カテゴリー: 在欧日系企業

  • ミレニアル世代と海外勤務

    ミレニアル世代と海外勤務

    日本と同様にヨーロッパでも、雇用主はミレニアル世代の社員の管理方法に悩んでいます。1980年代から2000年代初めに生まれた若手の社員です。

    国を問わずミレニアル世代に共通する点をひとつ挙げるとすれば、言うまでもなく、ソーシャルメディアの使用度でしょう。この結果、この世代は世界に対して比較的オープンマインドであることが、一部で報告されています。イギリスでは、ミレニアル世代は年上の世代に比べてEUを支持する傾向にあり、移民に対しても心を開いています。ミレニアル世代は、会ったことのない人と関係を作り、住んでいる場所や国籍や性別に関係なく、お互いの興味や趣味を介して友情を育んでいくのに慣れています。

    これに呼応して、外国に住みたい、外国で働きたい、外国に留学したいと思う割合も、年上の世代より高くなっています。PwCが2015年に行った国際調査によると、男女を問わずミレニアル世代の71%は、キャリアのどこかの時点で外国で働いてみたいと回答しました。また、やはりPwCが2015年に行った複数世代にわたる調査では、すべての年齢層と性別の回答者が、キャリアの早いうちに海外勤務を経験することが重要だと考えていました。

    しかし、日本のミレニアル世代の調査では、留学や海外勤務の経験者が以前の世代に比べて減っています。留学や海外勤務から帰ってきた後にどんなポストが待っているか分からないという懸念があることは推測できますし、それは他の国でも最大の懸念となっています。

    また、会社の側にも、誰を海外に赴任させるべきか、どんな役職を与えるべきかについて、一定の考え方があると思われます。私は最近、イギリス在住の様々な日本人女性にインタビューしたことのあるイギリス人の研究者と話す機会がありました。彼女の話によると、インタビューした日本人女性の多くは、海外駐在になることを期待して日本の日本企業に入社したそうです。けれども、海外駐在希望が無視され続けたため、自分で会社を辞めてイギリスに来ていました。

    日本企業が抱えている問題には、若い人材の確保、社員の高齢化、男女を問わずグローバルな管理業務を担うことのできる人材の欠如などがありますが、こうした問題の多くは、転勤や人事異動についてもっと統合的でインクルーシブなアプローチを取れば解決することのように思われます。ヨーロッパの企業では、ヨーロッパ全域から大学卒業生を雇い入れて、様々な国の事業部門をローテーションさせることが普通に行われています。私のクライアント企業でも大手のいくつかが現在、ローテーションで社員を日本に送っています。グローバルな仕事というのは、必ずしも3~5年の海外勤務である必要はなく、期間は数か月から無期まで、あるいはバーチャルにグローバルな業務を担当することも考えられます。

    イギリスのEU残留支持派が展開している政治運動では、ミレニアル世代をターゲットにしたこんなメッセージが語られています。イギリスがEUを離脱すれば、若いイギリス人がヨーロッパの他の国で勉強したり仕事したりするのは難しくなる、というものです。しかし、残念ながらミレニアル世代のもうひとつの特徴は、低投票率です。EU離脱を支持する年上の世代のほうが、熱心に投票所に行くでしょう。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2016511日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • イギリスのEU離脱で生じる事業機会

    イギリスのEU離脱で生じる事業機会

    最近ランチを一緒にした日本人駐在員が、次のような話をしてくれました。イギリス人の同僚が、EU離脱が決まった後のショックからすぐに立ち直り、EU離脱の結果として生じる事業機会について、すぐさま考えるようになったので驚いたというのです。私自身もポジティブ思考を心がけていて、在英日系企業の今後についてリサーチを開始しています。これまでに特定できた事業機会は、次の3点に分けられそうです。

    アフリカと中東

    イギリスは歴史的にアフリカおよび中東との太いパイプを有してきたため、この地域の事業活動をコーディネートする拠点としては今後も好適地であり続けるでしょう。アフリカや中東の出身者、およびこれら市場の専門家がイギリスには多数いて、情報や管理能力をもたらしてくれます。

