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最近、日本の自動車会社のために開催したオンラインの研修に、エジプトからの社員が数人参加していました。これは、コロナ後の世界の利点のひとつです。研修がオンラインで行われるようになったため、西欧の地域本社に出張するのが難しい人たちも、教室形式の研修に参加できるようになりました。ただし、技術的な問題はまだ残っています。エジプト人の参加者の一人はシニア・マネージャーで、他の参加者と共有できる優れた洞察を持っていましたが、音声の品質が悪くて、よく聞き取れませんでした。
ですから、アフリカに事業拠点のある日本企業を対象としたJETROの最近の調査で、エジプトに投資する魅力としてインフラの充実が挙がらなかったのは驚きではありませんでした。むしろエジプトの魅力は、市場規模と成長潜在性にありました。人口が1億人を超えていて、世界最大のアラブ国家、かつアフリカで3番目に大きい国です。
この調査の回答者は、政治の安定性という点でもエジプトを比較的高く評価していました。現在のアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領が2013年にムハンマド・ムルスィー大統領を解任に追い込んでから状況が改善し、2021年に非常事態宣言が解除されました。ただし、現在も軍政で、様々な人権の懸念があります。他のアラブ国家は、ムルスィー氏の解任以来、エジプト経済を支えてきました。ムルスィー氏の時代には、同氏がムスリム同胞団のメンバーであることを理由に反対していたのです。
ムスリム同胞団のルーツは、第二次世界大戦前にまで遡ります。イスラム教の宗教的・政治的・社会的な運動としてエジプトで創始され、19世紀からのエジプトのイギリス支配に反対してきました。この占領の結果としてエジプトでは英語が広く話されていて、特に管理層では浸透しています。
しかし、エジプトを魅力的な投資先として安易にとらえるわけにはいかないことを、私は自分の家族の歴史から学んでいます。スカンジナビア航空に勤めた祖父は、1950年代にカイロに駐在していました。使用人や料理人のいる贅沢な暮らしを2年ほど送った後、スエズ危機が発生し、ヨーロッパからの他の駐在員の救出活動を取り仕切る立場に立たされました。その前にも、イギリス人や他の外国人がよく出入りする建物でムスリム同胞団のテロ行為が起こっていました。
近年には、外国人を狙って断続的に起こるテロ行為のせいで観光業に影響が及んでいました。そして今は、重要な収入源となっていたロシアとウクライナからの観光客が失われています。また、ロシアとウクライナは、世界の輸出小麦の4分の1以上を供給していて、ヒマワリ油は世界供給の約80%を占めています。このため、小麦と調理油の価格が高騰し、これがエジプトに大きく響いています。エジプトは世界最大の小麦輸入国で、人口の3分の2が公的補助制度を通じてパンを購入しているからです。ヨーロッパ・中東・アフリカ地域の国々の絡み合う歴史は、絶えず進化を続けています。
(この記事は帝国ニュースの2022年5月11日号に掲載されました)
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