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EU離脱 - Rudlin Consulting

カテゴリー: EU離脱

  • 英国への日本の直接投資の謎

    英国への日本の直接投資の謎

    ここ数年、英国における日本の対外投資について、ずっと腑に落ちないことがあります。2016年以降、日本企業による英国の「通信」分野への純投資額は550億ドルで、次に多かった食品製造業への純投資額の3倍以上にのぼっています。

    chart showing Japanese foreign direct investment by sector in the UK

    英国の食品製造業への買収・投資は、私の知る限りでも、全英食品(Taiko Foods)やYO! Sushiを買収したゼンショー、Branston、Haywards、Sarsonsなど英国ブランドを取得したミツカン、Seabrook Crispsを買収したカルビー、そして水産加工業界におけるさまざまな買収など、近年いくつもありました。

    では、「通信」分野には、どのような日本企業が数百億ドル規模で英国に投資したのでしょうか?日本の財務省が使う「通信業」という分類を見てみると、日本の主要プレイヤーはNTT、KDDI、ソフトバンクといった企業になります。英国での用語としては「テレコミュニケーションズ(telecommunications)」に近いかもしれません。

    確かにNTTとKDDIは、近年英国でデータセンターへの投資を進めており、NTTはロンドンに日本国外のグローバル本社を設置しています。ただ、それでも数百億ドル規模の投資には到底及ばないでしょう。そうなると、残るはソフトバンクです。

    ソフトバンクは2016年に66億ドルでARMを買収しています。これは2017年の数値を説明するものかもしれません。しかしその後の数百億ドル規模の投資、そして2020年に見られた200億ドル以上の大規模な資金引き上げは何だったのでしょうか。おそらく、ソフトバンク・ビジョン・ファンドによる資金の出入りだと推測されます。ロンドンに本拠を置くSoftBank Investment Advisersが運用しているためです。

    もう一つの謎は、サービス業分野での投資動向です。2016年には330億ドルが英国に投資されたのに対し、2018年にはそのうちの320億ドルが引き上げられ、純投資額はわずか6.61億ドルにとどまりました。「サービス業」は非常に広範なカテゴリーであり、Brexitに備えて、欧州向け物流、倉庫、統括拠点機能が英国からEU域内へ移されたこと、そしてそれに伴う資本の移動が反映されている可能性があります。

    金融・保険分野では、2018年、2019年、2022年に資本引き上げがあったものの、全体としては67億ドルの純投資となっています。日付を見る限り、この純投資額は「Brexitやトラス政権の予算」にもかかわらず、という評価になるでしょう。

    輸送用機器製造業、つまり自動車製造などでは、ホンダが2021年にスウィンドン工場を閉鎖し、関連部品サプライヤーも撤退するなど、一部で資本引き上げが起こりました。しかし2024年の20億ドルの投資に助けられ、2016年以降の純投資額は30億ドルの黒字です。ただし、これを上回る純投資が、サービス業以外のほとんどの分野で見られます。

    比較のために、ドイツおよびオランダへの主要な投資状況を以下に示します:

    Chart showing Japanese FDI into Germany 2016 to 2024chart showing Japanese FDI into the Netherlands 2016 to 2024

    分野別に見ると、「金融・保険」分野では、オランダがBrexitの最大の恩恵を受けており、純投資額は210億ドル。ドイツは90億ドル、英国は67億ドルにとどまります。

    「輸送用機器製造」分野では、ドイツが明らかに優位に立っており、2016~2024年の純投資額は95億ドル。これに対し、英国は37億ドル、オランダは17.5億ドルです。なお、ドイツには日本の完成車メーカーの工場は存在しないにもかかわらずです。

    「通信」分野への日本企業からの投資では、英国の550億ドルという数字は、オランダの28億ドル、ドイツの15億ドルを大きく上回ります。これは明らかに、英国に本拠を置くソフトバンク・ビジョン・ファンドによる資金の流れが反映された数字であり、英国の通信インフラ自体への実質的な投資ではないことを裏付けているようにも見えます。もし、これが事業判断による投資であったならば、NTTによるドイツやオランダへの同様の投資も見られたはずです。

    総じて、日本企業の視点から見た三国の貿易・投資上の比較優位は明確です。英国はデジタル、サービス、通信分野(ただしソフトバンクによる統計上の歪みを含む)、ドイツは自動車・化学系製造業および法人向け銀行業務、オランダは食品製造分野の強みに加え、税制上有利なEU域内の金融サービス本社の新拠点としての地位を確立しつつあります(ただし、製造業に比べ雇用効果は限定的)。

    英国およびEMEAの金融サービス分野における日本からの海外直接投資に関するさらなる洞察については、「英国・EMEAにおける日本の金融サービス 2025年版」レポートおよびディレクトリをこちらからご購入・ダウンロードいただけます

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  • Muji Europe Holdings は破産を申請

    Muji Europe Holdings は破産を申請

    Muji Europe Holdings は、フィンランド、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、スイス、デンマーク、アイルランド、ポーランドに55店舗を展開するイギリスを拠点とする親会社で、破産を申請しました。同社は、一般的に小売業者が好む「プリパック」手続きを利用しており、事業の売却は行政官が正式に任命される前に合意されています。

    そのため、店舗は引き続き営業を続け、従業員も引き続き雇用される見込みです。

    無印良品は「これは事業の計画的な戦略的再構築の一部であり、Mujiの経営陣はまもなく合意に達すると期待しています。」と述べています。Muji、あるいはその親会社である良品計画は、2018年にはBrexitの影響でヨーロッパ本部をドイツに移すことを検討しているとの噂がありました。今では、オランダに保税倉庫を持ち、その倉庫と物流基地はEU内にあります。したがって、これが単に英国の本部を閉鎖し、EU内に新しい本部を設立するためのプロセスではないかと思われます。

    Muji Europe Holdingsは、2015/6年に英国で168人の従業員を擁していましたが、現在は31人しかいません。また、英国に拠点を置く良品計画ヨーロッパは、143人の従業員を擁しています。