    また、イギリス政府は、非EU諸国との貿易拡大を図ることで、EU離脱のマイナス影響を相殺しようとするでしょう。このため、アフリカや中東の事業開発に対して多大な支援が寄せられる可能性があります。

    アフリカや中東の出身者をイギリス国内で雇い入れることも、以前より容易になるかもしれません。イギリス国民がEU離脱に票を投じた背景には、移民の抑止がありました。しかしこれは、主に東欧からの非熟練労働者の流入に対する反応です。ほとんどの日系企業はそもそもこのような労働者を雇用していませんから、この種の移民の制限が大きな影響を及ぼすとは思えません。

    日本の金融サービス企業はすでに、イギリス以外の支店のステータスをEU支店または現地法人に変えていて、さらにアフリカ事業を強化しつつあります。しかし、これらの事業拠点は今後もロンドン・オフィスが管轄し、ロンドンがEMEAのコーディネーション機能を果たすと見られます。

    日本のメーカーは、かねてより非熟練労働集約型の生産活動を東欧やアフリカに移動させてきました。イギリスのEU離脱でこのトレンドは加速し、イギリスはエンジニアリングや設計・開発を専門とする地域内のハブになるでしょう。

    インフラストラクチャ

    製造業が東や南(東欧やアフリカ)へ移動しつつあるとはいえ、イギリス政府は、高賃金で安定した肉体労働の雇用をイギリスに呼び戻さなければならないことを十分に認識しています。これを実現する最も明らかな方法と言えば、輸送交通やエネルギーといったインフラへの公的投資です。日立や他のインフラ関連企業は、この部分で多数の事業機会を見つけられるでしょう。ただし、エネルギーや輸送交通の開発プロジェクトに流れてきたEUからの予算が今後どうなるのかは明らかではありません。

    イギリス企業の買収

    ソフトバンクによるARMの買収が示したように、イギリスには買収標的として依然魅力のある企業が多数あります。単一市場への入口としてではなく、ブランドや技術やノウハウの点でユニークな特長がある企業です。例えば、イギリスの食品・飲料ブランド、保険市場ロイズのアンダーライター、イギリスの広告代理店などが、最近になって日本企業に買収されています。円高・ポンド安は今後もしばらく続きそうですから、勇気のある会社には“お値打ち品”が見つかるかもしれません。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2016年9月14日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版ペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • オランダのモチベーションと生産性

    オランダのモチベーションと生産性

    先週、オランダへ出張した際、現地で会った日本人マネージャーから、スタッフのモチベーションを上げる方法で悩んでいるという話を聞きました。この悩みは、ヨーロッパ勤務の日本人マネージャーからよく相談されるのですが、いつも私が聞きたいと感じるのは、モチベーションとは具体的に何を意味するかということです。

    通常、モチベーションの高い社員とは、努力を惜しまず、最後までやり抜く人と考えられています。けれども、これは客観的な測定が難しい性質です。このためヨーロッパの社員は、日本人マネージャーがデスクで仕事をした時間数という尺度でモチベーションを評価するのではないかと懸念しています。実際、この懸念には正当な理由があります。最近私が聞いた話では、スペイン勤務のある日本人マネージャーが、スペイン人のスタッフは日本人やイギリス人と比べてデスクに座っている時間が短いのはなぜかと問いかけたそうです。

    オランダに長年住んだ日本人の話では、オランダ人のスタッフに何をすればモチベーションが上がるかなどと聞こうものなら、直ちに「私の時間を無駄にしないでください」という答えが返ってくるとのことでした。つまり、オランダ人にとっては、時間を無駄にすることがモチベーションを下げる大きな要因なのだそうです。

    OECDとユニセフの調査によると、オランダは、生産性が高く(通常は労働時間当たりのGDPで定義されます)、また子供の幸せ度が高い国です。この2つの間には関係性があり、それはアムステルダムの風景を見れば明らかです。自転車の後ろに小さなカートや子供用自転車を付けて子供を学校へ送り迎えする父母で溢れています。オランダのファミリーは、午後6時頃に家族揃って夕食を取り、夕暮れ時にはスポーツや他の趣味を一緒に楽しみ、子供だけで出かけるのも自由に認めています。オフィスと学校と住宅はすべて混在しているため、通勤時間も長くありません。

