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ヨーロッパでは2017年の夏、Airbnbへの反感が広まり、ヴェネチアやバルセロナといった都市の観光業に対しても風当たりが強まりました。日本でも民泊新法が成立して、観光ブームが高まっています。しかし、日本もヨーロッパも、「共有経済」が観光業界だけでなくコミュニティ全体、ひいてはグローバルなビジネスに及ぼす影響をもっと学ぶ必要があります。
私もAirbnbのユーザーです。宿泊したことも自宅の空き室を貸したこともあります。我が家に泊まっていったお客様は良い人たちばかりで、部屋を汚すこともなく、きちんとしていました。パキスタン人の博士課程の学生さんや、カナダから来たコメディアンの2人組などでした。見知らぬ人を泊まらせることに当初は心配もありましたが、今のところ杞憂に終わっています。
Airbnbは、ホストとゲストの双方が相手を確認しやすくするため、顔写真をはじめ自己紹介情報をアップロードし、訪問の目的などをシェアするよう奨励しています。プラットフォームも使い方が簡単で、コミュニケーションの仕方や取るべき行動、提供すべきアメニティについてのアドバイスも十分に提供されています。
けれども、最近明らかになってきたのは、ローカルなレベルではAirbnbにまだ課題があるということです。革新的な事業モデルの会社が成熟するにつれ、そのサービスはメインストリーム化していきます。最近では、賃貸を本業とする会社がAirbnbを利用して、空き室などではなく一軒家やアパート全体を短期賃貸できるようにしています。これは様々な懸念を巻き起こします。払うべき税金を支払っているのか。安全面の監督が十分に行われているのか。ご近所に迷惑をかけていないのか。さらには、Airbnbで賃貸するほうが従来の方法で賃貸するよりも大きな利益が上がることから、これが住宅不足を生み、地元住民にしわ寄せが及んでいるのではないか、といった懸念です。
多国籍ビジネスの経営論は、通常、ローカルとグローバルのニーズの間でバランスを取ることを説いています。例えば、垂直方向と水平方向の機能を橋渡しするマトリックス構造の必要性、グローバルな認知度を持ちながらローカルな雰囲気のする、言わばマクドナルドのてりやきバーガーのような「グローカル」なブランドの必要性などです。
私自身がAirbnbから学んだのは、「パーソナル」であることの重要性です。泊まりに来るゲストや宿泊先のホストを確かめるには、異なる文化の相手であれ、信頼して共感を持てるようにならなければなりません。
日本の多国籍企業は、ローカルな面で非常に優れています。確実に税金を払い、良きコーポレート・シチズンとして行動しています。グローバルなレベルでは、特に日本の自動車メーカーが、「プラットフォーム」への移行を果たしつつあります。各地のサプライヤから供給された部品を用いながら、ブランド、デザイン、品質のグローバルな水準を打ち立てています。
次なる課題は、パーソナルなレベルです。日本人のエグゼクティブは、(概して)自分を出さないタイプです。また、日本のソーシャルメディアのユーザーは、匿名を保って勤務先などは明かさないことを好みます。しかし、顧客が会社を「確かめ」て「信頼する」には、会社のローカルな顔がもう少しパーソナルになる必要があるでしょう。
Pernille Rudlinによるこの記事は、2017年9月13日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました
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