    東洋経済ビジネスマガジンの特派員によれば、「それほど深刻に受け止める必要はありません…同社のヨーロッパおよび米国での影響力は限られており、同社は販売チャンネルを東アジアに拡大する方向に転換しています」と述べています。同社はアジアに494店舗を展開しており、最近の店舗のオープンは主にそこに集中しています。米国の事業は2020年に破産しました。良品計画の利益は減少傾向にありますので、明らかに何らかの対策が必要です。国内市場では、これらの対策は主により地方に進出し、スーパーマーケット内のコンセッションとして開業し、製品ラインナップを地域に根ざしたものにすることが主でした。

    更新:4月8日の良品計画取締役会は次のように決定しました:

    「将来のヨーロッパ事業を発展させるために、を清算し、親子会社間の債権および債務を解消し、事業を当社の完全子会社であるMUJIヨーロッパ株式会社(英国、以下「MEL」)に譲渡します。会社は、ヨーロッパの企業の事業を継承し、継続することを決定しました。この再編に伴い、会社は利益を改善し、財務基盤を強化するために、赤字店舗の撤退や費用構造の見直しなど、構造改革を実施する予定です。」

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  • 7年後の在英日系企業 ― 新たな第3フェーズ

    7年後の在英日系企業 ― 新たな第3フェーズ

    エグゼクティブ・サマリー

    EU離脱を決めたイギリスの国民投票から7年が経過し、日系企業の長期計画がもたらすレジリエンスのメリットが明らかになっています。在英日系企業の従業員数は2018/19年以降、減少しましたが、これは主に自動車業界によるもので、ホンダによるスウィンドン工場の閉鎖を端緒としています。自動車以外の製造業は雇用・投資とも安定していますが、イギリスに新たに進出した製造業企業はありません。

    卸売業界の従業員数も減少しました。これは、日系企業が欧州の物流・倉庫・コーディネーション機能をEUへと移したためです。金融業界ではイギリスから相当規模の投資引き揚げがありましたが、とはいえ従業員数は安定していると見られます。

    EUの日系企業数という点ではドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでになり、また日本からの駐在員数ではイギリスを抜いて最多になりました。

    イギリスのEU離脱と新型コロナウイルス感染症の激動が収束した今、日系資本の投資に新たな第3フェーズが浮上しつつあります。これはむしろ、気候変動、エネルギー、防衛および安全保障をめぐる地政学的な懸念を見据えたフェーズです。イギリスはこの局面において重要なパートナーになると見なされていますが、これら産業への長期的な政策コミットメントを強化する必要があり、それには大型投資と地元コミュニティの支持を取り付けるだけでなく、EU・アフリカ・中東と確実に協業し同調を図っていくことが求められます。

    目次

    在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少… 3

    日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長… 5

    閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数… 6

    2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角… 7

    イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小… 7

    日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に… 8

    製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移… 11

    イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定… 12

    日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に… 13

    これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速… 15

    在英日系企業の従業員数は2018/19年まで増加の後に減少

    2023年4月に発行された東洋経済のデータベース[1]によると、在英日系企業の従業員数は9万8,000人で、2015/16年の10万6,000人から減少しました。

    ラドリン・コンサルティングのデータベースは、買収を通じて日本の親会社の傘下に入った企業が多く含まれているため、2021/22年の従業員数は約16万人で、2015/16年の15万6,000人からわずかに増加しています。

    どちらのデータにも共通しているのは、2018/19年が従業員数のピークで、以降は減少している点です。これはフランスやドイツとは異なるパターンで、両国とも従業員数が2020/21年にピークに達し、その後減少しました。オランダは増減しながらも、全体としては成長基調です。

    従業員数を業界別に見ていくと、イギリスの雇用縮小はほぼ完全に自動車業界の減少によるものであることが伺えます。同業界では約1万1,000人の雇用が製造・卸売業務で失われました。

     

    日系企業数はドイツがイギリスとほぼ肩を並べるまでに成長

    東洋経済は、日本企業の子会社である現地法人が2015/16年時点でイギリスには875社、ドイツには764社あったと推定しています。それが2022/23年にはイギリスが982社、ドイツが975社となりました。

    ラドリン・コンサルティングの推定値には、法人化されていない支店が含まれており、また買収の結果として日本企業の子会社になった企業が東洋経済のデータよりも多く含まれています。2023年6月時点で、そうした組織がドイツには1,113社、イギリスには1,151社ありました。

     

    閉鎖した企業数はドイツよりもイギリスで多数

    ドイツでは2018年以降に閉鎖した企業数が48社、イギリスでは2017年以降に閉鎖した企業数が145社でした。イギリスで正味閉鎖数が最多だったのは卸売業界です。説明として考えられるのは、倉庫・物流業務の重点がEU単一市場へと移動して、在英拠点は欧州の卸売コーディネーション機能を果たさなくなったため、解消されたか支店に転換されたことです。イギリスで閉鎖された日系企業の業界別の内訳は次のとおりです。

    • 自動車 26社
    • サービス 41社
    • 卸売 39社
    • 製造 27社
    • IT 11社
    • 金融 9社
    • 物流 8社
    • 化学 6社
    • 小売 4社
    • 食品 4社

    (一部企業は複数の業界に含まれる)

    これらの閉鎖の多くは、イギリス市場から撤退したというよりは統合や合併によるものです。

    2017年以降に新設された日系企業数はイギリスとドイツが互角

    2017年以降にドイツに新設された日系企業は64社、イギリスは63社でした(うち4社はすでに売却または閉鎖されています)。

    イギリスに新設された63社の業界別の内訳は次のとおりです。

    • サービス 35社
    • 卸売 14社
    • IT 6社
    • 金融サービス 6社
    • 製造 3社
    • エネルギー 3社(蓄電、再生可能、生産)
    • 物流 1社(複数の日系企業のコンテナ事業の合併後)
    • 自動車 1社(カルソニックカンセイとの合併後に設立されたハイリマレリ)

    (一部企業は複数の業界に含まれる)

