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異文化コミュニケーション

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Category: 異文化コミュニケーション

ワクチン事情から見て取られる国の性格

(パニラ・ラドリン著 帝国ニュース 2021年5月12日)

ヨーロッパでワクチン接種が進められていますが、これが各国のリスク対応について多くを物語っています。

イギリスではこれまでに、人口の半分以上が少なくとも1回目の接種を済ませました。他の欧州諸国と比べてはるかに速いペースです。ドイツ、フランス、オランダは4月初め時点で人口の20%に達していませんでした。

ただし、EU加盟国は今後数週間で急速に追い上げるでしょう。接種1回のワクチンを含め、供給増が見込まれているためです。私も1回目を受けてきましたが、それを喜ぶ一方で、このウイルスがイギリスで12万7,000人以上の死者を出したと思うと考えさせられます。イギリスの死亡率は世界でも最高レベルです。初期段階でリスクを軽く受け止めすぎたのかもしれません。

イギリスはEUのワクチン調達制度に参加することもできましたが、不参加を選びました。代わりにベンチャー投資家を指名して、様々なワクチン候補に多額の投資をする権限を与えました。バイオの専門知識があり、バイテク投資で腕を鳴らしてきた女性です。

驚きではありませんが、25か国から成るEUのワクチン調達制度は、決定までに長い時間がかかりました。ただし、最終的には欧州医薬品庁が4種類のワクチンを承認し、西側で最多の承認数となりました。

ドイツは、ワクチンの大々的な導入に慎重でした。1回目の接種を開始する前に、定められた期間内に2回目用の製品が入手できることを確認しようとしたのです。イギリスは、それほど慎重ではなく、おかげで今、供給が不足しつつあります。私は6月に2回目を受けたいと思っていますが、18歳以下の多くが夏までにワクチンを接種できるかどうかは不透明です。

イギリスがEUのワクチン調達制度に参加していたならばEUの動きが迅速化したかどうかを憶測する向きもあります。イギリス人は、あまり計画や準備をせずに見知らぬ領域に踏み込んで、その後ズルズルと進んでいく傾向にあります。問題が起こるごとにプラグマティズムで物事を直していくのです。

ドイツ人のビジネスパートナーにこの話をしたところ、彼女いわく、ドイツ人は技術的に優れたソリューションを考案するのが好きで、プロジェクトに着手するよりも前に、リスクにどう対処するかを心配してそれに時間をかけるとのことでした。残念ながら、技術的に優れたソリューションが実際にうまく行くという保証はありません。このことは、ワクチンに対するドイツのアプローチに表れていました。中央一元管理のハイテクなワクチン接種センターを建設しましたが、おかげで立ち上がりに時間がかかり、大量のワクチンが未使用のまま備蓄される結果となりました。

イギリスも、同様の問題を起こしてきました。数十億ドルという資金を投じて「世界最先端」のウイルス検査と接触追跡のアプリ、それに一元管理のシステムを開発しましたが、いまだにあまり効果を示していません。ドイツもイギリスも、中央で管理しないローテクな方法を選んだほうが良かったかもしれません。リスクに対する姿勢もさることながら、最終的にはすべての国が、既存の技術インフラとプロセスから制約を受けています。この点では、パンデミックの間にトランスフォーメーションを試みた民間企業が遭遇した状況に通じるものがあります。

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日本のコンテンツのソフトパワー

ヨーロッパの社員向けに日本人の同僚との働き方を説明するセミナーで、ビデオコンテンツを見せてほしいとリクエストされることがありますが、たいていはあまりお勧めしないことにしています。技術的な問題を起こすのが目に見えているからです。YouTubeからストリーミングしようとすれば、ファイアウォールやインターネット接続の問題にぶつかり、クライアントのオフィスにあるDVDプレーヤーを使わなければならなくなるなど、厄介なことが多々あります。

しかも、これまでは、そもそも良いコンテンツがあまりないというのが現実でした。『ベスト・キッド』や『ロスト・イン・トランスレーション』のような映画はありますが、ステレオタイプ化されていたり、全編を見ずに一部のシーンだけを見ても意味を成さないことがあるためです。

