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ヨーロッパでは「討論」がとても重要

フランス人のマネージャーから最近こんな不満を聞きました。彼の会社の欧州本社はオランダにあるのですが、そのマネジメントチームの会議に出席すると、出席者は大半が日本人の在オランダ駐在員で、彼が発言するまでもなく、すでに決定が下されているのだそうです。

このような不満は、私たちがヨーロッパの日系企業とかかわってきた過去12年の間にも何度となく耳にしてきました。日系企業で現地採用社員が増え、ヨーロッパ出身者が高い役職に就くようになったのを受けて、状況が改善することを私は望んでいましたが、実際には現地採用管理職と駐在員管理職のコミュニケーションギャップは広がっているように見えます。現地採用の管理職者は、日本の本社で下される意思決定から阻害されていると感じています。

私はヨーロッパ出身のマネージャーに対して、意思疎通と人間関係を改善する3ステップのプランを提案しています。1にPeople、2にProcess、3にParticularsの3Pです。Peopleというのは、「人と人」の関係を日本人の同僚と作る必要があるということ。これには、ヨーロッパ拠点と日本の本社の両方が含まれます。もちろん、出張経費や駐在員の頻繁な入れ替わりなどの問題はあります。でも、根回しのプロセスに入ろうとするのであれば、お互いへの信頼感は必須です。

Processとは、根回しのプロセスをもっと明瞭にして、会議の目的(情報交換、話し合い、意思決定など)を明らかにする必要があるという意味です。そしてParticularsは、リスクを嫌う日本の幹部を説得するには詳細な情報やデータが必要だということを、現地採用のマネージャーが理解しなければならないという意味です。

でも、これは片側の努力でしかありません。日本からの駐在員は、欧州の子会社で起きていることを日本に報告することだけが仕事ではないと認識する必要があります。本社の企業風土、意思決定や戦略を伝え、ヨーロッパのスタッフが自分も大きな会社の一員であると感じられるようにしなければなりません。

日本人駐在員に対しては、1にDebate、2にDistil、3にDisseminateの3Dを勧めています。ヨーロッパの人たちは、ディベート(討論)が大好きです。意見を言うことで、自分が尊重されていると感じるのです。それにディベートは、日本から送られてくる意思決定の背景や論理を説明して、ヨーロッパの人たちに会社の方向性を説得するチャンスでもあります。

Distilは「蒸留する」という意味ですが、ここでは会社の戦略や企業理念、意思決定を明瞭・簡潔にまとめることです。日々の業務行動を判断する際の「礎」となるもの、すなわち「行動可能」な情報にまとめることが重要です。

Disseminateは情報を伝播し広めること。具体的には、前のステップで明確に打ち出した戦略、企業理念、決定を欧州全域の社員に伝えるため、実践的なステップを踏むことです。会社が大陸欧州に典型的なヒエラルキー組織の場合は、正しい命令系統を通じて情報を流す必要もあるかもしれません。または、ワークショップを使って社員にオーナーシップ意識を植え付け、戦略や企業理念が自分の仕事にどう関係するかを理解できるようにするのも、ひとつのやり方です。さらに、最初の2つのDがすでに行われたのであれば、ミーティングを増やして、今度こそは出席者全員が結論を受け入れやすい環境にすることができるでしょう。

Pernille Rudlin著 帝国データーバンク・ニュースより

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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4月1日は出発の日、でも暗い底流にご用心

日本企業のカレンダーで最も重要な日が近付きつつあります。それは4月1日。ほとんどの日本企業では、この日に新年度が始まるだけでなく、異動や再編の重大発表がすべて行われ、そしてピカピカの新入社員がプロパー採用のサラリーマン、サラリーウーマンとして初日を迎えるからです。

おかげで3月は不安に駆られる1か月となります。赤丸上昇中は誰か、衰退下降線は誰か、新社長のお気に入りとなるのは誰か、どの派閥がどのバトルに勝ちつつあるか、そんな憶測と情報のリークが飛び交うからです。

私のトレーニングに参加するヨーロッパ出身の社員が、日本企業はヨーロッパの企業に比べて社内政治が激しくないように見えて新鮮だという感想を述べるたびに、私はあまりシニカルになりすぎないようにしています。言うまでもなく、3月(やその他の季節)を覆うムードの底を流れる潮の満ち引きに気付かないまま過ごすことは、とても容易です。けれども、日系企業に長く勤めている社員は、うかつにしていると4月になってその暗い底流に足元をすくわれかねないことを、よく知っています。

