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最近の日本出張中にアマゾンのオフィスを訪れ、同社に勤めている友人とランチをしました。入社したのは1年3か月前ですが、過去1年ほどでオフィスが急拡大したため、今では全社員の社歴ランキングの表で上半分に入るようになったそうです。
また、彼を含めて同社の東京オフィスで働いている外国人社員は、ほぼ全員が現地採用で、米国本社から派遣されてくる駐在員はほとんどいないとのことでした。これを聞いて私が思ったのは、業務をモニターする駐在員の管理職者がいない状態で、こんなにも急成長している子会社をアマゾンの本社はどうやってコントロールしているのだろうかということでした。
アマゾンはまた、20数年前の創業時のように、すばやく商品を市場に送り出すスタートアップのメンタリティを保つため、社内のプロセスや手順を最小限に抑えようとしています。
3つの海外子会社の管理方法
これまで様々な多国籍企業とその子会社に社内外の両方の立場からかかわってきましたが、海外子会社の管理方法は大きく3つに分けられます。営業力を重視する米国企業は、子会社に数値目標を課してコントロールする傾向にあります。子会社の社員や管理職者が目標を達成すればボーナスを支給し、目標に到達しなければ解雇します。米国本社でない多国籍企業でも、多くがこのシステムを使用しています。数値は誰でも簡単に理解でき、言葉に左右されないからです。
2つ目の管理方法は、米国と欧州の多国籍企業が用いている方法で、コンプライアンスを重視します。規則やプロセス、システムを厳密に導入して、命令系統のヒエラルキーも明確にすることで、誰がどの事業の責任と権限を握っているかを全社員が把握して行動します。
3つ目の方法は、日本企業のほか、「ミッテルシュタント」と呼ばれるドイツの家族経営の企業によく見られます。“家族”がコントロールする、すなわち本社から内輪のメンバーが子会社に赴任して、現地で何が起きているかを監視すると同時に、会社の文化を浸透させようとするスタイルです。
アマゾンの管理方法
東京で会ったアマゾンの知り合いによると、同社は採用過程で厳密なプロセスを踏むことにより、本社の理念に沿った行動を徹底させようとしているとのことでした。採用に際しては、複数の社員による面接を数回行って過去の経験を尋ねることで、候補者のマインドセットを知ろうとします。
しかし、この方法は、買収の結果として海外に子会社ができた場合や過去何十年にもわたって海外の子会社がある場合は、実践が難しいでしょう。日本の本社に浸透している価値観や行動とは異なる文化を持った古くからの社員がすでに大勢いるのです。
それに、十分に現地化して顧客に近い立場で事業展開しているのであれば、その多様性がもたらすメリットもあります。そうした海外子会社の社員に画一的な行動や価値観を押し付けるのは間違いと言えるでしょう。
いずれにしても、これから海外の事業買収や子会社の開設をしようとする日本企業には、グローバルに理解しやすい明確な企業理念と価値観を打ち出したうえで、それに則って海外の社員を採用し昇進させることを、ぜひ心がけてほしいと思います。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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