日本とヨーロッパの俳優を使って典型的なビジネスシーンのやりとりを描くビデオを独自に制作することも考えましたが、かなり高価につくうえ、内容がすぐに古くなりがちで、作為的でわざとらしく見える恐れもあります。

ビデオで見ることの意義は理解できます。トレーニングの内容がバラエティ豊かになるうえ、身近に感じられるシーンを通して様々な文化の人たちのふるまいを見ることで、他の文化に対する共感が生まれるからです。

最近になって、日本を題材にしたビデオコンテンツが以前よりもはるかに良くなっていることに気付きました。サンリオのアニメ『アグレッシブ烈子』は、現在イギリスのNetflixで配信されていて、レッサーパンダのOLの様子に、私も涙が出るほど爆笑しています。日本の職場を知らない人にとってはつまらないだろうと思っていたら、18歳の息子と香港から来たホームステイの学生に大受けでした。

おかげで息子とは興味深い会話ができました。やはり動物のキャラクターが出てくる日本の漫画『ビースターズ』と似ていると思ったようですが、『ビースターズ』もアニメ版が今春、Netflixにお目見えすることが分かりました。『深夜食堂』、『全裸監督』、『テラスハウス』などの他の日本発コンテンツに加わる予定です。

息子の世代は、コンテンツ消費のほとんどをNetflix、YouTube、Amazon Primeでしているため、今や私が息子と一緒にテレビを見ることはほとんどありません。おかげでイギリスの公共放送、BBCは、ライセンス料の売上高が下がり始めました。若い世代はノートパソコンやスマホでオンラインのコンテンツを見ていて、テレビは持っていないからです。

企業のほうも、若い世代に訴求しようと思うのであれば、テレビや新聞の広告やニュースではなく、オンラインのビデオに頼らなければなりません。

最も効果があるのは、俳優が台本を演じる会話ではなく、リアルな人たちの実際の会話、もしくはハウツーや体験談のビデオと思われます。この種のビデオは、かつての映画のようなビデオと比べて、はるかに安価に簡単に制作できます。そこで私も、独自に録画を始めました。ただし、セミナーではなく、弊社のPR目的で使う予定です。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2020年3月11日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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アメリカ英語とイギリス英語の言語の壁

先日、日本へ出張してきました。イギリス企業の日本の子会社でトレーニングを提供して、イギリスの本社と効果的に働く方法を指導するためでした。日本の社員が指摘する問題点を聞きながら、イギリスの社員から聞いてきた話とすり合わせているうちに、誤解の多くが言葉の壁によって引き起こされていることをあらためて実感しました。

ただし、日本語と英語という明らかに異なる言語の間にある壁ではありません。むしろアメリカ英語とイギリス英語の間の壁であって、言葉というよりは文化の違いから来ているものが多々ありました。

子会社で働いている日本人の社員は、学校でアメリカ英語を教わってきただけでなく、米国に住んだり米系の会社で働いたりした経験を有していました。イギリスの会社は、彼らの英語力と経験に引かれて採用していました。多国籍企業に馴染みやすいだろうと考えたのです。

しかし、多くの日本人社員が指摘したのは、イギリス人も日本人も、指示を出したりフィードバックを提供したりする際に曖昧で間接的だという点でした。特にフィードバックがネガティブな場合にそれが当てはまります。「イギリスの同僚が怒っているのかどうかが分かりません。メールが長い時は怒っているのだと考えることにしています」と、ある日本人社員は言いました。

イギリス人に対しては、理解しようとしてくれる、下手な英語を大目に見てくれる、目下の社員に対しても礼儀正しいといった称賛がありました。ドイツ人やアメリカ人は、あまりソフトでなく、体面を重視すると見られていました。また、アジアで働いたことのあるイギリス人は、ゆっくりと分かりやすく話してくれるけれども、そうでないイギリス人は、非常に言葉数が多くて、何を言おうとしているのかまったく明確でないとのことでした。