日系企業で働いていた時、私はこの「クレムリン」風の政治分析のアプローチをちょっとやりすぎていたかもしれません。自分と接点のあった人たちを漏らさずスプレッドシートに記録して、入社年、役職と等級、その他の気付いた点などをすべて書き込んでいたのです。このファイルを毎年4月1日に入念に更新して、好成績を上げた人には称賛の言葉をメールで送っていました。

でも、これが必ずしも突飛な行動ではなかったことが明らかになりました。日系企業に長く勤めているイギリス人の知り合いにこの過去の秘密を打ち明けたところ、その彼も同じようなスプレッドシートを勤続20年にわたってずっと更新し続けていて、リストがあまりにも大きくなったのでプリントアウトして自宅のガレージの壁に貼ったという話をしてくれたのです!

日系企業で働く別のイギリス人のエグゼクティブから、自分の右腕となる役職に誰を選ぶべきかについてアドバイスを求められて、完全に日本の政治モードに入ってしまったこともありました。候補者の年齢、新卒入社だったかどうか、誰がスポンサーやメンターになっているか、もともとどの事業部門の出身だったかなどを、すぐさま聞いてしまったのです。そのエグゼクティブは、私の質問にほとんど答えられなかったばかりか、これらの点にはまったく関心を寄せていませんでした。彼が主な基準としていたのは、今のチームで良い業績を上げているかどうかでした。

これはかなり新鮮でした。日本企業ではしばしば、出身の部署が悪かったり、悪い派閥に属してしまったり、また過去に過ちを犯してしまうと、それがたとえ善意に基づくものであっても、取り返しがつきません。少なくとも欧米人のマネージャーは、成績の悪い社員を切る際は容赦がない一方で、多くの場合(常にではありませんが)、過去のキャリアに関係なく成績を上げた社員に報います。

日本企業が真にグローバル化して外国人幹部に人事の采配を握らせるようになれば、人脈が厚いだけで成績は振るわない社員には、はるかに居心地が悪くなることでしょう。逆に、自分のキャリアは終わったと思っていた社員に新たな活路が開かれるかもしれません。

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風にかざす指、月を指し示す指

多くの日本企業では、今年度の最終四半期を迎えています。目標値に達することは言うまでもなく、現在の戦略が正しい戦略であることを裏付ける確たる証拠を示す必要があるという点においても、前の3期に比べて切迫感のある四半期となることが予想されます。現在の戦略が正しくないのであれば、年度業績を発表する4月末までに何らかの抜本的な改革案を経営トップに示す必要があるでしょう。

年間のサイクルではお決まりのことですが、2013年は今まで以上に危機感が強くなるのではないかと、私は予想しています。多くの日本企業は、世界市場における存在そのものが問われていて、現在の円安は一時的な休息を提供するものでしかないと感じているからです。
ボトムアップ方式で積み重ねるいつもどおりの中間期計画、すなわち前年の売上高と顧客のヒアリングに基づく予測、さらに「指を風にかざす」式の予測を数枚のA3紙にまとめたものでは、今年は通用しないと思われるのです。

一部の企業では、抜本的なリストラ計画が今後発表されるか、あるいはすでに発表されています。しかし、こうした計画の背後には、そもそもなぜ会社が存在するのかという巨大な問いが今も積み残されています。ほとんどの日本企業はこの問いをきわめて真剣に受け止めていますが、その理由は、単に社員を雇用し続けるだけでなく、未来の世界にポジティブなインパクトをもたらすことによって社会に貢献することが、会社の根源的な存在価値であると信じているためです。

これはすなわち、ビジョン、価値、企業文化といった厄介な領域に足を踏み入れなければならないことを意味します。日本企業はこれらのことを日本語で顧客や社員に伝えることは上手ですが、国外では決して得手でないと、私は考えています。
これらのことを伝えるには言葉や数字だけでは十分ではなく、ストーリーやヒーロー、そして芸術品が必要とされます。日本企業はこうした財産をたくさん持っていますが、問題はそれをどのようにしてグローバルに伝えるのかです。

