This post is also available in: 英語
ヨーロッパの人たちから私はよく、日本語を学ぶ価値って大きいのかな、と聞かれます。答えは勿論「はい」なのですが、でも余り期待しすぎないことが 大切ですよ、と付け加えます。日本以外の国で週1回のレッスンを受けても、流暢にはならないからです。でも、知的な刺激を受ける意味では、美しい言語であ る日本語を学べば、私達にとってより身近なギリシャ語やラテン語を源とする言語を学ぶのとは違った意味で、言語を通して文化を肌で感じる事が出来ると言え ます。
私は一番吸収力のある幼少期に日本に住む機会に恵まれ、日本語を習得することが出来たのですが、テイーンエエイジャーともなると、外国語習得はとても難し くなります。もうその頃には母国語回路が頭の中でしっかり形成されるからです。私の知人にも大人になって日本語を話せるようになった人達がいますが、これ は日本にしばらく暮らして、英語圏での生活を避けて、どっぷりと日本の環境に浸ったからなのです。
最近の研究によると、私達の脳の回路は、配線のし直しが出来るそうです。これは「神経可塑性」と呼ばれ、脳を損傷後、自然にもしくはリハビリを通して、回 復中の患者に見られるプロセスで、ケガで不能となった脳の神経回路が自ずと再生されるらしいのです。この再生作業は、日本語漬けの環境に浸ることで大人に なってから流暢な日本語を話すようになるのと同じ事なのです。
神経可塑性は、私達の文化的人格形成にも密接につながっています。以前は、人の文化価値は、幼少期に備わると考えられていました。私はトレーニングの際、 人種が何であれ、人は特定の価値観を持って生まれてくるのではなく、幼少期にそれぞれの文化的背景に応じた脳の形成がされるのだと説明します。事実、ある 科学者によれば、東洋人とヨーロッパ人を比べると、これらの国々の人の脳は同じ視覚的なものに対して異なる反応をするそうです。そして同じ単純な計算をさ せても、英語を母国語とする人と中国語を母国語とする人では、脳の違う部分を使うとも。
繰り返しになりますが、神経可塑性の機能を生かせば、人間の脳は幼少期をどこで育ったかに関わらず再生が可能なようです。ですので異文化圏での長期間の体 験が、その人の脳の学習・思考・決断、そして解決方法等に影響を与えることになります。それは私が前回の記事でお話した、英国人であれ日本人であれ海外に 長く住むと、ずっと幼少期を育った祖国にいざ戻った時に違和感を感じる、という現象に通じるのではないでしょうか。
ところで、英国に住む日本人の読者の皆さんで、こんな身近な経験をされたかたはいらっしゃいますか。並んだ列に割り込んでくる人に思わず舌打ちしてしま う。自分でなく、あちらからどんっとぶつかった人にうっかり謝ってしまった。そして、約束に遅れて、延々と難しい説明をしてしまう。それはきっと脳がイギ リス式に再生されてしまうほど、皆さんが長くイギリスに住まわれてしまったということですね!
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
このシリーズは人材紹介会社のセンターピープルのご協力の上提供させて頂いております。
For more content like this, subscribe to the free Rudlin Consulting Newsletter. 最新の在欧日系企業の状況については無料の月刊Rudlin Consulting ニューズレターにご登録ください。