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日本の本社からの情報欠如を解決するプロセス

先の日本出張で、ある日本の顧客企業からもろもろの文書を託されて帰ってきました。ようやくすべてを翻訳し終えて、その会社のしかるべき海外事業部門に転送したところです。翻訳に時間をかける前に、日本以外の事業部門にこれらの文書の内容がすでに伝わっているかどうかを顧客に聞いてみたところ、伝わってはいないけれども、これらの文書の内容は「きわめて重要」とのことでした。

これは、日本企業の海外事業部門が不満に思う点として幾度となく指摘されている問題です。日本から十分な情報が提供されず、その状況があまりにもひどいため、日本側が故意に何かを隠しているのではないかとすら疑い始める事態が見られます。

日本人社員の間に情報を渇望する姿勢があることについては、この連載で以前に言及しました。日本では、暗示的な知識共有によって、その渇望が部分的に満たされています。オフィス空間に間仕切りがほとんどなく、同僚が机を並べて何年も一緒に働きます。しかも全員が日本語を話す環境ですから、フォーマルに明示的なコミュニケーションを行う必要はありません。よりフォーマルな形式のコミュニケーション方法も、ほとんどの部署に存在します。週間報告書や月間報告書、さらには多くの人が忌み嫌っているA3サイズの計画書や稟議書が、多くの人に回覧されています。

しかし問題は、これらがすべて日本語であることです。これを英訳する面倒な仕事は誰もやりたがりません。もっと優先順位の高い毎日の業務を抱えているためです。翻訳会社に外注するのはひとつの方法ですが、重要な情報は何か、社内文書が真に意味するところは何かを見分けるために、インサイダーの目が必要になることも多々あります。

私自身が至った結論は、日本の事業部門と海外の事業部門の間に意識的なコミュニケーションのプロセスを導入する必要があり、それを誰かの職務責任として認識する必要があるということです。このポストに就く社員は、「海外」グループのような部署ではなく、実際の事業グループの一員であるべきです。さもなければ、情報の背景を理解することができないからです。そうした情報の機微こそが、海外の子会社が最も必要としている情報なのです。

そして、このプロセスの最後のパズルの一片が、組織図を作成して、どの部署とどの部署が、またどの社員とどの社員が「タメ」の関係にあるかを明らかにし、これらの部署同士、社員同士が情報共有する必要があると定めることです。これは、言うは易く行うは難しの作業かもしれません。私の経験によると、日本の大手企業のほとんどは、欧米の大手企業とは非常に異なる組織構造になっているためです。日本では、特定の地域や顧客セグメントを専門とする営業の責任者がいません。マーケティングの責任者もおらず、マーケティングの部署が独立して存在することも稀です。組織がきわめて縦型の構造になっているため、欧米の組織に見られる役職に似たグローバルな職権や機能的な役割を持った社員を見つけるには、各部署に深く踏み入る必要があります。

しかも、日本では個別の社員に対して職務内容を定めて文書化していることがほとんどないため、この作業をさらに難しくしています。とはいえ、しかるべき担当者とチームがひとたび確立すれば、日本以外からの情報を渇望する姿勢と海外の同僚のために役立つことで得られる満足感が、このプロセスを浸透させる要因となるでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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フランス

イギリス政府がEU以外からの移民政策を厳しくしていることで、日系企業のコミュニティはしばらくにわたって影響を受けてきました。来年5月の総選挙に向け、連立政府はイギリスへの移民を数万人単位で削減するという公約をどう果たすのか、その説明を迫られています。政府はEU以外からの移民はコントロールできますが、EU諸国から毎年数十万人とイギリスへ流入してくる移民はコントロールできません。労働力の自由な移動はEUの原則だからです。このため日系企業は駐在員のビザ取得が非常に難しいという状況に陥っています。

EU域内の労働力の自由な移動という原則をないがしろにしようとするのであれば、連立政権は、アンゲラ・メルケル首相が示唆したようにEUを離脱しなければならないかもしれません。EU支持派やイギリス実業界の関係者のほとんどは、EUの改革をさらに押し進め、全欧州にわたる人の移動の原因に対応することを望んでいますが、これは企業と労働の規制のさらなる調和を意味します。一方のEU反対派は、統一的な規制を課すことにはあまねく反対しています。また、フランスやドイツといった国の労働組合は、組合員の雇用保護を脅かしたり国の福利厚生を削減したりする改革には反対するでしょう。

