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横断的人事セミナーのご案内

初秋の候、お客様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

平素は、格別のご高配を賜り誠に有難うございます。

この度弊社では、企業の人事、部門マネジャー、経営者の皆様をお招きいたしまして対面での横断的人事セミナー(参加費無料)を開催させて頂くこととなりました。

急速な変化を続けている労働市場・働き方への理解を深め適応していくことは、従業員のモチベーションを高め優秀な人材確保していく上で雇用主にとって今、重要な課題です。

今回もゲストスピーカーとして中田浩一郎弁護士、Lewis Silkin法律事務所からアビ・フレデリック英国法弁護士、項莉英国移民法弁護士、そして異文化コンサルタントのパニラ・ラドリンさんの4名をお招きし、弊社アソシエイトダイレクターの木元美妃からの最新マーケット情報も併せ、各専門分野のプロの視点から、労働環境の変化・人材確保・多様性への課題と対応に焦点を当てたセミナーにしたいと考えております。

 

日時 : 2023年10月4日(水) 16:30~18:00 

            受付16:00~/レセプション(ネットワーキング)18:00~

場所: Lewis Silkin LLP, Arbor, 255 Blackfriars Road, London, SE1 9AX

定員: 先着60名様(先着順、お申込み者多数の場合は1社1名様の参加にご協力いただく可能性がございます。)

 

お申込みの最終締め切りは9月29日(金)までとなります。貴社名、参加者様のお名前とメールアドレスを明記の上、以下のメール宛先までご連絡いただけます様、よろしくお願いいたします。

Email: href="receptionatcentrepeopledotcom">receptionatcentrepeopledotcom

※ご不明な点等ございましたら、お気軽にお電話くださいませ。 (Tel: 020 7929 5551)

尚、ご都合がつかない場合は、貴社内の関係部署にご転送いただけますと幸いです。

皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

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7年後の在英日系企業 ― 新たな第3フェーズ

エグゼクティブ・サマリー

EU離脱を決めたイギリスの国民投票から7年が経過し、日系企業の長期計画がもたらすレジリエンスのメリットが明らかになっています。在英日系企業の従業員数は2018/19年以降、減少しましたが、これは主に自動車業界によるもので、ホンダによるスウィンドン工場の閉鎖を端緒としています。自動車以外の製造業は雇用・投資とも安定していますが、イギリスに新たに進出した製造業企業はありません。

卸売業界の従業員数も減少しました。これは、日系企業が欧州の物流・倉庫・コーディネーション機能をEUへと移したためです。金融業界ではイギリスから相当規模の投資引き揚げがありましたが、とはいえ従業員数は安定していると見られます。

EUの日系企業数という点ではドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでになり、また日本からの駐在員数ではイギリスを抜いて最多になりました。

イギリスのEU離脱と新型コロナウイルス感染症の激動が収束した今、日系資本の投資に新たな第3フェーズが浮上しつつあります。これはむしろ、気候変動、エネルギー、防衛および安全保障をめぐる地政学的な懸念を見据えたフェーズです。イギリスはこの局面において重要なパートナーになると見なされていますが、これら産業への長期的な政策コミットメントを強化する必要があり、それには大型投資と地元コミュニティの支持を取り付けるだけでなく、EU・アフリカ・中東と確実に協業し同調を図っていくことが求められます。

目次

在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少… 3

日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長… 5

閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数… 6

2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角… 7

イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小… 7

日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に… 8

製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移… 11

イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定… 12

日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に… 13

これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速… 15

在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少

2023年4月に発行された東洋経済のデータベース[1]によると、在英日系企業の従業員数は9万8,000人で、2015/16年の10万6,000人から減少しました。

ラドリン・コンサルティングのデータベースは、買収を通じて日本の親会社の傘下に入った企業が多く含まれているため、2021/22年の従業員数は約16万人で、2015/16年の15万6,000人からわずかに増加しています。

どちらのデータにも共通しているのは、2018/19年が従業員数のピークで、以降は減少している点です。これはフランスやドイツとは異なるパターンで、両国とも従業員数が2020/21年にピークに達し、その後減少しました。オランダは増減しながらも、全体としては成長基調です。

従業員数を業界別に見ていくと、イギリスの雇用縮小はほぼ完全に自動車業界の減少によるものであることが伺えます。同業界では約1万1,000人の雇用が製造・卸売業務で失われました。

 

日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長

東洋経済は、日本企業の子会社である現地法人が2015/16年時点でイギリスには875社、ドイツには764社あったと推定しています。それが2022/23年にはイギリスが982社、ドイツが975社となりました。

ラドリン・コンサルティングの推定値には、法人化されていない支店が含まれており、また買収の結果として日本企業の子会社になった企業が東洋経済のデータよりも多く含まれています。2023年6月時点で、そうした組織がドイツには1,113社、イギリスには1,151社ありました。

 

閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数

ドイツでは2018年以降に閉鎖した企業数が48社、イギリスでは2017年以降に閉鎖した企業数が145社でした。イギリスで正味閉鎖数が最多だったのは卸売業界です。説明として考えられるのは、倉庫・物流業務の重点がEU単一市場へと移動して、在英拠点は欧州の卸売コーディネーション機能を果たさなくなったため、解消されたか支店に転換されたことです。イギリスで閉鎖された日系企業の業界別の内訳は次のとおりです。

  • 自動車 26社
  • サービス 41社
  • 卸売 39社
  • 製造 27社
  • IT 11社
  • 金融 9社
  • 物流 8社
  • 化学 6社
  • 小売 4社
  • 食品 4社

(一部企業は複数の業界に含まれる)

これらの閉鎖の多くは、イギリス市場から撤退したというよりは統合や合併によるものです。

2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角

2017年以降にドイツに新設された日系企業は64社、イギリスは63社でした(うち4社はすでに売却または閉鎖されています)。

イギリスに新設された63社の業界別の内訳は次のとおりです。

  • サービス 35社
  • 卸売 14社
  • IT 6社
  • 金融サービス 6社
  • 製造 3社
  • エネルギー 3社(蓄電、再生可能、生産)
  • 物流 1社(複数の日系企業のコンテナ事業の合併後)
  • 自動車 1社(カルソニックカンセイとの合併後に設立されたハイリマレリ)

