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申年を迎えて

私の会社では2016年、設立12周年を記念して、クライアントとのランチセミナー・シリーズを開催することにしました。12周年というのは半端な数字に聞こえるかもしれませんが、干支を一回りして申年に戻ってきたことを意味します。

この間の日本企業のトレンドを振り返ってみると、最も明らかなものとして、欧州に本社のある多国籍企業の買収が挙げられます。最近では三井住友海上が、イギリスのロイズ保険市場などで保険事業を展開するアムリンを約6,350億円で買収すると発表しました。今年初めには、日立製作所がイタリアのアンサルドブレダ、およびフィンメカニカが保有するアンサルドSTSの株式を約約1,044億円で買収した案件もありました。

どちらの買収も、日本の多国籍企業の多くに見られる構造変化を物語っています。日立は、鉄道事業の世界本社をイギリスに移転しました。また、日本の大手保険各社は、すでにそれぞれイギリスの保険会社を買収しており、これを足がかりとしてさらにグローバルな事業拡大を図りたい意向です。

明らかに日本企業は、買収を通じて単に市場を拡大するだけでなく、グローバルな経営力を付けることを目指しています。かつて日本企業が米国子会社を通じてグローバルなネットワークを管理した事例がいくつかありましたが、最近では欧州の子会社が、米国をはじめ他の海外市場も管理することを求められているように見えます。

この一因となっているのが、日本で起きているもうひとつの長期的なトレンド、「グローバルな人材」の欠如です。特に上級マネジメントのレベルで、海外での成長を管理する人的資産が足りないのです。しかし、それ以外にも、ヨーロッパの多国籍企業は多数の国に散らばった企業をバーチャルなマトリックス構造で管理するのに慣れているという事実も加担しています。すなわち、様々な事業部門の責任者が物理的に同じ本社にいないかもしれないことを意味します。ヨーロッパのマネージャーは、グローバルに有効性を発揮する高い専門知識を持ちながら、同時に多文化のコミュニケーションスキルを活かしてチームの遠隔管理ができなければなりません。

彼らは欧州域内でこれをするのには慣れていて、米国とのつきあいにもある程度は馴染みがあります。しかし、日本を向いて仕事をするのは、多くにとって新しい経験です。専門知識や遠隔コミュニケーションスキルだけでは日本の本社を説得して賛同させられないことが分かると、ヨーロッパのマネージャーはしばしば動揺します。日本の本社のマネージャーは、物理的に同じオフィスにいる相手とコミュニケーションすることにしか慣れていません。また、たいていはジェネラリストのため、専門分野の意見のみを論拠とする議論を説得力があるとは見なさない傾向にあるのです。

こうしたコミュニケーションの壁を克服する意識的な努力が講じられないかぎり、日本の本社は「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿のように映るかもしれません。日本ではこれが徳の高い行動と見られていると思いますが、西欧では手遅れになるまで問題を直視しようとしない姿勢と受け取られます。私の会社では、どちらの世界に対しても目と耳と口を開くことを大切にして、これからの12年を歩んでいく所存です。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2016年1月13日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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EU終焉を招きかねない難民問題

イギリスがEUを離脱することになれば、多くの多国籍企業が現在イギリスに置いている欧州本社を他の国へ移すだろうと私が最近言った時、ギリシャ系イギリス人の知り合いは、イギリスは一国でも問題なくやって行けると言いました。いわく、負担の多いEUの規制がないほうがよく、ヨーロッパにおける地位が何であれ、イギリスのように革新性に富んだ国には企業が集まってくるというのです。

ギリシャに対するEUの処遇を見てきた後で、この知人の見方は驚きではないかもしれません。EUの規制が多すぎるという不満は、イギリス国内にも以前から渦巻いています。けれども、芝刈り機の音量に対して設けられたEUの基準に見られるとおり、これらの規制はしばしば、イギリスのメーカーに有利なようにと、イギリスの官僚が主張してきたのです。一般にメーカーにとって、EU域内に工場を置くことの利点は、EUの基準に適合していれば28か国のどこでも販売認可が下りると安心できることにあります。