    イギリスはなおも日本企業のM&Aターゲットだが、以前よりも規模が縮小

    2017年から2023年現在までの間に日本企業に買収された企業の数は、イギリスで179社、ドイツで79社を把握することができました。これは網羅的な数値ではなく、弊社の調査力がイギリスに偏っている事実を反映している可能性があります。

    さらに、これらの買収の多くは、イギリス企業やドイツ企業を直接的に買収するものではなく、米国企業や欧州の他の国に本社がある企業を買収した結果として、そのイギリス子会社やドイツ子会社が傘下に収まったという経緯でした。また、現時点で把握しきれていない最近の買収もあるかもしれません。

    これらの点を念頭に置いて見ていきますが、イギリスで行われた買収179件のうち123件と過半数を占めたのが、2017年から2019年の3年間の案件で、その後は年間25社前後かそれ以下のペースでした。ドイツでも類似したトレンドが見受けられます。

    2017年以降に行われた欧州企業の買収のなかでも主だった案件は次のとおりです。

    • 武田薬品が2019年、アイルランドの製薬会社、シャイアー(ロンドン証券取引所の上場企業)を640億ドルで買収
    • 日立製作所が2020年から2022年にかけ、スイスのABBのパワーグリッド事業を110億ドルで買収
    • ルネサスが2021年、米国で設立されイギリスに住所を置いていた半導体会社、ダイアログを59億ドルで買収
    • 三菱商事と中部電力が2019、オランダのエネルギー会社、エネコを44億ドルで買収
    • 大正製薬が2018、ブリストル・マイヤーズ スクイブからフランスの製薬会社、UPSA SASを16億ドルで買収
    • 日立レールが2015年から2019年にかけ、イタリアのアンサルドSTSを15億ユーロで買収
    • ニデック(日本電産)が2017年、エマーソン・エレクトリックのモーター、ドライブ、発電機事業を12億ドルで買収(イギリス・ウェールズのドライブ製造会社、コントロール・テクニクスとフランスのモーター製造会社、ルロア・ソマーを含む)
    • 豊田自動織機が2017年、オランダの物流会社、ファンダランデを13億ドルで買収
    • NECが2018、デンマークのIT会社、KMDを12億ドルで買収
    • 富士フイルムが2019年、米国バイオジェンの保有するデンマーク・ヒレレズの製造子会社を9億3,000万ドルで買収

    イギリス企業は過去に日系企業が追求した最大級のM&A案件のターゲットとなってきました。ソフトバンクによるARM買収、日本板硝子によるピルキントン買収、そのほか金融サービス業界の様々な買収がありました。この傾向は、ルネサスによるダイアログ買収を除き、継続していないように見られます。ただし、イギリスの人材斡旋・派遣、ドライブ、タイヤ、食品、紙卸売などの業界で、比較的小規模な買収が行われています。

    日本からの投資先としてスイスがイギリスを抜き、正味金額で欧州最大に

    前述の大型案件は、必然的に日本から欧州への資本の流れに影響し、結果として投資総額が年ごとに大きく増減しました。

    2017年以降の日本からの直接投資の正味累計額では、それまでの最大投資先だったイギリスを抜いてスイスがトップに立ちました。2019年にスイスの卸売・小売業界に多額の投資が流入した理由は、日立によるABBパワーグリッドの買収に関係していたと思われます。スイスとイギリスに次ぐ3位はオランダ、4位はアイルランドでした。

    イギリスへの資本の流れは2020年にマイナス、すなわち正味ダイベストメント(投資撤退)となりましたが、これは通信業界によるもので、ソフトバンクに関係している可能性があります。同社の投資活動のかなりの部分がロンドンで行われているためです。また、2018年にはサービス業界が正味ダイベストメントとなりました。この年に同業界では日本企業による子会社の売却という点で目立った動きがなかったため、在英拠点の資産がEU拠点に移転されたためかもしれません。例えば、ソニーが知的財産権の所有法人を変更しました。

    製造業では、イギリスの電気機械、食品、化学品への投資が輸送機器(自動車)への投資を上回り、またこれら3分野への投資額は、同期間のドイツと比べても格段の差がありました。

    ドイツとイギリスに対する日本からの直接投資の2017年以降の累計額は次のとおりです[1]

    業界 ドイツ イギリス
    食品製造 8億ドル 98億ドル
    化学品・医薬品製造 31億ドル 71億ドル
    電気機械製造 6億ドル 78億ドル
    輸送機器製造 93億ドル 8億ドル
    通信 6億ドル 453億ドル
    卸売・小売 20億ドル 32億ドル
    金融・保険 82億ドル -23億ドル
    サービス 12億ドル -345億ドル

    国別では下図のとおり、アイルランドが化学品・医薬品製造業界で2019年と2020年に多額の資本流入と資本流出を経験しました。これは武田・シャイアーの案件に関係したものと思われます。デンマークの2019年の資本流出は、武田がデンマークの2工場をオリファームに売却したことに関係しているかもしれません。

    日本の財務省のデータは、注意して扱う必要があります。機密保持の理由で提供されていないデータが多々あるためです(例えばフランスや金融サービス業界)。

    製造業の雇用は自動車を除いて安定的に推移

    2019年と2021年に自動車業界でイギリスからのダイベストメントがあった理由は、ホンダのスウィンドン工場閉鎖に伴うものと見られます。2019年2月に発表され、2021年7月に最終的に閉鎖されましたが、この間に同業界の日系サプライヤも20社ほどが在英拠点を閉鎖しました。

    自動車業界の日本からの投資が最も流入したのはドイツでした。2019年の大きな流入は、おそらく積水化成によるプロシートの欧州事業買収に関係しています。この案件にはドイツ、ポーランド、チェコ共和国の工場が含まれ、イギリス工場は2021年に閉鎖されました。

    イギリスの自動車業界に対する二次的な投資もあったかもしれませんが、このデータには反映されていません。自動車業界の投資先としてベルギーがドイツに次いで2番目となった理由は、ほぼ間違いなくトヨタが欧州事業の統括会社を置いていることによるものです。このため、この金額の一部はイギリスにあるトヨタの工場に流れたはずです。

