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弊社のヨーロッパ・チームに、トヨタ生産方式を専門とするドイツ人のコンサルタントがいます。彼女に、日本人とヨーロッパ人の混成チームのコミュニケー ションがうまく行っていない場合にどのようなアドバイスをするかと聞いてみたところ、驚いたことに、「現場主義」や「見える化」といった概念やプロセスを 教えるのではなく、まず最初に全員がチームのビジョンを共有することから始めるとのことでした。
以前のこの連載で、日本の本社とヨーロッパの子会社を上手にコーディネートするには、まず何よりも「人」の編成を見て、同等の相手や窓口や担当者が誰かを明確に理解する必要があると書きました。
次なるステップは、これらの人々の間のコミュニケーション・プロセスを確立することのように見えるかもしれません。が、このドイツ人の同僚の言うことが正 しいと思います。つまり、コミュニケーションの最終目標のビジョンがなければ、そのプロセスの多くは意味がなくなるか、消滅してしまうでしょう。
私の顧客のあるイギリス企業は、日本に子会社を持っていて、特定の事業部門や研究部門で定期的にグローバルな電話会議を行っています。けれども最近になっ て、日本のある参加者が会議の内容を自分のチームと共有していないことが分かりました。会議で聞いたことは部下に伝える価値がないと、その社員が考えてい るのは明らかでした。
同様に、イギリスの日系メーカーの日本人駐在員から、日本の本社に毎週報告を送っていて(もちろん日本語で)、イギリス人のマネージャーたちにも参加して もらおうとしたところ、お役所的な仕事の負担が増えるだけだと考えて、すぐに興味を失ってしまったという話を聞きました。イギリス人マネージャーの一人と 話したところ、「まるでブラックホールなんです。日本に情報を送っても、日本から何かが返ってくることは一度もありません」とのことで、やはりコミュニ ケーション・プロセスに参加するメリットを感じていませんでした。どちらのケースにも共通しているのは、社員が自分からのインプットに対して仕事にかかわ りのある重要な情報を得ていると感じる必要があることです。
多くの日本企業はビジョンを持っていると言っていますが、私の経験では、多くの場合、ビジョンが曖昧すぎて行動可能でないように見受けられます。行動可能 とは、ビジョンに実質が伴っていて、意思決定の際に指針として役立つことを意味します。日本のB2Bメーカーが掲げているビジョンの多くは、「革新を通じ て社会に貢献する」とまとめることができます。これはある程度は行動可能ですが、競合他社も同じことを言っているのですから、真の差別化はできないことを 意味します。顧客にしても、そのサプライヤを選ぶ独自のメリットが分からないということになります。
会社と社内のチームのビジョンは、競合他社から差別化されていて、かつ行動可能であるべきです。そのビジョンに従って行動することのメリットが明確であ り、社員に理解されていなければなりません。そのようなビジョンを策定すれば、本社と子会社の間のコミュニケーションやコンプライアンスのプロセスは、ほ ぼひとりでに出来上がってくるでしょう。
Pernille Rudlin著 帝国ニュースより
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