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イングランドでソーシャル・ディスタンスの制限がほぼすべて解除されたのを受けて、都市に生じた変化が見え始めました。これらの変化が恒久的なものかどうかを考えてみましょう。
一部のトレンドは、昨年3月よりも前から明らかに観察されていました。例えば、大型チェーン店の多くは、過去何年にもわたって業績不振でしたが、今や閉店に追い込まれました。新たに小規模な店が開店していて、主に家庭用品やテイクアウト・フードを販売しています。
レストランやパブも営業を再開しましたが、多くが週に数日のみの営業です。人手不足が生じていて、スタッフを雇えないからです。コロナで仕事に戻ってきていない従業員がいるうえ、一部のレストランではEU諸国からの出身者がスタッフの半分ぐらいを占めていて、その人たちが本国に戻ってしまったためです。イギリス人の若者たちは、低賃金・長時間労働には興味がなく、飲食業界ではキャリアの展望が描けないと考えています。
もちろん、また外に出て飲食できることを人々は喜んでいますが、混雑した屋内の空間には不安も感じています。多くの都市がロックダウンの期間を利用して、「車通りの少ない地区」を設置することにしました。これまでは車が通行していた路上に植物のプランターや手すりを設置して道幅を狭め、カフェやバーが舗道にテーブルといすを置けるようにしたのです。
この方策は、必ずしも全員に歓迎されているわけではありません。路上駐車のスペースが減って、近くに車を停められなくなったため、かえって商売に響くという懸念があります。また、消防車や救急車が通れなくなって、緊急時に遠回りを余儀なくされるということも起きています。イギリスのお天気は屋外での食事には向いていませんが、イギリス人は意志が固いと見え、雨が降っても風が吹いても、温かい洋服を着込んでカフェが設置した傘やテントの下で飲食しています。
カフェ文化が出現して、イギリス各地の都市が大陸ヨーロッパの都市のような様相を呈しつつあります。不動産開発をしている人の話によると、このトレンドはコロナ前からあったそうです。この人は以前はナイトクラブのオーナーでしたが、ナイトクラブは衰退産業だと感じたそうです。スーパーで安価なアルコール飲料が売られていて、若者たちは自宅で「前飲み」してから外出するため、ナイトクラブの高いドリンクにあまりお金を費やしません。友達と集まるのなら、入場料金のないパブやカフェを好み、友達サークル以外の出会いを求めるのであれば、ナイトクラブよりも恋愛サイトに向かいます。
私の住んでいる市では、市議会が10年前に「夜間経済地区」と称して、あるひとつの通りにナイトクラブを集めようとしました。警察のパトロールがしやすくなるうえ、騒音を一地区に押さえ込めるという発想です。 私の家は、その通りからそう遠くありません。7年前にここに引っ越してきた時には、許可時間を過ぎてもあちこちから大音量の音楽が聞こえてくるという問題がありましたが、今ではそのナイトクラブのうち1軒がビーガンのレストランとなり、もう1軒はアパートへの改修工事中です。さらにもう1軒はサービス付きオフィスビルになっていて、1階にカフェが入っています。
この記事は帝国ニュースの2021年9月8日号に掲載されました)
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