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今月イギリスで開かれる日系企業の人事担当者向けのイベントで、「日本は好きでも、日本企業では働きたくない」と題したプレゼンをする予定です。日本は、ヨーロッパの若い層の間で今までにも増して人気の国になっています。アニメと漫画、それに日本食の人気があるためです。しかし、ジェトロの調査によると、在ヨーロッパの日系企業にとって人材確保は重要な経営課題であり続けています。
若い人たちは、遊び心のある日本のポップカルチャーは大好きですが、技術・製造畑の日系企業でそのような文化を経験できるわけではないと考えています。
日系企業で働きたい人が増えない背景には、もう少し深刻な理由もあり、それは現地採用者にとってキャリア開発の機会がないことです。経営幹部になれるのは日本人だけのように見えるからです。大手の日系企業はこの現状を改善すべく、グローバルな採用・研修制度を導入して、日本以外で採用した社員を日本に赴任させることも行っています。
私が思うに、人材確保の困難はおそらく中小の日系企業でむしろ顕著でしょう。これらの企業では、ヨーロッパ事業は依然として基本的に販売拠点と位置付けているため、有能なエンジニアを雇っても、開発よりは営業が主な仕事になり、失望させてしまう可能性が多々あります。
西欧の日系企業は、管理職者を最も必要としていますが、以前から人件費の問題を抱えています。一方、中欧と東欧の日系企業が最も必要としているのは工場の従業員ですが、これら地域でも人件費が急速に上昇していて、最大の経営課題になっています。知名度に勝る欧米企業と競争しなければならないと思われますが。欧米企業も労働力不足の問題を抱えています。言わずと知れたソリューションは高報酬を出すことですが、そうすれば中欧・東欧で製造するコストメリットに食い込みます。
そこで日系企業は、管理系や技術系の人材をめぐる価格競争に参戦するよりは、何か別の魅力を提供する必要があります。これが、ヨーロッパの若者の間で人気の日本のポップカルチャーへと結び付くわけです。
最近、ある技術系の日系企業で15年以上の勤続経験を持つヨーロッパ出身者が私のセミナーに参加して、「エキセントリックな子供っぽいマインドセット」が日系企業で働くメリットのひとつだと指摘しました。17歳の私の息子も、初めての日本訪問で同じことを発見し、このカルチャーに飛び付きました。ポケモンのポッチャマのぬいぐるみと柴犬のペンケースを手に入れて、ペンケースは今では哲学、数学、経済の教科書に混ざって燦然と輝いています。
ジェトロの調査では、製品やサービスをヨーロッパで販売するうえでの最大の課題に「ブランド強化」が選ばれましたが、これは広告宣伝などよりもむしろ、若い層にアピールする「働きたい会社」としてのブランドであるべきです。雇用主としてのブランド認知が広まれば、その会社のものづくりに参加し、販売や経営管理で役に立ち、同時にそれを楽しむ様子を、ヨーロッパの若者が思い描けるようになるでしょう。
このトピックに関するPernille Rudlinのプレゼンテーションのビデオは、Rudlin ConsultingのYouTubeチャンネルで、日本語でご覧いただけます。
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