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昨年12月、1年半ぶりに日本へ行ってきました。通常は年に1度は日本へ行き、微妙な変化を観察するようにしています。日本に住んでいた期間を含め、過去40年にわってこのような観察を続けてきました。
今回は、日本が少し「元気さ」を取り戻しているように感じられました。2011年と2012年に訪れた時は、全体として陰うつなムードが漂っているように見えたものです。しかし同時に、東京が「スロー」になったようにも感じられました。高齢者の割合が高まっているのは見た目にも明らかでしたが、若者も歩き方が遅くなっていました。スマートフォンを見ながら歩いていることも一因だったかもしれません。
日本の「やさしさ」や文化的な豊かさは、年を取る場所として理想的な国を作り上げています。もちろん、今の高齢者が幸運な時代の高齢者であることは事実です。年金をそこそこもらえて、健康でもあり、長生きを楽しめるからです。
一方、私の世代は、日本だけでなくヨーロッパの多くの国でも、70歳まで引退できないのではないかという見通しに直面しています。少なくともあと20年は働くことになるのです。今やヨーロッパでは、年齢を理由に従業員を差別することは違法です。このため、65歳で自動的に定年退職になるという制度は、イギリスでは廃止されつつあります。
現在50代に差しかかりつつあるヨーロッパの世代は、前の世代のように引退する余裕を持てないでしょう。でも、会社に勤め続ければ、若い世代の行く手を阻んでいるような罪悪感を感じさせられるうえ、リストラの対象になる可能性も多々あります。50歳を過ぎた社員にとって、転職先を見つけるのは容易ではありません。それに、意欲の問題もあります。これから先20年にわたって同じ仕事をし続けるという展望は、特にプレッシャーのきつい、いわゆる現場タイプの職種では魅力的とは言えません。仕事人としての人生の後半は、習得したノウハウや知識について熟考し、次の世代に引き継いでいくことが中心になるべきです。
日本で1990年代から使われてきたやり方、例えば肩たたきや窓際族などの処遇が、この状況に真に対応できていたとは思えません。こうした処遇は、受ける本人にとって苛酷なだけでなく、その反応としてリスクを嫌うようになった若い世代にとっても、好ましいやり方ではありません。若い世代は終身雇用を望んでいますが、野心的な目標を追求したり、外国で働くなどのリスクを取ったりすることには、あまり意義を感じていません。
むしろ好ましいやり方は、仕事人生の後半に突入した従業員が、蓄積したノウハウやスキルを集大成としてまとめあげ、管理職としてではなく教育や研修の機会を通じて日本の若い世代に伝えていく方法を見つけられるよう、サポートすることではないでしょうか。海外で買収した企業の現地採用社員や現地採用管理職も、日本の本社との強力なつながりを感じさせてくれるメンターを付けてもらい、会社の文化や業務手順の理解を導いてもらえるのであれば、歓迎するはずです。先輩・後輩の人間関係や見習い制度といった伝統を21世紀に応用することができれば、日本は、人にやさしく、かつ生産性の高い高齢化社会を創造するパイオニアになれると、私は考えています。
パニラ・ラドリン著 Teikoku Databank News 2014年1月15日号より
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