その良い例に、カーオーディオなどを製造するアルパインがあります。現会長の石黒征三氏は、米国法人の代表を務めていた時代に、製品に不満を抱いた米国の顧客が拳銃で何度も打ち抜いたカセットデッキを送り返してきたことがあったという話を、今でもよく口にします。このカセットデッキは、今ではアルパインの博物館に展示されていて、世界市場でアルパインが生き残れたのは可能かなぎり最高の品質にこだわって顧客満足を最大の目標としたからこそであるという教訓を象徴する存在となっています。

これは非常に明確な芸術品、そしてストーリーです。これほど明確ではないけれどもやはり好例と言えるのが、出光興産の創業者、出光佐三氏が19歳の時に古美術品の売り立て会場で購入した「指月布袋画賛」です。出光氏は、「布袋の指」(細かいこと)ではなく「月」(大きなこと)を見るようにと社員にしばしば諭しました。すなわち、出光という会社は、営利のためだけでなく社会に益をもたらすために石油事業を営んでいるのだという意味でした。

この指月布袋画賛に描かれているのは、布袋の姿だけであって、月はまったく描かれていません。それはまるで、作者の仙厓義梵が絵を見る者に自分で月を見つけよと諭しているかのようです。日本企業にとっての課題は、この種の深遠な意味が外国語に転じる過程で失われないようにすることでしょう。

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真のグローバル本社が日本企業のグローバル化にとってベストの答えではないか

この連載の以前の記事で、ファーストリテイリングや楽天などの日本企業が英語を社内公用語にしたことについて触れました。これに対する反応として、日本人 社員の英語に対する態度を調査した様々な結果がメディアで取り沙汰され、なかには日本人の73%が社内公用語として英語を話すことは好まないという結果も ありました。

さらに、最近発表された産業能率大学による調査では、ビジネスピープルの67%が海外で働きたくないと思っていることが報告されました。これらの調査結果 を受けて、日本の評論家の多くは、グローバル化する世界に対して日本が消極的になりつつある全体的なトレンドを映し出していると結論しています。特に若い 世代が内向きかつ慎重になっていて、これが経済にマイナスの影響を及ぼすという懸念があり、これは日本政府も指摘しています。これらの反応を見て私が感じ るのは、日本人が自分たちに関する調査結果を苦悶するのがどれだけ好きかを示しているということです。特に、日本が他の国とは異なるという結果や、何らか の暗い見通しを示す結果が出ると、高々と警鐘が鳴らされます。

私の目には、この種のトレンドは、日本社会の特異性などではなく、むしろ経済要因に関係しているように見えます。戦後の数十年のように輸出主導で日本経済 を立て直そうといった切迫した気運はありません。終身雇用が徐々に廃れつつあるのを受けて、若い人たちの会社に対する忠誠心は薄れ、ゆえに会社が行けとい うならどこへでも行くという態度も希薄になりつつあります。

日本企業は過去20年以上にわたって、グローバル環境の変化に対応してきました。高くつく先進国への海外駐在員は減らして、現地採用の管理職者を登用し、その代わり資本と人材の投資を新興国へと向けるようになりました。

同じトレンドは、他の先進経済圏にも見られます。米国はかつて労働者の移動が盛んな国でした。仕事を求めて他州へ引っ越すことを厭わない人たちがたくさん いたのです。しかし明らかに、その傾向は薄れつつあり、失業率の問題が長引いているにもかかわらず、人口の流動性は下降気味です。一方、ヨーロッパの人 は、アメリカ人のパスポート取得率がわずか20%であることを何かと指摘したがりますが(イギリスでは70%です)、欧州内の移民の流れはほとんどが東欧 からであって、西欧からでないことは特筆に値します。

多くの日本企業は、消極的な日本人社員を海外に赴任させたり、英語を社内公用語にしたりするのではなく、アジアでの採用者を日本に転勤させ、また日本に留 学中のアジアからの学生を雇用するなどして、グローバル化を進めようとしています。おそらくこれらの社員に対しては、できるだけ日本社会に同化して、本社 の日本人社員に大きな影響を及ぼさないことが期待されているのでしょう。

とすれば、アジア以外の事業がますます日本およびアジアから切り離され、この2つの地域間で人の移動が起きることはほとんどなくなる可能性があります。急 進的かもしれませんが、それならば解決策は、日本人社員の大多数が日本国内市場に目を向けたいと思っている事実を受け入れてしまい、グローバル本社から日 本国内事業を切り離してしまうことかもしれません。このグローバル本社は世界のどこに置いても構いません。そしてもちろん、そこでの公用語はおそらく英語 になるでしょう。