(一部企業は複数の業界に含まれる)

イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小

2017年から2023年現在までの間に日本企業に買収された企業の数は、イギリスで179社、ドイツで79社を把握することができました。これは網羅的な数値ではなく、弊社の調査力がイギリスに偏っている事実を反映している可能性があります。

さらに、これらの買収の多くは、イギリス企業やドイツ企業を直接的に買収するものではなく、米国企業や欧州の他の国に本社がある企業を買収した結果として、そのイギリス子会社やドイツ子会社が傘下に収まったという経緯でした。また、現時点で把握しきれていない最近の買収もあるかもしれません。

これらの点を念頭に置いて見ていきますが、イギリスで行われた買収179件のうち123件と過半数を占めたのが、2017年から2019年の3年間の案件で、その後は年間25社前後かそれ以下のペースでした。ドイツでも類似したトレンドが見受けられます。

2017年以降に行われた欧州企業の買収のなかでも主だった案件は次のとおりです。

  • 武田薬品が2019年、アイルランドの製薬会社、シャイアー(ロンドン証券取引所の上場企業)を640億ドルで買収
  • 日立製作所が2020年から2022年にかけ、スイスのABBのパワーグリッド事業を110億ドルで買収
  • ルネサスが2021年、米国で設立されイギリスに住所を置いていた半導体会社、ダイアログを59億ドルで買収
  • 三菱商事と中部電力が2019、オランダのエネルギー会社、エネコを44億ドルで買収
  • 大正製薬が2018、ブリストル・マイヤーズ スクイブからフランスの製薬会社、UPSA SASを16億ドルで買収
  • 日立レールが2015年から2019年にかけ、イタリアのアンサルドSTSを15億ユーロで買収
  • ニデック(日本電産)が2017年、エマーソン・エレクトリックのモーター、ドライブ、発電機事業を12億ドルで買収(イギリス・ウェールズのドライブ製造会社、コントロール・テクニクスとフランスのモーター製造会社、ルロア・ソマーを含む)
  • 豊田自動織機が2017年、オランダの物流会社、ファンダランデを13億ドルで買収
  • NECが2018、デンマークのIT会社、KMDを12億ドルで買収
  • 富士フイルムが2019年、米国バイオジェンの保有するデンマーク・ヒレレズの製造子会社を9億3,000万ドルで買収

イギリス企業は過去に日系企業が追求した最大級のM&A案件のターゲットとなってきました。ソフトバンクによるARM買収、日本板硝子によるピルキントン買収、そのほか金融サービス業界の様々な買収がありました。この傾向は、ルネサスによるダイアログ買収を除き、継続していないように見られます。ただし、イギリスの人材斡旋・派遣、ドライブ、タイヤ、食品、紙卸売などの業界で、比較的小規模な買収が行われています。

日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に

前述の大型案件は、必然的に日本から欧州への資本の流れに影響し、結果として投資総額が年ごとに大きく増減しました。

2017年以降の日本からの直接投資の正味累計額では、それまでの最大投資先だったイギリスを抜いてスイスがトップに立ちました。2019年にスイスの卸売・小売業界に多額の投資が流入した理由は、日立によるABBパワーグリッドの買収に関係していたと思われます。スイスとイギリスに次ぐ3位はオランダ、4位はアイルランドでした。

イギリスへの資本の流れは2020年にマイナス、すなわち正味ダイベストメント(投資撤退)となりましたが、これは通信業界によるもので、ソフトバンクに関係している可能性があります。同社の投資活動のかなりの部分がロンドンで行われているためです。また、2018年にはサービス業界が正味ダイベストメントとなりました。この年に同業界では日本企業による子会社の売却という点で目立った動きがなかったため、在英拠点の資産がEU拠点に移転されたためかもしれません。例えば、ソニーが知的財産権の所有法人を変更しました。

製造業では、イギリスの電気機械、食品、化学品への投資が輸送機器(自動車)への投資を上回り、またこれら3分野への投資額は、同期間のドイツと比べても格段の差がありました。

ドイツとイギリスに対する日本からの直接投資の2017年以降の累計額は次のとおりです[1]。

業界 ドイツ イギリス
食品製造 8億ドル 98億ドル
化学品・医薬品製造 31億ドル 71億ドル
電気機械製造 6億ドル 78億ドル
輸送機器製造 93億ドル 8億ドル
通信 6億ドル 453億ドル
卸売・小売 20億ドル 32億ドル
金融・保険 82億ドル -23億ドル
サービス 12億ドル -345億ドル

国別では下図のとおり、アイルランドが化学品・医薬品製造業界で2019年と2020年に多額の資本流入と資本流出を経験しました。これは武田・シャイアーの案件に関係したものと思われます。デンマークの2019年の資本流出は、武田がデンマークの2工場をオリファームに売却したことに関係しているかもしれません。

日本の財務省のデータは、注意して扱う必要があります。機密保持の理由で提供されていないデータが多々あるためです(例えばフランスや金融サービス業界)。

製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移

2019年と2021年に自動車業界でイギリスからのダイベストメントがあった理由は、ホンダのスウィンドン工場閉鎖に伴うものと見られます。2019年2月に発表され、2021年7月に最終的に閉鎖されましたが、この間に同業界の日系サプライヤも20社ほどが在英拠点を閉鎖しました。

自動車業界の日本からの投資が最も流入したのはドイツでした。2019年の大きな流入は、おそらく積水化成によるプロシートの欧州事業買収に関係しています。この案件にはドイツ、ポーランド、チェコ共和国の工場が含まれ、イギリス工場は2021年に閉鎖されました。

イギリスの自動車業界に対する二次的な投資もあったかもしれませんが、このデータには反映されていません。自動車業界の投資先としてベルギーがドイツに次いで2番目となった理由は、ほぼ間違いなくトヨタが欧州事業の統括会社を置いていることによるものです。このため、この金額の一部はイギリスにあるトヨタの工場に流れたはずです。

