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多くの日系企業が、イギリス、ドイツ、オランダなどの欧州本社を拠点にして地域全体の管理業務を司ってきました。最近では、その管轄地域を欧州、中近東、アフリカ、略してEMEAとすることが増えています。特にイギリスはアフリカおよび中近東と歴史的に深いつながりがあり、ロンドンからこれら地域への空の便が便利なうえ、イギリスに居ながらにしてアフリカと中近東に関する情報が比較的容易に得られます。この地域の出身者や専門家がイギリス国内にたくさんいるためです。
そうした専門家の一人、オックスフォード大学のポール・コリアー経済学教授がロンドン在住の日本人ビジネスマングループを前に講演を行いました。G8首脳会議で安倍首相に面会したコリアー教授の話は、アフリカとの関係を強化するという安倍内閣および日本企業の最近の方向性をおおむね支持する内容でした。
ただし、現実的な見方も持っています。「アフリカがすばらしいところだと言うつもりはありません。アフリカは複雑で、経済規模も小さなものです。しかし、大きな事業機会があります」。コリアー教授の説く事業機会は、主に4分野に分かれます。(1)天然資源、(2)その資源を利用するためのインフラ、(3)電力、建設、消費財セクターの成長、(4)モバイル決済などの「電子経済」です。
また、コリアー教授は、アフリカが日本にとって魅力的な市場となる理由を説明しました。まず第一に、アフリカの成長は商品価格に大きく依存していて、一方の日本は一次産品の一大輸入国であることから、アフリカに投資しておくことで商品価格の変動にヘッジをかけることができます。第二に、日本はアフリカで歓迎される存在です。「アフリカはヨーロッパには飽き飽きしていて、命令されたくないと思っています」。米国は、植民地保有国のようにふるまい、でもアフリカに投資する資本は持ち合わせていません。中国は、10年前は非常に歓迎されましたが、今ではアフリカの指導者の多くが中国への依存過多を恐れ、中国とのビジネスに消極的になっています。
一方、コリアー教授は、日本にとって最大のネガティブ要因として文化的な側面を挙げています。「アフリカは日本の正反対です。日本は信頼性と社会的結束力の高さを特徴とする社会ですが、アフリカはそうではありません」。言うまでもなくアフリカは国ではなく、54か国から成る地域です。事業機会とリスクの度合いは国によって大きく異なります。そのなかでコリアー教授は、ラゴスとナイロビを重視し、場合によってはルワンダにサブオフィスを開くことを勧めています。汚職については、リスクはむしろ評判上のものであって金銭的なものではないとしていて、会社のポリシーを徹底して、その内容を取引相手にも明確に伝えることが重要だと説明しています。
さらに、コリアー教授は、イギリスの拠点からアフリカにアプローチするのが賢明な戦術だと語りました。「イギリスは、官民のどちらのセクターでも、アフリカについての知識や人脈を持っています。ただ、アフリカがほしがるような製品は持っていません」。日本はアフリカがほしがる製品を持っています。ゆえに、イギリスと手を組むことにより互恵関係が実現するでしょう。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年5月14日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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