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日本が「グローバル・スパナー」を歓迎すべき理由

先日、MBA課程で学ぶ日本人留学生のグループに対して、在外の日系企業で働くことについて話をする機会がありました。私はコミュニケーション問題につい て触れ、単に言葉の壁だけではなく、多くのことを暗黙の了解で進める日本のコミュニケーションスタイルが海外ではうまく伝わらないという問題があることを 説明しました。こうしたなかで、外国在住経験のある日本人のMBA取得者は、日本の親会社と外国の現地法人の異なるコミュニケーションスタイルのブロー カーとして存在価値を発揮できると、私は強調しました。

その後のディスカッションでは、なぜ日本の若者が留学や海外就職をしなくなっているかに必然的に話題が及びました。ある学生が言ったのは、外国に住んで日 系ではない会社に勤めた経験があるにもかかわらず、ひょっとするとそれゆえに、日本企業での就職ができないと感じているということでした。「私のような社 員がうまくやっていけると思ってもらえないのです」と、彼女は言いました。

会の終わりに一連の名刺交換をした際、この学生は、フェイスブックをやっているからぜひ見てくださいと言いました。これを聞いて私は、最近読んだある記事 に日本人のフェイスブック・ユーザーの多くが海外在住の日本人だと書かれていたことを思い出しました。私が思うに、欧米ではフェイスブックが友達との連絡 方法として一般的に使われているという事実もさることながら、長くにわたって母国を離れて暮らすような人は天性のネットワーカーである可能性が高く、ゆえ にソーシャルメディアにも積極的に参加する傾向にあるのではないでしょうか。

生まれ育った国を飛び出した人にとって、連絡を取り続けることは重要です。これは、母国にいる友達や親戚とだけでなく、新しい国で知り合った友達との連絡にも当てはまります。各地を転々としても、音信不通にならないようにするためです。

また、長い間外国に暮らした人は、社会学で言う「弱い紐帯」を厭わない傾向にあるのではないかと思います。弱い紐帯とは、友達でも親戚でもなく、知り合い という程度のつながりです。グリーやミクシィは日本で人気のソーシャルネットワークですが、最近の調査によると、これらのサイトのユーザーが友達としてつ ながっている相手は平均29人で、フェースブックの全ユーザーの平均130人に比べて著しく低いことが分かりました。

世界を股にかける「グローバル・スパナー」は、このような弱い紐帯をたくさん持っている一方で、緊密なグループにも所属していて、それらの間の架け橋とな ることができます。つまり、日本企業ではグローバル・スパナーが、日本の本社の同僚や海外現地法人の同僚と強い紐帯を持てる可能性があるのです。彼らの弱 い紐帯が他のグローバル・スパナーにつながっていれば、2つの内向きグループの間にコミュニケーションのラインを開くことができるでしょう。

ただし、以前のこの連載でも申しあげたとおり、日本企業の問題は、グローバル・スパナーのようなタイプの社員をしばしばアウトサイダーとして懐疑的な目で 見て、内輪のグループに入れようとしない点にあります。これは日本だけでの問題ではありません。アメリカのオバマ大統領は即座に同意するでしょう。けれど も、日本は特にその傾向が強いように見えるのも確かです。

ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング・ヨーロッパでは、PS Englishと協力して「ビジネスのためのコミュニケーション」というコースを提供いたします。オフィスや自宅、あるいはSkypeを介して、経験豊富 な講師との毎回1時間半のセッションを、10回または20回のシリーズで受講していただけます。日本人がビジネスの場面で英語を使うことについて、それに 必要な「筋肉」と文化について、あらゆる側面を取り上げるコースです。詳しくはこちらへクリック(日本語・英語pdf)お願いします。

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英語使用の義務付け

「経営の神様」と呼ばれるピーター・ドラッカーが、 かつてこう言いました。日本のビジネスピープルは、問題点を正しくとらえる傾向にあるが、誤った答えを出すことがある。一方の欧米人は、たいていは正しい 答えを出すが、答えるべき質問が間違っていることがある、と。これは、日本人は解決策へと話を進める前に問題を定義するのに多大な時間を費やし、欧米人は きわめて迅速に、おそらくは迅速すぎるほどに、問題だと思う点を何であれ修正しようとするということを説明した発言でした。

