This post is also available in: 英語
モロッコ政府によると、同国の外資系企業を国別に見ると、最も雇用件数の多いのが日本です。日系企業は75社あり、5万人以上の雇用を創出しています。この数は、今後数年以内にさらに増えるでしょう。2022年4月、日本とモロッコの間で投資の促進と保護、および二重課税の廃止に関する協定が発効したためです。
これまでは、この種の協定がなかったことから、モロッコにある日系企業の拠点は、フランス、スペイン、ドイツの子会社の支店という位置付けでした。社員数が多い企業のほとんどは自動車関連業界で、住友電気工業と矢崎総業に約3万人が雇われています。住友電工は、モロッコに8つの工場を持っていますが、ウクライナの生産を移転するため、これを増やす計画です。矢崎は、90億円を投資してモロッコの生産量を25%増とする計画で、新工場の建設も予定しています。フジクラも、モロッコの工場を稼働させようとしていて、やはりウクライナの生産を移転するためです。
ルノーとステランティス(プジョー)は、モロッコに組立工場を持っていて、モロッコがアフリカ最大の乗用車輸出国になるのに貢献しています。その80%はヨーロッパで販売されていて、主にフランス、スペイン、ドイツ、イタリアですが、EUとの自由貿易協定に支えられています。
モロッコ政府は、現地調達を非常に重視していますが、同国で事業展開している外資系企業をインセンティブや課税の点でサポートしています。また、ルノーの工場があるタンジェとカサブランカを結ぶ高速鉄道をはじめとするインフラにも投資してきました。 モロッコの人件費はスペインの4分の1ほどで、東欧よりも低い水準です。
モロッコで成長しているのは、自動車産業だけではありません。NTTデータは最近、約2億円を投資して1,000人の雇用を創出する計画を打ち出しました。それに先立って、通信分野を担当する両国の大臣の間で覚書が交わされていました。モロッコ政府は、航空宇宙産業と再生可能エネルギー産業の投資の誘致にも熱心です。
モロッコ国王は、2011年のアラブの春以降、民主化改革を導入し、以来、穏健イスラム主義派が政権に就いてきました。しかし、この穏健イスラム主義政党は、昨年の選挙で惨敗しました。新政権は、独立国民連合(RNI)が率いていて、モロッコ実業界で大きな影響力を有するメンバーが含まれています。人権と表現の自由に関しては今も懸念があり、最近の取り締まりでジャーナリストが投獄されました。
日系企業の事業という点では、間違いなく楽観的なムードがあります。アフリカのジェトロが行った最近の調査でも、回答した在モロッコ日系企業の65%が*、事業を拡大する見通しだと答えました。市場規模、成長潜在性、それに社会と政治の安定性はいずれも、他のアフリカ諸国より高いスコアとなっています。 また、インフラの整備と人材確保のしやすさという点でも、モロッコは他のアフリカ諸国を上回りました。ただし、モロッコは英語圏というよりフランス語圏です。そのせいで、日本人駐在員が比較的少ないのかもしれません。
*これが書かれて以来、ジェトロの新しいレポートが出てきており、上記の記事が現在リンクされているが、モロッコでの事業拡大を期待している日本企業の数が 54.5% に減少したことを示している。 一方、モロッコは現在および将来の収益性でアフリカのトップの国の 1 つです。
Pernille Rudlin によるこの記事は、2022年6月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。
For more content like this, subscribe to the free Rudlin Consulting Newsletter. 最新の在欧日系企業の状況については無料の月刊Rudlin Consulting ニューズレターにご登録ください。