    私が現地で聞いた話によると、週に1日か2日は自宅勤務をすることも普通で、特に欧州域内やグローバルな同僚とかかわる仕事、つまり自分のチームが物理的に同じ場所にいない社員の間ではよく行われています。また、子供がいる人は、男女を問わずパートタイム勤務にして、なおも管理職であり続けることも珍しくありません。つまりは、オランダ人のモチベーションを高めようと思うのであれば、生産性の高い働き方ができていると感じさせるのがベストということです。

    しかし一方で、オランダ出張中、同じホテルに滞在していたイギリス人のマネージャー2人が朝食を取りながらオランダ人の同僚について次のように話しているのも耳にしました。「オランダ人は確かに能率が良いし、仕事を片付けてくれる。でも、自分流のやり方で片付けるため、蓋を開けてみれば全員がバラバラなことをやっていることもあり、コーディネートが難しい」。

    もしかすると、これは、日本とイギリスの特にサービス産業の生産性がオランダよりも低い理由を突いているかもしれません。私たちは、自分で付加価値を生産するよりも、他人の仕事をコーディネートしたり監督したりするのに時間を費やしているのです。その時間が、場合によっては長すぎるということもあるのかもしれません。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2016413日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

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  • イギリスがEUを離脱するなら日系企業はどうすべきか

    イギリスがEUを離脱するなら日系企業はどうすべきか

    ノリッチに引っ越したのは今から2年弱前のことですが、こちらに来るなり驚かされたことがありました。当地の新しい税理士さんから「この辺りではユーロは取り扱いませんよ」と言われたのです。私の会社の売り上げの3分の1はユーロです。このため、ビジネスにとって良い場所を選んだのだろうかと不安を覚えずにはいられませんでした。私の主な顧客である日系企業がこの地域にあまりないのは事実です。でも、地域内には食品加工や風力発電など、イングランド東部の産業を反映する企業があります。

    また、ノリッチはロンドンへのアクセスが至便です。こうしたことから、最近日本の保険会社に買収されたロンドンの会社から仕事を受けて、先月ベルギーへ行ってきました。

    この出張中にはブルッヘを訪れてきました。ノリッチに似た側面があることに興味を覚えたからです。どちらも中世に栄えた川沿いの港町で、地元で作られた衣類の貿易が盛んでした。けれども産業革命に乗り遅れ、川の流れが淀んだ後は貿易も衰退しました。現代の産業には相違点があり、ブルッヘが主に観光経済で成り立っているのに対し、ノリッチには多様な産業があり、保険や他の専門サービス業界に入り込んでいます。

    ブルッヘは、1988年に当時のサッチャー首相がさらなる欧州統合に反対する有名な演説をした場所です。この演説にちなんでブルッヘ・グループという名前を冠した団体が、最近ではイギリスのEU離脱を求める運動を展開するようになりました。

    EU離脱派は、離脱こそが政治や規制に対する欧州からの干渉に終止符を打つ手段であると考えています。しかし、普通のイギリス人には、イギリスの国境を守り、特に欧州からのさらなる移民の流入を食い止める手段だと説明したほうが理解されやすいでしょう。

    イギリス東海岸の他の港町は、ノリッチほど景況が芳しくありません。失業率が高いにもかかわらず、欧州から多数の人が流れ込んで、作物の収穫や食品の加工に携わっています。EU離脱を支持しているイギリス独立党は、この地域に強い支持基盤を有しています。彼らは、欧州からの移民がイギリス人の職を奪っていて、賃金を抑え込み、学校や病院に負担をかけているという見方を訴えています。

