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多くの日本企業では、今年度の最終四半期を迎えています。目標値に達することは言うまでもなく、現在の戦略が正しい戦略であることを裏付ける確たる証拠を示す必要があるという点においても、前の3期に比べて切迫感のある四半期となることが予想されます。現在の戦略が正しくないのであれば、年度業績を発表する4月末までに何らかの抜本的な改革案を経営トップに示す必要があるでしょう。
年間のサイクルではお決まりのことですが、2013年は今まで以上に危機感が強くなるのではないかと、私は予想しています。多くの日本企業は、世界市場における存在そのものが問われていて、現在の円安は一時的な休息を提供するものでしかないと感じているからです。
ボトムアップ方式で積み重ねるいつもどおりの中間期計画、すなわち前年の売上高と顧客のヒアリングに基づく予測、さらに「指を風にかざす」式の予測を数枚のA3紙にまとめたものでは、今年は通用しないと思われるのです。
一部の企業では、抜本的なリストラ計画が今後発表されるか、あるいはすでに発表されています。しかし、こうした計画の背後には、そもそもなぜ会社が存在するのかという巨大な問いが今も積み残されています。ほとんどの日本企業はこの問いをきわめて真剣に受け止めていますが、その理由は、単に社員を雇用し続けるだけでなく、未来の世界にポジティブなインパクトをもたらすことによって社会に貢献することが、会社の根源的な存在価値であると信じているためです。
これはすなわち、ビジョン、価値、企業文化といった厄介な領域に足を踏み入れなければならないことを意味します。日本企業はこれらのことを日本語で顧客や社員に伝えることは上手ですが、国外では決して得手でないと、私は考えています。
これらのことを伝えるには言葉や数字だけでは十分ではなく、ストーリーやヒーロー、そして芸術品が必要とされます。日本企業はこうした財産をたくさん持っていますが、問題はそれをどのようにしてグローバルに伝えるのかです。
その良い例に、カーオーディオなどを製造するアルパインがあります。現会長の石黒征三氏は、米国法人の代表を務めていた時代に、製品に不満を抱いた米国の顧客が拳銃で何度も打ち抜いたカセットデッキを送り返してきたことがあったという話を、今でもよく口にします。このカセットデッキは、今ではアルパインの博物館に展示されていて、世界市場でアルパインが生き残れたのは可能かなぎり最高の品質にこだわって顧客満足を最大の目標としたからこそであるという教訓を象徴する存在となっています。
これは非常に明確な芸術品、そしてストーリーです。これほど明確ではないけれどもやはり好例と言えるのが、出光興産の創業者、出光佐三氏が19歳の時に古美術品の売り立て会場で購入した「指月布袋画賛」です。出光氏は、「布袋の指」(細かいこと)ではなく「月」(大きなこと)を見るようにと社員にしばしば諭しました。すなわち、出光という会社は、営利のためだけでなく社会に益をもたらすために石油事業を営んでいるのだという意味でした。
この指月布袋画賛に描かれているのは、布袋の姿だけであって、月はまったく描かれていません。それはまるで、作者の仙厓義梵が絵を見る者に自分で月を見つけよと諭しているかのようです。日本企業にとっての課題は、この種の深遠な意味が外国語に転じる過程で失われないようにすることでしょう。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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