2018年にはイギリスの自動車業界に比較的大きな資本流入がありましたが、これは日産が2019年にサンダーランド工場で「ジューク」の生産を開始し、その後さらに第3世代の「キャシュカイ」の生産も開始したことに関係している可能性があります。

自動車以外の製造業では、2019/20年まで従業員数が増加し、その後は横ばいとなりました。弊社が調査した日系製造業企業のほとんどは、EU離脱に向けた対応委員会を設置し、様々なシナリオを想定して計画を策定し、投資を行いました。こうしてコストとメリットを分析した結果として、製造業務を閉鎖して他国に移転するよりは居留まって対応策に投資するほうが合理的だと結論したのでしょう。

イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定

ラドリン・コンサルティングのデータによると、2017年から2022年にかけて、イギリスの金融業界に対する日本からの投資は累計でマイナスになりましたが、従業員数は比較的安定していました。ただし、これは確認が困難です。日系銀行の大手3社のうち2社が、在英拠点をオランダの欧州本社または日本の本社の支店と位置付けていて、イギリスのみの従業員数が開示されていないためです。

アイルランドは、航空機リースと航空機ファイナンスのハブになっているため、日本の金融サービス業界が2017年以降に最も投資した国になったと見られます。例えば、2020年から2022年にかけて、ジャパンインベストメントアドバイザーの子会社、JPリースプロダクツ&サービシイズがアイルランドにエアバスと合弁でリース事業会社を設立し、航空機数機を取得したことが、2020年の大型投資に寄与した可能性があります。

日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に

全体として日本からの駐在員はEMEA全域で減少傾向にあり、コロナ収束後も戻っている様子は見られませんが、オランダとアラブ首長国連邦は例外です。

在英(主にロンドンとその周辺)の駐在員数の変化は、欧州の地域本社機能がドイツとオランダに移りつつあることを示していると言えるでしょう。特に金融サービス会社と商社は日本人駐在員の割合が高いため、この傾向が顕著に反映されがちです。

これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速

過去7年にわたって在英日系企業に関するデータを集めながら、オープンマインドを保つよう心がけてきました。とはいえ、イギリスのEU離脱はすでに存在していたトレンドを加速させるものだという、全体的な見解を持っていたことは認めます(EU離脱が膨大な時間と労力とリソースの無駄だという見方を別にして)。

そこで、今回このデータを見るに当たり、新・旧のどのようなトレンドが浮上してくるかに注目しました。

拙著『The History of Mitsubishi Corporation in London』[1]ではロンドンの三菱商事が1915年からどのように発展したかを解説しましたが、輸出入の貿易業者から地域コーディネーターへと短期に転換したことが明らかでした。これは事業がグローバル化する際の著名なモデルに従っていました。純粋な輸出事業から現地製造事業へ、そして何らかの多国間事業へと展開し、地域レベルのセンター・オブ・エクセレンスを有するようになるという進化の過程です。

三菱商事のような日本の商社は、直接的に製造業を営むことはありませんが、しばしば製造業に投資しています。1989年に三菱商事がイギリスでプリンセス・フーズを買収したのも、その一例でした。これらの事業は主にロンドンを拠点としていて、その理由は、ロンドンがグローバルにも地域的にも重要なハブだと見ているためです。若手社員が情報収集し、国際政策への影響力の及ぼし方を学ぶうえで、良いトレーニングの場になるのです。

EU離脱が現実になった直後に、在英日系企業の経営幹部が多数集まった会合に出席したことがあります。当時の三菱商事EMEA統括者がスピーチに立ち、イギリスのEU離脱は日系企業にとって逆風になると思うが、同社がイギリスから撤退することはないと明言しました。

私自身、三菱商事で経営企画やコーディネーション業務に携わった経験があるため、同社や他の日本の財界[2]企業にとって在英拠点の価値とは戦略的な価値であるということが、本能的に理解できました。とはいえ、ひとたび離脱してしまえばイギリスのEUでの影響力は弱まり、イギリスが日系企業にもたらす戦略的な価値も失われるのではないかと、私は危惧していました。

2017年以降にイギリスから撤退した唯一の日本の商社は双日で、三菱、三井、住友、伊藤忠、丸紅といった大手ではありません。双日は化学品貿易に注力すると決め、その本社をドイツに置くことにしました。ドイツは伝統的に、この地域内の化学品製造のハブと日系企業から見なされています。

イギリスから撤退した他の地域本社は、グローバル化の最初のフェーズに関係した動きでした。日本から製品を輸入していた卸売業企業でしたが、地域コーディネーションと倉庫・物流の拠点をEUに移しました。これはオランダで日系企業の従業員数と駐在員数が大幅に増加した背景となっています。同時に、日本からの駐在員は欧州全域で減少していて、これは卸売業企業の多くがシニアマネジメントを現地化していることの表れかもしれません。

第2フェーズの企業、すなわちイギリスに製造拠点を開設した企業は、やはりイギリス外へ重点を移し、サプライチェーンを引き連れて行きました。消費者家電の製造業企業はかなり前に撤退していたため、主な懸念は自動車業界でした。前述のとおり、自動車業界による欧州への投資を2017年以降に最も引き付けたのはドイツでした。ただし、買収に伴う単発の資本流入だった可能性はあります。ベルギーへの投資の一部は、トヨタ経由でイギリスに流れる可能性があります。また、トヨタも日産もイギリスから引き揚げる兆候は示していません。

第3フェーズは、地域コーディネーションやセンター・オブ・エクセレンスによる事業展開の段階ですが、イギリスではこれがより色濃く表れるようになっています。ただし、地域コーディネーションの中心的な業務とは製造業務のためにサプライチェーンを管理すること、あるいは日本からの輸入品のために物流と倉庫を管理することであり、これらがイギリスを離れた今、イギリスに残ったのは、地政学的な観点に立つ戦略的な投資家で、業界としてはエネルギー、輸送および通信のインフラ、防衛、さらにバイオ・製薬と半導体の研究開発です。