    では、イギリスがEUを離脱することになった場合、日系企業はどうすべきなのでしょうか。おそらく、イギリスが業界の中心地である、あるいはイギリス市場そのものに魅力があるという理由でイギリス拠点に投資してきた企業は、今後もイギリスに留まるでしょう。しかし、イギリスを拠点に欧州全域の事業を展開している企業は、移転したり今後の投資を大陸欧州に傾けたりすることを検討するかもしれません。

    欧州が過去40年にわたって追求してきた共通市場の形成と移動の自由を受けて、ほとんどの多国籍企業は組織構造を統合してきました。イギリスは、欧州本社機能のハブになることで、直接雇用と間接雇用の両方を生み出し、恩恵を受けました。が、この結果、ロンドンの事業経費は高騰し、雇用は東へ流れるようになりました。イギリス東部だけでなく、ポーランドといった国にまで及んでいます。私自身もポーランドでコンサルタントを雇い入れようとしている最中ですが、皮肉なことに、候補者のほとんどはイギリスで働いた経験を有しています。

    Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

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  • 取締役会は顧客と社員とコミュニティを反映すべき

    取締役会は顧客と社員とコミュニティを反映すべき

    大手日本企業の欧州子会社の取締役会が、日本人と現地人、および男女の構成比という点でどれだけ多様性を実現しているかについてのリサーチの第1段階を終えました。

    取締役の女性比率は、ヨーロッパよりも日本のほうが高いという結果が出ました。これは社員構成を考えると驚きです。社内の昇進で上位の役職へと上がってくる女性管理職者の割合は、間違いなく日本の本社よりも欧州子会社のほうが高いためです。

    一方、日系子会社の取締役に占めるヨーロッパ国籍者の割合は、会社によって大きな差がありました。東芝、シャープ、ファーストリテイリング(ユニクロの英国法人)のゼロから、旭硝子、ブリヂストン、キヤノン、日本電産の100%まで開きがありました。つまり、国籍の多様性は、業界によって傾向があるわけではなさそうです。また、取締役会が多様性を重視すべき理由として最も有力と思われる、顧客の構成を反映すべきであるという論は、思ったほど大きな要因ではないことも示唆されました。

    透明性を高め現地に受け入れられるには

    20年前は、海外と日本国内の両方で日本人顧客への依存度を低くしたいという狙いが、多くの日本企業が「国際化」に乗り出す主な理由となっていました。キヤノンは当時、ヨーロッパ出身者を海外子会社で高い地位に指名した先駆者となり、結果として同業他社よりも日本とヨーロッパの両方で良い業績を上げたように見えました。

    現在、日本企業がグローバル化の方策として好むのは、国際事業部門を拡大し社内で幹部を育てることではなくて、M&Aを通じて海外事業を拡大することです。過去10年の大型買収が、旭硝子(グラバーベルを買収)をはじめ、富士通(インターナショナル・コンピューターズ・リミテッド)、野村證券(リーマン・ブラザーズ)、日本板硝子(ピルキントン)など、ヨーロッパ出身者の取締役が多い企業の要因となっています。

    ただし、業界の特色も一部に見られます。例えば金融サービス業界は、取締役の指名に対して承認権を有する欧州当局から厳しい目を向けられています。現地市場に対して深い理解と経験を有する取締役であることを当局が期待しており、日本人の経営幹部の多くはこの要件を満たすことができません。

    また、富士通と日立は、イギリスで公共セクター向けの事業(行政サービス、原子力、鉄道)がかなり大きな部分を占めているため、政府調達基準となる多様性の要件を満たすだけでなく、事業展開する地元コミュニティで受け入れられる必要があります。例えば、日本企業が保有するイギリスの公益会社が最近、取締役を公募しましたが、応募要件のひとつに、その公益会社の顧客であることという条件が含まれていました。

    比較的規模の小さい日本企業やヨーロッパに進出したばかりの日本企業は、少人数の取締役会を好むかもしれません。現地に在住しない日本人の取締役が2人だけといったケースも見られます。が、ヨーロッパでは昨今、透明性を高め、ガバナンスを向上させるべきとの大きなプレッシャーが取締役会にかかっています。現地出身の取締役を最初から指名しておけば、規制当局、顧客、社員との関係を向上させるのに役立つでしょう。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2015125日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックamazon.co.jpでご注文できます

