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日本ペイントホールディングスが最近、フランスの塗料メーカー、Cromologyを買収したというニュースを見て、理解するのに少し時間がかかりました。この買収は、オーストラリアにある連結子会社のDuluxGroupが新しくイギリスに設立したDGL International UKを通じて行われていました。イギリス人にとってはDuluxは親しみのあるブランドで、1960年代からオールド・イングリッシュ・シープドッグを使ったマーケティングで知られています。CMやペンキの缶でお馴染みのこの犬種がDulux犬と呼ばれているほどです。
調べてみたところ、オーストラリアでも広告にDulux犬が使われていましたが、今ではイギリスのDuluxとオーストラリアのDuluxはまったく異なる親会社の傘下に収まっています。Duluxブランドのペンキは、1930年代に初めてイギリス市場で販売されました。イギリス企業のICIが開発した塗料で、ブランド名は「Durable」(長持ちする)と「Luxury」(贅沢)を組み合わせた造語でした。1986年までには、ICIの豪州法人がDuluxの豪州法人を100%所有していましたが、1997年、親会社のICIがこの豪州事業を売却しました。
そして2008年には、イギリスのICIがオランダのAkzoNobelに買収されました。一方、オーストラリアのDuluxGroupは、2010年に独立企業としてオーストラリア証券取引所に上場し、以来、オーストラリア、イギリス、フランスの様々な塗料ブランドを買収してきました。そして
Cromologyは、欧州で4位の建設用塗料のメーカーで、20種類のブランドを有し、イタリア、スペイン、ポルトガル、フランスで製品を販売しています。明らかに日本ペイントは、Duluxをはじめ様々なブランドを中欧・東欧にも拡大する手段としてこの買収を位置付けています。
最近までフランスは、日本企業がヨーロッパに進出する際の拠点として、イギリスやドイツのように大きな存在ではありませんでした。しかし、今回の日本ペイントの動きを見て、これが変化しつつあるのかどうかを考えさせられました。日本企業がフランス拠点の多国籍企業を買収した事例としては、豊田通商による
CFAOは、日本の商社に似たような業態で、170年近い歴史を有しています。アフリカ39か国、特にフランス語圏の国に大きく事業展開しているほか、ベトナムなどかつてのフランス植民地にも進出しています。全世界の従業員数は2万1,000人以上で、トヨタ車の販売のほか、醸造酒、医薬品、小売り、自動車整備サービスなどの事業を有しています。
フランスはこれまで長年にわたり、有名ブランドをグローバルに管理してきた経験があります。しかし、以前にもこの連載で言及したとおり、多国籍企業はしばしば、事業コストが高く、労使関係に問題があるうえ、複雑な官僚主義のある国への投資には消極的です。フランスのマクロン大統領は、労働法を改革し、退職年齢を引き上げ、年金制度の経済負担を軽減しようとしてきましたが、コロナ禍でこれらの動きが停滞しています。来年4月の大統領選で再選を果たすために人気を維持しておかなければならないという事情も働いています。フランスが模様替えのムードになるのかどうかは、来年後半まで見えてこないかもしれません。
(この記事は帝国ニュースの2021年12月8日号に掲載されました)
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