例えば、ロンドンには30万人を超えるフランス人が住んでいると見積もられていて、人口で見れば6位のフランスの都市です。これは若い人たちがフランスでは恒常的な仕事を見つけられず、起業するのも難しいと感じているためだと、通常は説明されています。イギリスのほうがチャンスがたくさんあるのです。

私自身も今年に入ってフランスに事業を拡大したことで、イギリスの制度とは驚くほど異なるフランスの官僚主義と効率化への壁を垣間見ました。例えば、フランス企業に研修コースを販売するには、フランスの登録企業であり、かつ研修提供者として認証を受けた代理人を雇う必要があります。この代理人は、顧客企業にありとあらゆる書類を提出して、顧客企業が国の研修基金から研修税の還付を受けられるようにしなければなりません。このため、私の事業にもかなりの経費と時間が追加されます。

ある日本企業の人から最近聞いた話では、倒産しかかったフランスのソフトウェア会社を買収しようとしたところ、他の企業に買収されるよりもむしろ倒産することを、その会社の社員が選びました。その会社の社員は、倒産すればもちろん失業するのですが、その後も3年間は失業保険で給与の80%を受け取れるうえ、福利厚生もあり、住宅ローンも肩代わりしてもらえるからだそうです。

雇用を創出・維持して能力開発を支援するにはこうした規制や税制が必要だとするフランス流の見方も分からないわけではありません。でも、現実にもたらす効果と言えば、外国企業によるフランスへの大型投資に歯止めをかけることでしかありません。ですから、ビザの状況が厳しくなっているとはいえ、イギリスはなおも企業や個人が好んで選ぶ欧州内の行き先となっているのです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年12月10日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

2017年の「新たな目でフランスを見る」もご参照になります。

パニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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情報への渇望が過剰に感じられることも

高校時代に日本の家庭にホームステイをしていた時、外出するたびにホストマザーから行き先を尋ねられたので、それに慣れる必要がありました。自分の家だったら、「出かけてくるね!」とだけ言って、すばやくドアを閉めていたことでしょう。自分の予定に親が介入するなどもってのほかだと思っていたのです。でも、日本のホームステイ先のホストマザーが私に行き先を尋ねる時は、「介入」などという隠れた意図はまったくなく、単に知りたいという気持ちで聞いているのであって、子供のことを気にかけている姿勢の表れにすぎないのだということを、私もすぐに学びました。

日本の企業社会では、隠れた意図は存在するものの、「情報があったほうがいいから情報を求める」という姿勢は続いています。日系企業で働いている日本人以外の社員から、日本人の同僚から聞かれる質問の数がとにかく多すぎるという不満をよく耳にします。重要とは思えないような詳細にまで踏み込んで質問してくるというのです。

こうした不満を口にする外国人社員は、答えれば約束したと見なされることを恐れています。計画の詳細を逐一説明する前に、事業上の理由を整理したり戦略を明確にしたりする余地を与えてほしいと感じています。あるいは、私が高校生だった時のように、何か思惑のある質問なのではないかと疑っているだけのこともあります。

こうした態度に対して日本人の社員が苛立ちを感じている様子も伺えます。彼らにしてみれば、詳細が分かり次第すべて把握して、日本の関係者に報告する必要があるためです。「海外」や「グローバル」の付く肩書きを与えられている社員は、海外事業部門で何が起こっているかを即座に回答できる必要があるのです。現地の市場や文化がどんなに複雑であるかは考慮されません。現地の「ネタ」、すなわち内部の実情に通じていることは、彼らにとって「通貨」に等しいのです。日本人は、どんなことにもうわべと実情があるという考え方に慣れ親しんでいるため、実情を知っていると称する人が実権と知恵のある人だと見なしがちです。

それとは対照的に、欧米人の多くは、自分に直接関係する世界以外のことに対して驚くほど無頓着です。米国的な経営を実践している多国籍企業は、明示的な知識に基づいて物事を進める傾向にあります。グローバルな管理職者に向けて配信される定期的なアップデートのほか、週1回の電話会議などを介して、設定した目標値をどれだけ達成したかが報告され、達成できなかった部分については議論が行われます。この結果、米国的な多国籍企業は、本社に通じる情報網としてあらゆる事業部門に駐在員を置かなければならないと感じている日本の多国籍企業と比べて、本社から海外事業部門に派遣される社員がはるかに少なくなります。