  • 申年を迎えて

    申年を迎えて

    私の会社では2016年、設立12周年を記念して、クライアントとのランチセミナー・シリーズを開催することにしました。12周年というのは半端な数字に聞こえるかもしれませんが、干支を一回りして申年に戻ってきたことを意味します。

    この間の日本企業のトレンドを振り返ってみると、最も明らかなものとして、欧州に本社のある多国籍企業の買収が挙げられます。最近では三井住友海上が、イギリスのロイズ保険市場などで保険事業を展開するアムリンを約6,350億円で買収すると発表しました。今年初めには、日立製作所がイタリアのアンサルドブレダ、およびフィンメカニカが保有するアンサルドSTSの株式を約約1,044億円で買収した案件もありました。

    どちらの買収も、日本の多国籍企業の多くに見られる構造変化を物語っています。日立は、鉄道事業の世界本社をイギリスに移転しました。また、日本の大手保険各社は、すでにそれぞれイギリスの保険会社を買収しており、これを足がかりとしてさらにグローバルな事業拡大を図りたい意向です。

    明らかに日本企業は、買収を通じて単に市場を拡大するだけでなく、グローバルな経営力を付けることを目指しています。かつて日本企業が米国子会社を通じてグローバルなネットワークを管理した事例がいくつかありましたが、最近では欧州の子会社が、米国をはじめ他の海外市場も管理することを求められているように見えます。

    この一因となっているのが、日本で起きているもうひとつの長期的なトレンド、「グローバルな人材」の欠如です。特に上級マネジメントのレベルで、海外での成長を管理する人的資産が足りないのです。しかし、それ以外にも、ヨーロッパの多国籍企業は多数の国に散らばった企業をバーチャルなマトリックス構造で管理するのに慣れているという事実も加担しています。すなわち、様々な事業部門の責任者が物理的に同じ本社にいないかもしれないことを意味します。ヨーロッパのマネージャーは、グローバルに有効性を発揮する高い専門知識を持ちながら、同時に多文化のコミュニケーションスキルを活かしてチームの遠隔管理ができなければなりません。

    彼らは欧州域内でこれをするのには慣れていて、米国とのつきあいにもある程度は馴染みがあります。しかし、日本を向いて仕事をするのは、多くにとって新しい経験です。専門知識や遠隔コミュニケーションスキルだけでは日本の本社を説得して賛同させられないことが分かると、ヨーロッパのマネージャーはしばしば動揺します。日本の本社のマネージャーは、物理的に同じオフィスにいる相手とコミュニケーションすることにしか慣れていません。また、たいていはジェネラリストのため、専門分野の意見のみを論拠とする議論を説得力があるとは見なさない傾向にあるのです。

    こうしたコミュニケーションの壁を克服する意識的な努力が講じられないかぎり、日本の本社は「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿のように映るかもしれません。日本ではこれが徳の高い行動と見られていると思いますが、西欧では手遅れになるまで問題を直視しようとしない姿勢と受け取られます。私の会社では、どちらの世界に対しても目と耳と口を開くことを大切にして、これからの12年を歩んでいく所存です。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、2016113日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • EU終焉を招きかねない難民問題

    EU終焉を招きかねない難民問題

    イギリスがEUを離脱することになれば、多くの多国籍企業が現在イギリスに置いている欧州本社を他の国へ移すだろうと私が最近言った時、ギリシャ系イギリス人の知り合いは、イギリスは一国でも問題なくやって行けると言いました。いわく、負担の多いEUの規制がないほうがよく、ヨーロッパにおける地位が何であれ、イギリスのように革新性に富んだ国には企業が集まってくるというのです。

    ギリシャに対するEUの処遇を見てきた後で、この知人の見方は驚きではないかもしれません。EUの規制が多すぎるという不満は、イギリス国内にも以前から渦巻いています。けれども、芝刈り機の音量に対して設けられたEUの基準に見られるとおり、これらの規制はしばしば、イギリスのメーカーに有利なようにと、イギリスの官僚が主張してきたのです。一般にメーカーにとって、EU域内に工場を置くことの利点は、EUの基準に適合していれば28か国のどこでも販売認可が下りると安心できることにあります。

