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日本からの赴任者によく言われるのが、イギリスでは非営利セクターの存在感が日本に比べてはるかに大きいように見えるという点です。募金イベントを後援してほしいと社員からリクエストされたり、市街地の目抜き通りに慈善団体が店を構えているのを見たりして、そう感じるそうです。イギリスの慈善セクターの年間収入は506億ポンドですが、その半分を支えているのが個人寄付です。残りは、政府の助成金や宝くじ収益、および民間セクターからの寄付で賄われています。
今年、私は2つの慈善団体の理事になりました。ひとつは、ロンドンのジャパン・ソサエティ。もうひとつは、私が住んでいる市で難民や亡命者などの移民がイギリス社会に溶け込めるよう支援している団体です。どちらも法人登記されているため、私は、企業登記局に対して説明責任を負う取締役(director)であると同時に、チャリティ委員会に対して説明責任を負う理事(trustee)ということになります。
イギリスでは、慈善団体の理事と企業の取締役に課される義務は似ていて、寄付者または株主からの資金を守る義務に起因しています。団体や企業が規制を順守していること、慈善目的や事業戦略に則って行動していること、さらにリスクを認識して対応していることを確認しなければなりません。
理事としての責任を理解するために参加したワークショップで、イギリスの非営利セクターは日本だけでなく他のヨーロッパ諸国や米国よりも大きいことを確認しました。ヨーロッパの他の国では、国家が国民を保護する立場にあり、米国では、個人がもっと自立することが求められています。
イギリスの理事にまつわる規制は、17世紀にさかのぼります。国家が提供する保護と個人が自分でもたらす保護の間にあるギャップを、主に教会系の慈善団体が埋めていたのです。しかし、なかには腐敗した団体もあり、本来の受益者にほとんど恩恵をもたらしておらず信用できないと見られるものもありました。そこで、市民が「trustee」すなわち被信託者を指名し、慈善団体が公共の利益のために行動していることを確認させたのです。
また、イギリスと米国の慈善団体に課される規制に重要な違いがあることを、ワークショップの講師が説明してくれました。両国の文化を知っている人には興味深いかもしれません。いわく、米国では結果が重視され、慈善の目標が達成されていれば、どうやって達成されたか、資金がどこから来たかは、さほど問題とされないそうです。これは、米国のビジネス文化にも通じます。法律は守らなければなりませんが、それ以外の道義的責任をどのように果たすかは、各企業の自由です。
一方、イギリスでは、結果だけでなく手段にも責任を負うのが、理事や取締役の役割とされています。裁判になれば、法律に違反したかどうかだけでなく、行動が「合理的」だったかどうかも判断されます。正しいことをすべく十分な努力を講じたのであれば、過ちや監督不行届、目標に達しない結果からは赦免されます。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年10月9日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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