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「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカーが、 かつてこう言いました。日本のビジネスピープルは、問題点を正しくとらえる傾向にあるが、誤った答えを出すことがある。一方の欧米人は、たいていは正しい 答えを出すが、答えるべき質問が間違っていることがある、と。これは、日本人は解決策へと話を進める前に問題を定義するのに多大な時間を費やし、欧米人は きわめて迅速に、おそらくは迅速すぎるほどに、問題だと思う点を何であれ修正しようとするということを説明した発言でした。
企業のグローバル化という点では、日本企業による向こう見ずとも言える対策が導入されてきました。その目的は社員をグローバル化することにあり、たいてい は英語を話すことに特化したものです。昇進に際してTOEICの点数を条件のひとつにしたり、英語を社内公用語にしたり、あるいは一定レベルの社員全員を 海外に派遣して英語学習させるといった対策です。これはまさに問題点を正しく分析した結果だと思います。日本の多国籍企業は、今後も成長を続けていこうと 思うのであれば、グローバル化を進める必要があります。それには海外で事業開発して管理していく能力が必要とされ、これは究極的に人材開発の問題です。
でも、海外で事業を開発・管理する能力が全員に英語を話させようとする一律の規則で実現するかどうかは、私は確信できません。日本マクドナルド会長の原田泳幸氏は最近、日経ビジネスオンラインの取材で次のように語りました。 「日本語で考えているのであれば、日本語で話せばいい。英語で考えているのであれば、英語で話せばいい。日本語で考えて英語で話したり、英語で考えて日本 語で話したりすれば、相手に理解されないだろう」。私が思うに、原田氏の言いたかったことは、語学力があることが必ずしも有効にコミュニケーションするた めのバイカルチュラルな理解を意味するのではないということではないでしょうか。バイカルチュラルな理解がなければ、海外の顧客に対するマーケティング訴 求も成功しないし、本社が正しい意思決定を下すのにどのような情報を必要としているかも分からないことを意味します。
かねてから日本企業は、そのようなバイカルチュラルな理解を持つうえで必要とされる海外在住経験のある日本人の大卒者採用には積極的ではありません。しか も、海外留学を志望する日本人の学生は減っています。現在の雇用環境で留学すれば、新卒採用の就職活動のタイミングを逃し、内定をもらえなくなるという恐 怖感があるためです。
私の以前の勤め先のある日本企業は、留学経験者を対象とした別枠の採用プロセスを設けて、このハードルを乗り越えようとしました。ただし、これが正しいアプローチかどうかは分かりません。こうして採用された社員は特 別視されてしまい、日本の大手企業では、どんな意味でも「スペシャリスト」とされると、主流から外れてしまう傾向があるためです。この企業は、今では内定 を出すスケジュールを遅らせて、留学経験者かどうかにかかわらずすべての学生が、就職活動よりも本業の学問に集中できるようにしていると思います。これは 正しい方向性と言えるでしょう。全員に一律の規則をあてがうのではなく、柔軟性と多様性がグローバル企業では標準となるべきです。
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