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ガバナンス

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Category: ガバナンス

企業文化と行動

2か月ほど前、私が使っているナットウエスト銀行から届いた手紙の内容に驚かされました。法人口座を他行に切り替えれば4,000ポンドをくれるという内容だったのです。詐欺の手口などではなくて、リーマン・ショックの際にイギリス政府から救済金を受けたことに関係していました。460億ポンドの救済金を受ける代わりに、イギリスの銀行業界の競争を促進することが義務付けられていたのです。

「チャレンジャー」の立場にある様々なネット銀行が同様のインセンティブを提供していましたが、私は、1872年に設立されたコーポラティブ銀行を選びました。実績が少ない新参の銀行では技術的な問題が生じる可能性が高いかもしれず、そうなった時に実店舗がないことに少し不安を感じたからです。コーポラティブ銀行の最寄りの支店からすぐに電話がかかってきて、ぜひ支店にお立ち寄りくださいと言われたことも説得材料になりましたが、とはいえ、私が好感を抱いた理由には、顧客中心主義の価値観と倫理観がありました。

コーポラティブ銀行は、過去に問題を起こしたのを受けて、この価値観を企業文化として明らかに打ち出すようになりました。というのも、2013年、融資ポートフォリオの報告価額と実際の価額に差異があったことが判明して、損失を報告したのです。

独立監査の結果、その原因は、2009年のブリタニア・ビルディング・ソサエティの買収と経営統制のまずさにあったことが分かりました。これを受けて非業務執行会長が辞職し、後に違法薬物を使っていたことや仕事のメールと電話を不適切に使用していたことが発覚して、規制当局の金融行動監督機構(FCA)から金融業界での就業を禁じられました。

しかし、コーポラティブ銀行は、その後の5年間で経営統制と倫理を強化し、リストラを実行して、支店数を370以上から50に減らしました。

私が使っていたナットウエスト銀行も、リーマン・ショック後にさらなる問題を生じていました。2008年の問題は、経営陣の思い上がりと過度な拡大の結果でしたが、2012年のLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作にも関与していて、これは利益重視の企業文化が原因とされたのです。FCAが行ったLIBORスキャンダルの調査の結果、企業文化と行動を重視する新しい方策が金融サービス業界に導入されました。

2000年代初めに日本の銀行のロンドン支店に駐在した経験があり、最近2度目の赴任で戻ってきた日本人マネージャーによると、ロンドンのシティ界隈の環境がはるかに厳しくなっているのを感じるそうです。そのマネージャーは、同僚ともども特別に研修を受ける必要がありました。規制を順守するだけでなく、自分と部下の問題行動にどのように気付き、対応すべきかをテーマにした研修でした。

コーポラティブ銀行は、最近、米国のプライベート・エクイティ会社から買収のアプローチを受けました。三井住友銀行をはじめ日本の金融機関は、ロンドンのフィンテック会社や銀行業界のスタートアップ会社に投資しています。イギリスの金融業界の会社に投資するのであれば、まずは自分たちの企業文化と価値観を確認して、さらなるスキャンダルを起こさない環境になっていることを確かめる必要があるでしょう。

帝国ニューズ・2021年1月13日・パニラ・ラドリン著

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職業人としての説明責任

日本企業で行われる無意味な会議の話がトレーニングのワークショップ中に出ると、私はよく自分の経験をシェアしています。日本企業で働いていた時に、経営企画チームを代表して本社での会議に出席しなければなりませんでした。私にはまったく知識のないトピックの会議でした。ただ稟議書を読んで、いっさい発言せず、最後に「了解」とだけ言うよう指示されて会議に臨みました。会議では、赤字工場の開設に携わった2人が、稟議書に書いてあることを一字一句たがわず読み上げ、続いて数億円の損失処理の承認を求めました。明らかに承認済みの話でしたので、出席者は全員「はい、承認します」と言いました。この会議に何の意味があったのか、いまだに分かりません。ある種の罰ゲームだったのかもしれません。人生の貴重な2時間を無駄にしました。

