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私の顧客である日系企業の多くは、地球規模の戦略のもと、マーケティングや人事分野で海外支店の社員の積極的な参加を推し進めています。今の経済状態の中 でこのように将来的な動きを目にするのは素晴らしいことですが、同時に実際にこうしたプロジェクトに関わっているヨーロッパの社員の声に、あれと思うこと もあります。
通常、日系企業で意思決定についての話題になると、根回しを理解しようという方向に話が進みます。しかしながら、合意を基本とした意思決定は日系企業が得 意とするものではないという事を申し上げておきたいと思います。欧州の多くの国・企業文化では日本のような上意下達の指示系統よりも、何らかの合意に基づ くアプローチを好むところが多くあります。ところが地球規模の戦略において日本を交えるとなると、そのようなやり方に消極的な日本側が消極的な姿勢を示す 場合があるようです。
ある英国人のダイレクターが、日本人チームに新しい業務手順について何らかの提案をするよう指示した時のことです。その時のチームが当惑気味だったので、 彼はあくまでも参考のために自分のアイディアを書き出して見せてみたのですが、結局のところ、日本人チームから戻ってきた提案というのは、ダイレクターが 書き出した大まかなアイデアを単になぞっただけのものであったそうです。彼曰く、欧州人のチームに同じ様な提案を求める時であれば、当然よりよく練られた 答えを持ってくることが期待されます。彼らの方が現場をよく把握している訳だし、出来る事・出来ないことの見極めが出来るはずだからです。また、別の英国 人のマネジャーによると、日本人のマーケティングのスタッフと新しいブランド戦略について定期的な会義をしようと提案すると、それよりも、「何を広告に入 れるべきか、欧州チームが指示してくれれば、その通りにしますから。」という肩透かしを食らうような返答を受けたそうです。
なぜこういうことが起こるのかというと、真っ向から英語で議論したり摩擦を起こすことを避けたいという考えを日本人スタッフが持っているという可能性が挙 げられます。もう一つ私が感じるのは、そもそもがグローバル化を目的としていて、おまけにマーケティングとか戦略の専門用語が日本人には聞きなれない英語 の言葉であるので、日本人社員は自分の専門外の分野として、「西洋人のチームに任せしてしまおう」と思ってしまうのではないでしょうか。
ところがこの姿勢こそが、欧州のマネジャーは、この姿勢を問題視します。文化的に繊細な問題であることを充分わきまえた上で新しい構想を立てようという 中、今日のグローバルな動きは西洋だけでなく、中国やインド、その他多くのエリアを含んでいます。欧州のマネジャーが日本人同僚に求めるのは、アジア諸国 への理解が西洋よりも深い日本だからこそ、グローバル化へ積極的に働きかけることができるのではないかという事なのです。
ではどうしたら日本人社員が自信を持って議論できるようになるでしょうか。例えば、コーチング形式はどうでしょう。この方法は私がこれまで仕事をしてきた 多くの日本の方にしっくりくるようでした。コーチングは、公の場で相手に反対意見を述べる通常の議論でなく、聞き手が話し手に対して、今発言した内容の問 題点に自ら気づくような質問をしていく、というものです。それによって、直接的に聞き手が話し手に問題点を指摘せずにすみます。
一方で、日本人のマネジャーは日本流グローバル化のリーダーとしてもっと自信を持つべきだと思うのです。ひょっとしてひょっとしたらその日本的手法こそが、これまでの西洋的手法より成功するかも知れないのですから。
パニラ・ラドリン著 Nikkei Weekly 2009年10月26日号より
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