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昨年、新しい研修の案件を引き受けました。クライアントは日本のIT企業で、B2Bサービスのマーケティングに関する研修をオンラインで日本勤務の社員に提供しています。日本の時間に合わせなければならないため、かなり早起きする必要があるのですが、それ以外にも難しい側面を抱えています。
私はキャリアのほとんどをB2Bサービス業界の日本企業と英米企業、しかもマーケティングや販売の部署で過ごしました。ですから、この案件も私の専門にぴったりはまるのですが、実際にやってみて、営業やマーケティングのアプローチには日本と欧米で大きな違いがあることを今まで以上に痛感しています。欧米のメソッドは主に米国の慣行に影響を受けていて、アメリカ人は往々にして自分たちのやり方が世界標準だと考えるため、ヨーロッパの人は苛立ちを覚えることがあります。とはいえ、特にITのような業界では米国企業が強大な地位にあるため、それらと競争するには米国流の方法論を理解して使用する必要があります。
これら方法論の背後には様々な前提があり、日本の多国籍企業が使いこなすには、それらの前提を表に出して疑問を解決する必要があります。
最初の前提は、顧客企業のターゲット層となる経営幹部を「Cスイート」または「CXO」(最高〇〇責任者)ととらえている点です。私の知るかぎり、日本でCEO、CFO、COOといった肩書き(最近ではCHRO、CDXO、CRMOなども)がある程度使われるようになってから、、10年ぐらいの歴史しかありません。代わりに、社長、副社長、専務、常務などがいて、たいていは常務が各事業部門の責任者です。ですから、日本では常務レベルの役職に「CXO」の肩書きが導入されてきました。
でも、常務と「CXO)」の間には単なる呼称以上の違いがあるように思えます。欧米における「CXO」の肩書きが真に意味するのは、その領域の専門家であることです。そして、意思決定と予算管理の最終権限を任されています。だからこそ、B2Bサービスを販売しようとする企業のターゲットになるわけです。
でも、伝統的な日本企業では、たいていの経営幹部は、特定の事業や機能の「畑」のなかではあっても、基本的にジェネラリストとしてキャリアを歩んできています。日本では財務・会計の資格を持たない人がCFOになっていたり、人事やマーケティングを補助部門と見なして、あまり戦略的にとらえていなかったりするのを見て、欧米の人たちは驚きます。部門長は予算承認の権限は持っているかもしれませんが、承認内容のほとんどは根回しや稟議のメカニズムで下から上がってきたことであって、戦略として掲げたことではありません。
日本の多国籍企業を主な取引先にしてきた日本のサプライヤは、これまでグローバルなマーケティング手法に精通する必要はありませんでした。しかし今では、日本の多国籍企業もグローバル化およびローカル化しているため、日本人以外が「CXO」に就いていて、この種の人材登用が日本の本社でも起こり始めています。ということは、これからしばらくは私も早起きして、日本の社員にマーケティングの研修を提供することになりそうです。
Pernille Rudlin によるこの記事は、2023年2月の帝国データバンク ニュースに最初に掲載されました。
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