イギリスのマネジメントのスタイルが、得てして気さくな相談者のようなスタイルで、ぼんやりとした全般的な指示を出して部下の意見を聞くスタイルなのだということを説明しました。一方、米国のリーダーシップのスタイルは、スピード重視です。目標を設定し、報告を標準化して、個人個人に対してすべきことを指示します。

米系の多国籍企業に勤めた経験があり、アメリカ英語を流暢に話す日本人マネージャーは、イギリスから明確な回答が返って来ないため、同じ依頼をメールで何度も繰り返す必要があることに不満を募らせていました。「私の求めていることが分からないのでしょうか。それとも意図的に無視しているのでしょうか」。

この問題の解決法は、回答に期限を設け、緊急のコミュニケーションやネガティブなフィードバックのプロセスを確立して、リクエストが理解されたかどうか、対応中かどうかを明確にすることだという点で意見が一致しました。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年5月15日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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疫病対策の歴史と文化の違い

私の夫は、今、単身赴任中です。毎日通勤するには遠すぎる全寮制の学校で働いているためです。一人暮らしのアパートは、かつてサナトリウムだった建物を改築した集合住宅です。第二次世界大戦前に結核患者を隔離するために建てられました。抗結核薬が発見される前は、新鮮な空気に触れて屋外で寝るのが結核の治療法と考えられていました。そのせいで、夫の住むアパートは、大きな窓とドアからひどい隙間風が入ってきます。建物にはセントラル・ヒーティングがありますが、寒いことこの上ありません。

新鮮な空気に触れて屋外で寝るという発想は、実際には結核を治癒する効果はありませんでした。が、部屋の換気を良くすることで、他の人への感染を防ぐことはできました。同様に、屋外で寝ずとも、横になっていることで症状が和らいだのも事実です。

世界中で新型コロナウイルス感染症が拡大していますが、ヨーロッパでかつて結核がどのように対処されたかについて考えみると、各国が疫病に対してどのような歴史を持っているかが、文化の違いになって表れているように思えます。また、今でも医療分野の製品やサービスには、文化の違いが色濃く見られます。

中世ヨーロッパのペストは、ノミによって広まりました。そして、感染した家族、町、時には地域一帯を隔離することで、疫病をコントロールしようとしました。19世紀のコレラやチフスは、汚染された食べものと水が主な原因でしたが、ヨーロッパ北部の国が産業化して公衆衛生が改善し、食べものと水の質が向上したうえ、抗生物質が発明されたことで、押さえ込めるようになりました。

日本では天然痘が多く、少なくとも8世紀からありました。子供が多くかかる病気でした。長い時間にわたって近接していること、とりわけ皮膚の接触によって感染します。このため、日本では主に家族や村のレベルで天然痘が管理されました。

日本人がヨーロッパの人ほど握手や抱擁やキスをしない理由はこの歴史にあるのではないかと考えずにはいられません。また、日本人が今でもハンカチを携帯して、洗った手を拭くのに使っている理由も、ここにあるのかもしれません。ヨーロッパでは、ハンカチは鼻をかむ時に使うものです。

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、イギリスでは、手を石けんで洗い、手を洗えない時は消毒ジェルを使用し、鼻をかんだり咳やくしゃみをしたりする際はティッシュペーパーで口を覆って即座に捨てるようにという勧告が出されています。また、握手も避けるようにと言われています。もともとイギリス人は、ドイツ人ほど握手はしませんし、イタリア人ほどキスや抱擁をすることもないのですが。

この政府勧告が出た結果として、消毒ジェルはどこも売り切れの状態です。おかげで、インフルエンザは劇的に減少したそうです(イギリスでは毎年数千人の死者が出ます)。もしかすると、イギリス人は、国の医療制度や行政の介入に依存しすぎるようになっていたかもしれません。今になって、自分が主体的に行動しなければならないと気付いて、古いメソッドに戻っているのかもしれません。夫が取った行動も、まさにそれでした。暖を取るために、湯たんぽを買ったのです。昔ながらの方法が、危機の最中に安心感をもたらしています。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2020年4月8日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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日本好きだけど日系企業だ働きたくない

センターピープルの2019年6月19日の人事セミナーで行ったパニラ・ラドリンの「日本好きだけど日系企業だ働きたくない」スピーチのスクリーンキャストです。

 