これらの投資家は、海外の成長市場を求めているわけではなく、1990年代から2010年代の失われた30年間に日本企業がイギリスや他国で買収を行ったのとは異なります。動機となっているのはむしろ地政学的な懸念で、気候変動に関係する要因や、通信、エネルギー、デジタルデータなどの業界で敵対国への依存を低減するニーズに関係しています。

現在のイギリス政府は産業政策にまったく触れようとしませんが、イギリスの多数の政治家がこの新しいフェーズを認識していて、イギリスの課題が日本の課題と重なると気付いていることは明らかです。最近ロンドンで開かれた日英イベントでも、現職と歴代の首相および内閣に対する困惑感が伺えました。日本文化のソフトパワーを伝えるジャパン・ハウス・ロンドンの社外取締役としてある展示会に出席してきましたが、ほぼ完全に再生可能エネルギーに焦点を当てていました。

日本政府は先頃、国内企業が開発・生産する防衛装備の規格を米欧と統一すると発表[3]しましたが、これは補修・維持費の抑制に加え、国内企業の事業機会の拡大を狙いとしていて、まさにこの新しい第3フェーズに重なります。イギリス、イタリア、日本は戦闘機開発プログラムを統合し、次期戦闘機の実証試作機を2027年までに共同開発しようとしています。

これらの活動が必ずしもすべて円滑に運ぶことはないでしょう。例えば、日本の商社は、ロシアのLNG開発プロジェクトから撤退する様子は示していません。エネルギー供給の海外依存に及ぼす影響という点で、これは日本政府との協議の議題になっていたことでしょう。例えば、サハリン2プロジェクトは、日本のLNG輸入の約9%を供給しています[4]。

EU離脱後のイギリスで事業を継続するということは、第1フェーズと第2フェーズの企業にとっては、伝統的な輸出入と製造関連の貿易を維持することを意味しました。これらの企業は、あらゆる対応計画を練り、移転する必要のあるものは十分に前もって移転しました。イギリスに拠点を新規開設した製造業企業はなく、イギリスが単一市場に再加入するまでは、おそらくないでしょう。

第3フェーズの企業にとって、EU離脱後のイギリスで事業を継続していくとは、他の欧州諸国と協力・同調し、かつエネルギー、防衛、通信および輸送インフラ、研究開発といった分野でイギリスが欧州内外に対して有する好ましい影響力を活かしていくことを意味します。これは、第2フェーズの製造分野のプロジェクトのように数千人という雇用を創出してサプライチェーンをもたらすといった大衆受けする影響を及ぼすものではありません。事実、選挙という観点からはマイナスの影響になる可能性があります。原子力発電や風力発電、高速鉄道の開発プロジェクトで見てきたとおり、田園風景を破壊することや巨額の投資が必要になるという事実に対しては、常に反対の声があるからです。これは、日本企業が国内で直面する問題に似ています。

しかも、協業に際しては、単に欧州だけでなく、隣接するアフリカと中東も巻き込む必要があります。言うまでもなく気候変動はグローバルな取り組みを必要とし、1か国だけの環境保護主義などあり得ません。日本政府は過去何十年にもわたり、エネルギー小国であることを案じてきました。これが投資の大半を率いる要因となり、特に日本の商社は海外のエネルギー開発プロジェクトに投資してきました。商社はこれまで、しばしばイギリスの地域本社を通じて、アフリカと中東で水力発電から家庭用ソーラー・システムまで様々な再生可能エネルギーのプロジェクトに投資してきました。

日本企業は他の日本企業との取引を好むため、最初に上陸した企業の砦が確立すれば、サプライチェーンやサポートシステムに含まれる他社が追随します。これが1970~80年代にイギリスに進出した日系自動車業界で起きたことでした。このエコシステムは今もイギリスに確実に存在し、部品サプライヤの多くがエネルギー業界やインフラ業界に製品を供給できます。

この新しい第3フェーズのイギリスへの投資、およびイギリスを経由する投資は、工場の建設・改修にイギリス政府が補助金を出すといった方法で誘致されるものではありません。何年も経ってようやく実る長期的な結果のみに投資する意欲、また政治的なエネルギーを費やして持続可能な政府の政策とコミュニティからの支持を取り付けようとする意欲を示すことで誘致されるでしょう。

このレポートの PDF はここからダウンロードできます

[1] https://biz.toyokeizai.net/en/data/service/detail/id=860&academic=1

[1] https://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/ebpfdii.htm

[1] The History of Mitsubishi Corporation in London: 1915 to Present Day, Routledge Advances in Asia-Pacific Business, 2000 https://www.amazon.co.uk/History-Mitsubishi-Corporation-London-Asia-Pacific/dp/0415228727

[2] 財界とは、日本の実業家や財務金融関係者のコミュニティで、特に大きな資本力と影響力、政界とのつながりを有し、世界に対して日本を代表する立場にあると見なされている企業のコミュニティを指します。

[3] https://asia.nikkei.com/Business/Aerospace-Defense-Industries/Japan-to-standardize-arms-with-U.S.-Europe-for-joint-maintenance、2023年6月22日にアクセス

[4] https://www.reuters.com/business/energy/japans-mitsui-says-no-plans-exit-russias-sakhalin-2-lng-project-2023-06-21/

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モロッコと日本

モロッコ政府によると、同国の外資系企業を国別に見ると、最も雇用件数の多いのが日本です。日系企業は75社あり、5万人以上の雇用を創出しています。この数は、今後数年以内にさらに増えるでしょう。2022年4月、日本とモロッコの間で投資の促進と保護、および二重課税の廃止に関する協定が発効したためです。

これまでは、この種の協定がなかったことから、モロッコにある日系企業の拠点は、フランス、スペイン、ドイツの子会社の支店という位置付けでした。社員数が多い企業のほとんどは自動車関連業界で、住友電気工業と矢崎総業に約3万人が雇われています。住友電工は、モロッコに8つの工場を持っていますが、ウクライナの生産を移転するため、これを増やす計画です。矢崎は、90億円を投資してモロッコの生産量を25%増とする計画で、新工場の建設も予定しています。フジクラも、モロッコの工場を稼働させようとしていて、やはりウクライナの生産を移転するためです。

