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カスタマーケアを題材としたシリーズの前号で、英国のサービス産業で働く社員のお客様に対する不躾、不快な対応は、社員による仕事自体そして会社に対する誇りの欠如から来ると説明をしました。会社は社員をいいように利用し、株主だけに注意を向け、社会に対してはそっぽを向くし、大体において人々に仕えるような仕事は品位に欠けるという心理がその根底にあるのです。
このような心理は、社員が雇用主に対して前向きな気持ちを持つよう、会社として努力をする事で、多少の改善は図れるのではないかと思います。ご存知のように顧客対応が優秀とされる英国の会社の例では、John Lewisを挙げる事が出来ます。社員は会社のパートナーであり、そして株主でもあるのです。また、日本のように現場で働く人に権限を与える「現場主義」や、職人としてのみでなく、サービス一般の誇り高い「物づくり」の考え方も役立つのではないかと思います。
今回、年末・年始の時期に日本と英国内を行き来しましたが、英国のサービスレベルが果たして日本のレベルにまで到達し得るのかと、疑問に思いました。埋めるには余りにも難しい根本的な文化の違いがあるのです。例えば、日本社会では自分の発言が他の人にどう受け止められるか、などという他人の気持ちを優先する部分が、英国のそれとは比較にならない度合いで浸透しているのです。
ある英国人記者が、「監視カメラの国―日本」と称したことがあるように、日本では他人の目や反応を気にするばかりに、圧迫感となることさえあるのです。とは言え、これは英語で言うところの ‘forethought’や ‘consideration’、つまり「思いやり」という言葉と表裏一体なのです。他の人が何を必要としてるのか、または何を感じているのかを察し、求められる前に手を差し伸べる能力と言えるのではないでしょうか。
この“思いやり”のコンセプトを私がある英国人のマネジャーに説明した時、彼は面白い話をしてくれました。彼がヒースロー空港で日本人の同僚を出迎えて、会社の工場に案内して欲しいと頼まれた時の事です。この英国人マネジャーは多忙なスケジュールを縫って出迎えたので、空港から目的地の工場まで一刻も早く到着するよう、急いで運転をしていました。道中で例の日本人同僚が、あなたの好きなジュースは何かとか、ダイエットセブンアップの方がダイエットスプライトよりもいいのではないかとか、唐突に聞いてきたというのです。それを聞いて私がこの英国人マネジャーに’思いやり‘について説明をすると、そうか、彼は喉が渇いたと仄めかしていたのかと、はたと気付いたようです。
「では、もし次にこのようなことがあったら、どう‘思いやり‘を示すべきでしょうか。どこかで飲み物でも取りながら一休みしませんか、と聞いた方がいいんでしょうね。」このマネジャーが質問してきました。もし日本人同僚も同じように思いやりの気持ちを持っていたら、あなたの多忙ぶりを考慮して、そうしましょうとは言わないでしょう。とアドバイスしました。この状況での最善策は、予め飲み物を用意しておき、車中で勧めることでしょう。これこそが究極のカスタマーサービスなのです!
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このシリーズは人材紹介会社のセンターピープルのご協力の上提供させて頂いております。
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