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多様性

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Category: 多様性

インクルーシブな言葉

イギリスのビジネスで許容される用語がいかに変わり続けているかについて、最近クライアントと話す機会がありました。明らかに、「flexible working」は最近では「agile working」に改称されました。「agile」のほうが「flexible」よりも意味が広いためです。「agile」な働き方とは、パフォーマンス や成果にむしろ重点を置いていて、その業務遂行に当たってのwho、what、when、whereに柔軟性があることを意味します。一方、 「flexible」な働き方とは通常、(日本語でもそうであるように)勤務時間に柔軟性があることを意味し、子供のいる女性にとって働きやすい職場を作 ろうとする際によく使われます。「agile」な働き方は、すべての社員を対象としたものであることを示唆しています。

この話をしたクライアントの役職名も、この種の変化を象徴していました。「ダイバーシティ&インクルージョン責任者」というのです。ダイバーシティは今や 日本でもよく使われるようになっていて、主に性別の多様性を意味していますが、最近では多くの企業が国籍や性的指向など他の面の多様性を考慮するように なっています。イギリスで「ダイバーシティ」に加えて「インクルージョン」が使われるようになっている理由は、企業が単に多様な人材を雇用することだけに 集中するのではなく、それらの多様なバックグラウンドを持った社員が意思決定や昇進、さらには自分の周りで起こっている会話や会議から疎外されていると感 じることのない企業文化を作っていくよう促すためです。

私自身は、用語の正しさばかりを気にするこの種のアプローチに時として苛立ちを覚えます。「言葉狩り」のように思えるからです。でも、そう思うたびに、日 本企業の本社で外国人社員として働いていた時のことも思い出します。個人としてどう処遇されたかに関しては、まったく不満はありませんでした。が、年次報 告書のような英語の資料について意見を求められるたびに、社員を男性・女性、日本採用・外国採用に分けるのは海外の読者にとって違和感があると幾度となく 指摘したものです。これらの区分がなぜ存在するかは知っていました。当時、女性社員の99.9%は一般職で、男性社員は100%総合職だったためです。こ のため、事務系と管理系または営業系の社員割合を示すには、これが手っ取り早い方法だったのです。日本採用と外国採用の区分は、単体か連結かという会計方 式に関係していました。

とはいえ私には、「女性」や「外国」というのが格下であるように感じられたのです。もちろん、これらの区分は後に変更されました。多くの企業で正社員を事 務系と管理系に分ける慣習がなくなったためです。最近では持株会社という形態が登場したため、会計基準も変わり、社員について単体と連結を区別するのは以 前ほど意味を持たなくなりました。

しかし今でも、日本のクライアントから、社員の区分をどう呼ぶべきかについて相談されることがあります。日本からの駐在員を「rotating staff」と呼んでいる企業もありますが、これもまた、日本以外で採用された社員は他国に赴任する可能性がないことをほのめかす言い方です。あるイギリ ス人の社員は、日本の本社が送信してきたメールに部下という意味で「subordinate」が使われていることに不満を感じ、それを私に伝えてきまし た。階級意識の強いイギリス社会ですら、一般社員に対しては「colleagues」や「team members」の呼称が好まれています。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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取締役会は顧客と社員とコミュニティを反映すべき

大手日本企業の欧州子会社の取締役会が、日本人と現地人、および男女の構成比という点でどれだけ多様性を実現しているかについてのリサーチの第1段階を終えました。

取締役の女性比率は、ヨーロッパよりも日本のほうが高いという結果が出ました。これは社員構成を考えると驚きです。社内の昇進で上位の役職へと上がってくる女性管理職者の割合は、間違いなく日本の本社よりも欧州子会社のほうが高いためです。

一方、日系子会社の取締役に占めるヨーロッパ国籍者の割合は、会社によって大きな差がありました。東芝、シャープ、ファーストリテイリング(ユニクロの英国法人)のゼロから、旭硝子、ブリヂストン、キヤノン、日本電産の100%まで開きがありました。つまり、国籍の多様性は、業界によって傾向があるわけではなさそうです。また、取締役会が多様性を重視すべき理由として最も有力と思われる、顧客の構成を反映すべきであるという論は、思ったほど大きな要因ではないことも示唆されました。

透明性を高め現地に受け入れられるには

20年前は、海外と日本国内の両方で日本人顧客への依存度を低くしたいという狙いが、多くの日本企業が「国際化」に乗り出す主な理由となっていました。キヤノンは当時、ヨーロッパ出身者を海外子会社で高い地位に指名した先駆者となり、結果として同業他社よりも日本とヨーロッパの両方で良い業績を上げたように見えました。

