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日本語が話せると言うと、たいていは「ものすごく頭が良い人なのですね」とか、「仕事の需要があるでしょう」といったコメントが返ってきます。でも、実のところ、私は愚鈍な方法で日本語を学びました。子供時代に日本に住み、日本の学校に通ったのです。仕事の需要はどうかというと、たいていの会社は日本のスペシャリストをフルタイムの社員として雇う気はないと思われます。
ですから、日本語が話せる人に対して私がアドバイスするのは、どんな業界のどんな仕事に就きたいかをまず考えて、そのうえで日本語を活かす方法を見つけるべきだということです。ほとんどの会社は、特定の言語スキルよりも技術スキルや対人スキルを重視していて、それが正しい姿勢でもあります。
日系企業のほか海外で日本関連のサービスを提供している企業がしばしば日本語の話せる人を雇っているのは事実です。けれども、翻訳兼カスタマーサービス兼通訳のような不明瞭な役職を与えられて、きちんとしたキャリアパスが見えなければ、不満が募る結果に終わる可能性があります。
日系企業で働いている日本人以外の社員から、日本語を学ぶべきかと聞かれることもよくあります。そんな時、私はいつも、週1回のレッスンで流暢になれると思っているのであれば挫折すると警鐘を鳴らすようにしています。3種類の敬語があり、物によって数え方が異なり……といった日本語の特徴を知るなり、絶望してギブアップすることが容易に想像できます。
とはいえ、直接的な結果にはつながらないとしても、日系企業は日本語を勉強したいという社員をサポートして学費を支援すべきだと、私は考えています。別の国の言葉を学ぶことは、その文化を理解するのに役立ち、無意識の行動変化にすらつながるという研究結果が増えているからです。状況をどう分析し、どのように反応するかが変わる可能性があるのです。
例えば、日本語は「無私」の言語ですが、これは日本の価値観の核でもあります。英語で主語の“I”を省略することはほとんどありません。例えば、“I give you a pen.”(私はあなたにペンをあげます)。でも、日本語では多くの場合、主語を省略し、目的語すら省略することがあります。“give”(あげます)と言えば、文脈が他のすべてを補うのです。これは、日本語のコミュニケーションのもうひとつの特徴です。「ハイコンテクスト」、すなわち言葉で言われていないことを理解し、それに注意を払うのです。
多言語話者の社員は、日本の企業文化に対する理解だけでなく、他の恩恵ももたらす可能性があります。最近の神経科学の研究によると、多言語話者の脳は異なった働き方をすることが分かっています。例えば、第一言語以外で物事を進める際に、より合理的な決定を下す傾向にあります。第二言語で仕事をすると、物事への執着が薄れ、結果としてリスクとメリットを的確に評価できるようになります。
過去12年間にわたってヨーロッパの日系企業数百社とかかわってきましたが、域内のドメスティックな企業に比べて、多言語話者の社員の割合が高いように見受けられます。もしかすると、多言語話者は(たとえ日本語の話者でなくとも)複雑な状況で問題を解決する能力に長けている可能性が高いということを、日系企業は本能的に嗅ぎ取っているのかもしれません。
Pernille Rudlinによるこの記事は帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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