イギリスがEUを離脱すれば、EUの規制に影響を及ぼすことはできなくなるにもかかわらず、至近の最大市場で製品を販売したければ、なおもその規制に従わなければならないことを意味します。私をはじめ残留支持派のイギリス人にとってありがたいことに、野党・労働党の新党首が最近、次の国民投票(おそらく来年)でEU残留を訴えるキャンペーンを展開すると語りました。

これについては、今までいくらかの疑念がありました。キャメロン首相がEU加盟国との交渉で、欧州社会憲章を弱めようとしていると見なされているためです。欧州社会憲章は、労働者の勤務時間、休日、差別などについて保護をもたらしてきた規定です。労働党は、名前が示すとおり、労働者の権利を擁護することを基本理念とする党です。このため、EUに残留するためのキャンペーンを決定し、キャメロン首相がEUとどのような合意を取り付けるかにかかわらず、政権に返り咲いた暁には社会的な譲歩をすべて白紙に戻すとうたっています。

フランスやドイツなどEUの中核国が絶対に妥協しないとしている主要点のひとつが、人の移動の自由です。これが実は、多くのイギリス人がEU離脱を望む大きな理由のひとつとなっているのですが、私にしてみれば、イギリスが革新性を維持できるのは、まさに移動の自由ゆえです。多様性が革新を促すことを示す証拠はいくらでも存在し、ロンドンは間違いなくヨーロッパで最も多様な都市のひとつです。ロンドンかその近郊に会社を置けば、驚くほど幅広い国籍の人材にアクセスし、その人たちの視点やスキルを活用することができます。しかも全員の共通語が英語です。

不運なことに、最近の難民問題が移動の自由に対するコミットメントを弱めていて、EUそのものの終焉を招く可能性すらあります。加盟国は、協調して解決策を見つけるのではなく、折しも現在記念日を迎えつつある2つの世界大戦で学んだ教訓を忘れてしまったかのように振る舞っています。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2015年10月14日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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日本企業が「OL] を再考

今から20年ほど前、私は、日本のOLの終焉を宣言する記事を書きました。勤めていた会社が、新卒者を採用して「一般職」と呼ばれるコースに配属する慣行 を廃止したのです。この動きは当時、他の多くの日本企業にも見られました。OLの制服も廃止され、既存のOLには総合職コースへの転換が奨励されました。 将来の事務業務のニーズは派遣社員で埋められるという計画でした。

私はこの成り行きを嬉しく受け止めました。OLというシステムは、私のフェミニズム精神に反していたからです。ただし企業がこのシステムを廃止した理由 は、むしろ金銭的な理由でした。OLは、だいたい20~22歳で入社し、20代半ばまで勤続して、その後は結婚のために退職していくものと期待されていま した。

その間、OLは、机を拭き、ゴミ箱を空にし、部署内の同僚にお茶を入れ、電話に出て、書類仕事を処理したのです。けれども1990年代半ばまでには、30 代後半になっても勤め続けるOLが増え、年功序列の報酬体系ゆえに、そのように基本的な事務業務にしては相当に高い給与を取るようになっているのが明らか でした。

その後の10年間は、大卒者の就職が困難を極め、特に派遣会社での雇用を望まない女子大生にとっては氷河期が訪れました。多くが外資系企業に入社し、なかにはメインストリームの日本企業で総合職に挑んだ人もいました。

この時代は、一般職として働いていた女性にとっても難しい時代でした。半ば強制的に転換させられた準総合職コースは、それまでの一般職コースのような年功 序列の報酬体系ではなかったため、多くの場合、給与が下がる結果になったのです。そうした女性たちはほとんど全員が、今や派遣社員のチームを管理しなけれ ばならなくなったため、以前よりも多くの仕事をこなしていました。ひっきりなしに入ってくる新しい派遣社員を研修し、その仕事ぶりを確認し、派遣社員が間 違いを犯せば責めを受けなければなりませんでした。

