報酬とやる気
日本の企業が西洋の企業を買収するときの心配の種の一つに、西洋諸国では当然とされている高いリスクにさらされるトップマネジメントに支払われる高い報酬制度があります。これは金融業界のみならず他業界にも共通している事柄です。
海外に既に進出している日系企業にとってこの問題は特に目新しくい課題ではなく、現地の制度・市場にレートで給与を設定する事が一般的な解決策とされています。
しかし日本の本社サイドからこの現象を見れば変則的な事柄に見えるのは避けれないことであると思われます。
例えば日本の一流企業の社長の報酬は新入社員の10倍から20倍ですが、一方、フォーチュン500社に名を連ねる会社ではこれが300倍から500倍となっています。
そうなると、日本の社長は買収先の取締役とは比較の対象にならないほど低い報酬を受けているという事になります!これを身近な例として海外に派遣された駐在員の立場で見ると、管理される側の現地社員の報酬が、駐在員のそれに桁を一つ加えた程の高給になる、というため息の出る事実に直面することが起きてきます。
また、在日外資系銀行やコンサルタント会社で働く日本人社員は、日本企業で働く同世代・同業種で比較すると、10倍の報酬を得ているという報告もあります。
勿論日本の伝統的な報酬制度は、首切りもないという安定雇用の中で安心感を与え、これを妥当とする考え方もあり、昨今の大不況を目の当たりすると、確かにこの考え方にも頷けるところがあるようにも思われます。とは言え、私はこれらの例から単純に結論を導き出してしまうのは危険だと思います。
不況の真っ只中でも解雇されないという安定感や、高給という条件と引き換えに社員が満足感・向上心を維持できるかというは、日本・西洋に関わらず、必ずしも一致しません。このような要素は社員を企業に引き止める策にはなっても、社員の最大級の実力を発揮させることとは違う事だと認識する事が大切です。
高給・高待遇が社員の勤労意欲の向上に有る程度効果的であろう事は否定できません。それはその社員の業績=企業の発展に貢献しているという事でもあります。つまり、高給・高待遇は社内における権威と責任の大きさの表れということです。スピーディな昇給はその社員が社内でより重要な地位に近づいていることであり、それを支える能力、技量が備わっている事とも言えます。
報酬と権威に裏打ちされた誇りから生じるのが勤務意欲、これが西洋の企業で働く社員の考え方です。一方、ある調査によれば、日本の企業で働く社員の勤労意欲の根源は、西洋のそれとは微妙に異なるようです。昇進・スキルアップが重要であると認知している一方、同僚とのよい人間関係、重要決定事項に参加できること、そして向上心を高めてくれたり、社員と良好な関係を築く上司を持つことも大切と報告されています。
国籍を問わず、人は誰でも己の仕事を通して社会に貢献する事により、認めて欲しいと考えるものです。多くの日本人は従来から、一流会社で長年勤続することを通してそれを体現してきました。ところが西洋人にとってこの発想はすでに1980年代で終焉し、高い報酬と地位が取って代わったと言えます。
日本の会社と西洋の企業とが買収等により融合する場合には、既述のような極端な方策を避けるのが賢明ではないかと思います。高い報酬だけはは約束し、それに伴なった業務決定権を与えないう状態では、いずれ大切な人材が去ってしまう可能性が高いと思います。一方、保証された雇用ではあるが風通しの良くない我慢を強いられる人間関係
お互いの個人を尊重しない環境の中では社員は転職までは決意をしないにしても
勤労意欲はおのずと低下せく事は避けられません。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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