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(この記事は帝国ニュースの2021年7月14日号に掲載されました)
イギリスがEUから離脱し、その移行期間が終了して6か月になります。私自身のリサーチと経産省および三菱UFJリサーチ&コンサルティングが最近実施した調査によると、イギリスの日系企業は多くの人が予想したほどの深刻な影響は感じていません。
その一因は、日系企業が2016年の住民投票以来5年以上かけて、入念な準備で最悪の事態に備えてきたためです。経産省の調査では、大手企業(売上高100億円以上、在英日系企業の約60%)は、イギリスの事業拡大に関して中小企業よりもポジティブな見方を持っています。在庫や原材料を蓄え、物流施設や倉庫を大陸に設置し、通関手続きの増加に伴うコストを吸収するためのリソースとネットワークを持っています。今でもイギリスが重要な市場であり、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)全域の地域コーディネーション拠点として便利な場所だと見なしています。
ただし、大手企業の間でも見方にばらつきは見られます。経産省の調査では、日本の自動車メーカーがイギリス市場の先行きを厳しいと見ていたのに対し、化学、製薬、食品、電機メーカーはより肯定的に見ていました。この見方の違いは、従業員数の推移に如実に表れています。日産は2020年末時点の従業員数が前年比11%減でした。ホンダはイギリス工場を7月に閉鎖する計画で、2020年末時点の従業員数は前年比14%減です。イギリスの従業員数が2桁減になった他の企業には、野村証券、三菱電機、コニカミノルタがあります。
ただし、従業員数を正確に把握するのは以前に比べて困難になっています。イギリスのEU離脱の影響のひとつとして、ソニーやパナソニックのような大手がヨーロッパ法人をオランダやドイツに移転したためです。イギリス拠点は法人化された子会社ではなく支店という扱いになったため、従業員数などの詳細をイギリスの政府機関に申告する必要がなくなりました。
みずほや三菱UFJなど金融サービス会社の多くは以前から日本の本社またはヨーロッパ子会社の支店でしたが、ほかにも数社がこのモデルに移行し、また大陸に子会社を開設することで、今後もEUで金融サービスを提供していくための事業許可を確保しています。EUは、金融サービス会社にさらに圧力をかけて、意思決定機能と顧客対応の担当者をEUに移すよう働きかける可能性を示唆しています。
イギリスは今まで以上にサービス産業の経済になりつつあり、これは雇用を拡大させている日系企業にも表れています。NTTはグローバル本社をロンドンに移しましたし、アウトソーシングはヨーロッパ全域で人材会社の買収を続けています。
経産省の調査では、今後もイギリスの事業を拡大する理由として、英語が使えること、他の多国籍企業があること、そして司法制度の透明性が高いことが挙げられました。地域内の人と事業のネットワークはますます分散しつつありますが、イギリスは今後もそのコーディネーション拠点であり続けると思われます。
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