・ブランドのトップ100ランキングの調査が最近発表されましたが、今回もまた日本企業は、売上高と日本経済の規模には見合わない、振るわない 結果となりました。ブランドの価値をどのように測定するかは、もちろん意見の分かれるところです。ブランド価値の測定とは多くの場合、ブランドの買収金額 がいくらになるかを数量化する試みです。会社の価値から引き出した何らかの数値を基に、他の資産をすべて引き算して、それと同時に消費者による定性的な評 価を行います。

このリストに入らなかった日本企業のなかには、調査対象が日本人であったならトップ近くにランクインしたであろう企業が含まれています。ただし、それでも なお、そのブランドに付けられる金銭的な価値は欧米企業のようには高くならないのではないかと、私は考えています。その理由は、日本企業が利益をあまり重 視しておらず、「ブランディング」もさほど重要と考えていないことです。

日本企業のエグゼクティブと話すと、「ブランド」とは主にロゴやイメージなどのビジュアル・アイデンティティと広告のことだと見なしている様子が分かります。

日本企業がグローバルに競争するには、欧米の顧客が優良ブランドに何を期待しているかを、もっと理解しなければならないでしょう。しかし、ブランドにとらわれすぎることにも危険性があります。うぬぼれの一種のようになってしまい、コラボレーションを妨げる危険性です。

NTTドコモが「iモード」を導入して10年以上になります。このサービスによって日本は、米国も含めて世界のどの国よりもはるかに進んだ国になりまし た。高機能な携帯電話を手にしたユーザーが、インターネットからアプリやコンテンツを購入するという側面においてです。世界の他の国は、どうすれば日本の 成功を真似できるかを画策しました。日本以外でこの現象を再現するのは不可能だと憶測した人もたくさんいました。日本の消費者や社会に特有の文化が、この コンセプトを可能にしていると考えたためです。しかし今、iPhoneや他のモバイル技術が世界的に成功しているのを見るにつけ、その術さえ与えられれば 世界中の消費者が携帯電話のアプリやコンテンツを買うことは疑いの余地がありません。

他の国が日本に追いつくのにこれだけ時間がかかったということなのだと、私は考えています。日本以外の電話会社や携帯電話メーカーは、ブランドの利益を守 ることに躍起になっていて、日本でドコモが構築したような互恵的なサプライチェーンの生態系を再現することができなかったのだと思うのです。

携帯電話のアプリを開発しているイギリス企業のサポート役として2002年に日本へ出張したことがありましたが、その時ドコモは、自社の提供アプリが作り 出している一定のイメージを自負しようとはしていませんでした。うちは単なる電話会社ですから、と言ったのです。そして、アプリについては開発会社に聞い てくれという姿勢でした。そこで開発会社を訪ねると、その担当者らは、携帯電話メーカーが搭載してくる機能に合わせてアプリを提供しているだけだと言いま した。そして、そのメーカーは、電話会社に製品を納入している一サプライヤにすぎないと言ったのです。

クラウド・コンピューティングとネットワーク社会の時代となった今、日本企業は、米国のオンライン大手、アマゾンやグーグルなどとどうすれば競争できるか を模索しています。グローバル・ブランドの強化は、確かにその一助になるでしょう。でも、多くの日本企業が有しているブランドの重要な要素が、うぬぼれに 陥らずにコラボレーションする能力であるという事実も、見失うべきではありません。

パニラ・ラドリン著 -日経Weeklyより

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日本企業が「OL] を再考

shutterstock_290042417今から20年ほど前、私は、日本のOLの終焉を宣言する記事を書きました。勤めていた会社が、新卒者を採用して「一般職」と呼ばれるコースに配属する慣行 を廃止したのです。この動きは当時、他の多くの日本企業にも見られました。OLの制服も廃止され、既存のOLには総合職コースへの転換が奨励されました。 将来の事務業務のニーズは派遣社員で埋められるという計画でした。

