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グローバル・ブランドのトップ100ランキングの調査が最近発表されましたが、今回もまた日本企業は、売上高と日本経済の規模には見合わない、振るわない 結果となりました。ブランドの価値をどのように測定するかは、もちろん意見の分かれるところです。ブランド価値の測定とは多くの場合、ブランドの買収金額 がいくらになるかを数量化する試みです。会社の価値から引き出した何らかの数値を基に、他の資産をすべて引き算して、それと同時に消費者による定性的な評 価を行います。
このリストに入らなかった日本企業のなかには、調査対象が日本人であったならトップ近くにランクインしたであろう企業が含まれています。ただし、それでも なお、そのブランドに付けられる金銭的な価値は欧米企業のようには高くならないのではないかと、私は考えています。その理由は、日本企業が利益をあまり重 視しておらず、「ブランディング」もさほど重要と考えていないことです。
日本企業のエグゼクティブと話すと、「ブランド」とは主にロゴやイメージなどのビジュアル・アイデンティティと広告のことだと見なしている様子が分かります。
日本企業がグローバルに競争するには、欧米の顧客が優良ブランドに何を期待しているかを、もっと理解しなければならないでしょう。しかし、ブランドにとらわれすぎることにも危険性があります。うぬぼれの一種のようになってしまい、コラボレーションを妨げる危険性です。
NTTドコモが「iモード」を導入して10年以上になります。このサービスによって日本は、米国も含めて世界のどの国よりもはるかに進んだ国になりまし た。高機能な携帯電話を手にしたユーザーが、インターネットからアプリやコンテンツを購入するという側面においてです。世界の他の国は、どうすれば日本の 成功を真似できるかを画策しました。日本以外でこの現象を再現するのは不可能だと憶測した人もたくさんいました。日本の消費者や社会に特有の文化が、この コンセプトを可能にしていると考えたためです。しかし今、iPhoneや他のモバイル技術が世界的に成功しているのを見るにつけ、その術さえ与えられれば 世界中の消費者が携帯電話のアプリやコンテンツを買うことは疑いの余地がありません。
他の国が日本に追いつくのにこれだけ時間がかかったということなのだと、私は考えています。日本以外の電話会社や携帯電話メーカーは、ブランドの利益を守 ることに躍起になっていて、日本でドコモが構築したような互恵的なサプライチェーンの生態系を再現することができなかったのだと思うのです。
携帯電話のアプリを開発しているイギリス企業のサポート役として2002年に日本へ出張したことがありましたが、その時ドコモは、自社の提供アプリが作り 出している一定のイメージを自負しようとはしていませんでした。うちは単なる電話会社ですから、と言ったのです。そして、アプリについては開発会社に聞い てくれという姿勢でした。そこで開発会社を訪ねると、その担当者らは、携帯電話メーカーが搭載してくる機能に合わせてアプリを提供しているだけだと言いま した。そして、そのメーカーは、電話会社に製品を納入している一サプライヤにすぎないと言ったのです。
クラウド・コンピューティングとネットワーク社会の時代となった今、日本企業は、米国のオンライン大手、アマゾンやグーグルなどとどうすれば競争できるか を模索しています。グローバル・ブランドの強化は、確かにその一助になるでしょう。でも、多くの日本企業が有しているブランドの重要な要素が、うぬぼれに 陥らずにコラボレーションする能力であるという事実も、見失うべきではありません。
パニラ・ラドリン著 - 日経Weeklyより
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