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EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が今年1月に施行されました。EU加盟国が国レベルでこの指令を法制化しなければならないことを意味します。CSRDは従来の非財務情報開示指令(NFRD)の規則を強化し、EUで上場していないグローバル企業にも遵守を義務付けるものです。つまり、EUに事業拠点があるものの、あまり主要な拠点とは見なしていない日本企業にも適用されます。
2024年以降、EUにある「大規模」な企業、およびEUで上場している企業はすべて、当該事業体と親会社がESG(環境・社会・ガバナンス)に及ぼしている影響を示す広範な報告書を新たに作成しなければならなくなります。例えば、フランクフルト証券取引所に上場しているオムロンやリコーなどの日本企業がこれに該当します。
日本企業のほとんどは、EUで上場していないけれども「大規模」と見なされるグローバル企業に該当し、その場合は2028年度のグループ全体の連結情報を2029年に開示しなければなりません。
「大規模」の定義は、EUにある子会社または支店が、(1)保有資産高2,000万ユーロ以上、(2)売上高4,000万ユーロ以上、(3)従業員250人以上という3つの条件のうち2つ以上を満たしていることです。約5万社がこの新しい報告要件の適用対象になると推定されています。日系企業では少なくとも70社がこの基準を満たすと、私は見積もっています。
EUは、経過措置として、EU以外の国際企業に対しては、2024年から2030年まで段階的アプローチを取ることにしました。2029年までは、全世界の事業をすべて包含したグループ全体の連結報告書を親会社が自主的に発行できます。つまり、EUにある大規模な事業体による漸進的かつ個別の報告は免除されます。
言い換えると、2029年までは、日本の会社が欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に準じたデータを全世界の連結で開示しているのであれば、さらなる報告の必要はありません。ESRSは今も草案の段階ですが、環境保護だけでなく、バリューチェーン全体にわたる労働者の処遇のような社会的要素、および取締役のダイバーシティや内部統制とリスク管理のようなガバナンスの要素が含まれる予定です。
ESRSに準じた報告を行わなかった場合の処罰には、企業名の公開、改善命令、罰金が含まれます。
私は過去何年もの間に日本企業の年次報告書を数百と読んできましたが、英語による情報開示が改善している一方で、合格点に達しない報告書も多数あります。例えば、多くの企業が、日本国内の従業員に関する情報のみを開示しています。
前述の条件を読んで、これは自社には適用されないと思った方もいるかもしれませんが、EUの基準に加えられた最大の変更点のひとつが域外をもとらえている点です。報告に際して全世界のサプライチェーンを含めなければならないのです。このため、EUで大規模に事業展開している日本企業のサプライヤになっているのであれば、その会社から御社の全世界のESG活動について尋ねる質問票がまもなく送られてくるかもしれません。
帝国ニューズ・2023年8月9日・パニラ・ラドリン著
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