    イギリスがEUを離脱すれば、EUの規制に影響を及ぼすことはできなくなるにもかかわらず、至近の最大市場で製品を販売したければ、なおもその規制に従わなければならないことを意味します。私をはじめ残留支持派のイギリス人にとってありがたいことに、野党・労働党の新党首が最近、次の国民投票(おそらく来年)でEU残留を訴えるキャンペーンを展開すると語りました。

    これについては、今までいくらかの疑念がありました。キャメロン首相がEU加盟国との交渉で、欧州社会憲章を弱めようとしていると見なされているためです。欧州社会憲章は、労働者の勤務時間、休日、差別などについて保護をもたらしてきた規定です。労働党は、名前が示すとおり、労働者の権利を擁護することを基本理念とする党です。このため、EUに残留するためのキャンペーンを決定し、キャメロン首相がEUとどのような合意を取り付けるかにかかわらず、政権に返り咲いた暁には社会的な譲歩をすべて白紙に戻すとうたっています。

    フランスやドイツなどEUの中核国が絶対に妥協しないとしている主要点のひとつが、人の移動の自由です。これが実は、多くのイギリス人がEU離脱を望む大きな理由のひとつとなっているのですが、私にしてみれば、イギリスが革新性を維持できるのは、まさに移動の自由ゆえです。多様性が革新を促すことを示す証拠はいくらでも存在し、ロンドンは間違いなくヨーロッパで最も多様な都市のひとつです。ロンドンかその近郊に会社を置けば、驚くほど幅広い国籍の人材にアクセスし、その人たちの視点やスキルを活用することができます。しかも全員の共通語が英語です。

    不運なことに、最近の難民問題が移動の自由に対するコミットメントを弱めていて、EUそのものの終焉を招く可能性すらあります。加盟国は、協調して解決策を見つけるのではなく、折しも現在記念日を迎えつつある2つの世界大戦で学んだ教訓を忘れてしまったかのように振る舞っています。

    Pernille Rudlinによるこの記事は、20151014日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • ヨーロッパの社員の休暇

    ヨーロッパの社員の休暇

    日本政府が提案した、有給休暇の取得日を会社が社員に対して指定するという労働基準法の改正案は、ヨーロッパのメディアでも注目をあつめました。日本人の 社員は、長時間勤務をはじめとする熱心な働きぶりで高く評価されています。しかし、その一方で、ヨーロッパ、とくにドイツ人のマネージャーの多くは、残業 が多いと管理の仕方が悪い証でもあると懸念し、また社員が休暇をとってリフレッシュしなければ健康や安全上の問題につながりかねないことを心配します。

    ヨーロッパの人は、日本人やアメリカ人に比べ、与えられた休暇をフルに取ろうとする傾向にあります。EUの法律では、加盟28カ国すべてに対して、最低でも年に4週間の休暇をすべての社員に法律で認めるよう義務づけています。その実地状況は国によってまちまちです。

    国ごとで異なる休暇規制と取得状況

    フ ランスや北欧諸国は、ヨーロッパで最も休暇日数が多いことで知られています。ある調査によると、フランス人は法律で認められた30日(これは土曜日が含ま れます)の休暇をフルに取得していると報告されました。また、週35時間以上働く場合は、その見返りとして休暇をさらに最大22日まで追加することができ ます。

    北欧諸国の休暇日数は25日~30日ですが、6月初旬から8月中旬まではほぼ全面的に夏休みとなり、ほとんどの家族連れは夏の間中、海辺や島のバケーションへと雲散霧消します。