日本企業には説明責任を社内的に示す同様のメカニズムが存在します

でも、考えてみれば、この会議の目的は、社内の説明責任を確立すること、いわば「筋を通す」ことにあったのでしょう。意思決定が下され、行動が取られ、その理由が説明されたという事実形成です。ほとんどの日本企業には、説明責任を社内的に示す同様のメカニズムが存在します。また、問題が生じた際、経営幹部は社外的にも説明責任を負うとされ、ゆえによく見かける謝罪の儀式が行われるのです。

けれども、ここしばらく相次いだ日本企業のスキャンダルには欠けている要素がひとつあり、これは欧米のメディアやエンターテインメント業界のセクハラ事例にも共通しています。それが、職業人としての説明責任です。日本企業がグローバル化して社員も多様化するにつれ、この要素をコーポレート・ガバナンスやコンプライアンスのシステムに取り入れなければならなくなるでしょう。

欧米社会の幅広い職業、例えば弁護士、医師、会計士といった伝統的な職業から、最近では人事、金融、エンジニアリングなどの職業まで、あらゆる分野でその専門職者になろうとするのであれば所属が前提となる職業者の協会というのが存在します。加入に際してその倫理規定に従うことを宣誓し、試験を受けて進級したり毎年一定時間の研修を受けたりすることが期待されています。

説明責任は多様性のある労働力を構築するのに役立つ

国境を越えて専門職の資格を相互に認定するプロセスは複雑ですが、とはいえ専門職の資格を有する社員を雇うようにすれば、多様性のある労働力を構築するのに役立つでしょう。専門職の資格というのは、性別、年齢、障害、人種といった属性に左右されないためです。

また、日本企業にとっては、専門職者を雇うことにより、海外事業の説明責任を社内的にも社外的にも確立しやすくなるはすです。職業人としての説明責任を有している社員は、倫理規定に従わなければ、その職業を営む資格を失います。このため、上司や顧客から非倫理的なプレッシャーがかかる状況でも、それに抵抗する強さができます。

ただし、説明責任とは双方向のプロセスです。社員が社内だけでなく職業者の協会に対しても説明責任を負う一方で、管理職者は今までどおり部下の行動に関して社内的にも社外的にも説明責任を負います。つまり、管理職者は、信頼を育み、達成可能な目標と十分なリソースを提供しなければなりません。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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日本好きだけど日系企業だ働きたくない

センターピープルの2019年6月19日の人事セミナーで行ったパニラ・ラドリンの「日本好きだけど日系企業だ働きたくない」スピーチのスクリーンキャストです。

 


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信頼

私の仕事の目的を一文で言い表すならば、「文化を越えて信頼を築くこと」と言えるかもしれません。でも、こう言うと、信頼をどのように定義するのか、どうやって築くのかという疑問が自ずと浮上します。

これまでの経験を分析した結果、多国籍企業で信頼を築くには5つの要素が必要と言えそうです。それを順番に説明しましょう。

  1. コミュニケーション

共通の言語を持つことは非常に重要です。でも問題は、西洋人にとって日本語は最も難しい言語のひとつであり、また日本人も英語に対して同じような気持ちを抱いていることです。日本の企業は、外国人社員の日本語学習を支援し、また英語でのコミュニケーションを上達させるべきです。英語を公用語にしたり、最低レベルの英語を社員に求めるだけでは不十分です。経営陣がビジョンと戦略と計画を今よりももっと効果的に英語で伝えられなければなりません。

  1. 共通の関心

共通の関心を見つけ、関心の度合いに違いがあると理解することで、交渉に安定した基礎がもたらされます。このため私はいつも、日本人駐在員にヨーロッパの同僚やパートナーと世間話をするよう勧めています。共通の課題やニーズがあることが分かれば、共通の理解ができ、妥協や合意に至りやすくなるからです。

  1. プロセスと規則

信頼のレベルが低い場合は、法律や規則やプロセスが安全策として必要になります。しかし、日本企業もEUも、時として官僚主義やプロセスにとらわれすぎる嫌いがあります。信頼されるには、規則やプロセスに従っていることを示さなければなりませんが、究極的にはそれだけでは不十分です。どのように物事を進めるか、意図は何なのか、相手に対してどのようにふるまうかも、同じくらい重要です。