    2018年にはイギリスの自動車業界に比較的大きな資本流入がありましたが、これは日産が2019年にサンダーランド工場で「ジューク」の生産を開始し、その後さらに第3世代の「キャシュカイ」の生産も開始したことに関係している可能性があります。

    自動車以外の製造業では、2019/20年まで従業員数が増加し、その後は横ばいとなりました。弊社が調査した日系製造業企業のほとんどは、EU離脱に向けた対応委員会を設置し、様々なシナリオを想定して計画を策定し、投資を行いました。こうしてコストとメリットを分析した結果として、製造業務を閉鎖して他国に移転するよりは居留まって対応策に投資するほうが合理的だと結論したのでしょう。

    イギリスの金融サービス業界は正味ダイベストメントながらも従業員数は安定

    ラドリン・コンサルティングのデータによると、2017年から2022年にかけて、イギリスの金融業界に対する日本からの投資は累計でマイナスになりましたが、従業員数は比較的安定していました。ただし、これは確認が困難です。日系銀行の大手3社のうち2社が、在英拠点をオランダの欧州本社または日本の本社の支店と位置付けていて、イギリスのみの従業員数が開示されていないためです。

    アイルランドは、航空機リースと航空機ファイナンスのハブになっているため、日本の金融サービス業界が2017年以降に最も投資した国になったと見られます。例えば、2020年から2022年にかけて、ジャパンインベストメントアドバイザーの子会社、JPリースプロダクツ&サービシイズがアイルランドにエアバスと合弁でリース事業会社を設立し、航空機数機を取得したことが、2020年の大型投資に寄与した可能性があります。

    日本からの駐在員数はドイツがイギリスを抜いて欧州の最多国に

    全体として日本からの駐在員はEMEA全域で減少傾向にあり、コロナ収束後も戻っている様子は見られませんが、オランダとアラブ首長国連邦は例外です。

    在英(主にロンドンとその周辺)の駐在員数の変化は、欧州の地域本社機能がドイツとオランダに移りつつあることを示していると言えるでしょう。特に金融サービス会社と商社は日本人駐在員の割合が高いため、この傾向が顕著に反映されがちです。

    これらすべてが何を意味するのか? 新・旧トレンドの加速

    過去7年にわたって在英日系企業に関するデータを集めながら、オープンマインドを保つよう心がけてきました。とはいえ、イギリスのEU離脱はすでに存在していたトレンドを加速させるものだという、全体的な見解を持っていたことは認めます(EU離脱が膨大な時間と労力とリソースの無駄だという見方を別にして)。

    そこで、今回このデータを見るに当たり、新・旧のどのようなトレンドが浮上してくるかに注目しました。

    拙著『The History of Mitsubishi Corporation in London』[1]ではロンドンの三菱商事が1915年からどのように発展したかを解説しましたが、輸出入の貿易業者から地域コーディネーターへと短期に転換したことが明らかでした。これは事業がグローバル化する際の著名なモデルに従っていました。純粋な輸出事業から現地製造事業へ、そして何らかの多国間事業へと展開し、地域レベルのセンター・オブ・エクセレンスを有するようになるという進化の過程です。

    三菱商事のような日本の商社は、直接的に製造業を営むことはありませんが、しばしば製造業に投資しています。1989年に三菱商事がイギリスでプリンセス・フーズを買収したのも、その一例でした。これらの事業は主にロンドンを拠点としていて、その理由は、ロンドンがグローバルにも地域的にも重要なハブだと見ているためです。若手社員が情報収集し、国際政策への影響力の及ぼし方を学ぶうえで、良いトレーニングの場になるのです。

    EU離脱が現実になった直後に、在英日系企業の経営幹部が多数集まった会合に出席したことがあります。当時の三菱商事EMEA統括者がスピーチに立ち、イギリスのEU離脱は日系企業にとって逆風になると思うが、同社がイギリスから撤退することはないと明言しました。

    私自身、三菱商事で経営企画やコーディネーション業務に携わった経験があるため、同社や他の日本の財界[2]企業にとって在英拠点の価値とは戦略的な価値であるということが、本能的に理解できました。とはいえ、ひとたび離脱してしまえばイギリスのEUでの影響力は弱まり、イギリスが日系企業にもたらす戦略的な価値も失われるのではないかと、私は危惧していました。

    2017年以降にイギリスから撤退した唯一の日本の商社は双日で、三菱、三井、住友、伊藤忠、丸紅といった大手ではありません。双日は化学品貿易に注力すると決め、その本社をドイツに置くことにしました。ドイツは伝統的に、この地域内の化学品製造のハブと日系企業から見なされています。

    イギリスから撤退した他の地域本社は、グローバル化の最初のフェーズに関係した動きでした。日本から製品を輸入していた卸売業企業でしたが、地域コーディネーションと倉庫・物流の拠点をEUに移しました。これはオランダで日系企業の従業員数と駐在員数が大幅に増加した背景となっています。同時に、日本からの駐在員は欧州全域で減少していて、これは卸売業企業の多くがシニアマネジメントを現地化していることの表れかもしれません。

    2フェーズの企業、すなわちイギリスに製造拠点を開設した企業は、やはりイギリス外へ重点を移し、サプライチェーンを引き連れて行きました。消費者家電の製造業企業はかなり前に撤退していたため、主な懸念は自動車業界でした。前述のとおり、自動車業界による欧州への投資を2017年以降に最も引き付けたのはドイツでした。ただし、買収に伴う単発の資本流入だった可能性はあります。ベルギーへの投資の一部は、トヨタ経由でイギリスに流れる可能性があります。また、トヨタも日産もイギリスから引き揚げる兆候は示していません。

    3フェーズは、地域コーディネーションやセンター・オブ・エクセレンスによる事業展開の段階ですが、イギリスではこれがより色濃く表れるようになっています。ただし、地域コーディネーションの中心的な業務とは製造業務のためにサプライチェーンを管理すること、あるいは日本からの輸入品のために物流と倉庫を管理することであり、これらがイギリスを離れた今、イギリスに残ったのは、地政学的な観点に立つ戦略的な投資家で、業界としてはエネルギー、輸送および通信のインフラ、防衛、さらにバイオ・製薬と半導体の研究開発です。