現在、日本企業がグローバル化の方策として好むのは、国際事業部門を拡大し社内で幹部を育てることではなくて、M&Aを通じて海外事業を拡大することです。過去10年の大型買収が、旭硝子(グラバーベルを買収)をはじめ、富士通(インターナショナル・コンピューターズ・リミテッド)、野村證券(リーマン・ブラザーズ)、日本板硝子(ピルキントン)など、ヨーロッパ出身者の取締役が多い企業の要因となっています。

ただし、業界の特色も一部に見られます。例えば金融サービス業界は、取締役の指名に対して承認権を有する欧州当局から厳しい目を向けられています。現地市場に対して深い理解と経験を有する取締役であることを当局が期待しており、日本人の経営幹部の多くはこの要件を満たすことができません。

また、富士通と日立は、イギリスで公共セクター向けの事業(行政サービス、原子力、鉄道)がかなり大きな部分を占めているため、政府調達基準となる多様性の要件を満たすだけでなく、事業展開する地元コミュニティで受け入れられる必要があります。例えば、日本企業が保有するイギリスの公益会社が最近、取締役を公募しましたが、応募要件のひとつに、その公益会社の顧客であることという条件が含まれていました。

比較的規模の小さい日本企業やヨーロッパに進出したばかりの日本企業は、少人数の取締役会を好むかもしれません。現地に在住しない日本人の取締役が2人だけといったケースも見られます。が、ヨーロッパでは昨今、透明性を高め、ガバナンスを向上させるべきとの大きなプレッシャーが取締役会にかかっています。現地出身の取締役を最初から指名しておけば、規制当局、顧客、社員との関係を向上させるのに役立つでしょう。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2015年12月5日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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日本企業が「OL] を再考

今から20年ほど前、私は、日本のOLの終焉を宣言する記事を書きました。勤めていた会社が、新卒者を採用して「一般職」と呼ばれるコースに配属する慣行 を廃止したのです。この動きは当時、他の多くの日本企業にも見られました。OLの制服も廃止され、既存のOLには総合職コースへの転換が奨励されました。 将来の事務業務のニーズは派遣社員で埋められるという計画でした。

私はこの成り行きを嬉しく受け止めました。OLというシステムは、私のフェミニズム精神に反していたからです。ただし企業がこのシステムを廃止した理由 は、むしろ金銭的な理由でした。OLは、だいたい20~22歳で入社し、20代半ばまで勤続して、その後は結婚のために退職していくものと期待されていま した。

その間、OLは、机を拭き、ゴミ箱を空にし、部署内の同僚にお茶を入れ、電話に出て、書類仕事を処理したのです。けれども1990年代半ばまでには、30 代後半になっても勤め続けるOLが増え、年功序列の報酬体系ゆえに、そのように基本的な事務業務にしては相当に高い給与を取るようになっているのが明らか でした。

その後の10年間は、大卒者の就職が困難を極め、特に派遣会社での雇用を望まない女子大生にとっては氷河期が訪れました。多くが外資系企業に入社し、なかにはメインストリームの日本企業で総合職に挑んだ人もいました。

この時代は、一般職として働いていた女性にとっても難しい時代でした。半ば強制的に転換させられた準総合職コースは、それまでの一般職コースのような年功 序列の報酬体系ではなかったため、多くの場合、給与が下がる結果になったのです。そうした女性たちはほとんど全員が、今や派遣社員のチームを管理しなけれ ばならなくなったため、以前よりも多くの仕事をこなしていました。ひっきりなしに入ってくる新しい派遣社員を研修し、その仕事ぶりを確認し、派遣社員が間 違いを犯せば責めを受けなければなりませんでした。

以前の勤め先が一般職コースを復活させようとしているという話を聞いた時、私は最初、驚きました。派遣社員の犯す間違いと残された元OL(多くは早期退職を選んでいました)にかかる負担が、明らかに事業に大きな影響を及ぼしているのです。

でも、考えてみれば、これは驚きではありませんでした。先月、複数の日本企業を対象に顧客満足度を調べるための聞き取り調査を行った際、多くの企業で、女 性の事務スタッフが私とのミーティングに招待され、その上司たち(たいていは男性)が、彼女たちの目から見た意見やコメントを引き出すべく気遣っていたの です。

私が聞き取り調査をした企業は、サプライヤ企業の事務能力に対する批判が真剣に受け止められることを期待していました。事務的な間違いは、日本では瑣末な こととは見なされません。ほかに問題点がある可能性を示唆していると見られるうえ、小さな間違いが大事につながるという考え方があるためです。

事務職というのが屈辱的な仕事であると考えて、女性がそのような仕事に就くのは男女差別だと宣言していた私は、高慢でした。でも、このような偏見を抱いて いたのは、私だけではないかもしれません。実際、顧客満足度を調べるためのミーティングに秘書を参加させる欧米企業がいったいどれだけあるだろうかと考え ずにはいられません。