私はこの成り行きを嬉しく受け止めました。OLというシステムは、私のフェミニズム精神に反していたからです。ただし企業がこのシステムを廃止した理由 は、むしろ金銭的な理由でした。OLは、だいたい20~22歳で入社し、20代半ばまで勤続して、その後は結婚のために退職していくものと期待されていま した。

その間、OLは、机を拭き、ゴミ箱を空にし、部署内の同僚にお茶を入れ、電話に出て、書類仕事を処理したのです。けれども1990年代半ばまでには、30 代後半になっても勤め続けるOLが増え、年功序列の報酬体系ゆえに、そのように基本的な事務業務にしては相当に高い給与を取るようになっているのが明らか でした。

その後の10年間は、大卒者の就職が困難を極め、特に派遣会社での雇用を望まない女子大生にとっては氷河期が訪れました。多くが外資系企業に入社し、なかにはメインストリームの日本企業で総合職に挑んだ人もいました。

この時代は、一般職として働いていた女性にとっても難しい時代でした。半ば強制的に転換させられた準総合職コースは、それまでの一般職コースのような年功 序列の報酬体系ではなかったため、多くの場合、給与が下がる結果になったのです。そうした女性たちはほとんど全員が、今や派遣社員のチームを管理しなけれ ばならなくなったため、以前よりも多くの仕事をこなしていました。ひっきりなしに入ってくる新しい派遣社員を研修し、その仕事ぶりを確認し、派遣社員が間 違いを犯せば責めを受けなければなりませんでした。

以前の勤め先が一般職コースを復活させようとしているという話を聞いた時、私は最初、驚きました。派遣社員の犯す間違いと残された元OL(多くは早期退職を選んでいました)にかかる負担が、明らかに事業に大きな影響を及ぼしているのです。

でも、考えてみれば、これは驚きではありませんでした。先月、複数の日本企業を対象に顧客満足度を調べるための聞き取り調査を行った際、多くの企業で、女 性の事務スタッフが私とのミーティングに招待され、その上司たち(たいていは男性)が、彼女たちの目から見た意見やコメントを引き出すべく気遣っていたの です。

私が聞き取り調査をした企業は、サプライヤ企業の事務能力に対する批判が真剣に受け止められることを期待していました。事務的な間違いは、日本では瑣末な こととは見なされません。ほかに問題点がある可能性を示唆していると見られるうえ、小さな間違いが大事につながるという考え方があるためです。

事務職というのが屈辱的な仕事であると考えて、女性がそのような仕事に就くのは男女差別だと宣言していた私は、高慢でした。でも、このような偏見を抱いて いたのは、私だけではないかもしれません。実際、顧客満足度を調べるためのミーティングに秘書を参加させる欧米企業がいったいどれだけあるだろうかと考え ずにはいられません。

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目的不明なコミュニケーション

shutterstock_126761045弊社のヨーロッパ・チームに、トヨタ生産方式を専門とするドイツ人のコンサルタントがいます。彼女に、日本人とヨーロッパ人の混成チームのコミュニケー ションがうまく行っていない場合にどのようなアドバイスをするかと聞いてみたところ、驚いたことに、「現場主義」や「見える化」といった概念やプロセスを 教えるのではなく、まず最初に全員がチームのビジョンを共有することから始めるとのことでした。

以前のこの連載で、日本の本社とヨーロッパの子会社を上手にコーディネートするには、まず何よりも「人」の編成を見て、同等の相手や窓口や担当者が誰かを明確に理解する必要があると書きました。

次なるステップは、これらの人々の間のコミュニケーション・プロセスを確立することのように見えるかもしれません。が、このドイツ人の同僚の言うことが正 しいと思います。つまり、コミュニケーションの最終目標のビジョンがなければ、そのプロセスの多くは意味がなくなるか、消滅してしまうでしょう。

私の顧客のあるイギリス企業は、日本に子会社を持っていて、特定の事業部門や研究部門で定期的にグローバルな電話会議を行っています。けれども最近になっ て、日本のある参加者が会議の内容を自分のチームと共有していないことが分かりました。会議で聞いたことは部下に伝える価値がないと、その社員が考えてい るのは明らかでした。