ルノーとステランティス(プジョー)は、モロッコに組立工場を持っていて、モロッコがアフリカ最大の乗用車輸出国になるのに貢献しています。その80%はヨーロッパで販売されていて、主にフランス、スペイン、ドイツ、イタリアですが、EUとの自由貿易協定に支えられています。

モロッコ政府は、現地調達を非常に重視していますが、同国で事業展開している外資系企業をインセンティブや課税の点でサポートしています。また、ルノーの工場があるタンジェとカサブランカを結ぶ高速鉄道をはじめとするインフラにも投資してきました。  モロッコの人件費はスペインの4分の1ほどで、東欧よりも低い水準です。

モロッコで成長しているのは、自動車産業だけではありません。NTTデータは最近、約2億円を投資して1,000人の雇用を創出する計画を打ち出しました。それに先立って、通信分野を担当する両国の大臣の間で覚書が交わされていました。モロッコ政府は、航空宇宙産業と再生可能エネルギー産業の投資の誘致にも熱心です。

モロッコ国王は、2011年のアラブの春以降、民主化改革を導入し、以来、穏健イスラム主義派が政権に就いてきました。しかし、この穏健イスラム主義政党は、昨年の選挙で惨敗しました。新政権は、独立国民連合(RNI)が率いていて、モロッコ実業界で大きな影響力を有するメンバーが含まれています。人権と表現の自由に関しては今も懸念があり、最近の取り締まりでジャーナリストが投獄されました。

日系企業の事業という点では、間違いなく楽観的なムードがあります。アフリカのジェトロが行った最近の調査でも、回答した在モロッコ日系企業の65%が*、事業を拡大する見通しだと答えました。市場規模、成長潜在性、それに社会と政治の安定性はいずれも、他のアフリカ諸国より高いスコアとなっています。  また、インフラの整備と人材確保のしやすさという点でも、モロッコは他のアフリカ諸国を上回りました。ただし、モロッコは英語圏というよりフランス語圏です。そのせいで、日本人駐在員が比較的少ないのかもしれません。

*これが書かれて以来、ジェトロの新しいレポートが出てきており、上記の記事が現在リンクされているが、モロッコでの事業拡大を期待している日本企業の数が 54.5% に減少したことを示している。 一方、モロッコは現在および将来の収益性でアフリカのトップの国の 1 つです。

Pernille Rudlin によるこの記事は、2022 年 6 月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。

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2022年ヨーロッパ、中東、アフリカの日本企業上位30社

2022 年のヨーロッパ、中東、アフリカの日系企業上位 30 社 (以下から無料でダウンロード可能) によると、日系企業上位 30 社の総従業員数は 2021 年の 575,962 人から約 3% 増加し、592,811 人* まで緩やかに増加しています。 EMEA 地域では日本企業に100万人位雇用されており、その約 60% がこれらの大企業グループで働いています。

スウィンドンの英国工場閉鎖のおかげでホンダが撤退しまして、オリンパスに取って代わられました。ホンダがTop30に残れば総従業員数は3%ではなく、 2% の成長になります。 EMEA で従業員数が減少した日本の企業グループは、主にホンダだけでなく、日産 (-8%)、NSG (-6%)、デンソー (-5%) などの自動車セクターでした。

従業員数の増加の一部は買収によるものでした。たとえば、ABB パワーグリッド事業の買収後、欧州中東アフリカ(EMEA)の地域の日立の従業員数は 3 分の 1 近く増加しました。ソニーはまた、2021 年から 2022 年にかけて EMEA で 27% 成長しました。これは、主に英国、オランダ、フィンランド、および米国のビデオゲーム会社による複数の買収の結果である可能性があります。

これは現在、日立のグローバル従業員の 12% とソニーのグローバル従業員の 11% が EMEA 地域にいることを意味し、トップ 30 の平均の14% と比較できます。 EMEA で従業員の割合が平均よりも大幅に高いグループは、大規模な製造業のプレゼンスを持つグループである傾向があります。住友電工は東ヨーロッパと北アフリカに労働集約型のワイヤーハーネス工場を持っているとか、豊田通商はフランスの会社 CFAOを買収して以来、アフリカで大きな存在感を示しています。

全世界の従業員の 38% を EMEA 地域に持つ日本たばこ産業は、日本の最大の企業グループのトップ 10 に入り、16 位から上昇しました。しかし、現在ヨーロッパと中東のウェブサイトに掲載されている数字から判断すると、弊社の計算が過小評価であることが判明しました。約 4,000 人の従業員を雇用するロシアでの事業については、投資の一時停止以外には何も発表していません。リクルートとアサヒはまた、全世界の従業員の 30% 以上を EMEA に配置しています。リクルートは USG People、グラスドアと Indeed を買収し、アサヒはグロールシュやペローニなどのさまざまなビールブランドを数年前買収しました。

2014/5 年以降、この地域で最も拡大した企業グループは、日立 (262%)、NTT (157%)、パナソニック (89%) です。最も縮小したグループは、ホンダ (-55%)、アサヒ (-30%)、富士通 (-25%)、日産 (-22%)、リコー (-15%) です。

このリンクをクリックしすると、2022 年 EMEA の日本企業トップ 30 の PDF を無料でダウンロードはできます。

*この数字は、三菱電機がトップ 30 に含まれたことを反映するために更新されました (2023 年 4 月 17 日)

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日本企業の対エジプト投資について

最近、日本の自動車会社のために開催したオンラインの研修に、エジプトからの社員が数人参加していました。これは、コロナ後の世界の利点のひとつです。研修がオンラインで行われるようになったため、西欧の地域本社に出張するのが難しい人たちも、教室形式の研修に参加できるようになりました。ただし、技術的な問題はまだ残っています。エジプト人の参加者の一人はシニア・マネージャーで、他の参加者と共有できる優れた洞察を持っていましたが、音声の品質が悪くて、よく聞き取れませんでした。