  1. 確実性

誰かを信頼するということは、その人が法律を守るだけでなく、言ったことを本当にやってくれると信じられることを意味します。日本企業にとって、これは定義が難しいかもしれません。ファミリーのようなスタイルの企業文化があり、全員の役割が曖昧で、職務上の責任が明文化されておらず、年功序列で動くためです。会社というファミリーのために、誰もが何であれ必要な行動を取るものとされています。家族の一員のためであれば、規則を曲げることもあります。しかし、この曖昧さは、多様な文化が混在する組織では通用しません。

  1. ビジョン

これゆえに、会社がどこへ向かっているのか、どのように見られたいのかに関する明確なビジョンが必要になります。このビジョンを社員に伝えて、チームの一員であるという帰属意識を社員に持ってもらう必要があります。そうすることで、この価値観が指針となって、ビジョンを達成するためにどのように行動すべきかが分かるようになるでしょう。与えられた規則やプロセスの枠内で様々な目標に達することだけがビジョンであって、社員が主体的に会社の価値観に参加していなければ、日本とヨーロッパの両方の企業で起きてきたようなスキャンダルが今後も続き、社会や文化を越えた信頼にとって悲劇的な結果を招くでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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オランダと法人税

イギリスのEU離脱に備え、パナソニックが10月以降、欧州本社をイギリスからオランダに移転すると発表しました。同社の欧州地域のコーディネーション機能はほとんどがドイツに置かれていますが、本社所在地にオランダを選んだというのは、決して驚きではありません。私自身も、2013年に初めてイギリスのEU離脱の可能性に備える戦略を論じた際に、イギリスに代わる日系企業の事業拠点としてアムステルダムが有力になると予測していました。

オランダは日本人駐在員の割合が高く、ヨーロッパではルクセンブルク、イギリス、ベルギーに次いで4番目です。しかも2015年以降、急速に増えていて、2015年から2017年の間に23%増となりました。ただし、オランダの日系企業の数は、この3年間でそれほど増えていません。つまり、赴任する駐在員のほとんどは、新規事業拠点の開設ではなく、既存の事業拠点の拡大・強化のために来ていることを意味します。

イギリスやドイツの代替としてのオランダの魅力は、英語が通じやすいことに加え、アムステルダムとアムステルフェーンに在蘭日本商工会議所や蘭日貿易連盟をはじめ長年にわたって活発に活動してきたネットワーキングの機会が揃っていることが挙げられます。また、日系企業との取引経験が豊富な法務・財務・金融のサービス会社も多数あります。アムステルダムのライフスタイルは日本人にとって親しみやすく、なにしろ日本とオランダには500年以上の貿易関係の歴史があります。

パナソニック欧州本社のCEOはフランス出身のローラン・アバディ氏ですが、最近の取材に応えて、オランダ移転を決めた理由のひとつが日本のタックスヘイブンの取り扱いであったことを明らかにしました。もちろん、イギリスがEUとの協約なしに単一市場から離脱すれば、人や資本やモノの移動の自由が失われるという懸念は、やはり大きな理由です。

しかし、これらの理由に隠れて見落とされがちなこのタックスヘイブンの問題は、実際、日系企業が熟慮すべき点であることを、私も悟りました。

私が調べたかぎりでは、2018年4月以降、日本企業の海外子会社が他の海外子会社の持株会社として機能している場合、その持株会社の所在国の租税負担割合が20%未満であれば(たとえ持株会社が実際的な業務活動を行っているとしても)、配当や利子などの受動的所得が日本の課税対象となります。

イギリス政府は、EU離脱が国民投票で決まる前から、法人税を段階的に引き下げ、2019年には19%、2020年には18%にすると明言してきました。その後、2020年時点の税率は17%に引き下げられていて、現財務大臣はこの約束を守ることでイギリスがEU離脱後も引き続き「営業中」であることを示すとしています。