企業のグローバル化という点では、日本企業による向こう見ずとも言える対策が導入されてきました。その目的は社員をグローバル化することにあり、たいてい は英語を話すことに特化したものです。昇進に際してTOEICの点数を条件のひとつにしたり、英語を社内公用語にしたり、あるいは一定レベルの社員全員を 海外に派遣して英語学習させるといった対策です。これはまさに問題点を正しく分析した結果だと思います。日本の多国籍企業は、今後も成長を続けていこうと 思うのであれば、グローバル化を進める必要があります。それには海外で事業開発して管理していく能力が必要とされ、これは究極的に人材開発の問題です。

でも、海外で事業を開発・管理する能力が全員に英語を話させようとする一律の規則で実現するかどうかは、私は確信できません。日本マクドナルド会長の原田泳幸氏は最近、日経ビジネスオンラインの取材で次のように語りました。 「日本語で考えているのであれば、日本語で話せばいい。英語で考えているのであれば、英語で話せばいい。日本語で考えて英語で話したり、英語で考えて日本 語で話したりすれば、相手に理解されないだろう」。私が思うに、原田氏の言いたかったことは、語学力があることが必ずしも有効にコミュニケーションするた めのバイカルチュラルな理解を意味するのではないということではないでしょうか。バイカルチュラルな理解がなければ、海外の顧客に対するマーケティング訴 求も成功しないし、本社が正しい意思決定を下すのにどのような情報を必要としているかも分からないことを意味します。

かねてから日本企業は、そのようなバイカルチュラルな理解を持つうえで必要とされる海外在住経験のある日本人の大卒者採用には積極的ではありません。しか も、海外留学を志望する日本人の学生は減っています。現在の雇用環境で留学すれば、新卒採用の就職活動のタイミングを逃し、内定をもらえなくなるという恐 怖感があるためです。

私の以前の勤め先のある日本企業は、留学経験者を対象とした別枠の採用プロセスを設けて、このハードルを乗り越えようとしました。ただし、これが正しいアプローチかどうかは分かりません。こうして採用された社員は特 別視されてしまい、日本の大手企業では、どんな意味でも「スペシャリスト」とされると、主流から外れてしまう傾向があるためです。この企業は、今では内定 を出すスケジュールを遅らせて、留学経験者かどうかにかかわらずすべての学生が、就職活動よりも本業の学問に集中できるようにしていると思います。これは 正しい方向性と言えるでしょう。全員に一律の規則をあてがうのではなく、柔軟性と多様性がグローバル企業では標準となるべきです。

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日本の本社からの情報欠如を解決するプロセス

先の日本出張で、ある日本の顧客企業からもろもろの文書を託されて帰ってきました。ようやくすべてを翻訳し終えて、その会社のしかるべき海外事業部門に転送したところです。翻訳に時間をかける前に、日本以外の事業部門にこれらの文書の内容がすでに伝わっているかどうかを顧客に聞いてみたところ、伝わってはいないけれども、これらの文書の内容は「きわめて重要」とのことでした。

これは、日本企業の海外事業部門が不満に思う点として幾度となく指摘されている問題です。日本から十分な情報が提供されず、その状況があまりにもひどいため、日本側が故意に何かを隠しているのではないかとすら疑い始める事態が見られます。

日本人社員の間に情報を渇望する姿勢があることについては、この連載で以前に言及しました。日本では、暗示的な知識共有によって、その渇望が部分的に満たされています。オフィス空間に間仕切りがほとんどなく、同僚が机を並べて何年も一緒に働きます。しかも全員が日本語を話す環境ですから、フォーマルに明示的なコミュニケーションを行う必要はありません。よりフォーマルな形式のコミュニケーション方法も、ほとんどの部署に存在します。週間報告書や月間報告書、さらには多くの人が忌み嫌っているA3サイズの計画書や稟議書が、多くの人に回覧されています。

しかし問題は、これらがすべて日本語であることです。これを英訳する面倒な仕事は誰もやりたがりません。もっと優先順位の高い毎日の業務を抱えているためです。翻訳会社に外注するのはひとつの方法ですが、重要な情報は何か、社内文書が真に意味するところは何かを見分けるために、インサイダーの目が必要になることも多々あります。

私自身が至った結論は、日本の事業部門と海外の事業部門の間に意識的なコミュニケーションのプロセスを導入する必要があり、それを誰かの職務責任として認識する必要があるということです。このポストに就く社員は、「海外」グループのような部署ではなく、実際の事業グループの一員であるべきです。さもなければ、情報の背景を理解することができないからです。そうした情報の機微こそが、海外の子会社が最も必要としている情報なのです。