以前の勤め先が一般職コースを復活させようとしているという話を聞いた時、私は最初、驚きました。派遣社員の犯す間違いと残された元OL(多くは早期退職を選んでいました)にかかる負担が、明らかに事業に大きな影響を及ぼしているのです。

でも、考えてみれば、これは驚きではありませんでした。先月、複数の日本企業を対象に顧客満足度を調べるための聞き取り調査を行った際、多くの企業で、女 性の事務スタッフが私とのミーティングに招待され、その上司たち(たいていは男性)が、彼女たちの目から見た意見やコメントを引き出すべく気遣っていたの です。

私が聞き取り調査をした企業は、サプライヤ企業の事務能力に対する批判が真剣に受け止められることを期待していました。事務的な間違いは、日本では瑣末な こととは見なされません。ほかに問題点がある可能性を示唆していると見られるうえ、小さな間違いが大事につながるという考え方があるためです。

事務職というのが屈辱的な仕事であると考えて、女性がそのような仕事に就くのは男女差別だと宣言していた私は、高慢でした。でも、このような偏見を抱いて いたのは、私だけではないかもしれません。実際、顧客満足度を調べるためのミーティングに秘書を参加させる欧米企業がいったいどれだけあるだろうかと考え ずにはいられません。

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目的の不明確なコミュニケーション

弊社のヨーロッパ・チームに、トヨタ生産方式を専門とするドイツ人のコンサルタントがいます。彼女に、日本人とヨーロッパ人の混成チームのコミュニケー ションがうまく行っていない場合にどのようなアドバイスをするかと聞いてみたところ、驚いたことに、「現場主義」や「見える化」といった概念やプロセスを 教えるのではなく、まず最初に全員がチームのビジョンを共有することから始めるとのことでした。

以前のこの連載で、日本の本社とヨーロッパの子会社を上手にコーディネートするには、まず何よりも「人」の編成を見て、同等の相手や窓口や担当者が誰かを明確に理解する必要があると書きました。

次なるステップは、これらの人々の間のコミュニケーション・プロセスを確立することのように見えるかもしれません。が、このドイツ人の同僚の言うことが正 しいと思います。つまり、コミュニケーションの最終目標のビジョンがなければ、そのプロセスの多くは意味がなくなるか、消滅してしまうでしょう。

私の顧客のあるイギリス企業は、日本に子会社を持っていて、特定の事業部門や研究部門で定期的にグローバルな電話会議を行っています。けれども最近になっ て、日本のある参加者が会議の内容を自分のチームと共有していないことが分かりました。会議で聞いたことは部下に伝える価値がないと、その社員が考えてい るのは明らかでした。

同様に、イギリスの日系メーカーの日本人駐在員から、日本の本社に毎週報告を送っていて(もちろん日本語で)、イギリス人のマネージャーたちにも参加して もらおうとしたところ、お役所的な仕事の負担が増えるだけだと考えて、すぐに興味を失ってしまったという話を聞きました。イギリス人マネージャーの一人と 話したところ、「まるでブラックホールなんです。日本に情報を送っても、日本から何かが返ってくることは一度もありません」とのことで、やはりコミュニ ケーション・プロセスに参加するメリットを感じていませんでした。どちらのケースにも共通しているのは、社員が自分からのインプットに対して仕事にかかわ りのある重要な情報を得ていると感じる必要があることです。

多くの日本企業はビジョンを持っていると言っていますが、私の経験では、多くの場合、ビジョンが曖昧すぎて行動可能でないように見受けられます。行動可能 とは、ビジョンに実質が伴っていて、意思決定の際に指針として役立つことを意味します。日本のB2Bメーカーが掲げているビジョンの多くは、「革新を通じ て社会に貢献する」とまとめることができます。これはある程度は行動可能ですが、競合他社も同じことを言っているのですから、真の差別化はできないことを 意味します。顧客にしても、そのサプライヤを選ぶ独自のメリットが分からないということになります。