    ドイツでは、国が義務付けている最低24日の休暇のほかに、州ごとに規制があります。各州が追加の公休日を別途決めていて、学校の休みも州ごとに決められているためです。

    私たちイギリス人は、ヨーロッパの中で自分たちが最も仕事熱心だと考えています。法律では28日の休暇が保証されていますが、これには祝日が含まれ、たいていの企業は8日か9日の祝日に加えて25日の休暇を提供しています。最近、さまざまな福利厚生のメニューを提供するのがイギリス企業の間のトレンドとなっていて、これに有給休暇を売り買いするオプションなどが含まれています。使わなかった休暇は翌年に繰り越すこともできますが、繰り越せる日数は通常、上限があります。

    イギリスの学校の夏休みは北欧諸国に比べてはるかに短く,またヨーロッパでは、米国のように夏休みに子供を泊まりがけのキャンプに参加させる習慣があまり一般的ではありません。このため親たちは、夏の間に少なくとも2週間の休暇を取得して、子供と一緒にバケーションを過ごせることを期待しています。

    このため、欧州全域にわたる事業やチームを管理している場合は、あちこちの国で社員が前々から休暇を申請できるようにするメカニズムを導入する必要があります。夏休みのピークにも仕事をカバーする十分なスタッフを確保できるようにするためです。また、最近では、休暇中もスマートフォンで仕事のメールをチェックする生真面目な社員がいることに懸念を上がりました。この点については、ダイムラーが最近、休暇中の社員が確実にリラックスできるように計らいとして、休みの間はメールを自動的に削除するシステムを導入して話題になりました。

    Pernille Rudlin著 帝国ニュースより

    パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindleペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • 世界の最大の社会人SNS, LinkedIn

    世界の最大の社会人SNS, LinkedIn

    パナソニック、三菱地所レジデンス、楽天がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のLinkedInをヨーロッパほか日本国外での人材採用に 活用するという話を、日経新聞で読みました。LinkedInは、世界最大の社会人向けSNSです。本社はカリフォルニア州にあり、世界中で2億 7,000万人以上のユーザーを有しています。人材を見つけて引き付けるうえで効果的な方法であることは間違いありません。

    私自身は10年以上前からこのサイトを使っていますが、仕事を見つけるためではなく、在ヨーロッパの日系企業に勤める社員の連絡先を見つけたり調べたりす るのが目的です。ただし、日本人社員や日系企業は概してLinkedInをあまりアクティブに使用していません。日本語バージョンも開設されていて、東京 にも2011年以来オフィスが置かれているにもかかわらずです。

    その理由は主にLinkedInが中途採用や転職のために使われていて、それ自体が日本ではまだあまり主流ではないからだろうと思います。実際、ヨーロッ パでも、自分のスキルや経験を公開して、いかにも「就活中」のように見えてしまうことを嫌う人はたくさんいます。私が見たところでは、イギリス人とオラン ダ人はあまり抵抗感がないようですが、プライバシーを気にする(そしておそらくは英語でのコミュニケーションがあまり得意でない)ドイツ人とフランス人は やや消極的です。

    私の知り合いのドイツ人の多くは、ドイツのSNSのXingを使っています。とはいえ、ヨーロッパの人(さらにはトルコなどの新興市場にある多国籍企業に勤める人)はみんなLinkedInのことを知っていますので、転職を模索する際にはチェックするでしょう。

    つまり、雇用主にしてみれば、スキルや経験に基づいて人材を探すだけでなく、魅力的な会社であると訴求するうえでも良いツールになるということです。

    LinkedInに自社のページを開設しようとする日系企業は、まず第一に「公式」ページであることをはっきりとさせる必要があります(個人が運営してい るOB・OGのページなどと区別するためです)。そして、社員が自分のLinkedInのプロフィールを会社の公式ページにリンクするよう奨励します。

    ほとんどの場合、日系企業のページはすでに複数存在していることでしょう。これらを整理して、本社のページや各地にあるグループ会社のページなどをそれぞ れ明確に示す必要があります。各地のグループ会社のページと本社のページを相互にリンクして、1つのグループであることを示すことができます。

    これらの公式ページは、本社および各地の子会社のマーケティングまたは人事担当者が管理すべきです。会社の規模や事業内容などを含んだ紹介文を作成して、 さらに自社のウェブサイトへのリンクも表示します。また、会社のイメージを反映した魅力的な視覚要素を使って「ブランド」を統一し、製品やサービスの説 明、新着情報やニュースも追加して、使いやすく見せる必要があります。