私自身は、日本人以外のスタッフが感じている懸念に同感する部分もあります。日本人の社員同士でカジュアルに共有されている情報は、日本のヒエラルキーで上申され既成事実となって海外のスタッフに降り戻ってくる傾向にあるためです。海外のスタッフは、その計画を約束した覚えもないのに、その未達成を指摘されてしまうのです。また、インフォーマルな情報共有のやり方に馴染んでいる日本の本社のスタッフは、海外の同僚に対して情報を明確に共有することをしません。

情報の流れがうまく機能するには、双方向でなければなりません。ということは、私も高校時代、ホストマザーに今日は何をする予定なのと聞いてみるべきだったかもしれません。私が気にかけていることが伝わり、喜んでもらえたことでしょう。

この記事はパニラ・ラドリン著「ユーロビジョン: 変わりゆくヨーロッパで日系企業が信頼を構築するには」に出てます。Kindle版とペーパーバックはamazon.co.jpでご注文できます。

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沈黙は金なり

飯塚忠治(センターピープル代表取締役)

今 のお話からですと、英国人も日本人も個人の表現力が他の民族と比較すると少ないようですが、ここで本日の本題の【沈黙は金なり】=【 Silence is golden】 に付いてお話をお聞きしたいと思います。日本では「男は黙ってxxビール」とか言う広告のコピーがあったり、寡黙な人は知性もあり沈思黙考をすると言われ たり、不言実行、何も言わずともそれが深い意味を語り、相手にそれが伝わってゆく等々、沈黙はまさにこれらの諺の表わすとおり、価値のあることでポジテイ ブに捉えられていますが。

パニラ・ラドリン

そうですね、今のお話から言えることは、前回のこの席で話をしました、以心伝心の コミュニケーションにつながってきますね。日本のコミュニケーション文化が寡黙、沈黙ということに重きをおいているのが理解できます。できる限り少なく話 をして多くのことを伝える、底流では日本文化のミニマニズムの代表といわれる俳句、短歌に通じているような気がします。英国でも日本のこの諺を直訳したよ うな形の、【Silence is golden】という諺があります。しかし英国では使われる意味合いが違いますので、誤解のないように申し上げておきたいと思います。

つづきを読む(PDF)沈黙

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近代日本の建国を率いたエリート

ロンドンの三菱商事に就職した時、同社が1915年にロンドン事務所を開設していたことを知り、私はとても興味を引かれました。ほとんどのイギリス人は、日本企業がイギリスに進出するようになったのは第2次世界大戦後しばらく経ってからだと思っているはずです。しかし実際には、三菱商事は総合商社のなかではロンドン進出の後発組でした。創始者の岩崎一族は1915年よりもはるか前にイギリスとの結び付きを持っていたにもかかわらずです。

この結び付きについて、最近あらためて学習する機会を得ました。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所の大沼信一教授がロンドン在住の日本人ビジネスピープルを対象に行った講演で、明治時代にUCLに留学した日本の将来のエリートたちのスライドを次々と見せてくれたのです。そこには、1865年に薩摩藩から渡英した14人の学生に始まり、1901年にUCLで応用化学を勉強した岩崎俊彌氏までの名前がありました。

大沼教授は、これらのスライドを見せながら、近代日本の建国と興業を率いた偉人たちが、いかに勇敢に外国へ飛び出し、そこで暮らしたかを説明しました。そして講演後には、このチャレンジ精神を今の日本の若い人たちの間にどうすれば蘇らせられるかについて、熱い議論が交わされました。

大沼教授が提案した点のひとつが、外国での仕事経験が有利に働くことを日本企業が示し、海外経験を積んだ社員が日本帰国後に重要な役割を果たせるようにする、というものでした。

三菱商事では、経営トップは必ず海外経験があることが暗黙のルールとなっています。このため、三菱商事や他の商社に入社する新入社員のほとんどが、海外転勤となることを期待して入社してきます。けれども、むしろ国内事業をルーツとする他の大手日本企業では、このようなルールをそのまま適用するのは難しく、実際、現職の経営幹部に海外経験のある人がきわめて少ないという現実があります。