そして、このプロセスの最後のパズルの一片が、組織図を作成して、どの部署とどの部署が、またどの社員とどの社員が「タメ」の関係にあるかを明らかにし、これらの部署同士、社員同士が情報共有する必要があると定めることです。これは、言うは易く行うは難しの作業かもしれません。私の経験によると、日本の大手企業のほとんどは、欧米の大手企業とは非常に異なる組織構造になっているためです。日本では、特定の地域や顧客セグメントを専門とする営業の責任者がいません。マーケティングの責任者もおらず、マーケティングの部署が独立して存在することも稀です。組織がきわめて縦型の構造になっているため、欧米の組織に見られる役職に似たグローバルな職権や機能的な役割を持った社員を見つけるには、各部署に深く踏み入る必要があります。

しかも、日本では個別の社員に対して職務内容を定めて文書化していることがほとんどないため、この作業をさらに難しくしています。とはいえ、しかるべき担当者とチームがひとたび確立すれば、日本以外からの情報を渇望する姿勢と海外の同僚のために役立つことで得られる満足感が、このプロセスを浸透させる要因となるでしょう。

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フランス

イギリス政府がEU以外からの移民政策を厳しくしていることで、日系企業のコミュニティはしばらくにわたって影響を受けてきました。来年5月の総選挙に向け、連立政府はイギリスへの移民を数万人単位で削減するという公約をどう果たすのか、その説明を迫られています。政府はEU以外からの移民はコントロールできますが、EU諸国から毎年数十万人とイギリスへ流入してくる移民はコントロールできません。労働力の自由な移動はEUの原則だからです。このため日系企業は駐在員のビザ取得が非常に難しいという状況に陥っています。

EU域内の労働力の自由な移動という原則をないがしろにしようとするのであれば、連立政権は、アンゲラ・メルケル首相が示唆したようにEUを離脱しなければならないかもしれません。EU支持派やイギリス実業界の関係者のほとんどは、EUの改革をさらに押し進め、全欧州にわたる人の移動の原因に対応することを望んでいますが、これは企業と労働の規制のさらなる調和を意味します。一方のEU反対派は、統一的な規制を課すことにはあまねく反対しています。また、フランスやドイツといった国の労働組合は、組合員の雇用保護を脅かしたり国の福利厚生を削減したりする改革には反対するでしょう。

例えば、ロンドンには30万人を超えるフランス人が住んでいると見積もられていて、人口で見れば6位のフランスの都市です。これは若い人たちがフランスでは恒常的な仕事を見つけられず、起業するのも難しいと感じているためだと、通常は説明されています。イギリスのほうがチャンスがたくさんあるのです。

私自身も今年に入ってフランスに事業を拡大したことで、イギリスの制度とは驚くほど異なるフランスの官僚主義と効率化への壁を垣間見ました。例えば、フランス企業に研修コースを販売するには、フランスの登録企業であり、かつ研修提供者として認証を受けた代理人を雇う必要があります。この代理人は、顧客企業にありとあらゆる書類を提出して、顧客企業が国の研修基金から研修税の還付を受けられるようにしなければなりません。このため、私の事業にもかなりの経費と時間が追加されます。

ある日本企業の人から最近聞いた話では、倒産しかかったフランスのソフトウェア会社を買収しようとしたところ、他の企業に買収されるよりもむしろ倒産することを、その会社の社員が選びました。その会社の社員は、倒産すればもちろん失業するのですが、その後も3年間は失業保険で給与の80%を受け取れるうえ、福利厚生もあり、住宅ローンも肩代わりしてもらえるからだそうです。

雇用を創出・維持して能力開発を支援するにはこうした規制や税制が必要だとするフランス流の見方も分からないわけではありません。でも、現実にもたらす効果と言えば、外国企業によるフランスへの大型投資に歯止めをかけることでしかありません。ですから、ビザの状況が厳しくなっているとはいえ、イギリスはなおも企業や個人が好んで選ぶ欧州内の行き先となっているのです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年12月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

