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ある日本人の起業家がこんな話をしてくれました。サービス業の会社を設立しようと思うのだが、複数の友人から反対されているというのです。その理由は「日本の客はサービスに金を払わない」からだそうです。この起業家とは日本語で話をしましたが、私は頭の中でこの「サービス」とは「services」だと理解していました。つまり、農業や製造業ではないサービス産業のことを言っているのだと思ったのです。
この会話がその後も気になり続けました。私も「services」を売っている一人です。私が提供しているのは日系企業向けのコンサルティングやトレーニングですが、時折その対価を払いたがらない日本人がいることには気付いていました。とはいえ過去12年にわたって私の会社が利益を上げてこられたのは、日系企業側の現場担当者がたいていはヨーロッパ出身者で、彼らはコンサルティングやトレーニングに対価を払うことにはるかに慣れているからでしょう。
ここに言葉の違いがあるのも事実です。英語の「service」は、冠詞の「a」を付けないか、あるいは「the」を付けて使われます。「pay for service」や「how was the service」という具合です。これはカスタマーサービスの意味であって、ここに混乱が生じていると思うのです。私が話した起業家の友達は、日本の顧客はカスタマーサービスに追加で料金を払う気がないということを言っていたのかもしれません。日本では優れたカスタマーサービスは自動的に付いてくるものであって、購入したものの代金に含まれていると思われています。
ある概念が別の言語にどのように翻訳されるかは、時として、その概念がその文化においてどのように受け止められているかを知る手がかりとなります。特に日本語では、カタカナでのみ存在する言葉は、その概念が日本において本当には存在していないことを意味するのかもしれません。言うまでもなく、日本語の「サービス」は英語の「service」とは異なり、「無料」という付加的な意味を含んでいます。
サービスの値段をどのように設定するかは、製品の値段よりも複雑です。そのサービスを実現するのにかかった時間と専門性が絡み合います。最近、ある見込み顧客から、私の会社のトレーニングは別の会社よりも50%割高だと言われました(この別の会社の本業は語学学校です)。私は、同様の状況にある他社に対しても同じ値段を提示しており、弊社の専門性の対価としては妥当な価格だと説明しました。その語学学校に専門ノウハウがないことも承知の上でした。最終的にこの会社は、弊社のサービスを選んでくれました。
ヨーロッパの顧客は、自社の問題を解決してくれるサービスに対してお金を払う用意があります。ですから、サービスの質がどれだけ高いか、どれだけ専門性があるか、どれだけ時間がかかるかを説明するだけでは、十分ではありません。ヨーロッパのB2Bサービスの営業担当者が皆、最初に顧客と信頼関係を築いて顧客の抱えている問題を話してもらおうとするのはそのためです。「サービス」よりも「ソリューション」という言葉が好まれるのもそのためです。この言葉は、問題を解決してくれる製品とサービスの統合物を購入していることを示唆するからです。
Pernille Rudlinによるこの記事は帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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