最近になってビデオ会議に出席することが増え、その有用性に対する私の見方はポジティブな方向へと変わってきました。これには近年の技術改良が大きく影響しています。とはいえ、日本とのコミュニケーションにかけては、ビデオ会議がフェイス・トゥ・フェイスのミーティングに代わるまでには至っていません。
日本のように「高コンテクスト」な文化の出身者を相手にした遠隔コミュニケーションの問題点は、これまでにもよく指摘されてきました。このような文化の出身者は、ボディランゲージや沈黙、声のトーンなど、言葉ではない表現に頼ったコミュニケーションを好みます。一方、「低コンテクスト」の文化(米国、ドイツ、オーストラリアなど)の出身者は、明示的な言葉によるコミュニケーションを好みます。
であれば、高コンテクストな文化の相手と話す時こそ、フェイス・トゥ・フェイスの次に良いのがビデオ会議だと思えるかもしれません。実際、メールや電話より良いことは間違いありません。しかし、私のこれまでの印象では、効果はあるものの、定期的かつフォーマルな全体会議のようなミーティングに限られると言えそうです。
そのような状況ですら、問題点がいくつかあります。まず第一に、ネイティブの英語話者は、自分たちの話し方が相手にとって分かりにくいことを理解していません。カジュアルな会話のように、ウィットを効かせながら、時には文章が完結せずに終わったりする話し方です。このような話し方を続ければ、日本人側は「引いて」しまい、会議でよく見せがちな典型的な行動をすべて示すようになります。目を閉じたり、眉をしかめたり、あるいは互いにヒソヒソ話して理解や意図を確認する行動です。
この問題を解決するには、「インターナショナル」な英語を話すことです。短くて分かりやすい文章にして、説明を十分に加え、相手の理解を確認する質問を差し挟みながら、トピックのリストやスライドなど目で見られる資料を使って話を進めることです。
それでも、会議というものに対する期待の違いが、ビデオ会議の成果に影響することがあります。日本では、意思決定は公式な会議以外の場で下されます。提案をしたいと思っている人が、事前にすべての関係者に非公式に話をしておき、場合によっては企画提案書も共有して、関係各位から承認を取り付けます。そのうえで会議が招集されるため、会議は「ハンコを押すだけ」の場となり、確認報告や実施計画の策定が目的になります。しかし、欧米の文化では、会議とは、ブレーンストーミングをして意見の違いを収拾する場と見られています。
さらに、ビデオ会議では達成できない重要なコミュニケーションの側面があります。それが「インフォーマルな接触」です。日本では、交渉や信頼関係の構築といった作業の大半がフォーマルな会議以外の場、すなわち居酒屋、カラオケバー、レストランなどで行われます。これが悪名高き「本音と建前」の問題です。全体会議で発言されるオフィシャルな意見はありますが、本当のところを知るには、オフィスを出て1対1か数人のグループで話し合う必要があるのです。
フェイス・トゥ・フェイスのミーティングは、バーチャルなチームビルディングの初期の段階はもちろん、その後も時々は必要です。私自身も、過去何年もの間に幾度となく日本の仕事仲間とビールを共にし、信頼を構築してきましたが、電話で1対1で日本語で話しても本音を聞けないことが時々あります。この理由はそう難しくはありません。日本では社員が机を並べて座っているため、電話の声が周囲に聞こえてしまうのです。
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