ただし、比較的規模が小さい会社では、そのような基準を導入できる可能性が高いかもしれません。経営者自身が旗振り役となって、社風を形成できるためです。その手本は、1963年のソニーの盛田昭夫氏に見ることができます。周囲の反対をよそに盛田氏が家族共々ニューヨークに引っ越した時、米国市場をもっとよく理解する必要があるという姿勢が明らかに打ち出されました。

ソニー現社長の平井一夫氏が幼少期から海外で暮らし、ソニーの海外法人で働いた経験を持っていることは、決して偶然ではないはずです。日本マイクロソフトの社長を務めた成毛眞氏は、インターナショナル・スクールの卒業者が成功した例はないと言いましたが、平井氏は東京のアメリカン・スクール出身です。
ソニーは現在、困難な状況に直面しているかもしれませんが、私は、その再生計画の成功を願ってやみません。創業者が自らの行動で示した起業家精神、日本の外の世界に目を向ける姿勢、変化に対する順応性といった伝統が、これからも生き続けてほしいと思うからです。

(帝国ニューズ・2013年7月10日・パニラ・ラドリン著)

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イギリスのカスタマー・サービス (その1)

私は日本の出張から英国に戻ってくる度に、逆カルチャーショックを受けます。ヒースローに着くなり、これから自宅に着くまでに起こりうるトラブルについて頭をめぐらすと、うなだれてしまうのです。だって、運がよかったとしても、せいぜい調子よく迎え入れてくるのが関の山で、最悪の場合は露骨に不親切で不愉快な送迎サービスに。これから身を委ねることになるからです。

私のセミナーに参加する日本人駐在員の方々も、やはり英国生活の中で最も大変と感じることの一つは「ひどいカスタマーサービス」であると言います。日本では常にレベルの高いサービスが提供されて当然という感があり、従業員は礼儀正しく丁重で、もし何か上手くいかなかったときには、間髪を入れずに心からのお詫びがなされます。それに多くの英国人は、たとえ日本を訪ねた事が無くても、英国のカスタマーサービスは貧しいと思っています。ばらつきのある質、店員が示す不快な態度、そして何かうまく行かなかったときの言い訳の数々など、言い出せばキリがありません。

一体どうしてでしょうか?日本人の駐在員の方々も、私自身も、思わず疑問に感じてしまうところです。多くの人が思ってしまうほど,英国のカスタマーサービスがとんでもなくひどいレベルにあるのに、どうして誰も改善しようとしないのでしょうか。

最近日本と英国の企業文化の違いについて、ある研究をしているのですが、そこで気づいたことがあります。このことは、日英ののカスタマーサービスの違いに関する疑問を解く鍵となるのではと思いました。例えば歴史的に「企業理念」の概念は、日本の場合はステークホルダー型である一方、英国企業はシェアホルダー型に基づいています。この発想の違いが、一般に日本人の持つ企業への帰属意識・団体意識をもたらしているのです。

時代遅れと言う人もいるかもしれませんが、社会的な力関係・地位の格差を受容するという儒教に根ざした年功序列式の昇進、そして年配者や高地位の人を敬うなどの伝統的な精神構造が、日本のカスタマーサービスに影響を与えているのです。英国のサービス業界では一般社員の低給料にひきかえ、トップともなると数百万ポンドはざら、ということがままあります。その一方、日本の企業では、地位の違いはあっても役員と若い社員の給与に驚く程の差はありません。

最後に、日本のサービス業界の企業では、「現場主義」という考えがあります。シニア・マネジャーの地位にいる方は、偉くなるには現場で働いて来たはずですし、必要とあらば店舗にいつでも出る気概を持っている必要があります。その考えの根底には、自分の手足で良いサービスを提供するという、「ものづくり」のようなある種の誇りがあるのです。これから数回に渡り、この紙面でこの領域の内容を検証していきたいと思います。日本の卓越したカスタマーサービスの秘密を解く鍵が解明されれば、今後、日本式カスタマー・サービスが日本の有益な輸出品となるかもしれませんしね。
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神経可塑性- 脳がイギリス式に再生されてしまった!