会社と社内のチームのビジョンは、競合他社から差別化されていて、かつ行動可能であるべきです。そのビジョンに従って行動することのメリットが明確であ り、社員に理解されていなければなりません。そのようなビジョンを策定すれば、本社と子会社の間のコミュニケーションやコンプライアンスのプロセスは、ほ ぼひとりでに出来上がってくるでしょう。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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日本の本社と欧州子会社の間のコーディネーション

欧州の子会社と上手にコーディネートしたいと考えている日本の本社は、明確なコミュニケーションのプロセスを持ち、会社の行動について共通のビジョンと価値観を確立する、それに加えて「人」の側面を考える必要があると、以前のコラムで説明しました。

これまで日本企業に限らず多国籍企業の多くが、駐在員のネットワークに頼って、会社の文化を浸透させ、海外で起こっていることを把握してきました。けれども、日本企業は近年、シニアレベルの「グローバルな人材」、すなわち海外事業を切り盛りできる人材が不足していることを認識しており、現地採用の上級幹部に頼らざるを得なくなっています。

本社の「担当」「窓口」役職者を明確に

現地で採用される上級幹部は、コミュニケーションのプロセスが明確でなく、価値観やビジョンが共有されていないと、しばしば大きな不満を感じるようになります。日本の様々な部署から送られてくる同じ質問に何度も答えているうちに、自分が信頼されていないと感じ始めるのです。意思決定の権限がなく、変更を提案することもできず、日本の誰に支持を求めればよいのか、どのように切り出せばよいかも分からないと感じます。

このような問題は、欧米の多国籍企業ではそう頻繁には起こりません。たいていは、コンプライアンスや承認や報告のプロセスが、会社が買収あるいは設立された時点からとても明確にされているためです。また、会社の組織構造も、欧米企業では得てしてあまり違いがありません。このため、外国の子会社にいるマネージャーが自分と同等の役職者や主な意思決定者を見つけるのは、比較的簡単なのです。

以前に私が勤めた日系企業の欧州マーケティング部門で、ある提案をするに当たって、日本本社の様々な部署の然るべき担当者を見つけ、関係を築いて支持を集める必要がありました。欧米の企業であったなら、これは簡単にできたでしょう。本社に同様のマーケティング部門があり、その部門の長である上級幹部(常務レベル)がいて、戦略とビジョン、そして会社のブランドの責任を司っているからです。けれども、この日本の会社には、はっきりとしたマーケティング部門がありませんでした。コーポレート・ブランド室は、広報部のコンプライアンス機能だけのような存在で、ロゴが正しく使われているかどうかの確認業務を担当していました。宣伝部は、単純に事業部門がそれぞれに求めてくることを何であれやっていました。企業戦略部という のがありましたが、欧州の企業がやるようなマーケティング戦略とはまったく関係がないように見えました。

日本企業がグローバルに成功しようと思うのであれば、欧米の組織構造に倣って本社を再編する必要があると結論づけるのは、少しはばかられる気がします。しかし、「担当者」や「窓口」が何を意味するかをはっきりさせ、現地のマネジャーとやり取りをする本社の担当役職者が誰であるかを明確にすることはお勧めしたいと思います。こうすれば、現地に寄せられるリクエストが減り、現地のマネージャーが日本の担当者と信頼関係を築くのに役立つはずです。それを行ったうえで、価値観の共有とコミュニケーションのプロセスに進むことができるでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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HSBC に学ぶ、海外でのコンプライアンス

HSBC銀行の昨今の状況を見ていて、買収を通じてグローバル化しようとしている日本企業の課題と重なる点があると思いました。HSBCは今から150年 前、英国とインドのイギリス人実業家によって、香港で商業銀行として設立されました。しかし、スイスのプライベート・バンキング部門が脱税の疑いをかけら れたことで、その記念の年が台無しになりつつあります。

