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先月ドバイでセミナーを開催した際、現地アラブ人の参加者が突然手を挙げて、次のように言いました。「私の家族に共通することがたくさんあります!」。日本人のグループ志向や言葉に表さないコミュニケーション、以心伝心や思いやりといった概念を説明していた時のことです。
そこで彼女に、どのような点で日本人とアラブ人は似ているかを聞いてみたところ、次のような話をしてくれました。彼女の家族は、かつての日本の伝統的な家族のように3世代で同居しているそうです。ある日の夕方、おばあさんが「今晩のご飯は何にするつもり?」と聞いてきました。若い彼女は、マクドナルドのハンバーガーを買いに行こうと思っていたところでしたが、おばあさんがお腹をすかせていると察して、何を食べたいかを聞き返しました。すると、おばあさんはこう言ったのです。「お腹がすいているわけじゃないの。何もいらないわよ」。
彼女は結局、外へ出かけて伝統的なアラブの食事をテイクアウトで持ち帰りました。でも、おばあさんに見せると、おばあさんはいらないと言います。そこで家族で夕食を食べ始め、おばあさんの分を残しておいたところ、最後はおばあさんが食べ始めたそうです。
私は以前にも、アラブ人からアラブの文化と日本の文化が似ていると言われたことがあります。なぜそう思うかを尋ねると、たいていは、家族を優先する点、人間関係でビジネスをする点、年上の人を敬う点、それにこの女性の話にも表れているように、自分のニーズを非常に間接的に表現する点といった答えが返ってきます。
ならば、アラブのビジネス文化に日本人が適応するのは簡単かと思うかもしれませんが、実際には、ドバイに駐在する日本人の多くが直面する問題が2点あります。第一に、ドバイ自体が世界で最も多文化な都市のひとつであることです。人口の88%が外国人なのです。ほとんど全員が就労ビザで働いていて、永住権は持っていません。ですから、私のワークショップに参加する日本人駐在員も、ヨーロッパからインドからレバノンまで、きわめて多国籍の部下を持っています。
第二に、グループ志向ということは、内と外を明らかに区別する意識を持っていることを意味します。ドバイの駐在員にとって、ドバイ社会で「インサイダー」になることは非常に困難です。例えば、アラブのビジネスピープルの間では、ラマダンの間に顧客の家を訪問して断食を終える夕食を共にするのが慣習になっています。アラブの文化では、おもてなしが非常に重要な価値観なのです。しかし、アラブ人でない人が顧客の家を訪問するというのはとても勇気がいることであるのは、容易に想像できます。
ですから、日本企業は、若いアラブ人の大卒者を雇い入れてトレーニングとキャリアパスを提供するという、賢明な方法を選んできました。しかし、アラブ人にも驚くほど多様性があります。おばあさんの話をしてくれた女性はスカーフで頭を覆っていましたが、その隣のやはり若い大卒女性は伝統装束のアバヤを着て、でも長い髪を出していました。インターナショナル・スクールで教育を受けてきた彼女は、私がアメリカの価値観を説明した時に、むしろ自分の価値観に近いと言っていました。
この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。
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