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今日はロイヤル・アカデミーのカフェでこの原稿を書いています。「サマー・エキジビション」に行って来ました。毎年開かれるこの美術展は、「ロンドン・シーズン」と呼ばれる夏の催しの一部です。「チェルシー・フラワー・ショー」、「エプソム・ダービー」、「ヘンリー・ロイヤル・レガッタ」などが、この一連のイベントに含まれています。
サマー・エキジビションは伝統的なイギリスの展示かと思われるかもしれませんが、今年は250周年を記念して、コンテンポラリー・アーティストのグレイソン・ペリー氏がキュレーターに選ばれました。自称「服装倒錯陶芸家」、すなわち女装をすることで知られるペリー氏が、かつてないスケールのダイバーシティとインクルージョンを目指しました。
この展示では毎年、ロイヤル・アカデミーの会員が近作を出展しますが、会員以外の人も作品を提出できます。ペリー氏のチームは、史上最高の2万点を検討した後、ありとあらゆる種類の絵画、彫刻、映像、刺繍、建築模型などを展示に選びました。国籍も多様で、湯浅克俊氏ほか日本人の作品も含まれました。
支離滅裂な展示になり得たかもしれませんが、意外にも今のイギリスをとらえた展示が完成したと、私は感じました。クリエイティブでユーモラスで、政治的でもあり、多文化が混じり合い、ヘタウマや門外漢の作品を称えながらも、イギリスらしい田園と都会の風景、そして人々を表現していました。
この展示に行く前に、イギリスの貿易大臣が講演する昼食会にも出席しました。イギリスのEU離脱をポジティブにとらえようとして、イギリスはこれからも投資先として魅力的であり続けると強調していました。研究大学が多数あり、スキルと創造力を強みとする労働力が存在し、法制度と金融インフラが安定しているというのが、その理由でした。また、過去1年以内に楽天と富士通がイギリスのフィンテックやテクノロジーに投資したことにも言及しました(最近では。
もちろん、自動車業界の製造部門がサプライチェーンをEUに移し始めていることには触れませんでした。ジャガーランドローバーは、生産拠点をスロバキアに移すと発表しました。スロバキアでは昨年、イギリスに生産拠点を有する日本の自動車部品メーカー少なくとも1社が工場を開設しています。
ただし、日本関連の業界関係者から出た質問のほとんどは、移民に関係した内容でした。EU域外からの移民に認可されるビザ(日本人の社内異動にも必要となります)は、過去6か月連続で上限に達しました。また、EU加盟国からの移民は、母国に帰るか、そもそもイギリスに来なくなっています。
イギリスの失業率は、歴史的な低レベルにあります。ある日系人材会社の人から聞いた話では、同社の求人案件の欠員率が前年比50%増となっているそうです。イギリスのEU離脱後は、域内からも域外からも人材雇用がさらに難しくなると、企業は案じています。
提案されている解決策のひとつは、時間はかかりますが、イギリスの非熟練労働者に高レベルのスキルを研修し、低スキルの労働はロボットに任せるというものです。とはいえ、サマー・エキジビションが示したとおり、ダイバーシティと多文化の影響は、イギリスの特色であり、この国を革新の起きる場所にしてきた要因でもあるのです。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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