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ヨーロッパで「リーズナブル」とは何を意味するのか

イギリス政府は、EU離脱の交渉で、これまで二度にわたり「リーズナブル」という概念を持ち出しました。イギリスで働いている日本人のマネージャーにとって、この概念を理解することは非常に重要です。会社間や会社と社員の間で係争が起きた場合に調停の基礎をもたらすのが、この概念だからです。

イギリスのリアム・フォックス国際貿易大臣は、昨年8月の訪日中に、日本や他のパートナーに対してEUを説得するよう呼びかけました。「イギリスは、フェアでリーズナブルな条件を提示しました。この提示を却下して合意なき離脱になれば、EUにとっても、イギリスにとっても、イギリスの貿易相手国にとっても、良いことはありません」。

言語学者のアンナ・ヴェジビツカ教授は、著書『English: Meaning and Culture』の「Being Reasonable」という章で、イギリス人がフォックス大臣のような文脈で「リーズナブル」と言う時は、価値判断が暗に含まれていて、相手側が「アンリーズナブル」、すなわち「ばかげている」、「極端」、「無謀」だとほのめかしていると指摘しました。同教授はポーランド生まれのポーランド育ちですが、今はオーストラリアに住んでいて、この言葉のニュアンスがフランス語やドイツ語の同義語とどう異なるかについて、客観的な知識を有しています。EU離脱をめぐるEU側の主席交渉官、ミシェル・バルニエ氏はフランス人ですから、英語の「reasonable」を自然とフランス語の「raisonnable」に翻訳して考えていると思われますが、これは「分別がある」や「理屈で説明できる」ことを意味します。バルニエ氏の補佐を務めるザビーネ・ウェイアンド氏はドイツ人です。「reason」に相当するドイツ語の「Vernunft」には「秩序」の概念が含まれ、正しいプロセスがあることを意味します。「リーズナブル」の概念は、フランス語では否定形が存在せず、フランスの民法で1回使われているのみ、ドイツの法律ではまったく使われていません。

さらに最近になって、イギリスのジェフリー・コックス法務長官が、やはり「リーズナブル」を使用しました。北アイルランド国境をめぐる通称「バックストップ」案をイギリスが回避できるようにするための調停を提案した際の発言です。交渉が決定的に決裂した場合に、イギリスが代替案を見つけるために「リーズナブル」な努力を講じたかどうかを、欧州司法裁判所とは異なる独立した立場の調停機関に判断してもらうべきだと提案しました。しかし、国際法では、「誠意(good faith)」をもって「最善の努力(best endeavours)」を尽くし、拘束力のある保証に至ることを重視します。

ここまで来たところで、たいていのビジネスピープルなら絶望してあきらめたくなることでしょう。弁護士でもないかぎり、理解が非常に困難になってきます。とはいえ、ビジネスピープルである私たちは、イギリスでビジネスをするために、この概念を理解する必要があります。ですから、私の説明が少しでも助けになればと思うのです。社員に残業のような負担を請け負ってもらおうとする時、あるいはビジネスパートナーと交渉する時、相手がイギリス人であれば、「リーズナブル」は次の3つのことを意味します。(1)リクエストの背後にある理由を分かりやすく説明した。(2)害悪を及ぼす極端なリクエストではない(高すぎる、安すぎるなど)。(3)理由が合理的、論理的、実際的である。これで相手から「リーズナブルだと思います」という反応を引き出したなら、あなたは説得に成功したというわけです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2019年4月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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信頼

私の仕事の目的を一文で言い表すならば、「文化を越えて信頼を築くこと」と言えるかもしれません。でも、こう言うと、信頼をどのように定義するのか、どうやって築くのかという疑問が自ずと浮上します。

これまでの経験を分析した結果、多国籍企業で信頼を築くには5つの要素が必要と言えそうです。それを順番に説明しましょう。

  1. コミュニケーション

共通の言語を持つことは非常に重要です。でも問題は、西洋人にとって日本語は最も難しい言語のひとつであり、また日本人も英語に対して同じような気持ちを抱いていることです。日本の企業は、外国人社員の日本語学習を支援し、また英語でのコミュニケーションを上達させるべきです。英語を公用語にしたり、最低レベルの英語を社員に求めるだけでは不十分です。経営陣がビジョンと戦略と計画を今よりももっと効果的に英語で伝えられなければなりません。

