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ここ最近、年1度ぐらいの頻度でアイルランドに行っています。仕事が主な理由ですが、個人的な理由もあります。仕事という点では、日本企業に買収された現地企業にトレーニングを提供しています。また、米国の親会社を通して日本の会社を買収した企業でトレーニングすることもあります。
個人的な理由というのは、両親がアイルランドに移住したためです。私の親は日本で25年暮らした後、引退後はフランスに住み始めましたが、完全に根を下ろすことはできなかったようです。継父は、父がアイルランド人で、親戚がアイルランドにいます。このため、アイルランドの国籍が簡単に取得できました。イギリスのEU離脱に備える保険の意味もありましたが、医療サービスが無料で利用できるうえ、公的年金も受け続けられます。母は、同じ理由でデンマーク国籍を取得しました。母の父はデンマーク人だったため、これが可能でした。
二人が今住んでいるのは、私の従兄弟も住むコークで、特に米系の技術企業が多数拠点を構えることで知られる土地です。日系企業ではトレンドマイクロやアルプスアルパインがあり、アルプスは約850人の社員が働く電子部品工場を有しています。
コークには、製薬・バイオテク業界の企業も集中していて、これはダブリンと同様です。ダブリンには、アステラス製薬と武田薬品が拠点を有しています。アステラスは社員数400人以上で、原薬や免疫抑制剤を製造する一方、武田は約300人で、がん治療薬や他の医薬品の有効成分を作っています。アイルランドは、EUにとって最大の医薬品輸出国です。
多国籍企業がアイルランドに魅力を感じる理由は、若くて教育水準が高く、英語を話す労働者がいること、そして法人税率が12.5%と非常に低いことです。
特に航空機リース事業は、アイルランドの税制から恩恵を受けてきました。業界のトップ10社のうち9社がアイルランドを拠点としていて、世界中の航空機の半分以上がアイルランドで保有・管理されています。日系企業ではオリックス・アビエーションとSMBCアビエーション・キャピタルが、ダブリンを主要拠点としています。
ただし、節税のためだけにアイルランドを拠点とするのは、長期的には持続可能ではないかもしれません。EU、OECD、そして日本政府が国際税制で協力していて、租税回避の対策を講じつつあるからです。
アイルランドには、言うまでもなく、イギリスのEU離脱というリスクもあります。イギリスは、EUとアイルランドをつなぐ「陸橋」となってきました。アイルランドの貨物の約85%はイギリスに送られ、うち約40%(年間約19万本のコンテナ)がEUに再輸出されています。
ただし、医薬品と電子部品はしばしば空輸されていて、最近になってEUの運輸各社がアイルランドとEUをつなぐ新しい航路の運航を開始しました。このため、貿易摩擦の心配は、おおむねイギリス・アイルランド間の問題に限定されそうです。
このことは、イギリスのEU離脱をめぐって北アイルランドとアイルランドの国境が大きな問題になる一因でもあります。とはいえ、最大の懸念は、ビジネスとは無関係な側面です。私のように家族が両国に住んでいて、開かれた国境がもたらした平和共存を失いたくないという人がたくさんいるのです。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年11月13日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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