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2019年の年末に開催されたポルトガル・ジャパン・インベストメントのイベントでの講演を依頼されました。この話を受けた時、最初に感じたのは、いったい何を話せばよいのだろうかという懸念でした。日系企業の興味をそそるような話があまりないように思えたからです。ポルトガルの人口は1,000万人ほどで、ほとんどの多国籍企業は、小さな営業拠点を置くだけ、あるいはスペインからポルトガル市場を管理しています。
イギリス人にとって、ポルトガルは主に余暇の旅行先です。ゴルフ、ビーチ、豊かな歴史と文化、そしてポートワインの魅力があります。ポルトガル人とイギリス人の間、さらには日本人の間にも、少し似た性質があり、やさしさ、控えめ、ものの哀れを理解するようなところがあります。これは、スペイン、フランス、ドイツといった欧州の大国とは異なる点です。
ポルトガルは、イギリスにとって現存する最古の同盟国で、この友好関係は650年以上の歴史があります。このイベントでも、ポルトガル首相や他の高官がそのことを強調していて、ポルトガルは日系企業にとって、イギリスの代替ではなく、むしろ追加の拠点になれると説明していました。
ポルトガルは、食品、衣料、自動車製造といった伝統的な産業が活発です。例えば、トヨタ自動車と合弁事業を営んでいるカエターノは、電気バスの製造で三井物産との合弁事業も有しています。最近では、エネルギー、ITサービス、特に業務プロセスのアウトソーシングといった産業も盛んになってきました。
私と一緒にパネルディスカッションに参加した日系企業は富士通と丸紅でしたが、富士通はポルトガルで今や2,000人近くを雇っていて、一方の丸紅は各種のエネルギー関連投資を行っています。
イベントのプレゼンはいずれも、ポルトガルの明らかな利点を強調する内容でした。第一に、経済と政治のリスクが低いこと。ポルトガルは、リーマン・ショック後の不景気から十分に回復していて、ポピュリズムの波もそれほど顕著ではないうえ、連立政権が5年以上続いています。
第二に、教育水準が高く(特に科学、技術、数学)、多言語を話せる人材がいます。第三に、EU加盟国であるだけでなく、ポルトガル語圏の国、特にブラジルへの架け橋となることができます。
でも、丸紅の担当者が説明したもうひとつの理由に、私は興味を引かれました。いわく、比較的小さな国で新規事業を立ち上げれば、「マネージしやすい」のだそうです。日本企業によるヨーロッパへの直接投資について調べたところ、実際、小さな国が人気の投資先となりつつあるようでした。このことは、やはりこのイベントに参加していた外国直接投資の専門家にも確認しました。
ポルトガルの日系企業は、(もともとの数が少なかったものの)過去6年間に4倍に増えました。それだけでなく、人口600万~1,100万人規模の他のヨーロッパ諸国でも、日系企業による買収や新規投資が増えています。フィンランド、スウェーデン、ハンガリー、チェコ共和国などです。
ただし、ポルトガルの日本人在住者の数は、それほど増えてはいません。日本人コミュニティの成長という点では、オランダ、ポーランド、アイルランドが上回っています。とはいえ、気候、食、ゴルフ、文化だけでなく、ビジネスという観点からも、日本人コミュニティの成長に今後変化があるのではないかと感じます。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2020年1月20日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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