同様に、イギリスの日系メーカーの日本人駐在員から、日本の本社に毎週報告を送っていて(もちろん日本語で)、イギリス人のマネージャーたちにも参加して もらおうとしたところ、お役所的な仕事の負担が増えるだけだと考えて、すぐに興味を失ってしまったという話を聞きました。イギリス人マネージャーの一人と 話したところ、「まるでブラックホールなんです。日本に情報を送っても、日本から何かが返ってくることは一度もありません」とのことで、やはりコミュニ ケーション・プロセスに参加するメリットを感じていませんでした。どちらのケースにも共通しているのは、社員が自分からのインプットに対して仕事にかかわ りのある重要な情報を得ていると感じる必要があることです。

多くの日本企業はビジョンを持っていると言っていますが、私の経験では、多くの場合、ビジョンが曖昧すぎて行動可能でないように見受けられます。行動可能 とは、ビジョンに実質が伴っていて、意思決定の際に指針として役立つことを意味します。日本のB2Bメーカーが掲げているビジョンの多くは、「革新を通じ て社会に貢献する」とまとめることができます。これはある程度は行動可能ですが、競合他社も同じことを言っているのですから、真の差別化はできないことを 意味します。顧客にしても、そのサプライヤを選ぶ独自のメリットが分からないということになります。

会社と社内のチームのビジョンは、競合他社から差別化されていて、かつ行動可能であるべきです。そのビジョンに従って行動することのメリットが明確であ り、社員に理解されていなければなりません。そのようなビジョンを策定すれば、本社と子会社の間のコミュニケーションやコンプライアンスのプロセスは、ほ ぼひとりでに出来上がってくるでしょう。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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日本の本社と欧州子会社の間のコーディネーション

window欧州の子会社と上手にコーディネートしたいと考えている日本の本社は、明確なコミュニケーションのプロセスを持ち、会社の行動について共通のビジョンと価値観を確立する、それに加えて「人」の側面を考える必要があると、以前のコラムで説明しました。

これまで日本企業に限らず多国籍企業の多くが、駐在員のネットワークに頼って、会社の文化を浸透させ、海外で起こっていることを把握してきました。けれども、日本企業は近年、シニアレベルの「グローバルな人材」、すなわち海外事業を切り盛りできる人材が不足していることを認識しており、現地採用の上級幹部に頼らざるを得なくなっています。

本社の「担当」「窓口」役職者を明確に

現地で採用される上級幹部は、コミュニケーションのプロセスが明確でなく、価値観やビジョンが共有されていないと、しばしば大きな不満を感じるようになります。日本の様々な部署から送られてくる同じ質問に何度も答えているうちに、自分が信頼されていないと感じ始めるのです。意思決定の権限がなく、変更を提案することもできず、日本の誰に支持を求めればよいのか、どのように切り出せばよいかも分からないと感じます。

このような問題は、欧米の多国籍企業ではそう頻繁には起こりません。たいていは、コンプライアンスや承認や報告のプロセスが、会社が買収あるいは設立された時点からとても明確にされているためです。また、会社の組織構造も、欧米企業では得てしてあまり違いがありません。このため、外国の子会社にいるマネージャーが自分と同等の役職者や主な意思決定者を見つけるのは、比較的簡単なのです。

以前に私が勤めた日系企業の欧州マーケティング部門で、ある提案をするに当たって、日本本社の様々な部署の然るべき担当者を見つけ、関係を築いて支持を集める必要がありました。欧米の企業であったなら、これは簡単にできたでしょう。本社に同様のマーケティング部門があり、その部門の長である上級幹部(常務レベル)がいて、戦略とビジョン、そして会社のブランドの責任を司っているからです。けれども、この日本の会社には、はっきりとしたマーケティング部門がありませんでした。コーポレート・ブランド室は、広報部のコンプライアンス機能だけのような存在で、ロゴが正しく使われているかどうかの確認業務を担当していました。宣伝部は、単純に事業部門がそれぞれに求めてくることを何であれやっていました。企業戦略部という のがありましたが、欧州の企業がやるようなマーケティング戦略とはまったく関係がないように見えました。

