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2019年9月に帝国データバンクニュースで予測をしました。イギリスが「ハード」なEU離脱をすることになっても、日系企業は十分な備えができているだろうという予測でした。それが的中したようなので、ひとまずはホッとしています。これに際しては、日系の物流会社が重要な役割を果たしたはずです。
日本の自動車メーカーは、イギリスでの生産を停止せざるを得なくなりましたが、これはむしろコロナ禍と半導体不足が理由であって、EU離脱に伴う問題はそれほど関与していません。
JETROが昨年末に行った調査によると、イギリスの日系メーカーがハードなEU離脱に備える対策として取った主な行動は、在庫を増やしておくことでした。イギリスの他の企業も在庫を増やしました。結果として、イギリスやフランスで通関を待つトラックは、懸念されたほど増えていません。ただし、日系企業がほとんど問題に直面していない理由には、サプライチェーンの再構成もあったのではないかと思われます。実際、これはJETROの調査で日系メーカーが取った対策として2番目に多い回答でした。私の見積もりでは、イギリスの日系企業のうち少なくとも30社が、過去2、3年の間にEUのサプライチェーンのハブを大陸に移しました。
イギリスのEU離脱から最も影響を受けているのは、EU市場への販売に依存している中小のイギリス企業です。これまでは、EUにいる顧客に少量の製品でも高いコスト効果で出荷することができ、認証取得や通関の心配をする必要はありませんでした。
今では、ありとあらゆる書類への記入が求められ、食品や家畜を出荷しようものなら、保健衛生の認証を取得しなければなりません。ヨーロッパの物流会社のなかには、イギリスからEUへの輸送を受け付けていないところもあります。書類業務に対応できないという理由です。また、イギリスへの輸入品を積載したトラックを出すことにも消極的です。EUへの帰路に積むものがなければ、コストを正当化できないからです。
これらの状況は、いずれ自然に解消するかもしれません。しかし、日系企業が取った対策の多くは、決して一時的なものではなく、長期的なトレンドであって、イギリスのEU離脱の影響も長期にわたるのではないかと、私は考えています。例えば、外務省のデータによると、イギリスで製品を製造している日系企業の数は、2014年と比べて22%減少しました。イギリスの日系企業の総数は11%減ですから、製造業に減少傾向が色濃く表れているのが分かります。その多くが販社に転換し、またEUにある親会社の支社になった会社もあります。結果として、イギリスにある支社の数は31%増となり、法人化された子会社の数は16%減となりました。支社になった企業には、金融サービス業界の企業も含まれています。EUでの金融取引を継続するためです。
イギリスに新たに進出する日系企業はなおも見られますが、ほとんどはエネルギー業界かライフスタイル関連の事業で、イギリスの国内市場が目当てです。日系の物流会社は、国際輸送の専門ノウハウを持っていますがが、今後は日系企業よりもイギリス企業からの需要を見つけていくことになるかもしれません。
帝国ニューズ・2021年3月10日・パニラ・ラドリン著
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