    これらの投資家は、海外の成長市場を求めているわけではなく、1990年代から2010年代の失われた30年間に日本企業がイギリスや他国で買収を行ったのとは異なります。動機となっているのはむしろ地政学的な懸念で、気候変動に関係する要因や、通信、エネルギー、デジタルデータなどの業界で敵対国への依存を低減するニーズに関係しています。

    現在のイギリス政府は産業政策にまったく触れようとしませんが、イギリスの多数の政治家がこの新しいフェーズを認識していて、イギリスの課題が日本の課題と重なると気付いていることは明らかです。最近ロンドンで開かれた日英イベントでも、現職と歴代の首相および内閣に対する困惑感が伺えました。日本文化のソフトパワーを伝えるジャパン・ハウス・ロンドンの社外取締役としてある展示会に出席してきましたが、ほぼ完全に再生可能エネルギーに焦点を当てていました。

    日本政府は先頃、国内企業が開発・生産する防衛装備の規格を米欧と統一すると発表[3]しましたが、これは補修・維持費の抑制に加え、国内企業の事業機会の拡大を狙いとしていて、まさにこの新しい第3フェーズに重なります。イギリス、イタリア、日本は戦闘機開発プログラムを統合し、次期戦闘機の実証試作機を2027年までに共同開発しようとしています。

    これらの活動が必ずしもすべて円滑に運ぶことはないでしょう。例えば、日本の商社は、ロシアのLNG開発プロジェクトから撤退する様子は示していません。エネルギー供給の海外依存に及ぼす影響という点で、これは日本政府との協議の議題になっていたことでしょう。例えば、サハリン2プロジェクトは、日本のLNG輸入の約9%を供給しています[4]

    EU離脱後のイギリスで事業を継続するということは、第1フェーズと第2フェーズの企業にとっては、伝統的な輸出入と製造関連の貿易を維持することを意味しました。これらの企業は、あらゆる対応計画を練り、移転する必要のあるものは十分に前もって移転しました。イギリスに拠点を新規開設した製造業企業はなく、イギリスが単一市場に再加入するまでは、おそらくないでしょう。

    第3フェーズの企業にとって、EU離脱後のイギリスで事業を継続していくとは、他の欧州諸国と協力・同調し、かつエネルギー、防衛、通信および輸送インフラ、研究開発といった分野でイギリスが欧州内外に対して有する好ましい影響力を活かしていくことを意味します。これは、第2フェーズの製造分野のプロジェクトのように数千人という雇用を創出してサプライチェーンをもたらすといった大衆受けする影響を及ぼすものではありません。事実、選挙という観点からはマイナスの影響になる可能性があります。原子力発電や風力発電、高速鉄道の開発プロジェクトで見てきたとおり、田園風景を破壊することや巨額の投資が必要になるという事実に対しては、常に反対の声があるからです。これは、日本企業が国内で直面する問題に似ています。

    しかも、協業に際しては、単に欧州だけでなく、隣接するアフリカと中東も巻き込む必要があります。言うまでもなく気候変動はグローバルな取り組みを必要とし、1か国だけの環境保護主義などあり得ません。日本政府は過去何十年にもわたり、エネルギー小国であることを案じてきました。これが投資の大半を率いる要因となり、特に日本の商社は海外のエネルギー開発プロジェクトに投資してきました。商社はこれまで、しばしばイギリスの地域本社を通じて、アフリカと中東で水力発電から家庭用ソーラー・システムまで様々な再生可能エネルギーのプロジェクトに投資してきました。

    日本企業は他の日本企業との取引を好むため、最初に上陸した企業の砦が確立すれば、サプライチェーンやサポートシステムに含まれる他社が追随します。これが1970~80年代にイギリスに進出した日系自動車業界で起きたことでした。このエコシステムは今もイギリスに確実に存在し、部品サプライヤの多くがエネルギー業界やインフラ業界に製品を供給できます。

    この新しい第3フェーズのイギリスへの投資、およびイギリスを経由する投資は、工場の建設・改修にイギリス政府が補助金を出すといった方法で誘致されるものではありません。何年も経ってようやく実る長期的な結果のみに投資する意欲、また政治的なエネルギーを費やして持続可能な政府の政策とコミュニティからの支持を取り付けようとする意欲を示すことで誘致されるでしょう。

    このレポートの PDF はここからダウンロードできます

    [1] https://biz.toyokeizai.net/en/data/service/detail/id=860&academic=1

    [1] https://www.mof.go.jp/english/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/ebpfdii.htm

    [1] The History of Mitsubishi Corporation in London: 1915 to Present Day, Routledge Advances in Asia-Pacific Business, 2000 https://www.amazon.co.uk/History-Mitsubishi-Corporation-London-Asia-Pacific/dp/0415228727

    [2] 財界とは、日本の実業家や財務金融関係者のコミュニティで、特に大きな資本力と影響力、政界とのつながりを有し、世界に対して日本を代表する立場にあると見なされている企業のコミュニティを指します。

    [3] https://asia.nikkei.com/Business/Aerospace-Defense-Industries/Japan-to-standardize-arms-with-U.S.-Europe-for-joint-maintenance、2023年6月22日にアクセス

    [4] https://www.reuters.com/business/energy/japans-mitsui-says-no-plans-exit-russias-sakhalin-2-lng-project-2023-06-21/

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  • 復活したふれあいの価値

    復活したふれあいの価値

    2022年を振り返って思うのは、仕事上でも私生活でも、人とのつながりやふれあいが復活した年だったということです。世界中の人が同じことを体験したはずです。私は一人の時間が好きですが、それでも他の人と対面で接して、自尊心を刺激されたりエネルギーをもらったりすることのできる環境が必要だと実感しました。