  1. 共通の関心

共通の関心を見つけ、関心の度合いに違いがあると理解することで、交渉に安定した基礎がもたらされます。このため私はいつも、日本人駐在員にヨーロッパの同僚やパートナーと世間話をするよう勧めています。共通の課題やニーズがあることが分かれば、共通の理解ができ、妥協や合意に至りやすくなるからです。

  1. プロセスと規則

信頼のレベルが低い場合は、法律や規則やプロセスが安全策として必要になります。しかし、日本企業もEUも、時として官僚主義やプロセスにとらわれすぎる嫌いがあります。信頼されるには、規則やプロセスに従っていることを示さなければなりませんが、究極的にはそれだけでは不十分です。どのように物事を進めるか、意図は何なのか、相手に対してどのようにふるまうかも、同じくらい重要です。

  1. 確実性

誰かを信頼するということは、その人が法律を守るだけでなく、言ったことを本当にやってくれると信じられることを意味します。日本企業にとって、これは定義が難しいかもしれません。ファミリーのようなスタイルの企業文化があり、全員の役割が曖昧で、職務上の責任が明文化されておらず、年功序列で動くためです。会社というファミリーのために、誰もが何であれ必要な行動を取るものとされています。家族の一員のためであれば、規則を曲げることもあります。しかし、この曖昧さは、多様な文化が混在する組織では通用しません。

  1. ビジョン

これゆえに、会社がどこへ向かっているのか、どのように見られたいのかに関する明確なビジョンが必要になります。このビジョンを社員に伝えて、チームの一員であるという帰属意識を社員に持ってもらう必要があります。そうすることで、この価値観が指針となって、ビジョンを達成するためにどのように行動すべきかが分かるようになるでしょう。与えられた規則やプロセスの枠内で様々な目標に達することだけがビジョンであって、社員が主体的に会社の価値観に参加していなければ、日本とヨーロッパの両方の企業で起きてきたようなスキャンダルが今後も続き、社会や文化を越えた信頼にとって悲劇的な結果を招くでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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データの視覚化 

ヨーロッパの人が日本の人に提案をする際、あるいはディスカッションをしようとする際は、アイデアを視覚的に示すといいと、私はよくアドバイスしています。これにはいくつかのメリットがあります。第一に、英語の文章量を減らせること。この結果、日本の人がそれほど奮闘しなくても、提案内容を理解できるようになります。第二に、図解があることにより、私情抜きで冷静なディスカッションができるようになることです。指し示して意見の不一致を認める「対象物」ができるため、誰かの抽象的な考えをめぐって論争する必要がなくなります。

第三に、そもそも日本人は漢字という視覚描写的な文字、つまりコミュニケーション方法に慣れていることです。欧米では文章で直線を示していくような形式のコミュニケーションが主流ですが、日本人は、複雑な概念を視覚的かつ全体的に提示されることに対して高い受容力を持っています。

このような理解があったため、私は、イギリスの調査会社で働いている若い日本人の女性社員が言ったことに相当な驚きを覚えました。イギリスの同僚は、彼女が日本で経験してきたよりもはるかに多くの図解を使って調査結果を示していると言ったのです。特にインフォグラフィックが多用されていて、時にはインフォグラフィックと聞き取り調査の録画をビデオ形式の報告書にまとめて顧客に送ることもあるとのことでした。

ビッグデータ時代の到来に伴って、データの視覚化は成長産業になっています。そこで日本企業は、この種のスキルを持った会社や人材を雇い入れるべきなのでしょうか。それとも、これは何らかのソフトウェアを入手すれば簡単に自動化できることなのでしょうか。