ですから、アフリカに事業拠点のある日本企業を対象としたJETROの最近の調査で、エジプトに投資する魅力としてインフラの充実が挙がらなかったのは驚きではありませんでした。むしろエジプトの魅力は、市場規模と成長潜在性にありました。人口が1億人を超えていて、世界最大のアラブ国家、かつアフリカで3番目に大きい国です。

この調査の回答者は、政治の安定性という点でもエジプトを比較的高く評価していました。現在のアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領が2013年にムハンマド・ムルスィー大統領を解任に追い込んでから状況が改善し、2021年に非常事態宣言が解除されました。ただし、現在も軍政で、様々な人権の懸念があります。他のアラブ国家は、ムルスィー氏の解任以来、エジプト経済を支えてきました。ムルスィー氏の時代には、同氏がムスリム同胞団のメンバーであることを理由に反対していたのです。

ムスリム同胞団のルーツは、第二次世界大戦前にまで遡ります。イスラム教の宗教的・政治的・社会的な運動としてエジプトで創始され、19世紀からのエジプトのイギリス支配に反対してきました。この占領の結果としてエジプトでは英語が広く話されていて、特に管理層では浸透しています。

しかし、エジプトを魅力的な投資先として安易にとらえるわけにはいかないことを、私は自分の家族の歴史から学んでいます。スカンジナビア航空に勤めた祖父は、1950年代にカイロに駐在していました。使用人や料理人のいる贅沢な暮らしを2年ほど送った後、スエズ危機が発生し、ヨーロッパからの他の駐在員の救出活動を取り仕切る立場に立たされました。その前にも、イギリス人や他の外国人がよく出入りする建物でムスリム同胞団のテロ行為が起こっていました。

近年には、外国人を狙って断続的に起こるテロ行為のせいで観光業に影響が及んでいました。そして今は、重要な収入源となっていたロシアとウクライナからの観光客が失われています。また、ロシアとウクライナは、世界の輸出小麦の4分の1以上を供給していて、ヒマワリ油は世界供給の約80%を占めています。このため、小麦と調理油の価格が高騰し、これがエジプトに大きく響いています。エジプトは世界最大の小麦輸入国で、人口の3分の2が公的補助制度を通じてパンを購入しているからです。ヨーロッパ・中東・アフリカ地域の国々の絡み合う歴史は、絶えず進化を続けています。

(この記事は帝国ニュースの2022年5月11日号に掲載されました)

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ウクライナ ― デジタル情報戦では優位

ロシアがウクライナに侵攻する1週間前に、リヴィウにある日系技術企業で働くウクライナ人の社員2人からメールをもらいました。私が提供している研修についての問い合わせでした。紛争の緊張が高まっていることは知っていましたが、普通どおり返信すべきと思い、オンライン・ミーティングを翌週にスケジュールしました。

当然ながら、このミーティングはキャンセルされました。キャンセルを申し入れてきた彼らに、何かできることがあったら教えてほしいと返信すると、「ここで起こっていることを、いろいろな人に話し続けてほしい」とのことでした。彼らはすでに、21世紀の戦争でコミュニケーションが果たす重要な役割を認識していました。

白状すると、この出来事があるまで、自分の仕事に関係することとしてウクライナ情勢に注目していたわけではありませんでした。2014年のユーロマイダンとクリミア併合のことは知っていました。顧客の日系企業の人事マネージャーの弟さんがウクライナ軍で戦ったことを聞いていました。

日本企業のウクライナへの投資は比較的限られていて、ほとんどが自動車関連だと思っていましたが、この日系技術企業から連絡を受けたことで、リヴィウに技術産業のクラスターがあり、IT関連の企業やスタートアップが多いことを知りました。事実、日立製作所は、最近買収した米国のソフトウェア会社、GlobalLogicを通じて、ウクライナに7,000人以上の社員を有していました。

ITサービス産業がウクライナで活況を呈している理由は、在欧日系企業を対象にジェトロが実施した最新の調査結果で分かりました。日系企業はヨーロッパでの投資分野として、炭素削減技術に次いで2番目にデジタル・トランスフォーメーション技術に関心を寄せていました。

在欧日系企業の37%が、すでにその種の技術を使用しています。この割合は、東欧と中欧の日系企業では50%以上です。西欧に比べて低いコストでデジタル・スキルのある人材を見つけられます。

デジタルに明るい人材の厚さは、現在の戦況にも表れています。ウクライナは、ロシアのウェブサイトに侵入しただけでなく、西欧にいる私たちの目には、少なくともソーシャルメディアの情報戦では優勢に立っているように見えます。爆撃と殺害のおぞましい映像の間にも、ウクライナの人たちがシェアしている動画のブラックユーモアと明るい勇気に、私たちは感銘を受けています。ウクライナの農夫がロシア側の戦車をトラクターでけん引して盗んでしまったり、タバコを口にくわえたまま素手で地雷を運んで除去したりしている様子が伝わっています。

ウクライナ人のコミュニケーション・スキル、特にゼレンスキー大統領の手腕は、戦争と独裁者と侵攻の記憶を持つ欧州の人たちに共感を誘っています。イギリスでは、あるテレビ局がゼレンスキー大統領のかつてのコメディ番組を放映しています。一介の歴史の教師が選挙で大統領に選ばれてしまうシリーズです。この物語では、この歴史の教師が罵り言葉もたっぷりに白熱した政治汚職反対の演説をしたのを生徒がスマホで撮影してフェイスブックに投稿したことから、有権者の支持を集めてしまったという筋書きになっています。

(この記事は帝国ニュースの2022年4月13日号に掲載されました)

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100年前の日英関係

今から100年前に終了した「英米訪問実業団」について、最近リサーチしています。日本の財界代表者によるイギリス訪問の歴史に、今日に通じるものがあるかどうかを見たいからです。

この訪問は、1902年に結ばれた日英同盟が破棄されつつある時期に行われました。1921ワシントン会議で日本、イギリス、米国、フランスの四カ国条約が調印され、日英同盟が解消することになったためです。ワシントン会議は1922年に2月に終了しましたが、四カ国条約が発効した1923年8月に日英同盟は正式に失効しました。

