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私の会社では在イギリス日系企業の社員数ランキングを管理していますが、最近ランクインした2社はいずれも人材業界の企業で、トラスト・テックとアウトソーシングでした。両社とも過去4年以内にイギリスで複数の人材会社を買収し、ドイツ、オランダ、ポーランドでも人材会社を買収してきました。
この動きを見ていて、13年前のことを思い出しました。イギリスと東欧で複数の企業を買収した別の日系人材会社のコンサルタントをした時のことです。買収したヨーロッパの企業が互いの連携を高め、統合的な戦略と構造を持つための方法を探してほしいと依頼されました。
しかし、ヨーロッパの人材市場はそれぞれ非常にローカルで、独自の慣習と法令があることがすぐに分かりました。最終的にその会社は、日本でさらに大手に買収され、国内市場を重点とする戦略を取るようになったため、ヨーロッパ市場から撤退しました。
今回ヨーロッパ事業を拡大させた2社の戦略的な意図は、売上高拡大という以外にあまり明確ではありません。海外で事業展開している日系企業の顧客に対して製造およびIT分野の人材を提供するとしていますが、これはヨーロッパよりもむしろアジアでのことと思われます。
ヨーロッパの日系メーカーは製造拠点を東へ移しているため、ポーランド、チェコ共和国、スロバキアなどのほうが需要があるでしょう。
イギリスは現在、エンジニアリングとITの人材が不足していています。EU離脱によってEU加盟国の国籍者がイギリスでの在住許可や労働許可を制約されることになれば、さらに悪化すると見られます。EU加盟国からイギリスへの人口流入はすでに劇的に減少し、医療、建設、食品加工などの業界で労働力不足を引き起こしています。
EU離脱の影響を別にして、イギリスの人材市場で過去10年間に起きた主な変化と言えば、規制強化と法令順守の負担増です。日系の人材会社が突如としてイギリス最大の日系雇用主のランキングに食い込んだ理由は、派遣社員が今の法令では人材会社の社員と見なされるようになり、年金や他の福利厚生の受給資格を有するようになったからです。このため人材会社は、賃金の男女差の報告要件やEUのGDPR(一般データ保護規則)などを順守しなければなりません。
業界関係者によると、ヨーロッパの人材会社には単に人材を見つけて紹介する以上のことが求められています。人材不足や多様な人材雇用のプレッシャーがあるため、データから洞察を得て、創意工夫を凝らすことで、顧客企業における役職と職務、および福利厚生や報酬体系の変更を支援し、雇用主としての魅力を高められるようサポートしていく必要があります。
これには、顧客企業に深く介入し、現地市場の人材プールにも精通する必要があります。このように考えていくと、日系の人材会社がヨーロッパの業界にどのような付加価値をもたらせるのか、ヨーロッパ市場から何を学べるのかは、いささか不明です。ということは、やはり売上高拡大だけが買収の目的なのかもしれません。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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