    私の家族や友人は世界のあちこちに住んでいるので、コロナの前からフェイスブックやメールで連絡していました。でも今年、数年ぶりにいろいろな人を訪ねてみて、家族が近くにいてコミュニティ内で友達を作っている人と、友達のいない場所に引っ越して新しい友達も作っていない人の間で幸せ感に大きな差があることに気付きました。後者の人は、子供が成長して遠くへ引っ越した今では、孤独を感じているだけでなく、意義のない利己的な人生になっていると話していました。

    私の仕事でも、対面の研修のほうがオンラインの研修よりも望ましいのは明らかです。たとえ受講者がカメラをオンにしていても、私の話していることが役に立っているのかどうかが見えにくく、また受講者から洞察を得るのも困難です。

    大手グローバル企業の経営幹部を対象にIT Services Marketing Associationが行った調査でも、仕事で付加価値を創造するにはコラボレーションの必要があることが明らかになりました。ITサプライヤとコラボレーションしてイノベーションやデジタル・トランスフォーメーションを進めることに対し、コロナ前よりも関心があると答えた回答者は、70%以上に上りました。特に日系企業の経営幹部は、世界平均以上にサプライヤとのコラボレーションに関心を寄せていました。

    これはおそらく、日本の集団志向の文化の名残と言えるでしょう。また、日本のサプライチェーンで過去何年にもわたって構築してきたエコシステムも関係していると思われます。英米をはじめ、より個人主義の文化では、サプライヤと顧客の関係がそれほど協力的ではなく、もう少し敵対的です。

    今年、久しぶりに会った人の一人が、映画監督をしているドイツ人の友人でした。実に20年ぶりの再会でした。イギリスがEU離脱交渉を進めていた2019年に、私の自宅からそう遠くない海辺のコミュニティでドキュメンタリー映画を撮影していました。夏の間にバラエティショーを興行しているダンサー、コメディアン、歌手、マジシャンのグループ、それにカニ漁師の様子を追いかけた内容でした。

    パフォーマーたちは全員イギリス人でしたが、国際的な交友関係を持っている人たちで、うち2人はEU離脱の影響を受けてスペインに移住していきました。カニ漁師は一人で仕事をしていました。息子はこの家業を継ぐ気はなかったそうです。社会的・政治的な問題に関してはイギリスがEUの一部になるべきではないと感じて、EU離脱をめぐる国民投票では賛成票を投じていました。

    私のドイツ人の友人は、独立独歩の道を歩むのは良いことではないとイギリスが悟り始めていると確信していて、まもなくEUへの再加盟を希望するだろうと予想しています。私には確信はありませんが、そうなってほしいものだと思っています。

    Pernille Rudlin によるこの記事は、2022年12月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。

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  • イギリスのEU離脱から6か月、日本企業への影響

    イギリスのEU離脱から6か月、日本企業への影響

    (この記事は帝国ニュースの2021年7月14日号に掲載されました)

    イギリスがEUから離脱し、その移行期間が終了して6か月になります。私自身のリサーチと経産省および三菱UFJリサーチ&コンサルティングが最近実施した調査によると、イギリスの日系企業は多くの人が予想したほどの深刻な影響は感じていません。

    その一因は、日系企業が2016年の住民投票以来5年以上かけて、入念な準備で最悪の事態に備えてきたためです。経産省の調査では、大手企業(売上高100億円以上、在英日系企業の約60%)は、イギリスの事業拡大に関して中小企業よりもポジティブな見方を持っています。在庫や原材料を蓄え、物流施設や倉庫を大陸に設置し、通関手続きの増加に伴うコストを吸収するためのリソースとネットワークを持っています。今でもイギリスが重要な市場であり、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)全域の地域コーディネーション拠点として便利な場所だと見なしています。

    ただし、大手企業の間でも見方にばらつきは見られます。経産省の調査では、日本の自動車メーカーがイギリス市場の先行きを厳しいと見ていたのに対し、化学、製薬、食品、電機メーカーはより肯定的に見ていました。この見方の違いは、従業員数の推移に如実に表れています。日産は2020年末時点の従業員数が前年比11%減でした。ホンダはイギリス工場を7月に閉鎖する計画で、2020年末時点の従業員数は前年比14%減です。イギリスの従業員数が2桁減になった他の企業には、野村証券、三菱電機、コニカミノルタがあります。

    ただし、従業員数を正確に把握するのは以前に比べて困難になっています。イギリスのEU離脱の影響のひとつとして、ソニーやパナソニックのような大手がヨーロッパ法人をオランダやドイツに移転したためです。イギリス拠点は法人化された子会社ではなく支店という扱いになったため、従業員数などの詳細をイギリスの政府機関に申告する必要がなくなりました。

    みずほや三菱UFJなど金融サービス会社の多くは以前から日本の本社またはヨーロッパ子会社の支店でしたが、ほかにも数社がこのモデルに移行し、また大陸に子会社を開設することで、今後もEUで金融サービスを提供していくための事業許可を確保しています。EUは、金融サービス会社にさらに圧力をかけて、意思決定機能と顧客対応の担当者をEUに移すよう働きかける可能性を示唆しています。

    イギリスは今まで以上にサービス産業の経済になりつつあり、これは雇用を拡大させている日系企業にも表れています。NTTはグローバル本社をロンドンに移しましたし、アウトソーシングはヨーロッパ全域で人材会社の買収を続けています。

    経産省の調査では、今後もイギリスの事業を拡大する理由として、英語が使えること、他の多国籍企業があること、そして司法制度の透明性が高いことが挙げられました。地域内の人と事業のネットワークはますます分散しつつありますが、イギリスは今後もそのコーディネーション拠点であり続けると思われます。

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  • 日系企業とイギリスのEU離脱後の物流

    日系企業とイギリスのEU離脱後の物流

    2019年9月に帝国データバンクニュースで予測をしました。イギリスが「ハード」なEU離脱をすることになっても、日系企業は十分な備えができているだろうという予測でした。それが的中したようなので、ひとまずはホッとしています。これに際しては、日系の物流会社が重要な役割を果たしたはずです。

    日本の自動車メーカーは、イギリスでの生産を停止せざるを得なくなりましたが、これはむしろコロナ禍と半導体不足が理由であって、EU離脱に伴う問題はそれほど関与していません。