HSBCは、1999年にこのスイスのプライベート・バンクを買収しました。イギリスのリテール・バンクの「ビッグ4」とされたミッドランド・バンクを買 収してから数年後のことでした。その後2003年には、米国の消費者金融機関、ハウスホールド・ファイナンスを買収しています。この多角化に至るまで、同 行は、駐在員の緊密なつながりを通じて各地の事業を管理していました。駐在員は1989年まで全員男性で、香港の「メス」と呼ばれる施設(日本の寮や研修 所に似ています)でジェネラリストとして軍の士官のような研修を受けた後、任を任されて世界各地の「要所」に送られていたのです。

しかし相次ぐ買収の後、ジェネラリストの管理職者が知らない国で知らない事業を管理するのは無理があったため、買収した企業では現地のエグゼクティブが実 務の管理を続けることを許されました。スイスのプライベート・バンキング部門のスキャンダルは、残念ながらこのアプローチの失敗を物語る唯一の事例ではあ りません。HSBCは2年前にも米当局に19億ドルの罰金を支払っています。メキシコで2002年に買収したバンキングおよび金融サービス会社のビタル が、麻薬関連資金のマネーローンダリングを阻止しなかったという咎めでした。

現地の管理職者に任せておくのが危険なのであれば、海外で子会社を買収している日本企業は日本人駐在員による管理を続けるべきなのでは、という疑問が湧い てくるかもしれません。けれども、これは現実的ではなく、解決策でもありません。海外に派遣できる経験豊富な日本人の管理職者は不足していると思われま す。それにHSBCの駐在員と同様で、そのような管理職者はジェネラリストのため、外国の専門的な事業部門で何が起こっているかを理解するのは難しいで しょう。

リエゾンであり通訳でもある日本人駐在員が不在となれば、コンプライアンスとリスク管理を目的とした情報提供を求める日本本社からのリクエストが、現地エ グゼクティブのところにすぐさま山のように舞い込むでしょう。彼らはできるかぎり回答しようとしますが、それに対しての見返りはありません。そのうち自分 が信頼されていないと感じ始め、正しい方向性についても混乱してしまう可能性があります。

HSBCのケースでは、明確な会社の文化を醸成して価値観を徹底し、それをグローバルに伝達するプロセスと、厳格なコンプライアンス・ポリシーを実践する ことが重要だと、多くの評論家やCEO自身が述べています。そのようなシステムが整っていれば、ある程度は現地マネージャーの裁量に任せることができま す。

日本企業では人間関係が非常に重要ですから、この「プロセス」と「価値観」に「人」を加えることを、私は提案します。この3つの要素と実践的なステップについて、今後の記事で詳しく取り上げる予定です。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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日本関連の会社がヨーロッパで人材採用する際の落とし穴

私の会社の事業が十分に成長したためサポートしてくれる人を雇う必要が生じたという話を、以前の記事でお話ししました。それから3か月になりますが、実は誰も採用できていません。
その理由を自己分析して次の方策を考えようとしたところで、あることに気が付きました。それは、ヨーロッパで事業展開する日本企業が陥りがちな落とし穴に、私自身もはまりそうになっているということでした。

まず最初の落とし穴は、採用候補者のスキルや自分の事業上のニーズを慎重に検討せず、日本語を話せる人に惹かれてしまっているという点です。イギリスでは、日本語を話せる人を見つけるのは難しいことではありません。イギリスに住んでいる日本人は現在3~5万人いて、多くは学生や駐在員ですが、定住者もいて、しばしばイギリス人と結婚しています。