2017年の「新たな目でフランスを見る」もご参照になります。

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情報への渇望が過剰に感じられることも

高校時代に日本の家庭にホームステイをしていた時、外出するたびにホストマザーから行き先を尋ねられたので、それに慣れる必要がありました。自分の家だったら、「出かけてくるね!」とだけ言って、すばやくドアを閉めていたことでしょう。自分の予定に親が介入するなどもってのほかだと思っていたのです。でも、日本のホームステイ先のホストマザーが私に行き先を尋ねる時は、「介入」などという隠れた意図はまったくなく、単に知りたいという気持ちで聞いているのであって、子供のことを気にかけている姿勢の表れにすぎないのだということを、私もすぐに学びました。

日本の企業社会では、隠れた意図は存在するものの、「情報があったほうがいいから情報を求める」という姿勢は続いています。日系企業で働いている日本人以外の社員から、日本人の同僚から聞かれる質問の数がとにかく多すぎるという不満をよく耳にします。重要とは思えないような詳細にまで踏み込んで質問してくるというのです。

こうした不満を口にする外国人社員は、答えれば約束したと見なされることを恐れています。計画の詳細を逐一説明する前に、事業上の理由を整理したり戦略を明確にしたりする余地を与えてほしいと感じています。あるいは、私が高校生だった時のように、何か思惑のある質問なのではないかと疑っているだけのこともあります。

こうした態度に対して日本人の社員が苛立ちを感じている様子も伺えます。彼らにしてみれば、詳細が分かり次第すべて把握して、日本の関係者に報告する必要があるためです。「海外」や「グローバル」の付く肩書きを与えられている社員は、海外事業部門で何が起こっているかを即座に回答できる必要があるのです。現地の市場や文化がどんなに複雑であるかは考慮されません。現地の「ネタ」、すなわち内部の実情に通じていることは、彼らにとって「通貨」に等しいのです。日本人は、どんなことにもうわべと実情があるという考え方に慣れ親しんでいるため、実情を知っていると称する人が実権と知恵のある人だと見なしがちです。

それとは対照的に、欧米人の多くは、自分に直接関係する世界以外のことに対して驚くほど無頓着です。米国的な経営を実践している多国籍企業は、明示的な知識に基づいて物事を進める傾向にあります。グローバルな管理職者に向けて配信される定期的なアップデートのほか、週1回の電話会議などを介して、設定した目標値をどれだけ達成したかが報告され、達成できなかった部分については議論が行われます。この結果、米国的な多国籍企業は、本社に通じる情報網としてあらゆる事業部門に駐在員を置かなければならないと感じている日本の多国籍企業と比べて、本社から海外事業部門に派遣される社員がはるかに少なくなります。

私自身は、日本人以外のスタッフが感じている懸念に同感する部分もあります。日本人の社員同士でカジュアルに共有されている情報は、日本のヒエラルキーで上申され既成事実となって海外のスタッフに降り戻ってくる傾向にあるためです。海外のスタッフは、その計画を約束した覚えもないのに、その未達成を指摘されてしまうのです。また、インフォーマルな情報共有のやり方に馴染んでいる日本の本社のスタッフは、海外の同僚に対して情報を明確に共有することをしません。

情報の流れがうまく機能するには、双方向でなければなりません。ということは、私も高校時代、ホストマザーに今日は何をする予定なのと聞いてみるべきだったかもしれません。私が気にかけていることが伝わり、喜んでもらえたことでしょう。

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沈黙は金なり

飯塚忠治(センターピープル代表取締役)

今 のお話からですと、英国人も日本人も個人の表現力が他の民族と比較すると少ないようですが、ここで本日の本題の【沈黙は金なり】=【 Silence is golden】 に付いてお話をお聞きしたいと思います。日本では「男は黙ってxxビール」とか言う広告のコピーがあったり、寡黙な人は知性もあり沈思黙考をすると言われ たり、不言実行、何も言わずともそれが深い意味を語り、相手にそれが伝わってゆく等々、沈黙はまさにこれらの諺の表わすとおり、価値のあることでポジテイ ブに捉えられていますが。

パニラ・ラドリン

そうですね、今のお話から言えることは、前回のこの席で話をしました、以心伝心の コミュニケーションにつながってきますね。日本のコミュニケーション文化が寡黙、沈黙ということに重きをおいているのが理解できます。できる限り少なく話 をして多くのことを伝える、底流では日本文化のミニマニズムの代表といわれる俳句、短歌に通じているような気がします。英国でも日本のこの諺を直訳したよ うな形の、【Silence is golden】という諺があります。しかし英国では使われる意味合いが違いますので、誤解のないように申し上げておきたいと思います。

つづきを読む(PDF)沈黙

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