一方、オランダの法人税は25%ですが、多国籍企業の誘致を目的として個別の税制優遇を提供し、実質的にそれよりも低い税率とすることにオランダがオープンであることは、よく知られた事実です。

イギリス企業も、イギリスの法人税が17%になることはあまり歓迎していません。パナソニックと同様に、むしろ障壁のない自由貿易とグローバルに合意された透明なガバナンスの基準を好んでいるのです。

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EUの一般データ保護規則

EUの一般データ保護規則(GDPR)が5月25日に施行されます。この日以降、GDPRに準拠しない方法でEU域内の個人データを処理する(収集、使用、保管、共有が含まれます)企業や団体は、重い罰金を科される可能性があります。

私のような零細企業の多くは、対応に苦労しています。この規則は明らかに、B2Cの大手企業を対象としています。顧客の年齢、性別、支持政党など、きわめて個人的な性質のデータを多数保有していて、不愉快あるいは過剰な介入と見られかねない方法で絞り込むのに使うことのできる企業です。

とはいえ、私もこの規則へのコンプライアンスを確認することにしました。お客様からの信頼を維持するだけでなく、顧客データベースとメーリングリストを整理してスリムダウンし、サービスを向上させる良い機会だと思ったからです。

ヨーロッパの日系企業は、間違いなくGDPRに対してとりわけ神経質になっています。イギリスのホンダ・モーター・ヨーロッパが2017年、同意に関してGDPRと非常に似た規定を設けているイギリスの規制に違反したとして、イギリスの監督当局から罰金を科されたためです。

GDPRのポイントは、同意を得ることです。個人データの処理について顧客に通知し、同意を取り付けなければなりません。どのようなデータ(どのような種類の個人情報)を保持するのか、それらをどのように使うのか(メール、ニュースレター、郵送など)を明確に説明しなければなりません。また、二重のオプトイン方式が推奨されています。ユーザーがフォームに情報を記入して送信すると、そのデータを共有したいかどうかを確認するメールが届く仕組みです。さらに、データベースからの削除をリクエストするための明確なプロセスも導入しなければなりません。

新しい規則に準じていない以前の同意に基づいて今までどおり個人データを保持することは認められません。このため、データベースに含まれている人に再度連絡し、個人データの処理を今後も許可するかどうかを聞くのが最も安全かもしれません。もちろん、あらためて聞かれれば許可しないという人が出て、メーリングリストの登録件数が減るリスクはあります。

とはいえ、私にとってはこれがGDPRをできるだけ厳密に順守しようと思った2つ目の理由です。私のニュースレターが本当にお客様に価値をもたらすようにしたいのです。弊社のニュースレターは、トレーニングを宣伝するマーケティングというよりは、アフターサービスの一部という位置付けです。教室で学んだことを思い出し、さらなる知識を積み重ねていくためのサポートです。

メーカーは、単に製品を売るだけの業態から、ソリューションを売る業態に移行しつつあります。ハードウェアに加えてメンテナンスやサポートなどの関連サービスを提供し、IoTやビッグデータを活用して高度にカスタマイズした製品を作るようになっています。

これはもちろん、GDPRが必要になった理由です。個人データは、良い方法で使うことができます。顧客のニーズをより完全に満たすためです。しかし、ご存じのように、ヨーロッパ、特にかつての独裁主義国や共産主義国では、個人データが悪用されることもあるのです。

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日本語に「リスク」という言葉がないのはなぜか?