さらに、「語学指導等を行う外国青年招致事業」、通称JETプログラムの経験者が結成している協会のイギリス支部には約6,000人の所属メンバーがいます。イギリス人または英語を母国語とする他の国の出身者で、日本で1~3年、時にはそれ以上にわたって働いた経験があり、通常は学校や自治体政府での経験を有しています。この経験を通じてほとんどの人が日本を好きになり、その結果、日本とのかかわりを持ち続け、日本語力を生かせるキャリアを追求したいと考えています。

2つ目の落とし穴は、日本人(たいていは女性)やJET経験者を一般的な事務職に雇おうとしている点です。職種の定義がどことなくあいまいで、受付から人事、翻訳まで、あらゆることをこなす仕事です。これは、両方にとって不満の原因となることが多々あります。日本人の女性は、格下のOLのように処遇されているのではないかと疑念を抱くようになります。そして、残業や下働き風の仕事を頼まれることについてイギリス人の配偶者に不満を言うと、それなら雇用主に抗議すべきだとけしかけられることがしばしばあります。

JET経験者の場合は、ステップアップするキャリアパスや専門職者として能力開発する機会がないのではないかと不安に感じ始めます。そのような立場の人からどうすべきかと相談を持ちかけられることも多々ありますが、私がいつもアドバイスするのは、法務や経理など自分に合っていると思える職業をまず見つけて、そこから日本とかかわる方法を見つけるべきだというものです。

どちらの場合も、明確な職務記述書を作成し、適切な契約を交わすことで、ある程度の失望は回避することができます。また日本企業は、どのような発展性がある職種かについて、両者が持つべき期待を現実的かつオープンに話す必要があります。可能であれば、必要に応じて研修を提供したり支援したりするなどして、社員のキャリアが進展するごとに職務記述書も改訂すべきです。

さて、私の場合は、必要としているサポート的なスキルをもっと明確にする必要がありそうです。主な仕事は、請求書の発行とその集金、サプライヤへの支払い、そしていくらかの経営管理的な経理(キャッシュフロー予測など)です。この内容であれば、日本語が話せる必要はありません。とはいえ、同じような興味を持った人と一緒に働ければ、そのほうが楽しいことは間違いありませんが。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2013年12月1日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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日本の終身雇用と年功上列とヨーロッパの人事制度

日本企業に最近買収された在イギリス多国籍企業の人事部長が、ショックを受けた話としてこんな体験談をしてくれました。イギリスに駐在員として赴任するこ とになった日本人マネージャー数人に対する社用車の割り当て方法について日本の本社に質問したところ、回答としてマネージャーの名前と年齢だけが返ってき たというのです。

もちろん、日本企業の年功序列に基づく給与と福利厚生制度のことを知っていれば、至極当然の回答です。でも、ヨーロッパの企業では、給与や福利厚生は仕事 上の役割に基づいています。どの階級でどんな仕事をしているかであって、年齢や勤続年数に注意が払われることはほとんどありません。

私の取引先である在ヨーロッパ日系企業のほとんどは、現地の慣習に合った給与と福利厚生の制度を導入しています。でも、日本の人事制度がヨーロッパの社員に影響を及ぼす側面は、駐在員の社用車の等級に限らず、いくつか存在します。

例えば、終身雇用の文化や、会社が社員の面倒を見なければならないという意識です。日本人であれ外国人であれ、日本企業は会社に対する貢献度がきわめて低 い社員ですら解雇に消極的だということに、多くの人が気付くようになりました。この思いやりある姿勢にはヨーロッパの人も同情する一方で、パフォーマンス 管理をやりにくくするという声もあります。成績の悪い社員の存在がいつまでも許されていれば、他の社員のやる気を損ねるからです。

また、日本の人事制度の特異性が国境を越えた人事異動の障害になるという側面もあります。日立が最近、年齢に基づく管理職の給与の設定方法を廃止すると発 表しましたが、その背景にはこの理由があったと言われています。日系以外の多国籍企業のほとんどは、社内公募制度を導入して、世界のどの国であれ社員が社 内求人に応募できるようにしようとしています。これを受けて、詳細な職務記述書だけでなく、統一的な等級制度も必要になります。社員が自分の等級に適した 仕事がどれかを見極められるようにするためです。