ヨーロッパの人たちから私はよく、日本語を学ぶ価値って大きいのかな、と聞かれます。答えは勿論「はい」なのですが、でも余り期待しすぎないことが 大切ですよ、と付け加えます。日本以外の国で週1回のレッスンを受けても、流暢にはならないからです。でも、知的な刺激を受ける意味では、美しい言語であ る日本語を学べば、私達にとってより身近なギリシャ語やラテン語を源とする言語を学ぶのとは違った意味で、言語を通して文化を肌で感じる事が出来ると言え ます。
私は一番吸収力のある幼少期に日本に住む機会に恵まれ、日本語を習得することが出来たのですが、テイーンエエイジャーともなると、外国語習得はとても難し くなります。もうその頃には母国語回路が頭の中でしっかり形成されるからです。私の知人にも大人になって日本語を話せるようになった人達がいますが、これ は日本にしばらく暮らして、英語圏での生活を避けて、どっぷりと日本の環境に浸ったからなのです。

最近の研究によると、私達の脳の回路は、配線のし直しが出来るそうです。これは「神経可塑性」と呼ばれ、脳を損傷後、自然にもしくはリハビリを通して、回 復中の患者に見られるプロセスで、ケガで不能となった脳の神経回路が自ずと再生されるらしいのです。この再生作業は、日本語漬けの環境に浸ることで大人に なってから流暢な日本語を話すようになるのと同じ事なのです。

神経可塑性は、私達の文化的人格形成にも密接につながっています。以前は、人の文化価値は、幼少期に備わると考えられていました。私はトレーニングの際、 人種が何であれ、人は特定の価値観を持って生まれてくるのではなく、幼少期にそれぞれの文化的背景に応じた脳の形成がされるのだと説明します。事実、ある 科学者によれば、東洋人とヨーロッパ人を比べると、これらの国々の人の脳は同じ視覚的なものに対して異なる反応をするそうです。そして同じ単純な計算をさ せても、英語を母国語とする人と中国語を母国語とする人では、脳の違う部分を使うとも。

繰り返しになりますが、神経可塑性の機能を生かせば、人間の脳は幼少期をどこで育ったかに関わらず再生が可能なようです。ですので異文化圏での長期間の体 験が、その人の脳の学習・思考・決断、そして解決方法等に影響を与えることになります。それは私が前回の記事でお話した、英国人であれ日本人であれ海外に 長く住むと、ずっと幼少期を育った祖国にいざ戻った時に違和感を感じる、という現象に通じるのではないでしょうか。

ところで、英国に住む日本人の読者の皆さんで、こんな身近な経験をされたかたはいらっしゃいますか。並んだ列に割り込んでくる人に思わず舌打ちしてしま う。自分でなく、あちらからどんっとぶつかった人にうっかり謝ってしまった。そして、約束に遅れて、延々と難しい説明をしてしまう。それはきっと脳がイギ リス式に再生されてしまうほど、皆さんが長くイギリスに住まわれてしまったということですね!
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西洋化の先にあるグローバル化

私の顧客である日系企業の多くは、地球規模の戦略のもと、マーケティングや人事分野で海外支店の社員の積極的な参加を推し進めています。今の経済状態の中 でこのように将来的な動きを目にするのは素晴らしいことですが、同時に実際にこうしたプロジェクトに関わっているヨーロッパの社員の声に、あれと思うこと もあります。

通常、日系企業で意思決定についての話題になると、根回しを理解しようという方向に話が進みます。しかしながら、合意を基本とした意思決定は日系企業が得 意とするものではないという事を申し上げておきたいと思います。欧州の多くの国・企業文化では日本のような上意下達の指示系統よりも、何らかの合意に基づ くアプローチを好むところが多くあります。ところが地球規模の戦略において日本を交えるとなると、そのようなやり方に消極的な日本側が消極的な姿勢を示す 場合があるようです。