以前から思っていたことですが、先日、日本エマージェンシーアシスタンスの吉田一正社長の講演を聴きながら、あらためて思ったことがありました。英語の「リスク」に相当する日本語の言葉が存在しないという事実です。吉田社長がプレゼンのスライドで「リスク」の定義を説明した際にも、カタカナで書かれていて、これが外来の概念であることを示唆していました。吉田社長いわく、「リスク(risk)」は危機が発生する潜在性であり、その潜在性が現実になれば「脅威(threat)」、そして有害な事態になれば「危機(crisis)」とのことでした。

でも、「危機」が「リスク」の代わりに使われていることもあり、このため「risk management」と「crisis management」を日本語で区別しようとすると問題が生じます。多くの場合、前者は「リスク・マネジメント」という外来語で、後者は「危機管理」と日本語で語られているように見受けられます。

そこで、なぜ日本語に「リスク」に相当する言葉がないのかを吉田社長に聞いてみたところ、同感といった面持ちで、特に日本は自然災害が多いことを考えると不可解だと語ってくれました。危機が目の前で起きれば対処できるけれども、事前には対処できない日本人のマインドセットに関係があるのではないかと、吉田社長は考えていました。それゆえに、東日本大震災が福島原発事故という人災につながったように、自然災害がさらなる危機に発展しないように予防することにかけては日本人は得手でないという見方でした。

たいていの人は、リスクの評価やリスクへの対応は得意ではありません。個人的にコントロールできない状況(飛行機の墜落やテロ)に直面する可能性をはるかに過大評価し、コントロールできると思う状況(道路の横断やスキー)のリスクははるかに過小評価しています。このため、地震や火山や津波といった大規模な自然災害に定期的に見舞われてきた歴史こそが、日本人を麻痺させるのかもしれません。言わば「まな板の上の鯉」という心境でしょうか。

危機がそもそも発生しないようするための努力は盛んに行われていますが、避けられないリスクに対処するための計画を策定する努力はそれほどでもありません。そして、危機が発生すれば、通常は対処するよりも隠匿されています。日本企業は、間違いが起こった後に導入された再確認と再々確認の手順でいっぱいです。

吉田社長は、日本企業がすべきことについて明確な考えを持っていました。「リスク」を担当する執行幹部を指名することです。しかも、この役職者は、事業部門の管理職から横すべりするような形で指名されるべきではありません。社長に直結するパイプを持ち、事業部門に司令を出せる必要があります。このため、この役職は要職であると社内で認められなければなりません。スペシャリストをこの役職に就けるか、さもなければ将来社長になるうえでこのポストの経験が必須とすべきです。そして、吉田社長の言葉を借りるならば、「逃げ隠れしない」人物でなければなりません。世の中はますますリスクの高い、不透明な世界になりつつあります。グローバルな「リスク」を翻訳する担当者が、日本企業に求められています。

パニラ・ラドリン著 帝国データバンクニューズより

ヨーロッパ人のリスクに対しての考え方についてパニラ・ラドリンの多国籍チームと円滑に働く方法のオンラインコースをお勧めします。

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取締役会は顧客と社員とコミュニティを反映すべき

shutterstock_307926782大手日本企業の欧州子会社の取締役会が、日本人と現地人、および男女の構成比という点でどれだけ多様性を実現しているかについてのリサーチの第1段階を終えました。

取締役の女性比率は、ヨーロッパよりも日本のほうが高いという結果が出ました。これは社員構成を考えると驚きです。社内の昇進で上位の役職へと上がってくる女性管理職者の割合は、間違いなく日本の本社よりも欧州子会社のほうが高いためです。

一方、日系子会社の取締役に占めるヨーロッパ国籍者の割合は、会社によって大きな差がありました。東芝、シャープ、ファーストリテイリング(ユニクロの英国法人)のゼロから、旭硝子、ブリヂストン、キヤノン、日本電産の100%まで開きがありました。つまり、国籍の多様性は、業界によって傾向があるわけではなさそうです。また、取締役会が多様性を重視すべき理由として最も有力と思われる、顧客の構成を反映すべきであるという論は、思ったほど大きな要因ではないことも示唆されました。

透明性を高め現地に受け入れられるには

20年前は、海外と日本国内の両方で日本人顧客への依存度を低くしたいという狙いが、多くの日本企業が「国際化」に乗り出す主な理由となっていました。キヤノンは当時、ヨーロッパ出身者を海外子会社で高い地位に指名した先駆者となり、結果として同業他社よりも日本とヨーロッパの両方で良い業績を上げたように見えました。

