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ロンドンの鉄道駅で電車を待つ間に食事をしたりお弁当を買ったりするのによく利用していた日本食レストランが、営業時間を午後6時までに短縮し、テイクアウトのみの業態に変更したことを知ってがっかりしました。防火・安全規制が変更されたために1か月の閉店を余儀なくされ、その後、限定的にのみ営業を再開したというわけでした。
前日にもロンドンの西1時間のところにあるスラウで別の日本食レストランに行きましたが、前回の来店時からオーナーが変わっていて、今はフィリピン人の経営になっていました。スラウで宿泊したホテルのスタッフも、ほとんどがフィリピン人のようでした。5年前であれば、この種のホテルのスタッフはたいてい東欧からの出稼ぎ者でしたが、イギリスがEUを離脱して労働者が自由に入国できなくなったことで、アジアやアフリカからイギリスに働きに来る人が増えています。
これらの変化に私は驚きましたが、ロンドンの日本食店のカウンターで接客していた店員さんによると、これは最近の変化ではないとのことでした。これを聞いて、最近は以前ほどこの店を利用していなかったことを自覚しました。研修の多くをオンラインで提供していて、頻繁に出張しなくなっているからです。オンラインのほうが、在宅勤務や外国の社員も参加できるというメリットがあります。
それもあって、私自身はここしばらくにわたり、過去何年もなかったような多忙が続いていますが、他のイギリスの中小企業(従業員数が249人以下)は、今、厳しい状況に置かれています。最近の調査では、中小企業経営者の自信のレベルがコロナ禍の始まり以来、最低水準になりました。中小企業は、特にコロナ後の規制環境と労働市場の変化、およびEUとの貿易や光熱費の高騰に対処するだけのリソースがありません。
イギリスの中小企業はイギリスの労働力の60%を雇用していて、日本とほぼ同じ割合です。また、コロナ禍の間に様々な政府の支援を受けてきて、現在のエネルギー危機に際しても支援が出ている点も、日本と似ています。けれども、政府のエネルギー補助金は3月以降は半減します。
これに加えて鉄道ストの影響もあって、特にホテルやレストランの業界には陰鬱なムードが漂っています。鉄道ストは短期的な問題と思われますし、実際にそうであってほしいものですが、もう少し長期的に見れば、中小企業は事業の再考を迫られています。
私自身は、仕事のうえでも社交のうえでも対面の形態が戻りつつあると感じています。企業は、士気やチームワークといった理由から、スタッフが対面で一緒に仕事をすることを願っています。また、人というのは触れ合いを求めるものです。とはいえ、それが大都市の外で起こり、通勤の不要な状況が生まれるかもしれません。
私の地域の当局は、「20分地区」を実現させようとしています。店、レストラン、学校、病院などへ徒歩20分以内で行けるコミュニティです。ロンドンの駅にある日本食レストランも、本来のルーツに戻るかもしれません。私が初めてこの店で食べたのは、ロンドンから南へ1時間のブライトンという町で最初に開店した時でした。ブライトンはハイブリッド勤務の人が増えている場所ですから、地元できっと歓迎されるでしょう。
Pernille Rudlin によるこの記事は、2023年3月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。
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