    JETROが昨年末に行った調査によると、イギリスの日系メーカーがハードなEU離脱に備える対策として取った主な行動は、在庫を増やしておくことでした。イギリスの他の企業も在庫を増やしました。結果として、イギリスやフランスで通関を待つトラックは、懸念されたほど増えていません。ただし、日系企業がほとんど問題に直面していない理由には、サプライチェーンの再構成もあったのではないかと思われます。実際、これはJETROの調査で日系メーカーが取った対策として2番目に多い回答でした。私の見積もりでは、イギリスの日系企業のうち少なくとも30社が、過去2、3年の間にEUのサプライチェーンのハブを大陸に移しました。

    イギリスのEU離脱から最も影響を受けているのは、EU市場への販売に依存している中小のイギリス企業です。これまでは、EUにいる顧客に少量の製品でも高いコスト効果で出荷することができ、認証取得や通関の心配をする必要はありませんでした。

    今では、ありとあらゆる書類への記入が求められ、食品や家畜を出荷しようものなら、保健衛生の認証を取得しなければなりません。ヨーロッパの物流会社のなかには、イギリスからEUへの輸送を受け付けていないところもあります。書類業務に対応できないという理由です。また、イギリスへの輸入品を積載したトラックを出すことにも消極的です。EUへの帰路に積むものがなければ、コストを正当化できないからです。

    これらの状況は、いずれ自然に解消するかもしれません。しかし、日系企業が取った対策の多くは、決して一時的なものではなく、長期的なトレンドであって、イギリスのEU離脱の影響も長期にわたるのではないかと、私は考えています。例えば、外務省のデータによると、イギリスで製品を製造している日系企業の数は、2014年と比べて22%減少しました。イギリスの日系企業の総数は11%減ですから、製造業に減少傾向が色濃く表れているのが分かります。その多くが販社に転換し、またEUにある親会社の支社になった会社もあります。結果として、イギリスにある支社の数は31%増となり、法人化された子会社の数は16%減となりました。支社になった企業には、金融サービス業界の企業も含まれています。EUでの金融取引を継続するためです。

    イギリスに新たに進出する日系企業はなおも見られますが、ほとんどはエネルギー業界かライフスタイル関連の事業で、イギリスの国内市場が目当てです。日系の物流会社は、国際輸送の専門ノウハウを持っていますがが、今後は日系企業よりもイギリス企業からの需要を見つけていくことになるかもしれません。

    帝国ニューズ・2021年3月10日・パニラ・ラドリン著

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  • 英国における日本企業の歴史 とEU離脱 (ビデオとポッドキャスト)

    英国における日本企業の歴史 とEU離脱 (ビデオとポッドキャスト)

    Pernille Rudlinは、BEERG(Brussels European Employee Relations Group)のTom Hayesと、日本企業がBrexitにどのように対応したかについて話し合っており、マーガレットサッチャーが英国をEUへの日本の玄関口として推進したことによる1980年代初頭から現在に至るまで英国/ EU /日本の貿易関係の進展を追跡しています。ビデオとポッドキャストのリンクは以下の通りです。

    BEERG Byte #32 from Derek Mooney on Vimeo.

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  • トップ30社のイギリス進出日系企業 2021リスト

    トップ30社のイギリス進出日系企業 2021リスト

    英国における最新の上位 30 社の日系企業は、2019 年から 2020 年までの従業員数が全体で 1.3% 減少したことを示しています*。 4 月 1 日から 3 月 31 日の会計年度において、従業員数の減少は、COVID-19 のパンデミックが影響を及ぼし始める前にさかのぼります。日産、ホンダ、野村証券など従業員が 10% 以上減少した企業や、NTT やソフトバンクなどの大幅な成長を遂げた企業もあった。

    これは、日本の経済産業省 (METI) が 2021 年 3 月に発表した最近のレポートと一致しています。自動車業界の企業が英国市場に対して暗い見通しを持っている一方で、化学、製薬、電気機械、食品などの業界の製造業者は英国での将来の拡大についてはるかに前向きです。経済産業省によると、製造業者は英国の日系企業の約 39% を占めており、残りはサービスおよび卸売業です。サービス部門、特にIT関連は、私たちのリサーチからもポジティブであるように思われます。例外は富士通。富士通はさらに順位を落として、2017年までに英国で4番目に大きい日本人雇用者となりました。

    弊社の推定によると、英国のトップ30の日系企業で働く96,000人は、英国で1,000社以上の日系企業で働く176,000人(前年の179,000人から減少)の約55%に相当します。 METI の調査によると、上位 30 社の雇用数がわずかに減少したにもかかわらず、大企業 (METI は 6 億ポンド以上の売上高を持つと定義している) は、セットアップするためのリソースとネットワークを備えているため、小規模な企業よりもはるかに簡単に Brexit を乗り切ることができたことを示しています。 例えば、EU の代理店の設立、大陸に新しいロジスティクスと倉庫のハブを備蓄し、等。

    確かに、2019年から2020年にかけて英国から撤退した50社ほどの日本企業は規模が小さく(従業員50人未満)、操業を停止した大企業は通常、完全に撤退するのではなく、在英子会社を支店にしたり、合併したりしている。

    何年も前からも申し上げましたように、ブレグジットはいずれにせよ起こっていたトレンドを加速させ、長い間待ち望まれていた整理整頓を引き起こしました。

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    *2020 年は 2020 年に終了する年として定義され、1 年のほとんどが 2019 年、つまり 2019 年 4 月から 2020 年 3 月まで、または 2019 年 1 月から 2019 年 12 月までとしています。

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  • 日系企業とアイルランド

    日系企業とアイルランド

    ここ最近、年1度ぐらいの頻度でアイルランドに行っています。仕事が主な理由ですが、個人的な理由もあります。仕事という点では、日本企業に買収された現地企業にトレーニングを提供しています。また、米国の親会社を通して日本の会社を買収した企業でトレーニングすることもあります。