現在、日本企業がグローバル化の方策として好むのは、国際事業部門を拡大し社内で幹部を育てることではなくて、M&Aを通じて海外事業を拡大することです。過去10年の大型買収が、旭硝子(グラバーベルを買収)をはじめ、富士通(インターナショナル・コンピューターズ・リミテッド)、野村證券(リーマン・ブラザーズ)、日本板硝子(ピルキントン)など、ヨーロッパ出身者の取締役が多い企業の要因となっています。

ただし、業界の特色も一部に見られます。例えば金融サービス業界は、取締役の指名に対して承認権を有する欧州当局から厳しい目を向けられています。現地市場に対して深い理解と経験を有する取締役であることを当局が期待しており、日本人の経営幹部の多くはこの要件を満たすことができません。

また、富士通と日立は、イギリスで公共セクター向けの事業(行政サービス、原子力、鉄道)がかなり大きな部分を占めているため、政府調達基準となる多様性の要件を満たすだけでなく、事業展開する地元コミュニティで受け入れられる必要があります。例えば、日本企業が保有するイギリスの公益会社が最近、取締役を公募しましたが、応募要件のひとつに、その公益会社の顧客であることという条件が含まれていました。

比較的規模の小さい日本企業やヨーロッパに進出したばかりの日本企業は、少人数の取締役会を好むかもしれません。現地に在住しない日本人の取締役が2人だけといったケースも見られます。が、ヨーロッパでは昨今、透明性を高め、ガバナンスを向上させるべきとの大きなプレッシャーが取締役会にかかっています。現地出身の取締役を最初から指名しておけば、規制当局、顧客、社員との関係を向上させるのに役立つでしょう。

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申年を迎えて

nikko monkeys私の会社では2016年、設立12周年を記念して、クライアントとのランチセミナー・シリーズを開催することにしました。12周年というのは半端な数字に聞こえるかもしれませんが、干支を一回りして申年に戻ってきたことを意味します。

この間の日本企業のトレンドを振り返ってみると、最も明らかなものとして、欧州に本社のある多国籍企業の買収が挙げられます。最近では三井住友海上が、イギリスのロイズ保険市場などで保険事業を展開するアムリンを約6,350億円で買収すると発表しました。今年初めには、日立製作所がイタリアのアンサルドブレダ、およびフィンメカニカが保有するアンサルドSTSの株式を約約1,044億円で買収した案件もありました。

どちらの買収も、日本の多国籍企業の多くに見られる構造変化を物語っています。日立は、鉄道事業の世界本社をイギリスに移転しました。また、日本の大手保険各社は、すでにそれぞれイギリスの保険会社を買収しており、これを足がかりとしてさらにグローバルな事業拡大を図りたい意向です。

明らかに日本企業は、買収を通じて単に市場を拡大するだけでなく、グローバルな経営力を付けることを目指しています。かつて日本企業が米国子会社を通じてグローバルなネットワークを管理した事例がいくつかありましたが、最近では欧州の子会社が、米国をはじめ他の海外市場も管理することを求められているように見えます。

この一因となっているのが、日本で起きているもうひとつの長期的なトレンド、「グローバルな人材」の欠如です。特に上級マネジメントのレベルで、海外での成長を管理する人的資産が足りないのです。しかし、それ以外にも、ヨーロッパの多国籍企業は多数の国に散らばった企業をバーチャルなマトリックス構造で管理するのに慣れているという事実も加担しています。すなわち、様々な事業部門の責任者が物理的に同じ本社にいないかもしれないことを意味します。ヨーロッパのマネージャーは、グローバルに有効性を発揮する高い専門知識を持ちながら、同時に多文化のコミュニケーションスキルを活かしてチームの遠隔管理ができなければなりません。

彼らは欧州域内でこれをするのには慣れていて、米国とのつきあいにもある程度は馴染みがあります。しかし、日本を向いて仕事をするのは、多くにとって新しい経験です。専門知識や遠隔コミュニケーションスキルだけでは日本の本社を説得して賛同させられないことが分かると、ヨーロッパのマネージャーはしばしば動揺します。日本の本社のマネージャーは、物理的に同じオフィスにいる相手とコミュニケーションすることにしか慣れていません。また、たいていはジェネラリストのため、専門分野の意見のみを論拠とする議論を説得力があるとは見なさない傾向にあるのです。