日本からの駐在員が、役割に見合った資格とスキルと経験を有しているかどうかとは無関係に、その役職に就いているように見えることは、ヨーロッパの人には非常に不可解です。

私が日本の企業に対して希望するのは、外国勤務の現地社員をもっと日本の本社に送ることです。日立は、過去2年かけて全世界の社員のデータベースを構築し てきました。これはおそらく、日本からだけでなく世界中で社員の異動を可能にする統一的なシステムを持ちたいと思っていることの表れでしょう。そして、そ のような国際的な人事異動は、職能に基づいて決定するのであって、個人的な能力開発のニーズや「誰の番か」だけで決定するのではないようにしたいという意 思の表れなのではないかと、私は思っています。

ただし、日立の目指す方向性を他の日本企業が追随し、グローバル化の道を歩むようになるとしても、社員への思いやりや忠誠は失わないでほしいと思います。 日本企業での勤務にフラストレーションが伴うことは事実ながらも、ヨーロッパの人はなおも日本企業のもたらす長期的な雇用の安定性を好んでいるからです。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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ヨーロッパの社員の休暇

日本政府が提案した、有給休暇の取得日を会社が社員に対して指定するという労働基準法の改正案は、ヨーロッパのメディアでも注目をあつめました。日本人の 社員は、長時間勤務をはじめとする熱心な働きぶりで高く評価されています。しかし、その一方で、ヨーロッパ、とくにドイツ人のマネージャーの多くは、残業 が多いと管理の仕方が悪い証でもあると懸念し、また社員が休暇をとってリフレッシュしなければ健康や安全上の問題につながりかねないことを心配します。

ヨーロッパの人は、日本人やアメリカ人に比べ、与えられた休暇をフルに取ろうとする傾向にあります。EUの法律では、加盟28カ国すべてに対して、最低でも年に4週間の休暇をすべての社員に法律で認めるよう義務づけています。その実地状況は国によってまちまちです。

国ごとで異なる休暇規制と取得状況

フ ランスや北欧諸国は、ヨーロッパで最も休暇日数が多いことで知られています。ある調査によると、フランス人は法律で認められた30日(これは土曜日が含ま れます)の休暇をフルに取得していると報告されました。また、週35時間以上働く場合は、その見返りとして休暇をさらに最大22日まで追加することができ ます。

北欧諸国の休暇日数は25日~30日ですが、6月初旬から8月中旬まではほぼ全面的に夏休みとなり、ほとんどの家族連れは夏の間中、海辺や島のバケーションへと雲散霧消します。

ドイツでは、国が義務付けている最低24日の休暇のほかに、州ごとに規制があります。各州が追加の公休日を別途決めていて、学校の休みも州ごとに決められているためです。

私たちイギリス人は、ヨーロッパの中で自分たちが最も仕事熱心だと考えています。法律では28日の休暇が保証されていますが、これには祝日が含まれ、たいていの企業は8日か9日の祝日に加えて25日の休暇を提供しています。最近、さまざまな福利厚生のメニューを提供するのがイギリス企業の間のトレンドとなっていて、これに有給休暇を売り買いするオプションなどが含まれています。使わなかった休暇は翌年に繰り越すこともできますが、繰り越せる日数は通常、上限があります。

イギリスの学校の夏休みは北欧諸国に比べてはるかに短く,またヨーロッパでは、米国のように夏休みに子供を泊まりがけのキャンプに参加させる習慣があまり一般的ではありません。このため親たちは、夏の間に少なくとも2週間の休暇を取得して、子供と一緒にバケーションを過ごせることを期待しています。

