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日系物流企業の駐在員のマネジャーから、イギリスの物流は日本より進んでいると思っていたと最近聞き、意外に思いました。私は90年代のおわりの4 年間、日本に働いていましたが、帰国した当初、日本の宅配便のようなサービスに大きいな商機があると思ったのです。当時ロンドンのアパートに住んでいまし たが、19世紀に造られた狭い路地を巨大なコンテナ車が恐る恐る通行して小さな肘掛椅子一脚を配達しに来た時、これを実感しました。日本なら、はるかに小 さなバンで配達し、所要時間もずっと短かったことでしょう。私が日がな1日、家で配達を待つ必要もなかったはずです。
オンラインショッピングが人気を博し(イギリスはヨーロッパで最大のオンラインショッピング市場となています)、また郵便が自由化されたのを受けて、イギ リスにもMyHermesをはじめとする宅配便のようなサービスが登場しました。荷物を発送する際は自宅に引き取りに来てくれて、オンラインで翌日引き取 りの時間帯を指定できるうえ、重たい荷物の場合は送料も郵便局に持っていくより格安です。
日本の宅配便でも同様のサービスがあるはずですから、日本の物流会社のマネジャーが言っていたのは大規模運送、例えばヨーロッパ全土に大量の自動車部品を運送するといった類の物流サービスを指していたと思われます。
イギリスには物流の資格が存在し、物流学で大学の学位をとることもできますが、そのマネジャーの会社に勤めるイギリス人社員は皆、物流の専門知識は教室で 最新の理論を学ぶのではなく、実務を通じて培っていくものだと考えています。つまり、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを重視していて、いわば日本の見習い 式のアプローチに賛同していることを意味します。
この日本のマネジャーいわく、彼の会社の社員はほとんどが生粋のイギリス人です。私がイギリスで研修の講師を務めている金融業界や通商業界の日系企業で は、社員の半数以上がイギリス以外の国籍者です。こうした会社では、学習姿勢や学習能力のほうが、現地市場の知識やスキル、経験よりも重要かもしれませ ん。でも、物流をはじめ、エンジニアリングなど熟練を要するほかの伝統的な業界では、これから育てる人よりも、経験からくる現地市場の理解や専門知識やス キルを持っている人のほうが採用候補者として魅力的に見えるものです。
専門知識・スキルを持つ人材の獲得
ただし、そうした人材は、イギリスのみならず他のヨーロッパでも簡単には見つかりません。一方で若年層の失業率は相変わらず高く、体を使う仕事やオフィス 勤務以外の仕事に就く気持ちはあっても、研究を受けたことがない、経験がないという若者は、安定した仕事を見つけられずにいるのです。
こうした現状をかんがえると、日立の鉄道システム事業部が他者と手を組んで、イングランド北部ユニバーシティ・テクニカル・カレッジを新設したというもの頷ける話です。そうでもしない限り、近くにある日産から社員を引き抜かなければならなくなると思ったのでしょう。
Pernille Rudlin著 帝国ニュースより
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