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イギリスはまたも「不満の冬」を迎えていて、ストライキが続発しています。不満の冬というのは、シェークスピアの『リチャード三世』の独白から来ていて、雨続きで暗くて寒いイギリスの冬が社会・政治の動乱と重なる時に使われます。
前回の最もよく知られた不満の冬は1978年から1979年にかけてでした。政府が課した賃金制限に対するストライキが各所に広まりました。私の家族にとっては、日本に5年間住んだ後、イギリスに戻って1年ぐらいの頃でした。何もかもが円滑に回る日本と比べ、イギリスは非常に不便で対立の多い国だと感じたものです。
日産やトヨタなどの日本企業が1980年代のイギリスに及ぼした良い影響のひとつが、マルチスキルの考え方を導入したこと、そして1企業の社員が1つの組合を代表組織とすることで雇用安定と労働条件の改善を手に入れる体制をもたらしたことでした。他の多くの企業がこれらの方法を取り入れた結果、過去数十年間はイギリスでもストライキや労働争議がはるかに少なくなっていました。
今の状況は1970年代に回帰したかのようです。今回の争点は主に賃金ですが、働き方の変化も論じられていて、これが労働条件の悪化と雇用の不安定化につながる(あるいはつながった)という懸念があります。
例えば、鉄道労働者組合は、運転士のみの列車に懸念を表明しています。運転士がドアの開け閉めも担うようになるため、人員削減につながります。雇用主の側は、車掌はなおも同乗していて、ただしドアの開閉業務から解放されるため、安全確認と乗車券確認に集中できるようになると説明しています。
私は最近、空港バスでロンドンへ行ってきましたが(ストライキで列車が運行されていなかったためです)、バスの運転手が乗客のスーツケースを積み降ろしし、乗車券を確認し、それから運転していました。乗車券にはQRコードが付いていますが、確認は手作業でしていました。このデジタル乗車券システムがあるため、乗客が降りる停車所や新しい乗客が乗ってくる停車所はすべて分かっているはずですが、それでも全員の行き先をあらためて確認していました。技術のサポートがないままに、あまりにも多くの仕事を課されているように私には見えました。事実、別のバスに乗るはずだった乗客が乗ってしまい、その人が誤った荷物置場にスーツケースを載せたことを見逃していました。
また、ある大手オンライン・ファッション小売店の配送センターで起きていた労働問題も、最近、発覚しました。作業員がかなりの重さのモニターを手首に付けて、次にどこへ行くべきかの指示を受けていました。作業員がノルマをこなしていないとマネージャーにアラートが送られるシステムでした。しかも、12時間のシフトの間にハーフマラソンとほぼ同距離を歩かなければならないほどのノルマが課されていたのです。同様の仕事をこなせるロボットは存在します。私はほぼ30年前にベルギーのホンダの巨大な倉庫でそうしたロボットを見ました。
イギリスの技術投資は非常に近視眼的で、働き方を向上させるためにいかに技術を利用するかではなく、いかに人件費を削減するかに重点を置いています。日本のデジタル・トランスフォーメーションのほうが良い成果を挙げて、イギリスが再び学べることを願っています。
Pernille Rudlin によるこの記事は、2023年1月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。
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