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取締役会の多様性

イギリスのメディアはここ最近、日本のビジネスの話題を盛んに取り上げてきました。日本で6月1日に「企業統治原則」の適用が開始されたためです。企業統治はイギリスで今もホットなトピックです。23年前に「キャドバリー・レポート」で今の日本の原則と同様の勧告が打ち出され、以来、EUや米国の規制に大きく影響してきました。

イギリス企業の取締役会では社外取締役がいるのが普通になりましたが、多様性がないという懸念は今も払拭できていません。「オールド・ボーイズ・ネットワーク」と呼ばれるものが、取締役の指名においては作用しています。自分と似た人を雇いたいと思うのは、人間の自然な本能です。その結果、公募をせずに人脈を通じて多くの指名が行われています。

企業統治をめぐる別の勧告に、2011年に発行された「デービス・レポート」があります。このレポートでは、FTSE100銘柄の企業に対して2015年までに女性取締役の割合を25%とすること、FTSE350銘柄の企業に対して2013年と2015年時点の女性取締役の割合の目標値を出すことを求めました。今年3月に発行された最新の年次報告書によると、執行幹部以外のポストや社外取締役では女性の割合が増えていますが、社内取締役の割合は依然としてきわめて低い状態です(FTSE250銘柄の企業で4.6%)。

オールド・ボーイズ・ネットワークに加えて、取締役会は、業界で高い実績がある人や財務を専門とする人を指名したがる傾向にあります。けれども女性は、ジェネラリスト的なキャリアを積んできたか、人事やマーケティングの専門家であることが多いのです。IT、金融、エンジニアリングといった、これまで伝統的に男性社会だった業界では、高い地位に上り詰める女性が今も欠如しています。

様々な専門性やバックグラウンドを取り込んで取締役会の多様性を実現するそもそもの目的は、取締役会での議論を活性化して情報の透明性を高めることにあります。それによって企業統治、革新性、リスク管理が向上すると考えられるためです。会社や業界のことを熟知していない人に物事を説明しなければならない状況に置かれることで、不注意な思い込みを発見し、新鮮な見方を持てるようになる可能性があります。

イギリスで事業展開する金融・保険業界の日系企業は、最近、金融規制当局であるPRA(プルーデンス規制機構)から厳しい目を向けられています。PRAは、業界企業で指名される取締役を面接して承認する権限を有しており、また「ボード・パック」と呼ばれる取締役向けの一連の文書や取締役会の議事録を確認する権限も持っています。

最近指名された日本人の取締役は、PRAが尋ねる標準的な質問に答えるのに苦労しました。それは、「なぜこの役職に就くことにしたのですか」という質問です。単に日本の本社から取締役になるよう言われたため、というのが現実だからです。イギリスで行われる取締役会のミーティングは、基本的に事前の根回しで決まっていることを確認するだけの内容です。このため、ボード・パックや議事録はほとんどなく、しかも日本語です。

日本で取締役会の多様性が高まるのに伴って、日本企業がもっと多くの情報を開示し、意思決定の透明性を向上させることが望まれます。そうすれば、海外子会社の取締役会もうまく機能するようになるでしょう。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2015年7月8日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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高齢化する労働力への対応

昨年12月、1年半ぶりに日本へ行ってきました。通常は年に1度は日本へ行き、微妙な変化を観察するようにしています。日本に住んでいた期間を含め、過去40年にわってこのような観察を続けてきました。

今回は、日本が少し「元気さ」を取り戻しているように感じられました。2011年と2012年に訪れた時は、全体として陰うつなムードが漂っているように見えたものです。しかし同時に、東京が「スロー」になったようにも感じられました。高齢者の割合が高まっているのは見た目にも明らかでしたが、若者も歩き方が遅くなっていました。スマートフォンを見ながら歩いていることも一因だったかもしれません。

日本の「やさしさ」や文化的な豊かさは、年を取る場所として理想的な国を作り上げています。もちろん、今の高齢者が幸運な時代の高齢者であることは事実です。年金をそこそこもらえて、健康でもあり、長生きを楽しめるからです。

一方、私の世代は、日本だけでなくヨーロッパの多くの国でも、70歳まで引退できないのではないかという見通しに直面しています。少なくともあと20年は働くことになるのです。今やヨーロッパでは、年齢を理由に従業員を差別することは違法です。このため、65歳で自動的に定年退職になるという制度は、イギリスでは廃止されつつあります。