日英同盟は、もともと極東におけるロシアの拡張主義に対抗するために締結され、後にドイツからの脅威にも対抗しましたが、1921年までには、イギリスにとってロシアは脅威ではなくなり、ドイツは第一次世界大戦で敗北していました。代わりにイギリスが望んだのは、米国との関係強化でした。米国は、日本に対してより敵対的な姿勢を示していて、太平洋地域や中国で利害対立の可能性を感じていました。

團琢磨が率いた英米訪問実業団は、ワシントン会議のタイミングを見計う格好で、1921年10月から1922年2月にかけて、米国、イギリス、フランスを訪れました。イギリスでは、この使節団の呼び名にいくらかの揺れがありました。産業使節や商業使節と称されたこともありましたが、スピーチの記録などから察するに、イギリスの受け入れ側の多くは、外交目的も兼ねた訪問であることを認識していたようです。

日本は当時、輸出が輸入を上回り、また第一次世界大戦で債権国にもなっていて、国際経済に深く関与していました。渋沢栄一は、日本が国際的影響力を拡大すべき時であり、それには経済と社会の基盤を先進国のレベルに引き上げる必要があると考えていました。

このため、訪問団に参加した財界のメンバーは、造船所や工場を訪れ、関税や商標について議論する一方で、イギリスの労使関係、協同組合運動、イギリス産業連盟にも大きな関心を寄せていました。イギリスの輸送交通インフラを理解することにも熱心でした。イギリスの次にフランスを訪れた使節団は、新たに創設された国際商工会議所を視察しました。

イギリスの実業家が開いた夕食会や昼食会では、貿易の継続が幾度となく話題に上がっていました。とはいえ、イギリスが日本を植民地における競争相手と見なし始めていることは明らかでした。特に綿花製品をめぐる競合があり得ると予期していました。これに対し、團琢磨は、日本とイギリスの両方にとって競争相手は中国だと返しました。

日本の使節団は、日英同盟の解消によって貿易障壁が増えること、また日本の国際的な地位が弱まることを懸念していました。日英同盟は、日本の信用の証左となっていたからです。

この懸念は的中したと言えるでしょう。1929年に世界恐慌が起こると、米国は保護主義を強めました。1932年にはイギリスが帝国特恵関税を導入して、第一に国内の生産者、第二に帝国内の生産者、最後に外国の生産者という政策を取るようになりました。この同じ年に、團琢磨は暗殺されています。

(この記事は帝国ニュースの2022年3月9日号に掲載されました)

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アラブ首長国連邦 ― 多様性と脱炭素

イギリスのBBC放送で「Inside Dubai: Playground of the Rich」という番組が放送されています。ドバイに移住したイギリス人たちの様子を追いかけるシリーズです。彼の地ならではの「太陽と栄華と無税」を謳歌しながらも「規則遵守」が求められ、生活のペースの「凄まじい変化」に対応しなければなりません。

ほとんどのイギリス人にとって、ドバイのイメージは「無税と贅沢と石油」です。とりわけ新型コロナの発生以来、多くのイギリス人セレブリティが機会を見つけては休暇に訪れ、そんなイメージを伝えてきました。彼らがインスタに投稿する写真は、明るい日差しをエンジョイしている写真ばかりで、背後には豪華絢爛な建物や調度が写り込んでいます。でも、居心地の悪さがあるのも否めません。ドバイのイギリス人が植民地時代のようなふるまいをする傍らで、ドバイに住む他の民族の人たちは、はるかに困難な生活を送っているからです。人権侵害にまつわる懸念も払拭できませんし、飲酒、不倫、同性愛に関する厳しい規則もあります。

このイメージは、ジェトロが最近の報告書で説明した結論とは対照的です。いわく、日本企業は再生可能エネルギーや脱炭素に関係する事業開発の場所として中東に魅了されていて、アラブ首長国連邦はサウジアラビアに次いで注目されているとのことでした。

アラブ首長国連邦が中東で最も日系企業の多い国であることは、私も以前から認識していました。数年前に2回訪問して現地の日系銀行で異文化研修を開催しましたし、移民の構成比率が世界で最も高いこの国の文化的な複雑さを理解するために時間を費やしてきました。

この知識が、最近も役に立ちました。ある日本のエネルギー会社から、アラブ首長国連邦でダイバーシティとインクルージョンの研修をサポートしてほしいと依頼されたのです。この研修は、インクルージョンを拡大するための幅広い取り組みの一環と位置付けられていました。年齢や性別や人種にかかわらず、すべての社員の意見に耳を傾けることで、特に脱炭素に関するイノベーションを奨励しようとする取り組みです。

ドバイでは現在、万博が開催されていますが、そのテーマもESG(環境・社会・ガバナンス)を強調しています。「Programme for People and Planet」と称して「新しいアイデアとイノベーションをオープンに交換する」ための活動を展開していて、「人類の進歩の中心に平等、敬意、尊厳を据える」と説明しています。

外国直接投資を誘致する意図もあって、アラブ首長国連邦の指導者らは、すでに万博の準備期間中から、多様性に対して寛容な法律の枠組みが必要になると認識していました。今では、特に特別経済区でのハラスメントと差別を禁じる新法が制定されているほか、飲酒法や個人生活にかかわるイスラム法が緩和されています。

ですから、日本企業がアラブ首長国連邦に対して再びポジティブな感情を抱く理由は理解できます。事業開発の観点だけでなく、会社が変化・進化するうえで必要な多様性を許容する法律の枠組みになりつつあるという点で、この国に魅力を感じているのでしょう。

帝国ニューズ・2022年2月9日・パニラ・ラドリン著

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イギリスの飲食業界の未来

イングランドでソーシャル・ディスタンスの制限がほぼすべて解除されたのを受けて、都市に生じた変化が見え始めました。これらの変化が恒久的なものかどうかを考えてみましょう。