ある英国人のダイレクターが、日本人チームに新しい業務手順について何らかの提案をするよう指示した時のことです。その時のチームが当惑気味だったので、 彼はあくまでも参考のために自分のアイディアを書き出して見せてみたのですが、結局のところ、日本人チームから戻ってきた提案というのは、ダイレクターが 書き出した大まかなアイデアを単になぞっただけのものであったそうです。彼曰く、欧州人のチームに同じ様な提案を求める時であれば、当然よりよく練られた 答えを持ってくることが期待されます。彼らの方が現場をよく把握している訳だし、出来る事・出来ないことの見極めが出来るはずだからです。また、別の英国 人のマネジャーによると、日本人のマーケティングのスタッフと新しいブランド戦略について定期的な会義をしようと提案すると、それよりも、「何を広告に入 れるべきか、欧州チームが指示してくれれば、その通りにしますから。」という肩透かしを食らうような返答を受けたそうです。

なぜこういうことが起こるのかというと、真っ向から英語で議論したり摩擦を起こすことを避けたいという考えを日本人スタッフが持っているという可能性が挙 げられます。もう一つ私が感じるのは、そもそもがグローバル化を目的としていて、おまけにマーケティングとか戦略の専門用語が日本人には聞きなれない英語 の言葉であるので、日本人社員は自分の専門外の分野として、「西洋人のチームに任せしてしまおう」と思ってしまうのではないでしょうか。

ところがこの姿勢こそが、欧州のマネジャーは、この姿勢を問題視します。文化的に繊細な問題であることを充分わきまえた上で新しい構想を立てようという 中、今日のグローバルな動きは西洋だけでなく、中国やインド、その他多くのエリアを含んでいます。欧州のマネジャーが日本人同僚に求めるのは、アジア諸国 への理解が西洋よりも深い日本だからこそ、グローバル化へ積極的に働きかけることができるのではないかという事なのです。

ではどうしたら日本人社員が自信を持って議論できるようになるでしょうか。例えば、コーチング形式はどうでしょう。この方法は私がこれまで仕事をしてきた 多くの日本の方にしっくりくるようでした。コーチングは、公の場で相手に反対意見を述べる通常の議論でなく、聞き手が話し手に対して、今発言した内容の問 題点に自ら気づくような質問をしていく、というものです。それによって、直接的に聞き手が話し手に問題点を指摘せずにすみます。
一方で、日本人のマネジャーは日本流グローバル化のリーダーとしてもっと自信を持つべきだと思うのです。ひょっとしてひょっとしたらその日本的手法こそが、これまでの西洋的手法より成功するかも知れないのですから。

パニラ・ラドリン著 Nikkei Weekly 2009年10月26日号より

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スコットランドの独立とEU ― 理知と感情

この記事が発行されるまでには、スコットランドが独立を選んでいるかもしれません。そうなれば、さしづめ「感情が理知を制した」と言えるでしょう。投票1週間前の世論調査では、独立に「イエス」の支持派と「ノー」の反対派がほぼ同数で、迷っている人が多数いました。この決められずにいるという人は、「頭」では独立すべきでないと思っているけれども、「心」が揺るがされている人たちです。グレートブリテン王国となって300年。今また独立して運命を自ら支配するという展望に、心躍るものを覚えている人たちです。

スコットランドとイングランドの企業も、ついに黙っていられない状況になりました。ほとんどは「ノー・サンキュー」の立場ですが、「ノー」は耳障りの良い言葉ではありませんし、その理由は脅迫のようにも聞こえます。独立国スコットランドの未来は不透明です。通貨ポンドを使い続けられるのか、使い続けるとすればどう統制するのかについて、難しい交渉が始まります。EUに加盟できるのか、いつ加盟できるのかに関しても、EUとの交渉を始めなければなりません。

イギリスも来年5月に総選挙を控えていて、保守党はEU離脱か残留かを国民投票にかけると公約しています。EU離脱を唱える独立党が最近の地方選と欧州議会選で躍進したことから、保守党が次期与党となるのであれば、イギリス国民がEU離脱に票を投じる可能性もかなり現実味が増します。

日本のビジネス関係者にとっては、自国の政治経済の安定を覆しかねない行動を国民が支持するとは不思議に見えることでしょう。政治経済の安定があったからこそ、外国投資がイギリスに流入してきたのです。けれども、この安定の歴史こそが、スコットランド人や他のイギリス国民に「なんとかなる」という自信をもたらしています。イギリス人は実利主義を誇りにしていて、最後はどうにか切り抜けられると思っているのです。

