EPAが食文化に及ぼす影響

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日EU経済連携協定(EPA)は、ヨーロッパでは「チーズと車の交換協定」と言われています。実際、チーズ好きの私は、日本に住んでいた頃、良質なチーズが手頃な値段で買えずにかなり恋しい思いをしました。チーズは私にとって「ふるさとの味」のようなものです。厚切りのチーズの塊をのせたパンやスパゲッティ・ボロネーゼが無性に食べたくなる時がありました。パルメザンチーズをいっぱいにふりかけたトマトベースのミートソースには、何ものにも変えがたい旨味があります。

ただし、子供時代を日本で過ごした私にとっては、日本食もふるさとの味です。イギリスに住んでいる今も、お味噌汁(子供時代を過ごした仙台の赤味噌)やお好み焼き、カレーライスやトンカツを時々作っては自分を慰めています。

日欧EPAはこれからEU各国の政府に承認されなければなりませんが、その説得に有効な方法のひとつが、ヨーロッパ産の食品と飲料200品目以上に地理的表示の保護制度が適用されるのだと指摘することです。ポーランド産ウォッカやパルマ産ハムなどが、日本市場で保護されます。

この説得が各地で奏功するのであれば、EPAは2018年に批准され、2019年に施行される見通しです。

ヨーロッパの人たちは、食品が本国の文化に忠実かどうかをめぐって激情しがちです。特にイタリア人がそうで、いい加減な食べ物に怒り狂ったイタリア人たちの「Italians mad at food」というTwitterアカウント(@Italiancomments)もあるほどです。カルボナーラソースにマッシュルームやニンニクを入れたりピザにパイナップルをのせたりする人(主にアメリカ人)に憤慨したイタリア人が、コメントをリツイートしています。

とはいえ、私のスパゲッティ・ボロネーゼも、イタリア人には感心されないでしょう。イタリアにはスパゲッティ・ボロネーゼなどという料理は存在しないのです。ラグー・アッラ・ボロネーゼというのは単にミートソースの意味で、スパゲッティではなくタリアテッレで食べるものです。

イギリス人は、長年にわたって他国の食文化を取り入れてきました。国民食とも言えるチキン・ティッカ・マサラは、インドには存在しないカレー料理です。持ち帰り専門の中華料理店では、二世や三世の中国系イギリス人のオーナーがあきらめ顔でフライドポテトに甘酢のソースをかけてくれます。

とはいえ、最近ではイギリス人も、外国の食文化通になってきました。多文化のストリートフードがヨーロッパ全域で流行し、ほとんどの大都市には屋台の立ち並ぶ市場が存在します。私の町には、チリ料理や中東のファラフェルの屋台がありますが、オーナーは韓国人夫婦です。

日本人は、純日本風のものとは似ても似つかない代物がイギリスのファストフード店で「すし」と称して売られていると怪訝な顔をしますが、日本のカレーライスやてんぷらやトンカツだって、和食と洋食とインド料理の折衷です。

EPAは、このような折衷化の現象に新たな章を開くかもしれません。日本とヨーロッパが互いの正統派の食品を交換し、新しいハイブリッドを生み出して、未来の世代のふるさとの味になっていくのです。伝統的な農業生産者にとっても、冒険心旺盛なシェフにとっても、商機となるでしょう。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2018117日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されまし

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