一部のトレンドは、昨年3月よりも前から明らかに観察されていました。例えば、大型チェーン店の多くは、過去何年にもわたって業績不振でしたが、今や閉店に追い込まれました。新たに小規模な店が開店していて、主に家庭用品やテイクアウト・フードを販売しています。

レストランやパブも営業を再開しましたが、多くが週に数日のみの営業です。人手不足が生じていて、スタッフを雇えないからです。コロナで仕事に戻ってきていない従業員がいるうえ、一部のレストランではEU諸国からの出身者がスタッフの半分ぐらいを占めていて、その人たちが本国に戻ってしまったためです。イギリス人の若者たちは、低賃金・長時間労働には興味がなく、飲食業界ではキャリアの展望が描けないと考えています。

もちろん、また外に出て飲食できることを人々は喜んでいますが、混雑した屋内の空間には不安も感じています。多くの都市がロックダウンの期間を利用して、「車通りの少ない地区」を設置することにしました。これまでは車が通行していた路上に植物のプランターや手すりを設置して道幅を狭め、カフェやバーが舗道にテーブルといすを置けるようにしたのです。

この方策は、必ずしも全員に歓迎されているわけではありません。路上駐車のスペースが減って、近くに車を停められなくなったため、かえって商売に響くという懸念があります。また、消防車や救急車が通れなくなって、緊急時に遠回りを余儀なくされるということも起きています。イギリスのお天気は屋外での食事には向いていませんが、イギリス人は意志が固いと見え、雨が降っても風が吹いても、温かい洋服を着込んでカフェが設置した傘やテントの下で飲食しています。

カフェ文化が出現して、イギリス各地の都市が大陸ヨーロッパの都市のような様相を呈しつつあります。不動産開発をしている人の話によると、このトレンドはコロナ前からあったそうです。この人は以前はナイトクラブのオーナーでしたが、ナイトクラブは衰退産業だと感じたそうです。スーパーで安価なアルコール飲料が売られていて、若者たちは自宅で「前飲み」してから外出するため、ナイトクラブの高いドリンクにあまりお金を費やしません。友達と集まるのなら、入場料金のないパブやカフェを好み、友達サークル以外の出会いを求めるのであれば、ナイトクラブよりも恋愛サイトに向かいます。

私の住んでいる市では、市議会が10年前に「夜間経済地区」と称して、あるひとつの通りにナイトクラブを集めようとしました。警察のパトロールがしやすくなるうえ、騒音を一地区に押さえ込めるという発想です。  私の家は、その通りからそう遠くありません。7年前にここに引っ越してきた時には、許可時間を過ぎてもあちこちから大音量の音楽が聞こえてくるという問題がありましたが、今ではそのナイトクラブのうち1軒がビーガンのレストランとなり、もう1軒はアパートへの改修工事中です。さらにもう1軒はサービス付きオフィスビルになっていて、1階にカフェが入っています。

この記事は帝国ニュースの2021年9月8日号に掲載されました)

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グローバル・ブランドの管理に長けたフランス

日本ペイントホールディングスが最近、フランスの塗料メーカー、Cromologyを買収したというニュースを見て、理解するのに少し時間がかかりました。この買収は、オーストラリアにある連結子会社のDuluxGroupが新しくイギリスに設立したDGL International UKを通じて行われていました。イギリス人にとってはDuluxは親しみのあるブランドで、1960年代からオールド・イングリッシュ・シープドッグを使ったマーケティングで知られています。CMやペンキの缶でお馴染みのこの犬種がDulux犬と呼ばれているほどです。

調べてみたところ、オーストラリアでも広告にDulux犬が使われていましたが、今ではイギリスのDuluxとオーストラリアのDuluxはまったく異なる親会社の傘下に収まっています。Duluxブランドのペンキは、1930年代に初めてイギリス市場で販売されました。イギリス企業のICIが開発した塗料で、ブランド名は「Durable」(長持ちする)と「Luxury」(贅沢)を組み合わせた造語でした。1986年までには、ICIの豪州法人がDuluxの豪州法人を100%所有していましたが、1997年、親会社のICIがこの豪州事業を売却しました。

そして2008年には、イギリスのICIがオランダのAkzoNobelに買収されました。一方、オーストラリアのDuluxGroupは、2010年に独立企業としてオーストラリア証券取引所に上場し、以来、オーストラリア、イギリス、フランスの様々な塗料ブランドを買収してきました。そして

Cromologyは、欧州で4位の建設用塗料のメーカーで、20種類のブランドを有し、イタリア、スペイン、ポルトガル、フランスで製品を販売しています。明らかに日本ペイントは、Duluxをはじめ様々なブランドを中欧・東欧にも拡大する手段としてこの買収を位置付けています。

最近までフランスは、日本企業がヨーロッパに進出する際の拠点として、イギリスやドイツのように大きな存在ではありませんでした。しかし、今回の日本ペイントの動きを見て、これが変化しつつあるのかどうかを考えさせられました。日本企業がフランス拠点の多国籍企業を買収した事例としては、豊田通商による

CFAOは、日本の商社に似たような業態で、170年近い歴史を有しています。アフリカ39か国、特にフランス語圏の国に大きく事業展開しているほか、ベトナムなどかつてのフランス植民地にも進出しています。全世界の従業員数は2万1,000人以上で、トヨタ車の販売のほか、醸造酒、医薬品、小売り、自動車整備サービスなどの事業を有しています。

フランスはこれまで長年にわたり、有名ブランドをグローバルに管理してきた経験があります。しかし、以前にもこの連載で言及したとおり、多国籍企業はしばしば、事業コストが高く、労使関係に問題があるうえ、複雑な官僚主義のある国への投資には消極的です。フランスのマクロン大統領は、労働法を改革し、退職年齢を引き上げ、年金制度の経済負担を軽減しようとしてきましたが、コロナ禍でこれらの動きが停滞しています。来年4月の大統領選で再選を果たすために人気を維持しておかなければならないという事情も働いています。フランスが模様替えのムードになるのかどうかは、来年後半まで見えてこないかもしれません。

(この記事は帝国ニュースの2021年12月8日号に掲載されました)

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