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(パニラ・ラドリン著 帝国ニュース 2021年5月12日)
ヨーロッパでワクチン接種が進められていますが、これが各国のリスク対応について多くを物語っています。
イギリスではこれまでに、人口の半分以上が少なくとも1回目の接種を済ませました。他の欧州諸国と比べてはるかに速いペースです。ドイツ、フランス、オランダは4月初め時点で人口の20%に達していませんでした。
ただし、EU加盟国は今後数週間で急速に追い上げるでしょう。接種1回のワクチンを含め、供給増が見込まれているためです。私も1回目を受けてきましたが、それを喜ぶ一方で、このウイルスがイギリスで12万7,000人以上の死者を出したと思うと考えさせられます。イギリスの死亡率は世界でも最高レベルです。初期段階でリスクを軽く受け止めすぎたのかもしれません。
イギリスはEUのワクチン調達制度に参加することもできましたが、不参加を選びました。代わりにベンチャー投資家を指名して、様々なワクチン候補に多額の投資をする権限を与えました。バイオの専門知識があり、バイテク投資で腕を鳴らしてきた女性です。
驚きではありませんが、25か国から成るEUのワクチン調達制度は、決定までに長い時間がかかりました。ただし、最終的には欧州医薬品庁が4種類のワクチンを承認し、西側で最多の承認数となりました。
ドイツは、ワクチンの大々的な導入に慎重でした。1回目の接種を開始する前に、定められた期間内に2回目用の製品が入手できることを確認しようとしたのです。イギリスは、それほど慎重ではなく、おかげで今、供給が不足しつつあります。私は6月に2回目を受けたいと思っていますが、18歳以下の多くが夏までにワクチンを接種できるかどうかは不透明です。
イギリスがEUのワクチン調達制度に参加していたならばEUの動きが迅速化したかどうかを憶測する向きもあります。イギリス人は、あまり計画や準備をせずに見知らぬ領域に踏み込んで、その後ズルズルと進んでいく傾向にあります。問題が起こるごとにプラグマティズムで物事を直していくのです。
ドイツ人のビジネスパートナーにこの話をしたところ、彼女いわく、ドイツ人は技術的に優れたソリューションを考案するのが好きで、プロジェクトに着手するよりも前に、リスクにどう対処するかを心配してそれに時間をかけるとのことでした。残念ながら、技術的に優れたソリューションが実際にうまく行くという保証はありません。このことは、ワクチンに対するドイツのアプローチに表れていました。中央一元管理のハイテクなワクチン接種センターを建設しましたが、おかげで立ち上がりに時間がかかり、大量のワクチンが未使用のまま備蓄される結果となりました。
イギリスも、同様の問題を起こしてきました。数十億ドルという資金を投じて「世界最先端」のウイルス検査と接触追跡のアプリ、それに一元管理のシステムを開発しましたが、いまだにあまり効果を示していません。ドイツもイギリスも、中央で管理しないローテクな方法を選んだほうが良かったかもしれません。リスクに対する姿勢もさることながら、最終的にはすべての国が、既存の技術インフラとプロセスから制約を受けています。この点では、パンデミックの間にトランスフォーメーションを試みた民間企業が遭遇した状況に通じるものがあります。
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