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ヨーロッパではバカンスの季節が終わりました。私はイギリス国内で短い旅行をしただけで、旅先で寒い雨に迎えられましたが、それでも他のヨーロッパの人たちが経験したような酷暑に遭わずに済んで良かったと思いました。
ドイツにいるビジネスパートナーは、家族でイタリアのサルディニアへ行きましたが、山火事発生で予定を短縮して帰ってきました。イタリアやギリシャの島々へ旅行した人たちは、多くがこの憂き目に遭いました。コロナ禍が明けて初めての完全な夏で観光ブームが期待されていたことから、イタリアのジャンカルロ・ジョルジェッティ経済・財務相は今年の経済成長が最大1.4%になると語っていましたが、これらの出来事が水を差したかもしれません。
イタリア経済の減速は第2四半期(4~6月)にすでに表面化していました。GDPが思いがけず0.3%のマイナス成長となったのです。エコノミストが挙げた理由は、内需の低迷、高金利、根強いインフレ、純輸出の伸び悩みなどです。特に工業と農業が打撃を受けていて、工業生産は6月、7月ともに減少しました。
とはいえ、イタリアの日系企業は過去1、2年にわたり拡大基調です。イタリアの最大手日系企業30社のリサーチを最近終了しましたが、雇用者数は3万1,000人以上で、前年から約8%の増加でした。イタリアには日系企業が約400社あり、雇用者数は約5万人ですが、その半数以上を上位30社が占めています。日系企業の雇用者数という点では、イタリアはオランダと並んでヨーロッパの4位。イギリス、ドイツ、フランスに続いています。
イタリア最大の日系企業はNTTで、これはNTTデータが2011年にイタリアのValue Teamを買収したこと、またイタリアに大きな事業を有していたスペインのEverisを2013年に買収したことが原因です。2位の日立は、イタリアの鉄道会社、Ansaldo STSの買収を2019年に完了しました。
ただし、雇用者数の最近の伸びが最も著しいのはダイキン工業とパナソニックで、どちらもイタリアの空調会社を買収しています。イタリアは他のヨーロッパ諸国よりもエネルギー効率化に関する税制優遇に積極的で、省エネ改修費用の最大110%の税額控除を認めています。このためヒートポンプの売れ行きが好調で、昨年にはヨーロッパで7番目の市場となりました。
もちろん、日本以外の国の企業も、ロシアへの依存を減らしたい、気候変動を緩和したいというヨーロッパ諸国の意向がもたらす事業機会に気付いています。中国の電機メーカー、Midea(美的集団)はイタリアにヒートポンプ工場を建設する計画ですし、ドイツのBoschとVaillantは工場を拡張中です。米国の空調大手、Carrier Globalは、ドイツの暖房設備会社、Viessmannを120億ユーロで買収しました。
イギリスにはヒートポンプのための補助金制度がありますが、ヒートポンプの普及率はヨーロッパで最低です。これは電気代に比べてガス代が安いためです(セントラルヒーティングのほとんどがガスを燃料としています)。また、ヒートポンプの設置に際しては許可が必要になるうえ、設置のための熟練労働力も不足しています。そのうえイギリスは惨めなお天気の国ですから、ヒートポンプがもたらす冷房側のメリットにはあまり興味がありません。
帝国ニューズ・2023年9月13日・パニラ・ラドリン著
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