データを視覚化するための自動化ツールは存在していますが、重要なのは、なぜそのデータを視覚的に示したいのかをまず考えることです。通常、視覚化する目的は、洞察をもたらしてディスカッションを刺激することです。インフォグラフィック自体が答えを示してくれるわけではありません。ディスカッションは、人間がインフォグラフィックの様々な解釈を説明し、取るべき行動について意見を語ってこそ成立します。インフォグラフィックは、指し示して意見の不一致を認める「対象物」であると同時に、バックグラウンドや母語が異なる人たちがより平等に討論する機会をもたらします。技術的なカベとしての言葉の重みを軽減するためです。

前述の日本人女性が働いている市場調査会社は、イギリスで設立され、2014年に日本企業から買収されました。ただし、アジア各地にオフィスがあり、多言語を話すスタッフがヨーロッパ全域に出張しているほか、イギリスにあるコールセンターは30言語以上に対応しています。

グローバルなマーケティング・サービスの会社にとって、イギリスは明らかに有利な事業拠点です。英語コミュニケーションの中心地であるうえ、多国籍の労働力があるため、様々な文化でデータが適切に解釈されるかどうかを確認できる人材が見つかります。日本のマーケティング会社や広告会社が近年イギリスの会社を多数買収しているのも、このためです。イギリスのEU離脱によって域内の移民や移動の自由にあまりにも多くの障害ができてしまい、この優位性が失われないことを願うばかりです。

 

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 ヨーロッパで活躍している日本人マネージャー向けにパニラ・ラドリンの日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理多国籍チー日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理ムと円滑に働く方法のオンラインコース

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シチュエーショナル・リーダーシップ

ヨーロッパ勤務になった日本人社員が最も難しいと感じることのひとつが、様々な国籍の人たちと働かなければならないことです。勤務地がロンドンであれ、デュッセルドルフであれ、アムステルダムであれ、同僚がイギリス人、ドイツ人、あるいはオランダ人だけということは、おそらくないでしょう。ルーマニア、リトアニア、ポーランド、スペイン、さらにはインドや中国の出身者も含まれている可能性が多々あります。

日本で提供されているグローバルなリーダーシップ研修やマネジメント研修の多くは、アメリカのモデルに基づいています。ヨーロッパの人はアメリカ流の経営スタイルに馴染んでいるため、少なくとも表面的には寛容に受け止めるでしょう。ただし、ヨーロッパの社員に表面的なコンプライアンス以上の行動を取ってもらおうと思うのであれば、これらの画一的なモデルの多くは、究極的に有効ではありません。事実、士気を下げる可能性があり、特にあまりにも厳密に数値目標を重視するとそうなります。

ヨーロッパのマネージャーがアメリカ流のモデルで最もうまく機能すると感じているのは、「シチュエーショナル・リーダーシップ」と呼ばれるスタイルです。何も新しい理論ではなく、1960~70年代にアメリカ人のポール・ハーシー氏とケン・ブランチャード氏が開発しました。これがヨーロッパの事情に合う理由は、唯一絶対の優れたリーダーシップ・スタイルは存在しないという考え方を基本としているためです。シチュエーショナルなリーダーとは、状況を見極めたうえで、自分のリーダーシップのスタイルを柔軟に調整し、適切にコミュニケーションできる人です。また、部下それぞれの「パフォーマンス・レディネス」、すなわち能力と意欲のレベルを考慮に入れます。

国ごとの文化の違いは、このモデルでは特に言及されていません。が、私のトレーニングでシチュエーショナル・リーダーシップを取り上げる際は、ヨーロッパ各国の傾向として知られるものに必ず結び付けるようにしています。具体的には、トップダウンの意思決定とコンセンサス構築のどちらを好むか、フィードバックを提供したり指示を出したりする際に直接的なコミュニケーションと間接的なコミュニケーション、フォーマルとインフォーマルのどちらを好むか、といった違いです。

日本人の長所と短所

もちろん、ヨーロッパに着任して日が浅い人にとっては、これがかなりの負担に感じられる可能性があります。とりわけ、伝統的な日本の会社に勤めてきた日本人にとっては難しいことかもしれません。自分の気持ちや能力には関係なく、とにかく上司が言ったことを遂行すべく最善を尽くすという文化に慣れているためです。