このため、欧州全域にわたる事業やチームを管理している場合は、あちこちの国で社員が前々から休暇を申請できるようにするメカニズムを導入する必要があります。夏休みのピークにも仕事をカバーする十分なスタッフを確保できるようにするためです。また、最近では、休暇中もスマートフォンで仕事のメールをチェックする生真面目な社員がいることに懸念を上がりました。この点については、ダイムラーが最近、休暇中の社員が確実にリラックスできるように計らいとして、休みの間はメールを自動的に削除するシステムを導入して話題になりました。

Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

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日本企業はブランドを磨く必要はあるが、イメージはすべてというわけでもない

グローバル・ブランドのトップ100ランキングの調査が最近発表されましたが、今回もまた日本企業は、売上高と日本経済の規模には見合わない、振るわない 結果となりました。ブランドの価値をどのように測定するかは、もちろん意見の分かれるところです。ブランド価値の測定とは多くの場合、ブランドの買収金額 がいくらになるかを数量化する試みです。会社の価値から引き出した何らかの数値を基に、他の資産をすべて引き算して、それと同時に消費者による定性的な評 価を行います。

このリストに入らなかった日本企業のなかには、調査対象が日本人であったならトップ近くにランクインしたであろう企業が含まれています。ただし、それでも なお、そのブランドに付けられる金銭的な価値は欧米企業のようには高くならないのではないかと、私は考えています。その理由は、日本企業が利益をあまり重 視しておらず、「ブランディング」もさほど重要と考えていないことです。

日本企業のエグゼクティブと話すと、「ブランド」とは主にロゴやイメージなどのビジュアル・アイデンティティと広告のことだと見なしている様子が分かります。

日本企業がグローバルに競争するには、欧米の顧客が優良ブランドに何を期待しているかを、もっと理解しなければならないでしょう。しかし、ブランドにとらわれすぎることにも危険性があります。うぬぼれの一種のようになってしまい、コラボレーションを妨げる危険性です。

NTTドコモが「iモード」を導入して10年以上になります。このサービスによって日本は、米国も含めて世界のどの国よりもはるかに進んだ国になりまし た。高機能な携帯電話を手にしたユーザーが、インターネットからアプリやコンテンツを購入するという側面においてです。世界の他の国は、どうすれば日本の 成功を真似できるかを画策しました。日本以外でこの現象を再現するのは不可能だと憶測した人もたくさんいました。日本の消費者や社会に特有の文化が、この コンセプトを可能にしていると考えたためです。しかし今、iPhoneや他のモバイル技術が世界的に成功しているのを見るにつけ、その術さえ与えられれば 世界中の消費者が携帯電話のアプリやコンテンツを買うことは疑いの余地がありません。

他の国が日本に追いつくのにこれだけ時間がかかったということなのだと、私は考えています。日本以外の電話会社や携帯電話メーカーは、ブランドの利益を守 ることに躍起になっていて、日本でドコモが構築したような互恵的なサプライチェーンの生態系を再現することができなかったのだと思うのです。

携帯電話のアプリを開発しているイギリス企業のサポート役として2002年に日本へ出張したことがありましたが、その時ドコモは、自社の提供アプリが作り 出している一定のイメージを自負しようとはしていませんでした。うちは単なる電話会社ですから、と言ったのです。そして、アプリについては開発会社に聞い てくれという姿勢でした。そこで開発会社を訪ねると、その担当者らは、携帯電話メーカーが搭載してくる機能に合わせてアプリを提供しているだけだと言いま した。そして、そのメーカーは、電話会社に製品を納入している一サプライヤにすぎないと言ったのです。

クラウド・コンピューティングとネットワーク社会の時代となった今、日本企業は、米国のオンライン大手、アマゾンやグーグルなどとどうすれば競争できるか を模索しています。グローバル・ブランドの強化は、確かにその一助になるでしょう。でも、多くの日本企業が有しているブランドの重要な要素が、うぬぼれに 陥らずにコラボレーションする能力であるという事実も、見失うべきではありません。

パニラ・ラドリン著 - 日経Weeklyより

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