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(帝国ニューズ・2024年2月14日・パニラ・ラドリン著)
この連載でポーランドについて書いてから3年以上が経ちました。当時は、ポーランドが「法の支配」をめぐるEUの原則に違反したとしてEUが資金を凍結しようとしている時でした。私がその時の連載で書いたことを要約すると、ポーランドは30年以上にわたり安定した経済成長を謳歌してきて、安価ながらも学歴の高い労働力があるため、日系企業にとって明らかに大きな魅力がある半面、法制度や国の省庁が安定しておらず、独立性と透明性に欠けているのであれば、長期的に十分な安定性があるとは言えないという内容でした。
それから時が過ぎ、昨年10月の選挙でドナルド・トゥスク氏が勝利して新首相に就任し、それまでの「法と正義」(PiS)政権から交替しました。トゥスク首相は2人の政治家を職権乱用の容疑で逮捕し、EUの資金凍結の解除に必要な司法改革を提案しました。
政治と法制度に不安定さがあるものの、ポーランドの日系企業約300社の社員数は安定的に増加していて、6万人以上に達しました。ヨーロッパではイギリス、ドイツ、フランスに次いで4位です。JETROの最近の調査*によると、ポーランドは日系企業からヨーロッパで最も有望な市場と見られていて、これは5年連続です。人口が比較的多いうえ、今も発展中の経済であることが、その要因です。
文化的にも経済的にもポーランドがヨーロッパにとって重要であることは、最近、ワルシャワとクラクフに出張してあらためて実感しました。社員数でポーランド最大の日系企業は住友電工、日本ガイシ、トヨタ自動車などのメーカーですが、サービス業の社員数も決して無視できません。私の出張の目的は、ある日系エレクトロニクス会社で最近設置されたシェアード・サービス部門に研修を提供することでした。シェアード・サービスという業務体制は、ヨーロッパの多国籍企業によく見られるモデルになっています。物流、人事、IT、法務などの拠点を3、4か国に置いて、そこからヨーロッパ全域のすべての事業部門をサポートする体制です。
クラクフへ行ったのは仕事ではなく、日本美術・技術博物館マンガ館を見るのが目的でした。マンガ館という名前の由来は、歌川広重などの日本美術を収集した19世紀のコレクター、フェリックス・ヤシェンスキのペンネーム「Manggha」です。ヤシェンスキはそのコレクションをクラクフの国立美術館に寄贈しましたが、そこで後に有名映画監督となるアンジェイ・ワイダがこのコレクションに魅了されます。こうしてワンダの寄付金によりマンガ館が設立されることになり、日本政府からも支援を受けて1994年に開館しました。
JETROの調査では、日系企業がポーランドの隣国ウクライナの再建支援にも強い関心を寄せていることが明らかになりました。ポーランドはウクライナの主権を支持していて、EUへの加盟もソ連崩壊以来、支持してきました。この2か国の関係は、2015年にPiSが政権に就いた後、いくらか悪化していました。ロシアによる侵攻が始まった時、ポーランドはウクライナに大きな支援を提供しましたが、ここ数か月間は緊張が再燃していました。EUと日本の両方にとっては、トゥスク新政権の誕生により緊張が解決されることが願われます。とはいえ、ロシアによるウクライナ侵攻が終息する見通しは今のところありません。
*https://www.jetro.go.jp/world/reports/2023/01/9692d660c7fb3d25.html
Photo of Manggha Museum – (Nemuri), Public domain, via Wikimedia Commons
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