スコットランド独立の可能性に備えて、企業は緊急計画を練り始めました。「BREXIT」(British exit of the EU)の可能性にも備えていることは、疑いの余地がありません。スコットランドの首都エジンバラはロンドンに次ぐイギリス第2の金融ハブですが、ロイヤルバンク・オブ・スコットランドですら、スコットランドが独立を選ぶのであればイングランドへの本社移転を考えると表明しました。スコットランドのもうひとつの主要産業、石油業界も、民族主義の波で国有化が起こり得るという展望に戦々恐々としています。民族主義国家の進歩的な政策を支えるための法人税引き上げや信用低下の可能性は、どのセクターも恐れています。

日系企業(と他の外資系企業)がこの問題について立場を表明していないのは驚きではありません。意見を表明しても生産的なことは何もないからです。とはいえ、日系の銀行や建設・土木会社は、スコットランドと他のイギリス各地で社会基盤プロジェクトに投資してきました。スコットランド人の心が独立を選ぶとしても、如才ない合理主義で知られるスコットランド人の頭が最後は打ち勝ち、さらにイギリス人の実利主義がEUとの再交渉で頭角を現して、天変地異は回避できることを望んでいるはずです。

Pernille Rudlinによるこの記事は、2014年6月11日の帝国データバンクニュースに日本語で最初に掲載されました

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ものづくりとマーケティング

日本語の言葉の中には、そのまま英語に訳せないものがあり、同様に英単語にも日本語に置き換えられず、そのままカタカナで表記されることがあります。これは文化の違いから生じるのですが、日本語の「ものづくり」そして英語の「マーケティング」等は文化的な観点からなかなか上手く訳せない言葉の一例ではないでしょうか。

ただこの二つの言葉は、実は概念的にはどこかでつながっているように思えるのです。このことは先月私が主催したセミナーに参加した幾人かのヨーロッパ人が「フラストレーション」をこめて次のように発言したことからもうかがえます。

参加者の中にいた、3名のシニア営業職の方々は、それぞれ銀行、電子、セラミックの日系企業で働いているのですが、3名が口を揃えて言うのが、特に競争が激化している環境で、自分達の会社がマーケティングを理解していないのではないかと。

彼らの会社は、業界営業経験と実績を持った営業社員を採用し、欧州に最初に営業拠点を設けました。ところがこれらの営業社員は会社による営業サポートを充分に受けていないと感じていたのです。「私の銀行ではピッチブックすら無いんですよ。」と参加者の一人はこぼしていました。ピッチブックとは、あらゆる欧州金融機関が金融商品を市場に出すときに使うマーケティング分析資料で、顧客となる相手先のプロファイル、商品の持つ優位性、顧客のニーズの分析情報等が記されています。先述の電子会社の営業社員も「私たちの商品がいかなる点で他社製品より優れているか等を分析した書類を見たことが無いんですよ。」と話をしてくれました。

ひょっとしたらこれは単にコミュニケーションの問題で、彼らは今後必要に応じて独自のマーケティングツールを開発するのかもしれません。とは言え、ここには直視すべき根本的な問題があるのではないかと思います。今回例に挙げた3社はいずれも日本では業界トップで、誰もが知るほどの有名な会社です。ところが一歩日本の外に出てみれば、その名前は殆ど知られていません。極端な言い方をすれば、日本市場では会社の名前だけで、商品の優位性とか高いサービスを言及しなくても商売はできるのでしょう。つまり、マーケティングという概念そのものが営業とは別ものとして日本の会社に存在していないのかも知れません。

日本の製造業では「ものづくり=創造の美の追求」の精神が先行するように思えます。つまり、高品質のものを製造することに焦点を絞れば、いずれはその商品が必ず売れるという信念。最近、日本のビジネス評論家が、日本の製造業はマーケティング戦略とは何かを自問すべきとコメントしているのを耳にしました。つまり、何故他でなくこの製品であるべきなのか。どうやって自社製品の差別化を図り、優位性を持たせるのか?又、その製品を一体作り続ける意味があるのだろうか?もしこれら全てに明確な答えを出した上で、ヨーロッパのお客様のニーズが求めているものを掘り下げることが出来れば、ヨーロッパ人の営業社員は自信を持ってさらに営業成績を上げる事ができるようになるのではないでしょうか。

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