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今からちょうど25年前のことです。勤めていた日本の商社の東京本社へ出張して、洋上風力発電についてのプレゼンテーションをしました。欧州のこのセクターに投資すべきだと提案したのですが、あまり賛同を得られず、がっかりしたことを覚えています。
当時の主な課題は、洋上の風力タービンを電力系統に接続するコストが高いことでした。それでも私は、長期的にはコストは下がると確信していましたし、このような再生可能エネルギーの高価値なインフラ開発プロジェクトにこそ、日本の商社は投資すべきだと感じていました。
あれから25年、イギリスの洋上風力発電に対する日本の約180億ポンド(約3兆円)の投資が主に日本の商社で構成されているという最近のニュースを読んで、心が晴れた気分になりました。これは必ずしも「新規」の投資ではなくて、日本の商社は10年ほど前からイギリスの洋上風力発電・送電施設に投資してきました。
とはいえ、日本企業は欧州の風力発電市場に遅れて参入したと見られていて、少なくとも風力タービンの供給に関しては、そうした見方が一般的です。デンマークのオーステッドとベスタス、ドイツのシーメンスといった欧州企業がリーダーと認識されています。ですから、多くの日本企業が外国企業と提携していて、また日本風力発電協会に加盟している542社の多くが日本以外に本社を有する企業であるというのも、驚きではありません。
風力タービンの世界販売高に占める日本企業のシェアは決して高くないけれども、精密機器や電子機器をはじめ、風力タービンの部品供給という点では日本が重要な地位を占めていることは、日本風力発電協会も指摘しています。部品業界の企業が現時点で欧州に事業拠点を持っていないとしても、近く開設されるようになると私は予測しています。日本企業による投資は、日本のサプライチェーンを連れてくる傾向にあるからです。
ただし、1970~80年代とは異なり、今回は国内企業を優先するということにはならないように思われます。再生可能エネルギーは世界規模の課題であって、協業的に迅速に行動して、互いから学ぶ必要があるからです。
とはいえ、残された課題はなおも非常にローカルな性質の課題です。イギリスの洋上風力施設のほとんどは北海にあり、国の東海岸です。私も東海岸に住んでいますが、地元住人が声高に反対キャンペーンを展開しています。洋上風力施設からの送電網が美しい田園風景を貫いて敷設されることや、変電所が住宅地の近くに置かれることに対する反対です。そのせいで最近の選挙では、多くの地元代議士が敗北を喫しました。
もうひとつの課題は、欧州全域に共通することですが、国の電力系統への接続が不足していることです。なかには5年、10年待ちというケースもあります。EUが電気自動車への切り替えを推進していて、ドイツではガス暖房を禁止するという賛否両論の法案も提案されるほど、各地で電化の動きが盛んになるなか、機器や接続よりも電力系統のほうがボトルネックになっているのです。日立がABBの電力システム事業を買収したことで、エネルギーチェーンのこの部分にも日本の投資がもたらされています。
帝国ニューズ・2023年7月12日・パニラ・ラドリン著
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