でも、日本人のマネージャーには2つの大きな長所があると、私は考えています。あくまで一般論であって全員には当てはまらないかもしれませんが、25年にわたって日本企業にかかわってきた経験のなかで私が知り合った日本人のほとんどは、自分の能力を謙虚に受け止めていて、かつ他の文化に対して好奇心が旺盛です。つまり、学ぶ意欲があり、自分にとって普通のやり方でも変える必要があるかもしれないということを受け入れる姿勢があるのです。

パニラ・ラドリン著 帝国データバンクニューズより

シチュエーショナル・リーダーシップについてパニラ・ラドリンの日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理多国籍チー日本人マネージャー向けのパフォーマンス管理ムと円滑に働く方法のオンラインコースお勧めします。

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私の新年の抱負 ― 話すよりも尋ねる

クリスマスパーティーに行く前に少し時間があったのでロンドンのバーで時間をつぶしていたところ、隣のテーブルに座っていた年配のアメリカ人の男性が突然身を乗り出して話しかけてきました。「イギリスのEU離脱について聞いてもいいですか」。聞くとその方は金融業界を専門とする弁護士で、今は半ば引退して仕事は少なめにしているものの、これから出席する米英間の夕食会の準備としてイギリス人の考え方を知りたいと思っているとのことでした。

私はこのリクエストを快諾し、ただし交換条件として米国についての彼の見解を聞かせてもらうことにしました。その週の後半に日本の新聞からトランプ氏の選挙の影響について取材されることになっていたからです。こうして私たちはしばしの意見交換をし、今のように不透明で混乱しがちな世の中にあって、グローバルなビジネスピープルが対話を続けることが重要だという点で意見が一致しました。そして今後も連絡を取り合うことにして別れました。

この方は、私が聡明そうで分別がありそうに見えたから声をかけたと言ってくれました。そんなふうに見えたとしたら、原因の一部は、2016年に入って白髪を隠さないことにしたせいかもしれません(新しい写真のとおりです)。50歳になったことを否定するより誇りにしようと思ったのです。とはいえ、この方と話したことで、見た目や話し方に年齢なりの知恵が表れるのを待っているのではなく、他の人の見方や考え方を自分から求めるのが真の知恵なのだということを学びました。

選挙運動中の政治家はよく市民の声に「耳を傾ける」と言いますが、声の大きい人ほど「耳に届く」のは否めません。イギリスの国民投票と米国の選挙の際も、声高な人々が人種差別や性差別、あるいは妄想とも言えそうなことを様々に語っていました。その結果、多くの人が「他人」をシャットアウトして、同じ見方をする友達だけとソーシャルメディアでコミュニケーションしていました。

でも、「耳を傾ける」だけでは十分ではありません。普段は話さないような相手に自分からアプローチして、どう思うのか、なぜそう思うのかを尋ねる必要があります。これは私がセミナーで努力している点です。実際、参加者が自分の経験を共有したい、別の解決法もあると言ってくれたほうが、自分の知識を単に話すよりも私にとって格段に楽しいのです。

ヨーロッパ駐在の日本人マネージャーに私がよく説明するのは、ヨーロッパの人は常に「なぜ」を知りたがるため、理由を説明できるよう準備しておかなければならないということです。また、ヨーロッパの人は、意見を求められたい、相談されたいとも考えています。「イエス」か「ノー」かで答えられない質問をされたいのです。イギリスとイタリアが示したように、「イエス」か「ノー」かの投票は、物事を明確化するよりもむしろ混乱を招くことがあります。イエスかノーかで質問すれば、ストレートな拒絶を招き、なぜ拒絶したのか、代わりにどうであったなら許容したかを尋ねる余地がないためです。

そこで私の新年の抱負は、自分の意見は内に留めておいて、他の人の意見を求めること、なぜそう思うのかを尋ねることです。

パニラ・ラドリン著 帝国データバンクニューズより

ヨーロッパ人の「なぜ」に対してどう答えればいいか?パニラ・ラドリンの多国籍チームと円滑に働く方法のオンラインコースをお勧めします。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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Last updated by Pernille Rudlin at 2022-12-14.

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