    会社のページが正しく運営されれば、「フォロー」する人が瞬く間に増え、新たな人材を引き付けるのに役立ちます。そればかりか、既存の社員も自分の会社が LinkedInで明確かつ魅力的なメッセージを訴求していることに共感して、今までよりもずっと満足度や忠誠度を高めてくれることでしょう。

    (帝国ニューズ・2014年4月9日・パニラ・ラドリン著)

    この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版ペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

  • 日系企業の欧州本社はどこへ

    日系企業の欧州本社はどこへ

    最近、弊社の顧客データベースをクラウド・ベースのサービスプロバイダに移行したことで、LinkedInなどのソーシャル・ネットワークとクロス検証できるようになりました。この更新作業を通じて、日系企業の顧客が欧州でどのように組織を編成し、どこに本社を設置しているかに注目してみました。

    私の分析は決して統計的なものではありません。また、私自身がイギリスで勤務しているため、イギリス拠点の企業が多いと思います。それを考慮しても、日系企業の欧州本社はイギリスに最も多く、先のデータベースで本社企業96社の例を挙げると、イギリス(53社)、ドイツ(24社)、オランダ(10社)、ベルギー(5社)、フランス(2社)、スイスとポーランド(各1社)と続きます。

    もちろん、欧州本社を設置しない日系企業も多数ありますが、欧州で長く事業を展開してきた企業は、財務や調達系の業務や人的資源を欧州に統合する傾向にあります。この流れはイギリスにとっても優位に働いており、ビッグバン以降のロンドンは、金融のみならず、マーケティング・法務・コンサルティングや人材面において確実に欧州のトップ、あるいは世界でも有数なサービスレベルを誇ります。

    古くからイギリスは日本からの直接投資を受けてきました。英語、ゴルフ、開放経済などの影響など、その理由は多々あります。一方、ドイツも人気の地で、特に技術系の会社は、ドイツ流のプロセス志向とリスク回避体質に親近感を感じています。また、富士通とシーメンス、デンソーとボッシュのような提携が古くからあったこともプラス要因で、なかでもノルトライン・ヴェストファーレン州は、60年代から日系企業を積極的に誘致してきました。例外的にソニーは当初、ベルリンに拠点を開設しましたが、これは、初代社長の大賀典雄氏がベルリン国立芸術大学を卒業したことから、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に近い場所を選んだと噂されています。

    また、近年ではオランダも人気の拠点国となりました。優遇税制に加え、ベルギーと同様に欧州の物流拠点であることが、その理由です。ただし最近は、これら本社はイギリスに拠点を移す傾向にあるように見えます。キヤノンは、オランダからロンドン近郊のアックスブリッジへ移転しました。最近ボッシュとの資本関係を解消したデンソーも、本社は今もオランダにありますが、欧州事業のキーマンはイギリスをベースに活動していると見受けられます。2009年にシーメンスと袂を分けた富士通の欧州事業は現在、欧州大陸、ノルディック、イギリスとアイルランドの3つに分散しています。

    ソニーはベルリンの本社ビルを2008年に売却し、現在は欧州全域の営業・マーケティング業務をロンドン南西のウェイブリッジに統合しつつあります。ただし、ソニーの場合は、欧州の組織を「バーチャル」構造にしようとしているようです。人事の共通業務部門は現在トルコにあり、欧州事業の上級幹部は、各自の希望で拠点を選ぶそうです。この流れは、NTTデータをはじめ情報通信業界の他企業でも顕著に見られます。

    このような欧州組織のバーチャル化も、イギリス経済に多大な恩恵をもたらします。あらゆる国籍の上級幹部が、ロンドンとその近郊に住んでいるか、住んでも良いと考えているからです。人口の40%以上が非イギリス出身者で占められているロンドンは、真に世界の首都、グローバルなキャリア発展の地となっているのです。

    (帝国ニューズ・2013年4月10日・パニラ・ラドリン著)

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