日本企業がグローバルに成功しようと思うのであれば、欧米の組織構造に倣って本社を再編する必要があると結論づけるのは、少しはばかられる気がします。しかし、「担当者」や「窓口」が何を意味するかをはっきりさせ、現地のマネジャーとやり取りをする本社の担当役職者が誰であるかを明確にすることはお勧めしたいと思います。こうすれば、現地に寄せられるリクエストが減り、現地のマネージャーが日本の担当者と信頼関係を築くのに役立つはずです。それを行ったうえで、価値観の共有とコミュニケーションのプロセスに進むことができるでしょう。

 

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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HSBC に学ぶ、海外でのコンプライアンス

HSBC3HSBC銀行の昨今の状況を見ていて、買収を通じてグローバル化しようとしている日本企業の課題と重なる点があると思いました。HSBCは今から150年 前、英国とインドのイギリス人実業家によって、香港で商業銀行として設立されました。しかし、スイスのプライベート・バンキング部門が脱税の疑いをかけら れたことで、その記念の年が台無しになりつつあります。

HSBCは、1999年にこのスイスのプライベート・バンクを買収しました。イギリスのリテール・バンクの「ビッグ4」とされたミッドランド・バンクを買 収してから数年後のことでした。その後2003年には、米国の消費者金融機関、ハウスホールド・ファイナンスを買収しています。この多角化に至るまで、同 行は、駐在員の緊密なつながりを通じて各地の事業を管理していました。駐在員は1989年まで全員男性で、香港の「メス」と呼ばれる施設(日本の寮や研修 所に似ています)でジェネラリストとして軍の士官のような研修を受けた後、任を任されて世界各地の「要所」に送られていたのです。

しかし相次ぐ買収の後、ジェネラリストの管理職者が知らない国で知らない事業を管理するのは無理があったため、買収した企業では現地のエグゼクティブが実 務の管理を続けることを許されました。スイスのプライベート・バンキング部門のスキャンダルは、残念ながらこのアプローチの失敗を物語る唯一の事例ではあ りません。HSBCは2年前にも米当局に19億ドルの罰金を支払っています。メキシコで2002年に買収したバンキングおよび金融サービス会社のビタル が、麻薬関連資金のマネーローンダリングを阻止しなかったという咎めでした。

現地の管理職者に任せておくのが危険なのであれば、海外で子会社を買収している日本企業は日本人駐在員による管理を続けるべきなのでは、という疑問が湧い てくるかもしれません。けれども、これは現実的ではなく、解決策でもありません。海外に派遣できる経験豊富な日本人の管理職者は不足していると思われま す。それにHSBCの駐在員と同様で、そのような管理職者はジェネラリストのため、外国の専門的な事業部門で何が起こっているかを理解するのは難しいで しょう。

リエゾンであり通訳でもある日本人駐在員が不在となれば、コンプライアンスとリスク管理を目的とした情報提供を求める日本本社からのリクエストが、現地エ グゼクティブのところにすぐさま山のように舞い込むでしょう。彼らはできるかぎり回答しようとしますが、それに対しての見返りはありません。そのうち自分 が信頼されていないと感じ始め、正しい方向性についても混乱してしまう可能性があります。

HSBCのケースでは、明確な会社の文化を醸成して価値観を徹底し、それをグローバルに伝達するプロセスと、厳格なコンプライアンス・ポリシーを実践する ことが重要だと、多くの評論家やCEO自身が述べています。そのようなシステムが整っていれば、ある程度は現地マネージャーの裁量に任せることができま す。

日本企業では人間関係が非常に重要ですから、この「プロセス」と「価値観」に「人」を加えることを、私は提案します。この3つの要素と実践的なステップについて、今後の記事で詳しく取り上げる予定です。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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