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在英日本商工会議所に2020年に新たに加入した数少ない日本企業のひとつが、積水ハウスでした。また、大和ハウスは2020年終わりに、オランダのプレハブ住宅会社、Jan Snelを買収すると発表しました。
積水ハウスも大和ハウスも、この事業拡大の理由として、ヨーロッパ全域の住宅不足とスキル不足を挙げています。イギリスでは間違いなく、住宅不足が長年にわたって続いています。私は大学時代の30年前にこの問題を調査しましたが、住宅が不足しているというよりはむしろ、一定水準を満たす住宅が不足していることが問題なのだと言われました。古い家はたくさんあり、なかには19世紀に建てられたものすらありますが、現代生活には不向きです。
また、最近顕著になりつつあるもうひとつの問題は、これらの住宅をたとえ改修できるとしても、人が住みたがらない場所にあることです。イギリスには今も南北格差の深刻な経済問題があり、産業の衰退がその原因です。北部の大きな市や町には雇用がなく、その代わりに崩れかかった空き家が山ほどあります。一方、南部の都市は、人口増に見合うほどの住宅が新築されていません。この結果、若い人たちは一軒家やアパートを窮屈にシェアしていて、それでもどこかに家を買うほどの貯金ができずにいます。
これらの都市に新たに住宅を建てれば問題が解決するのは明らかですが、そのための土地がありません。古いオフィス街の数区画を集合住宅に変えようとする試みは過去にありましたが、非常に低品質で不健康な住環境を生み出しました。
ロンドン郊外の通勤圏には土地がありますが、緑地や森林を残すための「グリーンベルト」として長年保護されてきました。有意義な環境配慮のように聞こえるかもしれませんが、おおかたこの地域の住民によって利用されています。この地域に住む人たちは、新しい住宅が建設されて新たに人が流れ込み、結果として住宅価格が下がるのを嫌っているためです。
私自身も、以前はそうしたエリアに住んでいました。駅から近く、乗り換えなしでロンドン中心部まで47分でした。環状道路のM25モーターウェイのすぐそばで、近くのヒースロー空港とガトウィック空港からの騒音も常にありました。これをグリーンベルトと呼んで、この地域に住宅を建設させないとは、自分勝手なうえ、現実から目を背ける行為だと思ったものです。
先頃、ロンドンに住んでいたぜんそく患者の少女の死因が「大気汚染」だったということが裁判所の判断で正式に認定されましたが、これはイギリス初、おそらく世界でも初めてのケースでした。「グリーンベルト」なる場所に住んで大気汚染に耐えていた時のことを思い出しました。積水ハウスと大和ハウスが低カーボン技術を使ってこれらの地域に空調の良い家を建てたなら、大いに歓迎されて然るべきです。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2021年2月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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