こうしたコミュニケーションの壁を克服する意識的な努力が講じられないかぎり、日本の本社は「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿のように映るかもしれません。日本ではこれが徳の高い行動と見られていると思いますが、西欧では手遅れになるまで問題を直視しようとしない姿勢と受け取られます。私の会社では、どちらの世界に対しても目と耳と口を開くことを大切にして、これからの12年を歩んでいく所存です。

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カストマー・サーブス(その2)

前回の記事で、日英のカスタマーサービスに差があるのは多くの理由が背景にあることに触れました。そしてこれらの理由から日英の企業文化の違いの成り立ちに辿りつき明らかにすることが出来るのかも知れません。

ここで、私がまず最初に検証したいのは、企業理念と日英の会社の歴史的背景の違いです。ご存知の通り、人類最初の産業革命は英国で興りましたが、必ずしも最初が最良と同義語ではありません。これはロンドンの地下鉄が一つの例と言えるかもしれませんね。実際、私達が多くの失敗を重ねる事で、他の人が何かを学ぶことができます。

英国の産業革命の副産物として生まれた社会問題に対する意識は、未だに英国国民の心に影を落としています。例えば英国人は会社の経営者と聞けば、腹黒い金持ちの資本主義者をイメージするのです。のどかな田園風景を黒々とした不吉な工場に塗り替え(有名な英国の賛美歌エルサレムからの抜粋)、職場環境や健康には目もくれず、労働者を家畜のごとく酷使する悪代官として捉えてしまいます。

日本で後に始まった産業革命でも社会問題は起こったものの、日本は国家の近代化と、産業力・軍事力において西洋諸国にひけを取らない実力をつける為に精一杯でした。19世紀の終盤に成熟した日本の会社の企業理念は、企業は富国の為にあるという概念のもとにあり、これは20世紀初頭に設立され、社是7条の中に“工業を通じて国家に奉仕“を掲げる松下電器のような企業にも引き継がれていきました。そして第2次大戦後、日本は国を挙げて働きつめ、再び一流工業国に復興させ、”奇跡の日本経済発展“を遂げました。やはりその頃に設された企業、例えばホンダ技研などは、「社員の幸せと社会貢献」を強く謳っています。

それに対し、英国の産業革命以降の製造企業と社是を見てみると、往々にして社会貢献とか、社員の幸せという言葉は見当たりません。といっても、ごく最近は企業の社会貢献がファッショナブルな傾向になってきていますが。1970-1980年代に多くの伝統産業が打撃を受け、これまで自分達に良くしてくれていた会社が大幅な人員削減を決行していく中、人々の会社への信頼感と、労働階級としての誇りは消え失せてしまいました。炭鉱、鉄鋼、エンジニアリングといった産業で失職した人々は、俗語でMc Jobsと言われた、不安定なサービス業へと移行せざるを得なかったのです。

アングロサクソン資本主義における企業は、利益率や投下資本の株主へのリターンが目的の、株主中心主義と捉えられています。これに対し日本の会社は会社を支える基本要素は利害関係がまずは社員であり、次にお客様であり、社会であり、そして最後に株主であり、英国の会社は日本のステークホルダー型企業の在り方とその様相を異にしているのです。英国の顧客サービス担当者は、過去150年の階級社会で培養された恨みとか憤り、単純労働者の誇りの喪失感と、自分の雇用主は自分や顧客や社会の事なんか、本当はこれっぽちも考えてくれていないんだ、という混ざり合った思いで対応している訳です。とは言え、勿論全てがこのようなわけではありません。次回はまた違うケースを明らかにしてみたいと思います。

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このシリーズは人材紹介会社のセンターピープルのご協力の上提供させて頂いております。

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Last updated by Pernille Rudlin at 2021-02-23.

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