    個人的な理由というのは、両親がアイルランドに移住したためです。私の親は日本で25年暮らした後、引退後はフランスに住み始めましたが、完全に根を下ろすことはできなかったようです。継父は、父がアイルランド人で、親戚がアイルランドにいます。このため、アイルランドの国籍が簡単に取得できました。イギリスのEU離脱に備える保険の意味もありましたが、医療サービスが無料で利用できるうえ、公的年金も受け続けられます。母は、同じ理由でデンマーク国籍を取得しました。母の父はデンマーク人だったため、これが可能でした。

    二人が今住んでいるのは、私の従兄弟も住むコークで、特に米系の技術企業が多数拠点を構えることで知られる土地です。日系企業ではトレンドマイクロやアルプスアルパインがあり、アルプスは約850人の社員が働く電子部品工場を有しています。

    コークには、製薬・バイオテク業界の企業も集中していて、これはダブリンと同様です。ダブリンには、アステラス製薬と武田薬品が拠点を有しています。アステラスは社員数400人以上で、原薬や免疫抑制剤を製造する一方、武田は約300人で、がん治療薬や他の医薬品の有効成分を作っています。アイルランドは、EUにとって最大の医薬品輸出国です。

    多国籍企業がアイルランドに魅力を感じる理由は、若くて教育水準が高く、英語を話す労働者がいること、そして法人税率が12.5%と非常に低いことです。

    特に航空機リース事業は、アイルランドの税制から恩恵を受けてきました。業界のトップ10社のうち9社がアイルランドを拠点としていて、世界中の航空機の半分以上がアイルランドで保有・管理されています。日系企業ではオリックス・アビエーションとSMBCアビエーション・キャピタルが、ダブリンを主要拠点としています。

    ただし、節税のためだけにアイルランドを拠点とするのは、長期的には持続可能ではないかもしれません。EU、OECD、そして日本政府が国際税制で協力していて、租税回避の対策を講じつつあるからです。

    アイルランドには、言うまでもなく、イギリスのEU離脱というリスクもあります。イギリスは、EUとアイルランドをつなぐ「陸橋」となってきました。アイルランドの貨物の約85%はイギリスに送られ、うち約40%(年間約19万本のコンテナ)がEUに再輸出されています。

    ただし、医薬品と電子部品はしばしば空輸されていて、最近になってEUの運輸各社がアイルランドとEUをつなぐ新しい航路の運航を開始しました。このため、貿易摩擦の心配は、おおむねイギリス・アイルランド間の問題に限定されそうです。

    このことは、イギリスのEU離脱をめぐって北アイルランドとアイルランドの国境が大きな問題になる一因でもあります。とはいえ、最大の懸念は、ビジネスとは無関係な側面です。私のように家族が両国に住んでいて、開かれた国境がもたらした平和共存を失いたくないという人がたくさんいるのです。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年11月13日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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  • 日本とイギリスのパートナーシップ

    日本とイギリスのパートナーシップ

    近くの骨董品店で、日本とイギリスのデザインと製造を折衷したような品物を買うことが時々あります。ほとんどは19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパでジャポニスムが花開いた時期のものです。

    昨年購入したミルク瓶には、富士山と木造の帆船、それに茅葺き屋根の家が描かれていました。とてもシンプルな、イギリスの伝統的なミルク瓶の形状で、飾りは金色のハイライト部分を除いてすべて、手作業の絵付けではなく転写印刷で施されていました。

    私が興味を引かれたのは、蝶番式の珍しい金属製の蓋が付いていた点でした。この蓋には「クラークの特許品」という刻印がありました。どうやら、イギリスでクラークさんという人が特許を取得した蓋のようです。蓋を閉じたままミルクを充填したり注いだりすることができるデザインでした。

    19世紀ですら、日本とイギリスの貿易は、どちらかの国で完全に作られた品物を単に交換する行為ではなかったことが伺えます。イギリス製のミルク瓶の金型が日本に輸出されていたのかもしれません。瓶の絵や金色のハイライトは日本とイギリスのどちらで施されたのでしょうか。金属の蓋はイギリスに到着してから付けられたのでしょうか。はたまた、このミルク瓶は完全にイギリス製で、ただし日本の陶磁器から大きく影響を受けていたということも考えられます。

    このような相互作用の長い歴史こそが、現在交渉中の日英自由貿易協定がおそらくはかなり基本的な内容になり、これまで以上に大きなメリットを付加することはないと思われる理由です。それに、この協定は、すばやく成立させる必要があります。イギリスのEU離脱の移行期間が終わる2021年1月31日以降の新たな関税を回避するためです。関税引き下げという点で最も恩恵を受けると思われるセクターは食品と農業ですが、これらの分野は通常、最も困難が多く交渉を長引かせる分野でもあります。このため、この部分が日・EUの経済連携協定から継承されることは当面なさそうです。

    イギリスの提案はこれを反映していて、中小企業の輸出を促進すること、日本政府の調達プロセスに参加できるようにすること、そして両国間の自由なデータ移転を可能にすることを強調しています。

    政府の調達は、賛否両論の分かれるトピックでもあります。イギリス人の多くは、米国との貿易協定を不安に感じていて、米国の民間医療会社がイギリスの国民保健サービスの民営化を押し進めてしまうのではないかと案じています。また、データ移転に関しても懸念が渦巻いています。イギリスの情報通信インフラに中国からの投資が流れ込んでいる現状などがあるためです。

    国連の事務総長は、世界が今、第二次世界大戦以来、最大の危機に直面していると語っています。日本とイギリスにとって、戦後の一時期は、史上最も緊縮財政となった時期のひとつでしたが、一方で多数の革新も見られました。日本ではソニーや本田などの企業が設立され、イギリスでは医療、交通、エネルギーが国営化されて福祉国家が確立しました。

    今の危機状況が、日本とイギリスの双方にとってメリットのある新しいパートナーシップをもたらし、社会のインフラとサービス、また技術業界のスタートアップにも恩恵をもたらすことを願いましょう。

    パニラ・ラドリン著。帝国ニュース 2020年7月8日より

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