現在50代に差しかかりつつあるヨーロッパの世代は、前の世代のように引退する余裕を持てないでしょう。でも、会社に勤め続ければ、若い世代の行く手を阻んでいるような罪悪感を感じさせられるうえ、リストラの対象になる可能性も多々あります。50歳を過ぎた社員にとって、転職先を見つけるのは容易ではありません。それに、意欲の問題もあります。これから先20年にわたって同じ仕事をし続けるという展望は、特にプレッシャーのきつい、いわゆる現場タイプの職種では魅力的とは言えません。仕事人としての人生の後半は、習得したノウハウや知識について熟考し、次の世代に引き継いでいくことが中心になるべきです。

日本で1990年代から使われてきたやり方、例えば肩たたきや窓際族などの処遇が、この状況に真に対応できていたとは思えません。こうした処遇は、受ける本人にとって苛酷なだけでなく、その反応としてリスクを嫌うようになった若い世代にとっても、好ましいやり方ではありません。若い世代は終身雇用を望んでいますが、野心的な目標を追求したり、外国で働くなどのリスクを取ったりすることには、あまり意義を感じていません。

むしろ好ましいやり方は、仕事人生の後半に突入した従業員が、蓄積したノウハウやスキルを集大成としてまとめあげ、管理職としてではなく教育や研修の機会を通じて日本の若い世代に伝えていく方法を見つけられるよう、サポートすることではないでしょうか。海外で買収した企業の現地採用社員や現地採用管理職も、日本の本社との強力なつながりを感じさせてくれるメンターを付けてもらい、会社の文化や業務手順の理解を導いてもらえるのであれば、歓迎するはずです。先輩・後輩の人間関係や見習い制度といった伝統を21世紀に応用することができれば、日本は、人にやさしく、かつ生産性の高い高齢化社会を創造するパイオニアになれると、私は考えています。
パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より

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真のグローバル化を目指す日本企業にはフレキシブルな勤務形態が必要

2011年の東日本大震災の後、節電方法としてクリエイティブな提案が多数出されました。金曜日を休みにして土曜日に働くといったアイデアもありました。こうしたアイデアについての記事を読むにつけ、私は、フレキシブルな勤務形態がようやく日本でも普及するのではないかと希望を高めました。フレキシブルな勤務形態は、女性の再雇用を促す方策として長らく議論されてきましたが、必ずしも普及したとは言えません。職場のダイバーシティを高めるための儀礼的な取り組みとして女性だけを対象に導入するのではなく、重要な社会のニーズを感じてこの種の制度を実践的に運用する日本企業がクリティカルマスに達しないかぎり、社会に広く浸透した働き方になることは決してないと、私は常日頃思ってきました。

自宅勤務ができれば、電力不足の状況にとって明らかにプラスの効果をもたらします。エネルギーを大量に消費する交通機関への負担が減るためです。また、災害に強い社会を作ることにもつながります。仮に日本がまたも大きな震災に見舞われたならば、社員が各所に分散していることで、1カ所のオフィスビルに全員が集まっているという弱さを緩和できます。

長期的に社会にもたらされる恩恵は、女性の職場復帰を促すという明らかなメリット以外にもあります。同僚や会社に気を遣って長時間オフィスに居残ることを良しとする「プレゼンティーイズム」を規範とする状況が、ついに解消されるかもしれません。日本企業にとって、プレゼンティーイズムの自然消滅を受け入れるのは困難です。残業の背後にある基本的な姿勢として、集団志向があるためです。その結果、自分のその日の仕事をすべて終えるということが、決してできません。チームの誰かを手伝うことは常にできるからです。

過去10年ほどの間にイギリスの職場で起こった大きな変化のひとつは、私が「グレーゾーン」と呼んでいる働き方です。スマートフォンのおかげで、朝晩の通勤途中に仕事のメールをチェックできるようになりました。また、小型軽量のノートパソコンや会社のサーバーにリモートからログインできる機能によって、仕事を家に持ち帰るのも簡単になりました。日本企業は、こうした働き方がもたらすセキュリティのリスクを案じています。とはいえ、データを1カ所のハードウェアにまとめておくことにもセキュリティのリスクがあることは認識されるようになっています。

イギリスでフレキシブルな勤務形態が重用されるようになった背景には、タイムゾーンという点で理想的なロケーションにあることが影響しています。朝のうちにアジアから業務を引き継ぎ、午後には北米の同僚にバトンタッチすることができます。朝早くや夜遅くの電話も、自宅からかけられるのであれば、それほど耐え難いものではなくなります。とはいえ、同僚との交流や情報共有という点でバランスを取らなければならないことも認識されています。月曜から金曜までずっと自宅勤務をすれば、業務の効果的な遂行には役立ちません。日本には、北米からアジア経由でヨーロッパへと業務をつなぐ際の溝を埋める橋渡し役になってほしいと思います。ただし、それにはフレキシブルな勤務時間を認める必要があるでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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