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ロシアがウクライナに侵攻する1週間前に、リヴィウにある日系技術企業で働くウクライナ人の社員2人からメールをもらいました。私が提供している研修についての問い合わせでした。紛争の緊張が高まっていることは知っていましたが、普通どおり返信すべきと思い、オンライン・ミーティングを翌週にスケジュールしました。
当然ながら、このミーティングはキャンセルされました。キャンセルを申し入れてきた彼らに、何かできることがあったら教えてほしいと返信すると、「ここで起こっていることを、いろいろな人に話し続けてほしい」とのことでした。彼らはすでに、21世紀の戦争でコミュニケーションが果たす重要な役割を認識していました。
白状すると、この出来事があるまで、自分の仕事に関係することとしてウクライナ情勢に注目していたわけではありませんでした。2014年のユーロマイダンとクリミア併合のことは知っていました。顧客の日系企業の人事マネージャーの弟さんがウクライナ軍で戦ったことを聞いていました。
日本企業のウクライナへの投資は比較的限られていて、ほとんどが自動車関連だと思っていましたが、この日系技術企業から連絡を受けたことで、リヴィウに技術産業のクラスターがあり、IT関連の企業やスタートアップが多いことを知りました。事実、日立製作所は、最近買収した米国のソフトウェア会社、GlobalLogicを通じて、ウクライナに7,000人以上の社員を有していました。
ITサービス産業がウクライナで活況を呈している理由は、在欧日系企業を対象にジェトロが実施した最新の調査結果で分かりました。日系企業はヨーロッパでの投資分野として、炭素削減技術に次いで2番目にデジタル・トランスフォーメーション技術に関心を寄せていました。
在欧日系企業の37%が、すでにその種の技術を使用しています。この割合は、東欧と中欧の日系企業では50%以上です。西欧に比べて低いコストでデジタル・スキルのある人材を見つけられます。
デジタルに明るい人材の厚さは、現在の戦況にも表れています。ウクライナは、ロシアのウェブサイトに侵入しただけでなく、西欧にいる私たちの目には、少なくともソーシャルメディアの情報戦では優勢に立っているように見えます。爆撃と殺害のおぞましい映像の間にも、ウクライナの人たちがシェアしている動画のブラックユーモアと明るい勇気に、私たちは感銘を受けています。ウクライナの農夫がロシア側の戦車をトラクターでけん引して盗んでしまったり、タバコを口にくわえたまま素手で地雷を運んで除去したりしている様子が伝わっています。
ウクライナ人のコミュニケーション・スキル、特にゼレンスキー大統領の手腕は、戦争と独裁者と侵攻の記憶を持つ欧州の人たちに共感を誘っています。イギリスでは、あるテレビ局がゼレンスキー大統領のかつてのコメディ番組を放映しています。一介の歴史の教師が選挙で大統領に選ばれてしまうシリーズです。この物語では、この歴史の教師が罵り言葉もたっぷりに白熱した政治汚職反対の演説をしたのを生徒がスマホで撮影してフェイスブックに投稿したことから、有権者の支持を集めてしまったという筋書きになっています。
(この記事は帝国ニュースの2022年4月13日号に掲載されました)
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